コラム・特集
《「設工一体」の一貫体制を【スマホ測量 ✕ 3Dプリンター】で体現!》【郷土開発(鹿児島)】のシン・まちづくりとは!? 〜「調査 協議 設計 施工 管理」一連の建設プロセスでOPTiM Geo Scanをフル活用!〜
株式会社郷土開発(本社:鹿児島県鹿児島市)は、1971(昭和46)年の創業以来、まちづくりに取り組み、長年培ったがけ対策や地盤の耐震化土木と建築の設計・施工を得意としている。
本社社屋は、城のデザインを採用したユニークなデザインを採用している。また社内部署は、設計部と施工部を抱えた「設工一体」体制を取るなど、独自の路線で安全・安心なまちづくりに取り組んできた。
社内の設計部門が現地調査を行ったうえで設計を行い、施工部門は施工段階で気づいた点を設計部にフィードバックする。
そのフィードバックはノウハウとなって社内の財産として蓄積され、即時的な改善や次のプロジェクトへ活かされていく。
「設工一体」は、いわば製造業の一貫生産体制であり、郷土開発は日本のものづくり文化を土木・建設業界で体現している。
そんな同社では、2023年1月よりオプティムが開発・提供する3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」(以下、Geo Scan)を導入し、各種業務に活用しているという。
「Geo Scan」は、LiDARセンサー搭載のiPhoneやiPadとGNSSレシーバーを組み合わせ、GNSSレシーバーから取得した位置情報を活用して短時間で高精度な測量が行えるアプリである。 「Geo Scan」の導入により、同社では以下のような効果が表れた。
今回、同社の施工現場をめぐりながら、「Geo Scan」の活用法や導入に際しての社員の反応などについて、上野敏孝氏に話をうかがった。
郷土開発の拠点である鹿児島市周辺は、過去の巨大噴火により火山灰や軽石といった火山噴出物が堆積したシラス台地が広がっている。
シラス台地は地盤の硬軟に正しく対応して計画がなされないと大きな地震が起きたときには被害が大きくなりやすい。
この地で約60年にわたり、耐震地盤を中心に土木工事を手掛けてきた郷土開発。
上野氏いわく、「このあたりの地形や土壌は、きちんと精確に施工をしなければ、人々の生活や命にも関わるような土砂崩れが起きることもある」。そのため耐震性に優れた、地盤造成に力を入れている。
【スマホ測量 x 3Dプリンター】によるシン・まちづくり
設工一体の一貫体制を取る同社では、スピーディーな顧客対応をひとつの強みとしている。たとえば「自宅の裏に崖があるのだが、何か安全対策ができないだろうか?」と相談を持ち掛けられると、すぐに現地調査に赴き、即座にスマホ測量を実施。次の打ち合わせには3Dプリンターで製作した模型を用意して、説明を行う。
このようなスピーディーな対応を手助けしているのが3次元スマホ測量アプリ「Geo Scan」だ。「Geo Scan」は、スマートフォンとGNSSレシーバーがあれば1人で高精度な測量ができるスマホアプリ。
「わたしたちは、お客さま参加型の計画立案を重視しています。打ち合わせで計画が二転三転しても、「Geo Scan」があれば即座に対応できますので、非常に便利に感じています」(上野氏)
同社では、例えば広場の整備といったプロジェクトの場合、デザイン協議には、施主だけでなくそこの利用者になりえる地域住民もまじえることがある。
施工の予定地を見てまわりながら「ここにベンチがあるといいね」「日陰ができるように近くに木を植えましょう」とアイデアを考え練っていく。
各ポイントで「Geo Scan」を活用し位置情報を取得しておけば、あとで情報を整理するのも容易にできる。
「広場であれば、その広場の利用者も協議に参加し、利用者にとって使い勝手の良いデザインを考えていくことが大切だと私たちは考えます。インフラ整備を民主化すると言うんですかね」
「Geo Scanを導入したことにより、専門用語がわからない施主さんや地域住民の方とも完成イメージを共有しやすくなりました。従来なら、技術や専門知識を持っている“作る側”の理論だけで決められていたことが、“利用者”が施工者に対して、アイデアを投げかけることもできるようになったのは、画期的だと感じます」(上野氏)
郷土開発の顧客は民間企業も多く、「なるべく早く対応してほしい」という要望も多いという。そのため、スピード感を持って、手軽に高精度な測量ができるGeo Scanは「最初知った瞬間にビビっときた。導入して正解だった」と、上野氏は語る。
設計、協議、設計、施工、検査・メンテナンス、地質調査など、建設プロセスの一連をトータルで手掛ける郷土開発では、Geo Scanで取得した3次元データを軸に、各部門が業務を推進する。
「調査→協議→設計→施工→メンテナンス」、各工程でGeo Scanを活用し、測量のほか土量・体積・展開面積の計算や埋設管などインフラ管理までも行っているのだ。
ときには、一般的なプロセスで進まない工事もあるという。
例えば、工事が先行し後追いで設計図面を作成するようなケース。そのような場面では、現場作業の合間にGeo Scanを取り出して、素早く測量データを取得し、各種書類に必要な図面を作成していく。
また、プロジェクトの進行を加速させるのにも、役立っているという。
土地の寸法データ(出来形)を位置出しがスマホだけでできる「OPTiM Geo Point」※(以下、Geo Point)で取得し、後工程の排水管の位置決めなどに活用しているという。
「Geo Scanを導入して、さまざまなシーンで、自由な発想ができるようになりました。Geo Scanのコンセプトは <安い、早い、誰でもカンタンに> と聞いていますが、まさにうちの事業スタイルにぴったりマッチしています。スマホから火が出るくらいにフル活用していきたいと考えています(笑)」
「また、取得した3次元データを蓄積しておくことで、数年、数十年後、同現場で調査、施工が発生した際に役立てられますよね。これは郷土開発にとって、大きな財産です」(上野氏)
郷土開発では、造成工事における水道の埋設管工事でもGeo Scanを活用している。
何十年も前の水道工事技術は現代の品質と比べると劣るものがあり、また管理の精度がそれほど高くない。全国的に深刻化している水道管の老朽化問題だが、鹿児島エリアも例外ではないという。
埋設管の沈下、木の根が管を押し破るなどで、漏水事故が発生すれば緊急で対処する必要がある。
これまでは作業員が漏水を被り、ずぶぬれになりながら埋設管の情報を取得しており、改修作業を済ませるまでに、かなりの時間を要していたという。
しかし、Geo Scanを導入してからは、それが、大きく変化した。
わずか数十分で埋設管の位置情報を取得できるため、大幅に作業時間を短縮できたというのだ。また、これまでしっかりと管理できていなかった管網図を3次元データで収集し、施工履歴と共に管理・共有できるようにもなった。
「郷土開発では、これまでに5500世帯ほどの工事実績があります。管網図は業界のルールに則り1975(昭和50)年頃から整備してきましたが、それ以前に施工した水道管の情報は不明瞭です。それをGeo Scanで時系列的・面的にデータをリカバリしつつ、これからは情報を蓄積していく計画です。そうすることで、公営の水道事業に負けないくらいの質を提供していきたいですね」(上野氏)
同社にとって、Geo Scanは業務に欠かせないツールとなっている。
説明書不要の直感的でわかりやすい操作性だから、新人社員でもすぐに高精度な測量が行える。つまり入社したその日から、即戦力になり得るのだ。
Geo Scan導入当時の社員の反応についても、上野氏にうかがった。
「社員にGeo Scanを試してもらったところ、興味津々な様子でした。これまで手間がかかると感じていた測量がラクにできるようになり、業務が効率的になったことで創造性を発揮できる仕事が増えています。」
「仕事にすこしマンネリを感じているように見えたベテラン社員の目が輝き始めて、今では、楽しそうに仕事に取り組んでくれています」(上野氏)
「土木・建設業界では、1961(昭和36)年に総合工事業者が創設されて一式工事が主流になり、いまも設計と施工が分かれている会社が多いんです。その一方で、わたしたちは民間工事がメインということもあり、"設工一体”という事業スタイルを貫いてきました」
「他所では、竣工するまでプロジェクトの全貌がわからず、後になって問題が見えてきて地域住民とトラブルになるようなケースもありますよね。そうならないためには、計画段階から地域住民と情報と思いを共有し、設計していくというプロセスを踏むのもいいのではないでしょうか。」
「郷土開発では、Geo Scanを導入したことで、関係各所とのコミュニケーションが円滑になり、認識の齟齬(そご)による設計手戻りが大きく減少しました。私たちが理想とする姿が、Geo Scanで、実現できていると感じています」(上野氏)
株式会社 郷土開発
鹿児島県鹿児島市田上4丁目5-17
TEL:099-214-5355
HP:https://kyodo-kaihatsu.com/index.html
本社社屋は、城のデザインを採用したユニークなデザインを採用している。また社内部署は、設計部と施工部を抱えた「設工一体」体制を取るなど、独自の路線で安全・安心なまちづくりに取り組んできた。
社内の設計部門が現地調査を行ったうえで設計を行い、施工部門は施工段階で気づいた点を設計部にフィードバックする。
そのフィードバックはノウハウとなって社内の財産として蓄積され、即時的な改善や次のプロジェクトへ活かされていく。
「設工一体」は、いわば製造業の一貫生産体制であり、郷土開発は日本のものづくり文化を土木・建設業界で体現している。
そんな同社では、2023年1月よりオプティムが開発・提供する3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」(以下、Geo Scan)を導入し、各種業務に活用しているという。
「Geo Scan」は、LiDARセンサー搭載のiPhoneやiPadとGNSSレシーバーを組み合わせ、GNSSレシーバーから取得した位置情報を活用して短時間で高精度な測量が行えるアプリである。 「Geo Scan」の導入により、同社では以下のような効果が表れた。
- データの一元管理により、プロジェクトの進行を高速化
- スマホ測量により急斜面の測量がラクにでき、難所での改修工事を実現
- 業務が効率化したことで創造性の高い業務が増え、社員の意欲が向上
今回、同社の施工現場をめぐりながら、「Geo Scan」の活用法や導入に際しての社員の反応などについて、上野敏孝氏に話をうかがった。
"シラス台地”という地理環境で、耐震地盤工事を行う郷土開発
郷土開発の拠点である鹿児島市周辺は、過去の巨大噴火により火山灰や軽石といった火山噴出物が堆積したシラス台地が広がっている。
シラス台地は地盤の硬軟に正しく対応して計画がなされないと大きな地震が起きたときには被害が大きくなりやすい。
この地で約60年にわたり、耐震地盤を中心に土木工事を手掛けてきた郷土開発。
上野氏いわく、「このあたりの地形や土壌は、きちんと精確に施工をしなければ、人々の生活や命にも関わるような土砂崩れが起きることもある」。そのため耐震性に優れた、地盤造成に力を入れている。
【スマホ測量 x 3Dプリンター】によるシン・まちづくり
設工一体の一貫体制を取る同社では、スピーディーな顧客対応をひとつの強みとしている。たとえば「自宅の裏に崖があるのだが、何か安全対策ができないだろうか?」と相談を持ち掛けられると、すぐに現地調査に赴き、即座にスマホ測量を実施。次の打ち合わせには3Dプリンターで製作した模型を用意して、説明を行う。このようなスピーディーな対応を手助けしているのが3次元スマホ測量アプリ「Geo Scan」だ。「Geo Scan」は、スマートフォンとGNSSレシーバーがあれば1人で高精度な測量ができるスマホアプリ。
「わたしたちは、お客さま参加型の計画立案を重視しています。打ち合わせで計画が二転三転しても、「Geo Scan」があれば即座に対応できますので、非常に便利に感じています」(上野氏)
同社では、例えば広場の整備といったプロジェクトの場合、デザイン協議には、施主だけでなくそこの利用者になりえる地域住民もまじえることがある。
施工の予定地を見てまわりながら「ここにベンチがあるといいね」「日陰ができるように近くに木を植えましょう」とアイデアを考え練っていく。
各ポイントで「Geo Scan」を活用し位置情報を取得しておけば、あとで情報を整理するのも容易にできる。
「広場であれば、その広場の利用者も協議に参加し、利用者にとって使い勝手の良いデザインを考えていくことが大切だと私たちは考えます。インフラ整備を民主化すると言うんですかね」
「Geo Scanを導入したことにより、専門用語がわからない施主さんや地域住民の方とも完成イメージを共有しやすくなりました。従来なら、技術や専門知識を持っている“作る側”の理論だけで決められていたことが、“利用者”が施工者に対して、アイデアを投げかけることもできるようになったのは、画期的だと感じます」(上野氏)
Geo Scanで取得した3次元データを軸に、各部門が密接に連携
郷土開発の顧客は民間企業も多く、「なるべく早く対応してほしい」という要望も多いという。そのため、スピード感を持って、手軽に高精度な測量ができるGeo Scanは「最初知った瞬間にビビっときた。導入して正解だった」と、上野氏は語る。
設計、協議、設計、施工、検査・メンテナンス、地質調査など、建設プロセスの一連をトータルで手掛ける郷土開発では、Geo Scanで取得した3次元データを軸に、各部門が業務を推進する。
「調査→協議→設計→施工→メンテナンス」、各工程でGeo Scanを活用し、測量のほか土量・体積・展開面積の計算や埋設管などインフラ管理までも行っているのだ。
ときには、一般的なプロセスで進まない工事もあるという。
例えば、工事が先行し後追いで設計図面を作成するようなケース。そのような場面では、現場作業の合間にGeo Scanを取り出して、素早く測量データを取得し、各種書類に必要な図面を作成していく。
また、プロジェクトの進行を加速させるのにも、役立っているという。
土地の寸法データ(出来形)を位置出しがスマホだけでできる「OPTiM Geo Point」※(以下、Geo Point)で取得し、後工程の排水管の位置決めなどに活用しているという。
「Geo Scanを導入して、さまざまなシーンで、自由な発想ができるようになりました。Geo Scanのコンセプトは <安い、早い、誰でもカンタンに> と聞いていますが、まさにうちの事業スタイルにぴったりマッチしています。スマホから火が出るくらいにフル活用していきたいと考えています(笑)」
「また、取得した3次元データを蓄積しておくことで、数年、数十年後、同現場で調査、施工が発生した際に役立てられますよね。これは郷土開発にとって、大きな財産です」(上野氏)
埋設管などのインフラ管理でも、Geo Scanが大活躍!
郷土開発では、造成工事における水道の埋設管工事でもGeo Scanを活用している。
何十年も前の水道工事技術は現代の品質と比べると劣るものがあり、また管理の精度がそれほど高くない。全国的に深刻化している水道管の老朽化問題だが、鹿児島エリアも例外ではないという。
埋設管の沈下、木の根が管を押し破るなどで、漏水事故が発生すれば緊急で対処する必要がある。
これまでは作業員が漏水を被り、ずぶぬれになりながら埋設管の情報を取得しており、改修作業を済ませるまでに、かなりの時間を要していたという。
しかし、Geo Scanを導入してからは、それが、大きく変化した。
わずか数十分で埋設管の位置情報を取得できるため、大幅に作業時間を短縮できたというのだ。また、これまでしっかりと管理できていなかった管網図を3次元データで収集し、施工履歴と共に管理・共有できるようにもなった。
「郷土開発では、これまでに5500世帯ほどの工事実績があります。管網図は業界のルールに則り1975(昭和50)年頃から整備してきましたが、それ以前に施工した水道管の情報は不明瞭です。それをGeo Scanで時系列的・面的にデータをリカバリしつつ、これからは情報を蓄積していく計画です。そうすることで、公営の水道事業に負けないくらいの質を提供していきたいですね」(上野氏)
新人が即戦力に!ベテラン社員は、新しいツールに目を輝かせた!
同社にとって、Geo Scanは業務に欠かせないツールとなっている。
説明書不要の直感的でわかりやすい操作性だから、新人社員でもすぐに高精度な測量が行える。つまり入社したその日から、即戦力になり得るのだ。
Geo Scan導入当時の社員の反応についても、上野氏にうかがった。
「社員にGeo Scanを試してもらったところ、興味津々な様子でした。これまで手間がかかると感じていた測量がラクにできるようになり、業務が効率的になったことで創造性を発揮できる仕事が増えています。」
「仕事にすこしマンネリを感じているように見えたベテラン社員の目が輝き始めて、今では、楽しそうに仕事に取り組んでくれています」(上野氏)
「土木・建設業界では、1961(昭和36)年に総合工事業者が創設されて一式工事が主流になり、いまも設計と施工が分かれている会社が多いんです。その一方で、わたしたちは民間工事がメインということもあり、"設工一体”という事業スタイルを貫いてきました」
「他所では、竣工するまでプロジェクトの全貌がわからず、後になって問題が見えてきて地域住民とトラブルになるようなケースもありますよね。そうならないためには、計画段階から地域住民と情報と思いを共有し、設計していくというプロセスを踏むのもいいのではないでしょうか。」
「郷土開発では、Geo Scanを導入したことで、関係各所とのコミュニケーションが円滑になり、認識の齟齬(そご)による設計手戻りが大きく減少しました。私たちが理想とする姿が、Geo Scanで、実現できていると感じています」(上野氏)
株式会社 郷土開発
鹿児島県鹿児島市田上4丁目5-17
TEL:099-214-5355
HP:https://kyodo-kaihatsu.com/index.html
WRITTEN by
三浦 るり
2006年よりライターのキャリアをスタートし、2012年よりフリーに。人材業界でさまざまな業界・分野に触れてきた経験を活かし、幅広くライティングを手掛ける。現在は特に建築や不動産、さらにはDX分野を探究中。
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