コラム・特集
デジコン編集部 2026.4.21
大人気シリーズ!【いまさら聞けない?】測量のことイチから解説 〜 連載記事一覧 〜

RTK測位におけるFloatとFixとは?〜 精度・状態遷移・現場運用を実務者向けに解説 〜

CONTENTS
  1. RTK測位の2つの状態。FloatとFixの違いとは?
    1. Float解(浮動解)とは何か?
    2. Fix解(固定解)とは何か?
    3. 整数アンビギュイティ。搬送波の波数の不確定性
  2. FloatからFixへ。RTK測位の初期化プロセス
    1. 複数時刻のデータ蓄積がFixを実現する
    2. 複数周波数の活用によるFix時間の短縮
    3. 初期化時間と環境依存性
  3. 現場でのRTK運用ルール。Float状態での作業は厳禁
    1. Fix状態の維持がRTK測位の生命線
  4. ミスFixと基線長の影響。RTK測位の信頼性限界
    1. ミスFix。正しく見えても誤った波数で固定
    2. マルチバンドRTKと単周波RTKの基線長特性の違い
  5. 【実践編】3周波GNSSでFIXも速い!「スマホ測量アプリOPTiM Geo Scan」という選択肢

RTK測位の2つの状態。FloatとFixの違いとは?


RTK(リアルタイムキネマティック)測位は、衛星からの搬送波位相を利用して、センチメーター級の高精度な位置情報をリアルタイムに取得する技術である。

しかし、RTK測位を開始した瞬間から数cm精度が得られるわけではない。

測位プロセスには必ず2つの段階が存在する。それが「Float解」と「Fix解」だ。

この違いを理解し、現場で正しく運用することが、RTK測位の精度を引き出す必須条件なのである。

Float解(浮動解)とは何か?


Float解は、RTK測位の初期段階で得られる暫定的な測位解である。衛星からの搬送波の波数(整数値バイアス)が未確定のままの状態を指す。

Float解の精度はおおよそ「数十cm~数m」と定義されており、測位環境によってばらつきがある。

Float解の測位値は時間とともに変動しており、安定していない。つまり、Float解のままでは「高精度なRTK測位が実現していない」という点だ。

Fix解(固定解)とは何か?


一方でFix解は、RTK測位において搬送波の波数が正しく確定した状態を指す。このとき、RTK測位は本来の精度を発揮する。

より正確には、水平位置で2~3cm程度、垂直方向でも数cm~数十cm程度の誤差に収まるとされている(もちろん測位環境や機器によって異なることは留意したい)

Fix解とFloat解の差は、単なる精度の違いではなく、RTK測位の「状態」の違いなのだ。



整数アンビギュイティ。搬送波の波数の不確定性


少し深堀りして説明すると、RTK測位がFloat解とFix解に分かれる根本的な理由は、「整数アンビギュイティ」という概念にある。

整数アンビギュイティとは、衛星から受信機までの距離に含まれる搬送波の波数(サイクル数)の不確定性を指す。


搬送波の波長はL1帯で約19cmである。つまり、衛星と受信機の距離を測定するときに、「この距離には19cmの波がいくつ含まれているのか」という波数が、最初は不明なのだ。

Float解では、この波数が不明なまま、推定値で位置を計算している。一方、Fix解では、この波数が確定し、正しい整数値で距離が決まった状態なのである。

FloatからFixへ。RTK測位の初期化プロセス


複数時刻のデータ蓄積がFixを実現する


RTK測位を開始直後、受信機は衛星信号を捕捉し、複数の衛星からのデータを蓄積し始める。

Float解の状態では、搬送波の波数が不明なため、複数の候補値が存在する。

RTK演算エンジンは、時間とともに蓄積された信号データを統計的に解析し、各衛星の波数候補を徐々に絞り込んでいく。

複数時刻にわたるデータを連立により解析し、統計的に最も確からしい波数の組み合わせを決定するのだ。

複数周波数の活用によるFix時間の短縮


1周波(L1帯のみ)のRTK受信機では、搬送波の波数候補が多く、Fix解に到達するまでに時間がかかる。

対して、マルチバンド(2周波以上)のRTK受信機では、異なる波長の信号を組み合わせることで、波数の候補を飛躍的に減らすことができる。

例えば、L1帯とL2帯の2周波数を用いると、波長の異なる「物差し」で距離を重ね合わせることで、正しい波数が何かを迅速に特定できるのだ。マルチバンド受信機では、より高速にFix解へ到達できるとされている。


さらに、マルチGNSS対応(GPS、GLONASS、Galileo、みちびきなど複数の衛星システムを利用)により、利用可能な衛星数が増えることで、RTK測位の収束速度は加速される。

初期化時間と環境依存性


RTK測位において、Float解からFix解へ到達するまでの時間を「初期化時間」と呼ぶ。冒頭に上述した通り、障害物のない理想的な環境下で10~30秒程度とさえている。

ただし、この時間は環境に大きく依存する。衛星配置が良好で、電波環境が安定していれば、受信開始後数十秒でFix解に到達することが多い。

実装現場の実例では、ネットワークRTKの運用で「Fix状態に遷移するまでに数分~10分程度要する場合もある」と報告されている。

現場でのRTK運用ルール。Float状態での作業は厳禁


Fix状態を確認するまで、測量墨出しを開始しないこの原則が、RTK測位の信頼性を支える大切なルールである。

Float解のままでは、精度が数十cm~1m程度であり、測量や構造物の墨出しには不十分だ。

実装現場では、以下のプロセスが遵守される必要がある。

  1. RTK受信機の電源投入
  2. 衛星信号の捕捉(通常、電源投入後数十秒~数分)
  3. Float解の状態で数十秒~数分待機
  4. 受信機の表示が「FIX」に変わったことを確認
  5. Fix状態が安定してから、初めて測量作業・墨出し作業を開始

この確認プロセスを省いて、Float状態のまま測量を開始することは、以降の施工全体に誤差を与える原因となる。

特に土木構造物の位置出しや基準点設定では、数cm単位の精度が求められるため、Float状態での作業は許容されない。

Fix状態の維持がRTK測位の生命線


一度Fix解を得られても、その状態の維持が重要である。

実装現場の事例では、以下のような条件下でFix状態が崩れることが報告されている。

  • トンネルや地下構造物への進入時
  • 高架道路の直下での走行
  • 強力な電波干渉源(高圧線直下など)の近くでの作業

これらの環境で一時的にFix状態から低下した場合は、当該場所から脱出して、空が開けた環境に移動し、再度Fix解を確立する必要がある。

移動体でRTK測位を行う場合、Fix状態のまま移動していれば数cm精度を維持できるが、Fix状態が崩れた時点で精度は大幅に低下する。

ミスFixと基線長の影響。RTK測位の信頼性限界


ミスFix。正しく見えても誤った波数で固定


Fix解に見えても、実は誤った波数で固定されている「ミスFix」という状態が存在する可能性がある。

ミスFixが発生した場合、受信機の表示は正常な「FIX」状態に見えるが、実際には数十cm~数mの誤差が隠れている。

視覚的には判別が難しいため、特に基線長が長い場合に発生する可能性が高い。


RTK測位では、基準局と移動局の距離(基線長)が長くなるほど、Fix解を得るのが難しくなり、精度も劣化する傾向がある。

マルチバンドRTKと単周波RTKの基線長特性の違い


マルチバンド対応のRTK受信機では、より長い基線長でも比較的安定したFix解が得られるとされている。

ただし、基線長の増加に応じてばらつきが大きくなるため、超長距離基線でのRTK測位には、測位後の精度検証が不可欠である。

RTK測位を実装する際は、基準局の配置と基線長を計画する必要がある。理想的には、移動局と基準局の距離を10km以内に収めることが推奨される。

これにより、ミスFixのリスクを低減し、安定したFix解を確保できるのだ。

【実践編】3周波GNSSでFIXも速い!「スマホ測量アプリOPTiM Geo Scan」という選択肢


マルチバンド(2周波以上)の受信機を活用することでFIX時間が短縮されるということは前述したが、今、急速に土木や建設、インフラの現場で導入が進んでいるのが、3周波対応の高性能GNSSレシーバーとスマホを組み合わせたソリューション「OPTiM Geo Scan」だ。

(画像:Geo Scanで活用する高性能GNSSレシーバー /撮影:砂田耕希)

OPTiM Geo Scanで使用する「高性能タイプ」のレシーバーは、3周波解析に対応している。

  • 上空が木々で覆われた山間部: 2周波ではFixしにくい森林の現場でも、L5信号を含む3周波を活用することで解析能力が向上し、より安定した「高Fix」を実現
  • 高層ビルが立ち並ぶ都市部: マルチパス(反射波)の影響を受けやすいビル街でも、3周波とマルチGNSSの組み合わせにより、測位率を大幅に拡張


この高性能レシーバーは公共測量にも利用可能だ。さらに、バッテリー持続時間は約20時間(標準添付)と、長時間の現場作業にも耐えうる仕様となっている。

「マルチバンドタイプの受信機が良いのはわかったが、機材はどうすればいいのだろう?」と迷った場合、こうした3周波対応GNSSレシーバーを活用する高精度スマホ測量を活用することが、現実的な解となるだろう。


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