コラム・特集
三浦 るり 2024.4.10

水準測量の〈誤差〉にはどんなものがある? 〜 水準測量の関連用語も紹介 〜【測量のことイチから解説】

水準器(レベル)と標尺を用いて2点間の高低差を測る水準測量

シンプルな原理の測量作業であるが、さまざまな「誤差」が生じやすい。そこで今回は、水準測量の誤差について解説を行う。また、誤差だけでなく補正など、関連する用語についてもまとめた。

水準測量で注意したい「誤差」とは?


水準測量において、正確に測定できないケースの要因(誤差)がいくつかある。水準測量の誤差は物理的な要因、人為的な要因、環境により生じるものがある。

物理的・人為的に生じる誤差


  • 零目盛誤差
    標尺の底面(0目盛り)が削られることで、地表から視準線の高さを正確に読み取れないことで生じる誤差を「零目盛誤差」という。

    これを回避するために、「標尺の設置回数を奇数回にする」「レベルの設置回数を偶数回にする」「2本の標尺を用いて、交互に観測する(出発点と到着点の標尺は同じものにする)」といった対策を行う。

  • 三脚が沈下することで生じる誤差
    軟弱地盤で観測を行う際、三脚が重みで沈下することで誤差が生じる。

    この対策は、観測中に三脚が沈む速度は一定であると仮定し、観測高低差の影響が打ち消されるような手法で作業を行う。

    1級水準測量では「後視→前視→前視→後視」※の順番で、2級水準測量では「後視→後視→前視→前視」の順番で視準する。

    ※前視をFS(forsight)、後視をBS(backsight)と表記することもある。

  • 視準線のズレによる誤差
    観測時に、水平であるべき視準線が上や下を向いていることで生じる誤差を「視準線誤差」という。観測時、機器を回転させるため、前視も後視も同じ角度で傾いてしまう。

    この誤差を回避するには、「センターレベリング(2つの標尺から等距離にあたる中央にレベルを設置する)」や「杭打ち調整法(レベルの気泡管軸と視準線が水平かを調べる点検調整)」を行う。

  • 鉛直軸誤差
    レベルの鉛直軸が鉛直でないことで生じるのが鉛直軸誤差である。鉛直軸が傾くことにより、視準線は前視(FS)でも後視(BS)でも同じ角度で正負に傾く。

    これは鉛直軸が傾くことによって回転する軸も傾くためである。この誤差を回避するには、三脚の特定の脚と標尺を常に向き合うように観測を行う。



環境により生じる誤差


  • 気差と球差の両差
    気差とは空気の厚さによって生じる光の屈折の誤差のこと、そして、球差とは地球が丸いことによる誤差である。

    この2つの誤差が合わさったものを両差という。両差は視準線誤差と同様に前視・後視の方向は同じ傾きになる。そのため両差を防ぐにはセンターレベリングを行う。

  • 空気のゆらぎ
    空気に揺らぎが生じることによって正確な数値を読み取り難くなることを、大気による屈折の誤差(空気のゆらぎ)という。この誤差には標尺の下方20㎝を視準しないことで対策する。


複合的に誤差が生じることもある


ここまで6パターンの誤差を紹介したが、誤差が生じる時はかならずしもいずれか一つではなく、複数の誤差が重なって生じることもある。

また、測定を繰り返す中で、途中で生じた誤差が後の測定の精度に影響を及ぼしていく。これを誤差の伝播という。

水準測量で押さえておきたいキーワード!


ここからは、誤差のほかにも水準測量において重要な用語をまとめて紹介しよう。

これらは食糧士補の国家試験でも出題されるような基礎用語である。まずは用語名をしっかりと押さえておこう。

  • 不等距離法(杭打ち調整法)
    レベルの視準線が傾いている(視準軸誤差)場合の対策には、センターレベリングのほかに不等距離法(杭打ち調整法)がある。これは器械の視準線そのものを調整して誤差を小さくする方法である。

  • 重み付き平均と最確値
    水準測量で新点の標高を求める際、複数の視準点から高低差を観測する。標高を求める際には、近くから測ったほうが誤差は出づらいという考えのもと、「重み付き平均」※という方法で計算する。

    “重み”とは信用度の高さを意味する。そして、重み付き平均で計算した値は、最も真の値に近い数値(最確値)として扱う。(※「重み」は「重量」ともいい、「重量平均」という名称が使われることもある)

  • 往復観測の較差
    水準点Aから水準点Bまでの標高を観測する場合、AからBまでの測定のあとに折り返してBからAまで測定することを「往復観測」という。

    AからBまでの往路で1m登った(+1m)とすると、復路では1m下る(-1m)ことになり、誤差がなければ往路と復路の高低差はプラス・マイナスが逆で同じ絶対値を示すことになる。

    とはいえ、実際の測量では多少の誤差が生じるため、誤差の許容範囲が設けられている。誤差の許容範囲は水準測量の等級により値が定められている。


  • 標尺の設置位置
    標尺の設置位置について、作業規程の準則により1回の最大視準距離が定められている。各等級の最大視準距離は以下のとおり。また、センターレベリングで観測を行う際には、器械を2点間の中央に設置する。

  • 1級水準測量-最大50m
  • 2級水準測量-最大60m
  • 3級水準測量-最大70m
  • 4級水準測量-最大70m
  • 簡易水準測量-最大80m


  • 標尺の補正
    前項で水準測量の作業中に生じる誤差を紹介したが、標尺自体の特性で生じる誤差がある。

    まず一つ目は、標尺が温度によって膨張(伸び縮み)することによる誤差である。気温が高いと膨らんで伸び、気温が低くなると縮む。

    気温差によって膨張する割合は決まっており、「膨張係数」として表される。

    そして二つ目は、標尺の目盛りの個体差である。この個体差による誤差を補正する値を「標尺改正数」という。標尺改正数は個体差に比例する。

    膨張係数の補正式と標尺改正数の補正式を組み合わせて一度に補正を行う計算式を「標尺補正計算」とよぶ。



水準測量が1人でラクラク!スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Point」

ここまでレベルと標尺を用いた従来の水準測量において気を付けるべき誤差とその補正について紹介してきた。

ただ、水準測量もICT化が進んでおり、近年はスマートフォンやタブレットで行うスマホ測量に注目が高まっている。

そのスマホ測量でパイオニア的存在といえるのが「OPTiM Geo Scanだ。

「OPTiM Geo Scan」はLiDARというレーザー計測機能を搭載するiPhone Pro/iPad proシリーズに対応する3次元測量アプリである。


その無料オプション機能である「OPTiM Geo Point」はGNSS測量と杭打ち機能に特化している。PTK測位に対応したGNSSレシーバ※と組み合わせることで高精度の測位を実現させる。

※:GNSSとは衛星測位システムのこと。人工衛星から発せられる電波を受信することで測位の精度を向上させる。


レベルと標尺を使った水準測量は器械の設置など準備に時間がかかり、複数人の人員が必要。一方で、「OPTiM Geo Point」ならば、観測に用いる道具はスマホ/タブレットとGNSSレシーバのみで、1人で測量が行える。

観測作業自体も、現場でアプリを立ち上げ、ポイントごとに画面をタップするといった簡単な作業のみで、ほぼリアルタイムで測定結果を確認することができる。

圧倒的な業務効率性!測量初心者にも使いやすいデザイン


「OPTim Geo Point」は機能を絞っていることにより圧倒的に効率よく測量が行える。たとえば、50カ所程度の杭打ちを行う場合、従来のトータルステーションを使った手法であれば2~3人体制で丸1日かかるところが、Geo Pointならば1人で半日あれば測量できるという。

▼  Geo PointのGNSS測量を動画でもチェック! ▼



また、作業自体も初心者でもラクラク進められる。「地図モード」と「近接モード」の2つのモードが搭載されており、作業のタイプやユーザーの好みに合わせて切り替えが可能。「地図モード」では、よくある地図アプリのように目的地点と自分の現在地が表示される。

一方で、「近接モード」では、あらかじめ目標ポイントを登録しておくと、現地でそのポイントまで画像と音で誘導してくれる。

ポイントに到達したら画面をタップして次のポイントに移動という手順で、テンポよく作業が進められるのだ。


▼   Geo Pointの「杭打ち機能」を動画でもチェック! ▼



「OPTiM Geo Point」は現況を把握するための測量に適した精度に設計されており、境界の位置出しや地中埋設物の位置確認といったことにも活用できる。

観測データは図化作業に使いやすいCSV形式での出力が可能。平面図や横断図の作成に使用する場合、一般的なCADとの互換性もあるが、同じく「OPTiM Geo Scan」の無料オプションには図化ソフト「OPTiM Geo Design」がある。

これはGeo Pointで取得した点群・座標を地図上に表示したり、平面・縦断線形や横断形状を作成したりすることができる。

測量の作業効率化をお考えならばGNSS測量・杭打ちアプリ「OPTiM Geo Point」や図化アプリ「OPTiM Geo Design」がオプションで利用できる3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」をチェックしてみよう。




参考:https://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/jyunsoku/pdf/R5/R5_junsoku.pdf
https://survey.earth/surveyor_assistant_test_commentary_r0411
https://dptech.dpri.kyoto-u.ac.jp/gihoh/gihoh07/fukusima.pdfhttps://sites.google.com/view/senmitsu/%E6%B8%AC%E9%87%8F%E7%B3%BB/4-3-%E6%B0%B4%E6%BA%96%E6%B8%AC%E9%87%8F%E3%81%AE%E8%AA%A4%E5%B7%AE
画像:Shutterstock
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WRITTEN by

三浦 るり

2006年よりライターのキャリアをスタートし、2012年よりフリーに。人材業界でさまざまな業界・分野に触れてきた経験を活かし、幅広くライティングを手掛ける。現在は特に建築や不動産、さらにはDX分野を探究中。

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