コラム・特集
すべては岡崎市でi-Conを普及させるために。「葵コンサルタント(愛知県)」期待の新人社員が「OPTiM Geo Scan」の実力を体験!
i-Constructionの普及をめざし、全国の自治体や企業では、今様々な取組みが進められている。新技術を上手に活用する自治体、企業が台頭する一方、新たな一歩を踏み出せずにいる団体も多く存在している。
今回、デジコン編集部が訪れたのは、愛知県岡崎市。この街に本社を構える建設コンサルタント企業「葵コンサルタント株式会社」で最新ICT機器デモンストレーション会が実施された。当日は岡崎市の職員も招かれた。
本記事では、会の様子を伝えるとともに、葵コンサルタントの社員や市の職員など、参加者から寄せられた感想などもお届けしていく。
最初に、このデモンストレーション会開催のきっかけを作ったキーマンを紹介する。2021年に葵コンサルタントへ入社した新人社員 森川 友博氏だ。
新人といっても、森川氏は約1年前まで岡崎市役所の技術職員として在籍し、発注者として地域の土木事業に携わっていた。
周辺地域では、まだまだi-Constructionの普及を実感することは少なかったが、最新技術を使いこなす全国各地の土木技術者との出会いが刺激となり、いつしか「現場からICTを普及させて、この岡崎市を変えたい!」と、強く考えるようになったそうだ。そして、意を決して市役所を退職。現在は葵コンサルタントに在籍している。
葵コンサルタントは、創業55周年を迎える地元の老舗建設コンサルタント企業で、主に公共土木工事における調査・点検、測量・設計・計画業務などを担っている。長い歴史の中で多様なノウハウを積み重ねてきた一方で、まだまだ業務のICT化は進んでいないそうだ。
今回のデモンストレーション会で、ICT活用を指南するのは、建設業界に特化した技術支援や人材派遣サービスを展開する「株式会社ライズ」の営業部課長 袴田 靖貴氏、人材開発部研修係長 市川 紗也氏、研修チーム主任 井上 真美氏の3名(以下、敬称略)で、スマホで簡単に測量ができる「OPTiM Geo Scan」のレクチャーがメインとなった。
「OPTiM Geo Scan」を使用してのデモンストレーション会の会場となったのが、こちらの小規模河川現場。
葵コンサルタントが岡崎市から受注した調査現場でもあるこの河川では、東名高速自動車道関連施設の新規建設にあたり、河川の流下能力の検証等を行う必要があり、まずは測量を行い、そのあと本格的な調査に入っていく。
これまで葵コンサルタントでは、TSやGNSSなどを利用した測量を行っていたが、今回は試験的に新しいプロダクト、つまり「OPTiM Geo Scan」を使って測量から3次元モデル化までを行い、実際の業務に活用できるか否かを、社内で検討するそうだ。
現場には、葵コンサルタントの社員数名と、本案件の発注者でもある岡崎市役所の職員も訪れた。
あらためて「OPTiM Geo Scan」について触れておく。スマホ(タブレット)とGNSSレシーバーがあれば3次元測量ができるプロダクトで、測量や土木に関する専門知識がなくても、誰でも簡単に高精度の測量が行える。
2022年4月には国土交通省の出来形管理要領にも準拠した、画期的な測量ソリューションだ。それではデモンストレーション会の様子を紹介していこう。
ライズ市川:この iPhone 13 Proを使って、現場を歩きながら計測していきます。iPhoneの画面上に青色のメッシュが表示されていれば、正常に点群が計測できている証拠です。あとは、こちらのGNSSレシーバーを使い、標定点を逐一、設定していきます。iPhoneの画面上でGNSSレシーバーをタップすれば標定点として、この地点に座標データを記録することが可能です。
ライズ市川:計測を終えるときは、標定点の設定時と同じ方法で、位置情報のズレを補正する“検証点”を設定し、「完了」をタップするだけ。すると、計測した点群が自動で3次元化されます。複数回に分けて現場を計測したとしても、点群には位置情報が座標データとして記録されていますから、複数データをあとからひとつに合成することも可能です。
葵コンサルタント森川:歩きながら測量ができて、その場で3次元化までされるのは、革新的ですね。計測漏れや地形の凹凸などは、この3次元点群データを見ればひと目でわかるので、これまで見逃しがちだった留意点も、その場で気づけそうです。
そして何より、測量スピードがケタ違いで驚きました。従来方式の場合、この規模の現場なら、準備も含めて1ヶ月近くかかります。ですが「OPTiM Geo Scan」であれば、おそらく半日かからずに終えられますよね。点群の処理・加工作業も含めて、1日程度で作業を終えられるかもしれません。
ちなみに河川全域ではなく、たとえばここの断面の面積だけを出したい、という場合は、どのくらい時間がかかりますか?
ライズ市川:測量自体は一瞬で終えられますし、ソフトウェアに取り込んで、面積を出すのも含めても1時間かからないと思います。このiPhoneの画面で青くメッシュになっている部分は、すべて点群データがとれている証拠です。どういった形状なのかは、データをもとにあとから確認できます。
葵コンサルタント森川:それはいいですね。例えば水路の計測の場合、従来は測点を数十メートル間隔で区切り、その箇所だけを測っていました。しかし"面”として全域で点群データを取っておけば、面積を出したい部分だけを切り取ることができるんですね。
ライズ市川:そうですね。測量自体は、専門技術や知識も必要ないので、新人の方に任せることも可能です。私自身文系の出身で、現場経験もゼロなんです。土木分野の知識もあまりありませんでしたが、一回操作を覚えてしまえば、作業の勘所が自然とわかるようになります。
デモンストレーション会はスムーズに進み、およそ2時間で全域の測量作業は終了した。測量の様子を見学していた森川氏以外の葵コンサルタントの社員、そして岡崎市役所職員に感想を聞いた。
「現場を歩きながら、そして地形を確認しながら、測量ができるのはいいですね。草木が茂っているエリアや、凹みがある箇所などを自分の目で確認しながらデータ化できるのは魅力だと感じました。草木が邪魔で地表面の点群データが取りにくい場合も、手で掻き分けるだけで解決するので、ドローンを飛ばすよりも効率化できそうです」(葵コンサルタント技術者)
「測量から断面図を書くプロセスだけでも、かなりの時間がかかるものと考えていたので、目の前でサクサクとデータが完成する様子を見て驚きました。わたし達が行う測量は、どちらかというと精度よりもスピードや簡易さが重視されるので、この簡易性は、大変に魅力的だと感じました」(岡崎市役所 河川課職員)
岡崎市役所職員とはここで別れ、ライズの3名とともに、葵コンサルタントの本社へと向かった。
葵コンサルタント本社では、先程、計測した点群データのチェックと活用法の説明が行われた。ここからはOPTiM Geo Scanの発売元である株式会社オプティム DX事業部 セールス担当の庭野氏も加わった。
まず一同を驚かせたのは、3次元点群データのその緻密さだ。葵コンサルタントの社員たちからは、ここまで高精細に現場を保存できるなら、現場に戻る手間を省けるかもしれない、という声が出ていた。
そして、オプティム庭野氏が、現場で取得したばかりの3次元点群データを、3次元施工データを作成する専用ソフトウェアに読み込み、断面図から勾配の斜度や距離を割り出す方法などを説明している最中、「OPTiM Geo Scan」に最近搭載されたばかりの新機能「OPTiM Geo Point」についても話が及んだ。
「OPTiM GeoPoint」とは、XYZ座標をピンポイントで計測(GNSS測量)できる新機能だ。つまり、従来の「OPTiM Geo Scan」が"面で全域を計測”していたのに対し、「OPTiM Geo Point」を活用すれば、"点で任意の場所だけ”を計測できるようになるのだ。
そしてもうひとつの新機能である「杭打ち」を活用すれば、OPTiM Geo Scanに登録した目標地点まで誘導してくれる。これまで専用の機器が必要だったのが、スマホで簡単にできるようになるのだ。
この2つの新機能に、葵コンサルタントの社員のみなさんはとくに大きな関心を寄せていた。図面や資料に示された座標データをもとに、現場調査をする機会の多い同社では、たった一つの杭を探し出すのに、多くの時間を費やすそうなのだ。複数の社員を動員し、長時間かけて草木を踏み分けて探すことも珍しくないという。
この新機能を使えば、境界の位置出し、地中埋設物の位置確認なども正確に把握できる。
調査の事前準備として必要だった掘削・除草作業などが不要になり、効率化が実現するはずということなのだ。
デモンストレーション会を終えたあと、森川友博氏(以下、敬称略)と新人社員の市川由姫乃氏(以下、敬称略)のお二人にあらためて話を伺った。
―― 今回のデモンストレーション会に参加した感想はいかがでしたか?
森川:OPTiM Geo Scanで作業している様子を目の当たりにして、ここまで簡易化できるのかと驚きました。実は昨年、建設DX展(東京開催の展示会)に参加したんです。
そのときに「OPTiM GeoScan」の存在を知って、仕組みそのものは理解していたつもりだったのですが、実際に自分たちの現場で活用方法をレクチャーしていただいて、その利便性を体感し、より理解を深めることができました。
――以前は発注者側として、土木事業に携わっていたのですよね。
森川:転職の一番の動機は、地元、岡崎市でi-Constructionを広げるためなんです。残念ながら愛知県は、お隣の静岡県さんや他県さんと比較しても、i-Constructionの取り組みは、まだまだ進んでいないのが現状です。市の職員だった時から、なんとかできないものか……ともどかしい気持ちを抱えていたんです。
――市川さんは高校卒業後、2020年春に入社されたんですよね?土木・建設業界が第一志望だったのですか?
市川:はい。以前から大工仕事に憧れがあり、なにかを造る仕事に携わりたいと考えていたんです。でも、高校時代に学んだ測量がすごくおもしろくて。土木・建設業界で測量士として働きたい!と夢を抱くようになり、葵コンサルタントの技術部に就職をしました。
入社してからは、毎日が刺激的です。入社後に測量士補の資格を取得したのですが、正直現場ではまだわからないことばかりです。でも、「OPTiM GeoScan」を使えば、新人の私でも即戦力として現場を担当する機会もあるのでは?と、ひそかにワクワクしました。
あと現在、私はドローンを操縦して測量も行うんです。ドローンだと上空からの測量になりますが、今回の河川現場は周辺に高速道路が走っているので、飛行そのものが難しいエリアでした。「OPTiM Geo Scan」を使えば、高速道路や線路のそばでも、手軽に測量が行えるのでかなり便利になると感じました。
森川:利便性ももちろんですが、大幅に業務の効率化ができると感じました。葵コンサルタントは創業55年。長い歴史のなかで培ってきた多様なノウハウがあります。そこにICT技術が加わることで、より自社の強みを育てていけるのではないかと。
――社歴の長い社員のみなさんの反応も良かったですね。では最後に、葵コンサルタントのこれからを担うお二人の抱負をお聞かせいただけますか?
市川:iPhoneを使って測量ができるなんて、ちょっと前までは想像もできませんでした。今回、新しい測量方法を見させていただいて、この業界で働く楽しみがより増えた気がします。変化を楽しみながら、どんどん経験を重ねていきたいです。
森川: 市川さんはドローンも操縦できるし、「OPTiM GeoScan」や3次元モデリングのソフトウェアも使いこなせるようになれば、すぐに岡崎最強のICT技術者になってしまう逸材なんですよ(笑)。全国各地には現場に新しい風を吹かせる、面白い技術者の方々が多くいらっしゃいます。
私も彼らに追従して、岡崎市を代表するICT技術者として地域を盛り上げられるよう、「現場から変えていく」という志を忘れず、一歩ずつ着実に現場のICT化を進めていきたいですね。
葵コンサルタント株式会社
愛知県岡崎市河原町13番地2
HP:http://www.aoi-con.co.jp/
▼デジコンに会員登録をして、取材で訪れた【小規模河川現場の3次元点群データ(OPTiM Geo Scanで計測)】をゲットしよう!▼
「.las」形式データのダウンロード、ビューワーによる閲覧もできます!
今回、デジコン編集部が訪れたのは、愛知県岡崎市。この街に本社を構える建設コンサルタント企業「葵コンサルタント株式会社」で最新ICT機器デモンストレーション会が実施された。当日は岡崎市の職員も招かれた。
本記事では、会の様子を伝えるとともに、葵コンサルタントの社員や市の職員など、参加者から寄せられた感想などもお届けしていく。
「現場から変える!」i-Con普及のために、発注者から建コン社員へと転身した葵コンサルタント社員 森川友博氏
最初に、このデモンストレーション会開催のきっかけを作ったキーマンを紹介する。2021年に葵コンサルタントへ入社した新人社員 森川 友博氏だ。
新人といっても、森川氏は約1年前まで岡崎市役所の技術職員として在籍し、発注者として地域の土木事業に携わっていた。
周辺地域では、まだまだi-Constructionの普及を実感することは少なかったが、最新技術を使いこなす全国各地の土木技術者との出会いが刺激となり、いつしか「現場からICTを普及させて、この岡崎市を変えたい!」と、強く考えるようになったそうだ。そして、意を決して市役所を退職。現在は葵コンサルタントに在籍している。
葵コンサルタントは、創業55周年を迎える地元の老舗建設コンサルタント企業で、主に公共土木工事における調査・点検、測量・設計・計画業務などを担っている。長い歴史の中で多様なノウハウを積み重ねてきた一方で、まだまだ業務のICT化は進んでいないそうだ。
今回のデモンストレーション会で、ICT活用を指南するのは、建設業界に特化した技術支援や人材派遣サービスを展開する「株式会社ライズ」の営業部課長 袴田 靖貴氏、人材開発部研修係長 市川 紗也氏、研修チーム主任 井上 真美氏の3名(以下、敬称略)で、スマホで簡単に測量ができる「OPTiM Geo Scan」のレクチャーがメインとなった。
「歩きながら測量、瞬時に3次元化」。スマホで簡単に測量できる「OPTiM Geo Scan」で、大幅な効率アップを実感
「OPTiM Geo Scan」を使用してのデモンストレーション会の会場となったのが、こちらの小規模河川現場。
葵コンサルタントが岡崎市から受注した調査現場でもあるこの河川では、東名高速自動車道関連施設の新規建設にあたり、河川の流下能力の検証等を行う必要があり、まずは測量を行い、そのあと本格的な調査に入っていく。
これまで葵コンサルタントでは、TSやGNSSなどを利用した測量を行っていたが、今回は試験的に新しいプロダクト、つまり「OPTiM Geo Scan」を使って測量から3次元モデル化までを行い、実際の業務に活用できるか否かを、社内で検討するそうだ。
現場には、葵コンサルタントの社員数名と、本案件の発注者でもある岡崎市役所の職員も訪れた。
あらためて「OPTiM Geo Scan」について触れておく。スマホ(タブレット)とGNSSレシーバーがあれば3次元測量ができるプロダクトで、測量や土木に関する専門知識がなくても、誰でも簡単に高精度の測量が行える。
2022年4月には国土交通省の出来形管理要領にも準拠した、画期的な測量ソリューションだ。それではデモンストレーション会の様子を紹介していこう。
ライズ市川:この iPhone 13 Proを使って、現場を歩きながら計測していきます。iPhoneの画面上に青色のメッシュが表示されていれば、正常に点群が計測できている証拠です。あとは、こちらのGNSSレシーバーを使い、標定点を逐一、設定していきます。iPhoneの画面上でGNSSレシーバーをタップすれば標定点として、この地点に座標データを記録することが可能です。
ライズ市川:計測を終えるときは、標定点の設定時と同じ方法で、位置情報のズレを補正する“検証点”を設定し、「完了」をタップするだけ。すると、計測した点群が自動で3次元化されます。複数回に分けて現場を計測したとしても、点群には位置情報が座標データとして記録されていますから、複数データをあとからひとつに合成することも可能です。
葵コンサルタント森川:歩きながら測量ができて、その場で3次元化までされるのは、革新的ですね。計測漏れや地形の凹凸などは、この3次元点群データを見ればひと目でわかるので、これまで見逃しがちだった留意点も、その場で気づけそうです。
そして何より、測量スピードがケタ違いで驚きました。従来方式の場合、この規模の現場なら、準備も含めて1ヶ月近くかかります。ですが「OPTiM Geo Scan」であれば、おそらく半日かからずに終えられますよね。点群の処理・加工作業も含めて、1日程度で作業を終えられるかもしれません。
ちなみに河川全域ではなく、たとえばここの断面の面積だけを出したい、という場合は、どのくらい時間がかかりますか?
ライズ市川:測量自体は一瞬で終えられますし、ソフトウェアに取り込んで、面積を出すのも含めても1時間かからないと思います。このiPhoneの画面で青くメッシュになっている部分は、すべて点群データがとれている証拠です。どういった形状なのかは、データをもとにあとから確認できます。
葵コンサルタント森川:それはいいですね。例えば水路の計測の場合、従来は測点を数十メートル間隔で区切り、その箇所だけを測っていました。しかし"面”として全域で点群データを取っておけば、面積を出したい部分だけを切り取ることができるんですね。
ライズ市川:そうですね。測量自体は、専門技術や知識も必要ないので、新人の方に任せることも可能です。私自身文系の出身で、現場経験もゼロなんです。土木分野の知識もあまりありませんでしたが、一回操作を覚えてしまえば、作業の勘所が自然とわかるようになります。
デモンストレーション会はスムーズに進み、およそ2時間で全域の測量作業は終了した。測量の様子を見学していた森川氏以外の葵コンサルタントの社員、そして岡崎市役所職員に感想を聞いた。
「現場を歩きながら、そして地形を確認しながら、測量ができるのはいいですね。草木が茂っているエリアや、凹みがある箇所などを自分の目で確認しながらデータ化できるのは魅力だと感じました。草木が邪魔で地表面の点群データが取りにくい場合も、手で掻き分けるだけで解決するので、ドローンを飛ばすよりも効率化できそうです」(葵コンサルタント技術者)
「測量から断面図を書くプロセスだけでも、かなりの時間がかかるものと考えていたので、目の前でサクサクとデータが完成する様子を見て驚きました。わたし達が行う測量は、どちらかというと精度よりもスピードや簡易さが重視されるので、この簡易性は、大変に魅力的だと感じました」(岡崎市役所 河川課職員)
岡崎市役所職員とはここで別れ、ライズの3名とともに、葵コンサルタントの本社へと向かった。
土量計算、断面図作成など全てがスムーズ。「OPTiM Geo Scan」の新機能にも大きな期待を寄せる
葵コンサルタント本社では、先程、計測した点群データのチェックと活用法の説明が行われた。ここからはOPTiM Geo Scanの発売元である株式会社オプティム DX事業部 セールス担当の庭野氏も加わった。
まず一同を驚かせたのは、3次元点群データのその緻密さだ。葵コンサルタントの社員たちからは、ここまで高精細に現場を保存できるなら、現場に戻る手間を省けるかもしれない、という声が出ていた。
そして、オプティム庭野氏が、現場で取得したばかりの3次元点群データを、3次元施工データを作成する専用ソフトウェアに読み込み、断面図から勾配の斜度や距離を割り出す方法などを説明している最中、「OPTiM Geo Scan」に最近搭載されたばかりの新機能「OPTiM Geo Point」についても話が及んだ。
「OPTiM GeoPoint」とは、XYZ座標をピンポイントで計測(GNSS測量)できる新機能だ。つまり、従来の「OPTiM Geo Scan」が"面で全域を計測”していたのに対し、「OPTiM Geo Point」を活用すれば、"点で任意の場所だけ”を計測できるようになるのだ。
そしてもうひとつの新機能である「杭打ち」を活用すれば、OPTiM Geo Scanに登録した目標地点まで誘導してくれる。これまで専用の機器が必要だったのが、スマホで簡単にできるようになるのだ。
この2つの新機能に、葵コンサルタントの社員のみなさんはとくに大きな関心を寄せていた。図面や資料に示された座標データをもとに、現場調査をする機会の多い同社では、たった一つの杭を探し出すのに、多くの時間を費やすそうなのだ。複数の社員を動員し、長時間かけて草木を踏み分けて探すことも珍しくないという。
この新機能を使えば、境界の位置出し、地中埋設物の位置確認なども正確に把握できる。
調査の事前準備として必要だった掘削・除草作業などが不要になり、効率化が実現するはずということなのだ。
わたしたちがi-Constructionのアイコンに!現場から岡崎市に新しい風を吹かせたい
デモンストレーション会を終えたあと、森川友博氏(以下、敬称略)と新人社員の市川由姫乃氏(以下、敬称略)のお二人にあらためて話を伺った。
―― 今回のデモンストレーション会に参加した感想はいかがでしたか?
森川:OPTiM Geo Scanで作業している様子を目の当たりにして、ここまで簡易化できるのかと驚きました。実は昨年、建設DX展(東京開催の展示会)に参加したんです。
そのときに「OPTiM GeoScan」の存在を知って、仕組みそのものは理解していたつもりだったのですが、実際に自分たちの現場で活用方法をレクチャーしていただいて、その利便性を体感し、より理解を深めることができました。
――以前は発注者側として、土木事業に携わっていたのですよね。
森川:転職の一番の動機は、地元、岡崎市でi-Constructionを広げるためなんです。残念ながら愛知県は、お隣の静岡県さんや他県さんと比較しても、i-Constructionの取り組みは、まだまだ進んでいないのが現状です。市の職員だった時から、なんとかできないものか……ともどかしい気持ちを抱えていたんです。
――市川さんは高校卒業後、2020年春に入社されたんですよね?土木・建設業界が第一志望だったのですか?
市川:はい。以前から大工仕事に憧れがあり、なにかを造る仕事に携わりたいと考えていたんです。でも、高校時代に学んだ測量がすごくおもしろくて。土木・建設業界で測量士として働きたい!と夢を抱くようになり、葵コンサルタントの技術部に就職をしました。
入社してからは、毎日が刺激的です。入社後に測量士補の資格を取得したのですが、正直現場ではまだわからないことばかりです。でも、「OPTiM GeoScan」を使えば、新人の私でも即戦力として現場を担当する機会もあるのでは?と、ひそかにワクワクしました。
あと現在、私はドローンを操縦して測量も行うんです。ドローンだと上空からの測量になりますが、今回の河川現場は周辺に高速道路が走っているので、飛行そのものが難しいエリアでした。「OPTiM Geo Scan」を使えば、高速道路や線路のそばでも、手軽に測量が行えるのでかなり便利になると感じました。
森川:利便性ももちろんですが、大幅に業務の効率化ができると感じました。葵コンサルタントは創業55年。長い歴史のなかで培ってきた多様なノウハウがあります。そこにICT技術が加わることで、より自社の強みを育てていけるのではないかと。
――社歴の長い社員のみなさんの反応も良かったですね。では最後に、葵コンサルタントのこれからを担うお二人の抱負をお聞かせいただけますか?
市川:iPhoneを使って測量ができるなんて、ちょっと前までは想像もできませんでした。今回、新しい測量方法を見させていただいて、この業界で働く楽しみがより増えた気がします。変化を楽しみながら、どんどん経験を重ねていきたいです。
森川: 市川さんはドローンも操縦できるし、「OPTiM GeoScan」や3次元モデリングのソフトウェアも使いこなせるようになれば、すぐに岡崎最強のICT技術者になってしまう逸材なんですよ(笑)。全国各地には現場に新しい風を吹かせる、面白い技術者の方々が多くいらっしゃいます。
私も彼らに追従して、岡崎市を代表するICT技術者として地域を盛り上げられるよう、「現場から変えていく」という志を忘れず、一歩ずつ着実に現場のICT化を進めていきたいですね。
葵コンサルタント株式会社
愛知県岡崎市河原町13番地2
HP:http://www.aoi-con.co.jp/
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WRITTEN by
高橋 奈那
神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。
測量アプリの現在地〜現場で使える?最新事例を紹介
- すべては岡崎市でi-Conを普及させるために。「葵コンサルタント(愛知県)」期待の新人社員が「OPTiM Geo Scan」の実力を体験!
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