コラム・特集
デジコン編集部 2024.11.14
測量アプリの現在地〜現場で使える?最新事例を紹介

【四国地整 / 日建連 / 姫野組(徳島)】合同で『インフラDX 現場見学会』開催! 〜 施工現場を会場にICTの魅力伝える。3D建設プリンターや配筋検査システム、1人測量アプリ等が出展 〜

四国地方整備局は、2024年7月26日(金)に、「建設DX技術活用モデル工事(インフラDXモデル工事)」において、最新の建設DX技術を体験できる「現場見学会」を開催した。     この現場見学会は一昨年度(愛媛県)、昨年度(高知県)も実施されており、今年度(徳島県)で3回目の開催となる。






今回の現場見学会は「一般社団法人日本建設業連合会(日建連)」さらには、「株式会社姫野組(徳島県)」協力のもとで、徳島県阿南市で建設中の「四国横断自動車道(徳島県阿南市下大野町/「県道22号阿南勝浦線」の北側)」を会場として、四国全域の建設会社や徳島県内公共工事発注者らが招かれた。


四国地方では、高齢化が全国平均よりも10年早いと言われており、建設業の担い手の確保が喫緊の課題となっている。

若手技術者の確保・育成が不可欠であるが、現状ではこの領域での人材不足が深刻化している。このため建設業界では、生産性向上を目指した最新技術の導入が急務とされている。

(開会セレモニーの様子)

「インフラDXモデル工事」は、こうした背景から地域の建設事業者が最新のデジタル技術を積極的に活用し、現場の生産性と安全性の向上を図る取り組みであり、地域全体の業界の未来を切り拓く重要なプロジェクトという位置づけになっている。


今回の見学会においても、建設事業者らに対して、生産性向上や業務効率化に大きく寄与する最新技術を「知って」「見て」「触れて」もらうことで、自社内で抱える人材不足や長時間労働などの課題を解決する契機になってほしいという狙いから企画された。

さらに翌7月27日(土)には、地元の小学生とその保護者たちを招いて「建設DX参観日」も開催された。








前日出展の最新技術を、地元の子どもたちと保護者に体感してもらうことで、子どもたちには「建設業の魅力や面白さ」を知ってもらい、保護者らには「3K」といった建設業に対するネガティブなイメージから、「希望が持てる」「休暇がとれる」「給与が良い」「かっこいい」という「新4K」のポジティブなイメージに変わってほしいという、四国地整の想いのもと、この「建設DX参観日」が開催された。 

 1日目『インフラDX 現場見学会』レポート


まずは、今回の見学会会場にもなっている「四国横断自動車道」の施工現場でも実際に導入されている2つの技術「1. AI配筋検査システム(鹿島建設 / 三菱電機エンジニアリング)」「2.点群データを活用した構造物の施工管理(不動テトラ)」について。  

 
  • 「1. AI配筋検査システム(鹿島建設 / 三菱電機エンジニアリング)」
    ステレオカメラとタブレットを使用して、コンクリート構造物の配筋を自動で検査する製品だ。鉄筋の径、間隔、本数を瞬時に自動計測できるため、検査作業の省力化とヒューマンエラーの削減が期待される。
 
  • 「2.点群データを活用した構造物の施工管理(不動テトラ)」
    不動テトラが提供するこの技術は、3次元点群測量を使用して、構造物の施工管理を行う。机上での出来形計測が可能となり、従来の写真管理を大きく省力化。本見学会では、既設橋台の寸法を実物と点群データで比較するデモが行われた。




その他にも、四国技術事務所からの出展で「VR体験・空間再現ディスプレイ」 「フライトシミュレーター」 「パワーアシストスーツ」の実演や姫野組が招いた7つの技術が実演・体験のブースを出展した。以下にその技術を紹介していく。

  • 「3. Smart Construction Dashboard(コマツカスタマーサポート)」
    Smart Construction Dashboardは、現場の進捗状況を高精度にデジタルツインで再現する技術。これにより、どこからでも施工の進捗をリアルタイムで把握することが可能となる。

  • 「4. 電動建機による工事現場の電動化と省力化(喜多機械産業)」
    国土交通省は、施工現場における電動建機の普及を促進するため、電動油圧ショベルやホイールローダーに対してGX建設機械認定制度を開始している。本ブースでは、喜多機械産業による電動バックホウのデモンストレーションが行われた。

  • 「5. 電動ねこ車「E-cat-kit 2」(仙台銘板)」
    人力作業が多い建設現場では、省力化が課題となっている。電動ねこ車「E-cat-kit 2」は、実労働の負担を軽減する技術として紹介された。





 
  • 「6. AR締固め管理システム(イクシス)」
    イクシスが開発・提供するAR締固め管理システムは、コンクリート打設時の締固め作業についてAR技術を用いて管理するシステム。これにより、作業の効率化と精度の向上が期待されている。
 
  • 「7. 四足歩行ロボット(鹿島建設)」
    鹿島建設の四足歩行ロボットは、現場の巡視や工事の進捗管理、安全管理に役立つ最先端技術。業界内ではお馴染みの四足歩行ロボットだ。

  • 「8.新たな働き方の提案(一般社団法人建設ディレクター協会)」
    建設ディレクターとは、ITとコミニュケーションスキルで現場を支援する新しい職域のことで、建設ディレクター協会が提唱している。

    工事施工に係るデータの整理及び処理、提出する書類の作成やICT業務等を行い、専門スキルを身に着け、現場とオフィスをつなぎ・支援することで、技術者が品質管理や技術の継承などに集中する環境を創出していく。
 
  • 「9. 建設用3DプリンターPolyuse)」
    スタートアップ企業Polyuseが開発する「建設用3Dプリンター」は、モルタルを積層造形して構造物を形成する。この技術を使用することで、型枠なしで自動的にモルタルを成形することが可能になる。


    従来の現場打ちコンクリート工法では、型枠を設置してその中にコンクリートを流し込み、硬化を待つ必要があった。

    しかし、ポリウス独自の建設用3Dプリンターはこの工程を根本から見直し、型枠を使わずに直接モルタルを積み上げることで構造物を形成する。これにより、型枠設置や解体といった手間のかかる作業が不要になり、コスト削減と工期短縮が可能になる。


    さらに、この技術は設計の自由度を大幅に向上させる。複雑な形状や従来の工法では難しかったデザインを、3Dプリンターを用いて容易に実現できるため、建設現場でのクリエイティブな設計にも対応できる。

    また、現場での作業が機械化されることで、作業員の労働負荷が軽減され、施工の安全性も向上する。

来場者の注目を集めた1人測量アプリ「OPTiM Geo Scan」。展示ブースには人だかりも!


そして今回の見学会で、来場者から特に注目を集めていたのが、オプティムの1人測量アプリOPTiM Geo Scan(以下、Geo Scan)」の出展ブースであった。


この技術は、LiDARスキャナ付きのモバイル端末(iPhone/iPad Pro)を活用した測量アプリで、誰でも簡単に高精度な測量ができることが特徴である。

特に、起工測量中間測量、出来形管理測量、法面測量はもちろん、仮設工や準備工など、センチ精度で十分なあらゆる測量業務を、単点、2次元、3次元測量で柔軟に対応できる点が大きな魅力だ。

さらに、測量データを用いて、距離・面積・体積/容積、縦横断図などの業務アウトプットまでスマホ1つでできてしまう。







 
測量士の資格や専門知識が不要で、スマホと別売のGNSSレシーバーがあれば、一人でも短時間で正確な測量ができる画期的なアプリだ。   その精度は、国土交通省の「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」にも準拠しており、第三者機関の技術検証では±20mmという高い測量精度が確認されており、論文による裏付けがある点も安心だ。








使い慣れたiPhoneという端末を用いて、直感的な操作でGNSS測量(単点の測量)や3次元測量が気軽にできる点、その使い勝手の良さに多くの来場者が興味を示していた。

  以下は、Geo Scanを体験した来場者の感想をいくつか紹介する。

「この見学会で初めてGeo Scanを知りましたが、こういった製品がこれからは測量の主流になっていくんだろうなと、驚いています」(県職員)

「スマホで測量できるというのは、手軽さという面では圧倒的に優れていると思いました」(香川県 建設事業者)


「土量の計算や日々の進捗管理で使うなら、精度も申し分ないでしょうね。これからもっと精度がよくなって構造物などにも使用できたら、もっと魅力的になるだろうと感じます」(香川県 建設事業者)
「日々の現況や進捗管理の測量に、とても役立ちそう」(香川県 十川組 吉田氏 )



「Geo Scanは誰でも使えそうなので、下請けの会社さんに日々の進捗確認の測量をお願いできそう」「導入コストがとても安価でびっくりしました」(徳島県 建設事業者)

「使用料は月額制だが、現場が動かない時は休止できるとのことなので、それはありがたい」(県職員)




「実際に使用してみないと、どの程度現場に適しているかはわからないが、デモを見て業務が効率化されそうだなという期待感は抱きました」(徳島県 建設コンサルタント

「3次元の点群が手軽に取得できるアプリということで、数年前から存在は知っていました。実際に体感してみて、こんなに簡単に座標が紐づいた点群を取得できること知れたので大きな収穫です。本日の内容を早速、社内で共有したいと思います」(発注者支援業務)



さらに、オプティムブースにて「Geo Scan」のデモや説明を行ったオプティム社 セールスの西氏にも、今回の見学会の感想や手応えを伺った。

「イベントが始まった途端、たくさんの方々が集まってくださって、正直、驚きました」(西氏)

「ブースに人だかりができている時間帯も多く、事業者の皆様のICTに対する興味関心の高さを伺い知ることができました」(西氏)


四国地方の建設事業者のICTやDXに関する意識の高さについて言及したオプティム西氏。次いで、「Geo Scan」のどの部分に興味を示していたのかを聞いてみた。

「スマホで簡単に3次元測量ができる点もそうなのですが、一番多かった反響がGNSS測量(単点測量)でした。いわゆる「Geo Point」機能ですね」(西氏)

「このGeo Pointは現場の図面をアップロードして読み込むことで、スマホ上で現場のリアルな位置関係が把握できます。この機能をご紹介した際に、事業者の皆様から、“わざわざ基準点を設置しなくていいのですね!”だとか“スマホだからポケットに入れて現場に持っていけるから気軽ですね”といった良い感想をいただくことができました」(西氏)




「加えて、土量計算の機能も好評でした。OPTiM Geo Scanは、対象物をスキャンすることで、盛土・切土の土量計算やコンクリート量の算出する機能もついているのですが、“土量算出がこんなに簡単にしかも高精度でできるのはありがたい”といった声も伺えました。」


両日ともに天候に恵まれ、晴天の中で開催された「インフラDX 現場見学会」「建設DX参観日」は、多くの参加者にとって貴重な学びの場となっていた。

とくに地元建設事業者にとっては、これらの技術が現場でどのように活用できるかを具体的にイメージする良い機会になっていたようだ。




2日目 『建設DX参観日』フォトギャラリー




ドローンで記念撮影を行う)

(オプティムブースでスマホ測量アプリを体験)




































取材・編集・文:デジコン編集部 寺門 常幸 / 撮影:斎藤 葵
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デジコン編集部

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