コラム・特集
加藤 泰朗 2022.10.17
測量アプリの現在地〜現場で使える?最新事例を紹介

【令和4年度 土木学会全国大会レポート】小規模現場で力を発揮!モバイル端末を使用した出来形管理の可能性

2022年9月15-16日、京都大学吉田キャンパスで「土木学会全国大会第77回年次学術講演会」が開催された。

2日目の16日16:20には、第Ⅵ部門の会場に日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所・八木橋宏和氏が登壇。「小規模土工におけるモバイル端末を使用した計測技術の現場適用性と効果検証」という演題で弁舌をふるった。



進まない小規模土工におけるICT活用


講演冒頭、八木橋氏は、国土交通省が推進するi-Construction(アイ・コンストラクション)の現状について、「近年、3次元設計データで正確な施工数量の把握をしたり、ICT建設機械に搭載して電子丁張(遣り方)として活用したりするなど、現場でのICTの全面的な活用が増加し、従来よりも効率性のよい施工が行われている」と整理した。


事実、国土交通省の発表によると、2020年度の国土交通省直轄工事では、公告件数の約8割の現場でICT施工が実施されており、ICT活用がかなり進んでいることがうかがえる。

ただし、各地方自治体管轄の工事現場や小規模工事現場に目を向けると事情が変わってくる。

2022年3月31日、国土交通省は「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」を改定、令和4年3月版を公開した。そのなかで、小規模現場に関して、「土工(1,000m3未満)・床堀工・小規模土工・法面整形工」が追加されたが、現状、ICT活用に踏み出しづらい環境にあるという。

その背景の一つを八木橋氏はコスト面にあると説く。「ICT建機による施工には、初期投資が必要。施工現場数の少ない地方では、労務費の削減比に対して、機械経費や間接費などでコスト的に不利になる」(八木橋氏)。

こうした現状をふまえて八木橋氏は、小規模現場で利用可能なICT計測技術の検証に関する実証実験について報告した。

小規模現場でICT活用の有効性を検証


実証実験の目的は、小規模な現場で利用可能なICT計測技術の現場適用性と精度を、生産性とコストの両面から検証すること。


施工技術総合研究所に用意されたテストフィールドで、従来手法(テープ・レベル計測/トータルステーション〔TS〕出来形計測)と、ICT手法(地上型レーザースキャナ〔TLS〕計測/モバイル端末搭載のLiDARによる計測)のそれぞれで、起工測量からデータ作成、施工、出来形計測までの模擬工事を行い、かかった人工および時間を全て集計した。

さらに、モバイル端末による計測に関しては、LiDARセンサーと高精度位置情報を組み合わせた「OPTiM Geo Scan」をはじめ、市販されている3種類のシステムを使用し、それぞれの出来形計測の精度を比較検証した。

最適解はモバイル端末を使用したICT手法


実証実験の結果、最も作業時間と人工がかかったのはテープ・レベルによる従来手法で、続いてTS出来形を使用した従来手法、TLSを用いたICT手法の順で、最も効率的だったのがモバイル端末を使用したICT手法だった。

ICT手法の結果を詳しく見ると、テープ・レベルによる従来手法と比べてTLSを使用するICT手法では38%の、モバイル端末を使用するICT手法では65%の、時間(人工)縮減につながったという。


TLSとモバイル端末の縮減率の差については、「TLSが後方交会法などで自己位置を特定する作業が必要なのに対して、モバイル端末による計測は人工衛星から測位情報を取得し自己位置を特定するため、計測作業時間をより短縮できた」と分析し、「ICT手法のなかでも、モバイル端末の使用で生産性が最も高く、非常に有効」との見解を示した。

モバイル端末による計測精度は、TLSで計測した点群をTIN※(ティン)化したデータを、出来形計測の真値と仮定し、3システムで計測した点群との標高較差を比較して検証した。

計測精度に関しては、1システムで約98%以上の点群が±20mmの範囲に分布し、仮定した真値と非常に近い値になったほか、ほかの2システムもおおむね±40mm-60mm程度の範囲に分布し、市販されているシステムを使ったモバイル端末による計測の現場適用性が証明される結果となった。

※ triangulated irregular network。点群データを結んだ三角形の集合で地表面を表現するモデル。

モバイル端末使用の課題と今後求められるもの


モバイル端末の使用については、作業効率化だけでなく、費用削減効果という点でも大きなベネフィットがあるという。八木橋氏は「モバイル端末とは、要するにiPhoneのこと。

iPhoneは一般に普及した端末なので、ハードウエアを利用するために、新たな機器を導入する必要がなく、そのぶんコストダウンが期待できる」とその利点を強調する。

ただし課題もある。「現状、モバイル端末での計測方法によって点群取得精度が異なる。現場利用をよりいっそう推進するためには、誰でも安定した計測結果が得られるような技術改良が必要だ」。八木橋氏はそう指摘した。


生産性の向上、人手不足の解消、働き手の高齢化への対応、労働環境の改善。建設業界はさまざまな課題を抱え、業界の抜本的な変革が喫緊の課題となっている。現場でのICT活用は、そうした課題解決に欠かせない要素のひとつだ。

先に述べたように、国土交通省の直轄工事では公告件数の約8割の現場ではICT活用が進んでいる。

さらなるICT活用普及のためには、地方自治体が実施する比較的小規模な現場に導入しやすくする取り組みが重要で、作業時間・コストの両面で効果の高いモバイル端末の利活用拡大がそのカギを握っていることは間違いない。

最後に八木橋氏は「ICTの活用方法や小規模土工におけるICTの現場適用性および効果に関する研究に取り組んでいきたい」と意気込みを語り、講演を締めくくった。


写真:デジコン編集部
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WRITTEN by

加藤 泰朗

人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、2019年独立。フリーランスとして、書籍・雑誌・Webで編集・ライティングに従事。難しい内容をわかりやすく伝えることを大切にしています。
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