コラム・特集
加藤 泰朗 2024.3.21
測量アプリの現在地〜現場で使える?最新事例を紹介

中小規模だけじゃない! 国交省直轄「大規模現場の出来形管理」で OPTiM Geo Scanが大活躍! ~ 北海道から建設DXを進める「玉川組」の熱き挑戦 ~

今回デジコン編集部が訪問した玉川組は、北海道札幌市の南東、恵庭市に本社を構える総合建設会社。

1963年設立という歴史をもち、従業員数は125名。クライアントの事業や生活サービスをサポートする企画・提案・施工・メンテナンス・リニューアルを展開している。

2014年ごろから事業のICT化を積極的に進め、2021年度i-Construction大賞の工事・業務部門で、優秀賞を受賞。2022年からOPTiM Geo Scanの年間契約を結び、さまざまな現場での活用を進めている。

(写真:玉川組提供)

その一つである北海道江別市での道路改良工事の事例を中心に、OPTiM Geo Scanを実際に使用して感じた手応えと、今後の活用の可能性について、玉川組 取締役 技術部長・竹樋満寛(たけひ・みつひろ)氏と、建設部技術課の藤谷恵音(ふじや・けいん)氏にお話をうかがった。


現場で操作をしてみて、OPTiM Geo Scanの利便性をすぐに実感


「要求精度が±50mmの土工に関しては、あらゆる現場でOPTiM Geo Scanを使えると思っています」。技術部長の竹樋氏は、そう力強く語った。

(玉川組 取締役 技術部長・竹樋満寛氏)

今回メインでお話をうかがう北海道江別市での道路改良工事以外にも、石狩川の「築堤盛土工事」や「空港駐車場の路床工事」でOPTiM Geo Scanを使用した実績を踏まえての発言だ。

竹樋氏が3次元スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」の存在を知るきっかけとなったのが、某建設ITジャーナリストのブログ記事。

そのブログ内で「OPTiM Geo Scan」に言及している記事を見て興味を覚えた竹樋氏は、普段から取引のある建設・測量システムや測量機器等の販売代理店・株式会社岩崎(以下、岩崎)に相談したところ、岩崎の取扱商品であることがわかり、すぐにオプティムを交えて現物を見せてもらうことになった。

(写真左:玉川組 建設部 技術課 藤谷恵音氏)

オプティムとの打ち合わせには、竹樋氏のほかに、若手技術者の藤谷氏も同席した。二人とも最初は「全然わからなかった」と話す。「デバイスは普段使っているスマホを使用するので、手にとりやすいという印象でした。ただ、どういうことができるソフトなのかは、すぐには理解できませんでしたね」(藤谷氏)。

そこで二人は当時、玉川組が並行して手掛けていた岩見沢処理場の現場に3次元スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」を持ち込み、実際に測量して、使い勝手を確認することにした。


使い始めてすぐに「これならばさまざまな業務で使える」と実感したという。

「現場にはベンチマークがなく、まだ起工測量も始まっていません。その環境でOPTiM Geo Scanで現地をスキャンして、図面との整合性を確認したところ、測量データと図面がほぼ一致することがわかりました。また、目の前にある木の高さはどのくらいだろうかということもOPTiM Geo Scanならば簡単にわかる。「これはすごい、実務に使える!」とすぐに確信しました」(竹樋氏)。

2022年4月に1年契約を結び、玉川組でのOPTiM Geo Scanの運用が始まった。折しも2022年3月31日、国土交通省が「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」を改定。

新たに公共工事での3次元計測機器として簡易なモバイル端末の使用が認められ、OPTiM Geo Scanが同要領に準拠していることも、使用を決断する後押しになった。


これが3次元スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」の真骨頂!

「工事完了の現場からすぐに出来形測量」で工期を大幅短縮

今回お話をうかがったのは、北海道開発局が発注者となって2022年6月にスタートした、道路本線横の「路体外盛土工事※(防雪・風用の松と柵)」。約8000㎥の路体外盛土の出来高・出来形管理に「OPTiM Geo Scan」を使用した。


小・中規模というよりは、どちらかという大規模の現場で、最初は自社で所有するUAV(無人航空機/ドローン)による測量を検討していたが、竹樋氏は方針を転換し、3次元スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」を使うことを決めた。


「UAV測量は準備や後処理などに時間がかかります。現場からは短期間で測量を終わらせたいとの希望があり、OPTiM Geo Scanを使うことに決めました。OPTiM Geo Scanならば、現場でスマホをかざして、スキャンするだけで、すぐに縦横断図の作成や出来形管理(ヒートマップ)の作成に移行できますので」(竹樋氏)。

実際に大幅な作業効率化につながった。通常、この規模の現場でUAVを使うと、標定点の設置作業に1日/人、飛行測量に2人がかりで1日はかかる。







これを3次元スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」を使うことで、1人で半日程度で終わらせたという。

「今回の現場は1スパン300m、合計4スパンに分かれていました。OPTiM Geo Scanで1スパンをスキャンするのに約1時間、4スパンでも4〜5時間くらいで終わりました。最初はもっとかかると思っていましたが、ほぼふだんの歩行ペースくらいでデータの収集ができました」(藤谷氏)。











測量後、3次元データを即クラウドへアップロード

現場から離れた事務所ですぐに図面作成を遂行!


短縮できたのは測量時間だけではない。これまでは現場で収集したデータをUSBなどで事務所に届けていたが、3次元スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」ならば、測量後すぐに現場から3次元点群データをクラウドにアップロードできる。




測量を終了したことを電話やチャットで伝えるだけで、離れた事務所にいる別の技術者がすぐに帳票データ作成作業にとりかかることができたという。

また藤谷氏は、今回の現場では、測量前に現場でキャリブレーションをとって±50mm以内の精度であることを確認しながら進めた。そのためOPTiM Geo Scanでの測量結果も「精度にまったく問題ない」とあらためて確信したという。


竹樋氏も「歩きながら測量するので、正直、もう少し精度にバラつきがでるかなと思っていましたが、確実に±50mm以内の精度になっていたため、期待以上でした。藤谷さんの腕が上がったのかもしれませんね」と笑みを浮かべて振り返った。







※:本線盛土(路体盛土)外の押え盛土、または法尻部の滞水解消、残土処理等を目的に行う盛土(国土交通省北海道開発局 資料よりhttps://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/u23dsn0000000e8k-att/u23dsn0000000ebl.pdf)


土量算出やGNSS測量、座標位置の確認など。どんどん広がるOPTiM Geo Scanの可能性


「OPTiM Geo Scan」は幅広く活用できると確信する竹樋氏。実際に玉川組では、先述以外にもさまざまな場面で3次元スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」を使用している。

たとえば、維持工事。大雨で路面の表土が流出した際に、現状の点群データと、流出前の現場の点群データと比較し、流れ出た土量を算出するのにOPTiM Geo Scanを使用したと話す。


「レーザースキャナでも同じことができますが、機器を自社で所有していないとすぐに使用できないし、そもそも機器が高額です。基準点がないと使えないという弱点もある。その点、OPTiM Geo Scanはスマホを使って簡単に測量でき、基準点も不要。緊急を有する場面でGPSが利用可能な場所ならば、いろいろ使い方ができるのではと試しています」(竹樋氏)



ほかにも、基準点のないゴルフ場での暗渠の位置出しや、土工工事で数点だけ座標位置を確認するのに、OPTiM Geo Scan内の無料機能「OPTiM Geo Point」(GNSS測量が可能)を活用しているという。

さらに竹樋氏は、今後機会があれば、地下埋設物の試掘調査にOPTiM Geo Scanを活用したいと話す。

「以前、別のソフトを使って試掘調査をしたことがあります。ただ写真表現は綺麗でしたが、測量した位置情報が世界測地とリンクしていないため、使い勝手があまりよくないと感じました。OPTiM Geo Scanには点群の密度を調整できる高密度モードがあるので、解像度の問題もクリアできる。十分に使用可能だと思います」(竹樋氏)。




藤谷氏が「操作が簡単で、ゲーム感覚で使えて、楽しい」と語るOPTiM Geo Scan。インタビューの最後に竹樋氏は、ほかの社員にもその利便性を積極的に伝えていきたいと語った。

さらに多くの社員が使用することで、新たな気づきが生まれる。玉川組のOPTiM Geo Scanの活用方法は、まだまだ広がりそうだ。





(写真:玉川組提供)

(写真:玉川組提供)






株式会社 玉川組
本社:北海道恵庭市相生町4-6-30
TEL:0123-33-1133(代表)
HP:https://tamagawagumi.co.jp

【取材協力/OPTiM Geo Scan担当代理店】
株式会社 岩崎
本社:北海道札幌市中央区北4条東2-1
TEL:011-252-2000
HP:https://www.iwasakinet.co.jp/


取材・編集:デジコン編集部 / 文 :加藤泰朗 / 撮影:砂田耕希
印刷ページを表示
WRITTEN by

加藤 泰朗

人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、2019年独立。フリーランスとして、書籍・雑誌・Webで編集・ライティングに従事。難しい内容をわかりやすく伝えることを大切にしています。
測量アプリの現在地〜現場で使える?最新事例を紹介

建設土木の未来を
ICTで変えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を案内するメールマガジンが購読できるほか、会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。