コラム・特集
國廣 愛佳 2024.6.14

点群データは何に利用できる? 〜 土木分野編 〜【測量のことイチから解説】

土木・建設の現場で進むICTの活用。国土交通省測量から維持管理まであらゆるプロセスにICTを取り入れる「i-Construction」を推進しており、建設生産システムの向上、魅力ある建設現場づくりを目指した取り組みが行われている。

設計や施工に携わるなら、活用の幅が広く、手軽に導入できる「点群データ」による3次元(3D)化を理解しておきたいところ。

今回は、土木分野での点群データの利用例について詳しく見ていく。

土木の現場で利用できる点群データは4ステップで取得!


ICT土木において、工事の効率化や省力化を図るために重要なのが、3Dでの地形把握とデータ化。

3Dデータがあれば、設計の段階で正確な土量を算出したり、検測や施工を最小限の回数で終えることができる。施工後の地形を3Dデータ化すれば、構造物の維持管理にも役立つ。


点群データの利点は、森林や河川、街といった広範囲に及ぶものと、橋梁や道路、工事の一部箇所のように狭い一部分の両方を測量し、高い再現度で3次元(3D)化することができることだ。

さらに、データの取得方法にはレーザー光線や音波、写真撮影があり、多様な土木現場に対応できる。

まずは、土木分野での利用を想定した作業の流れを紹介する。ここでは、ドローン(無人航空機、UAV)にデジタルカメラを搭載し、点群データを取得する流れを見ていく。


<ドローンによる点群データの取得から3次元(3D)モデル生成までの流れ>

  1. 空中写真データ取り込み
    撮影したデータをソフトウェアに取り込む
  2. 標定点・検証点の登録
    計測する土地や構造物などに設置した各点の3次元(3D)座標値を登録する
  3. 点群データ生成
    3次元(3D)形状復元計算を行い、精度を確認する
  4. 3次元(3D)モデル作成
    アウトプットデータとしてオルソ画像(正射変換により対象物の形状や位置のズレをなくした画像)やDSMデータ(地表面とその上にある対象物の標高を示した3次元データ)を作成する


点群データはこのように非常に簡潔な工程で取得することができる。

ただし、土木分野で点群データを利用する場合、3次元(3D)土量算出機能やi-Construction出来形管理票などの出力機能が必要となることに留意が必要だ。

国土交通省 国土地理院「オルソ画像について」https://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa40002.html

点群データから橋梁の復元図を作成

例として、橋梁の点検と復元図作成の流れを詳しく見ていこう。

長さ2m以上の橋梁は全国に約70万橋あるといわれているが、2012年以前には設計図面を5〜10年で廃棄していた。




そのため、定期点検の際に損傷箇所などを記録する図面や、補修設計・耐震補強設計を行う際にベースとする図面がなく、復元図を作成することが必須。

復元図には、形状や曲線、斜角の概形が一致していること、桁本数や寸法の整合性が求められる。そのため、精度の高い3次元(3D)モデル化を実現できる点群データが各地で活躍している。

地上にレーザースキャナを設置し、橋梁の点群データを取得、3次元(3D)モデル化する作業の流れは次の通りだ。

地上型レーザースキャナによる橋梁3次元(3D)モデル化の流れ>

  1. 計測計画の立案
    既存資料を入手し情報を得た上で、計測対象範囲を把握する
  2. 現地踏査・基準球の配点
    計画に基づいて現地踏査を行い、計測時にターゲットとなる基準球を設置する
  3. 現地計測
    地上レーザースキャナで複数箇所から計測する
  4. 計測データの合成
    基準球をもとに合成処理を行い、計測した点群の相対位置を合わせる
  5. 合成データ確認・ノイズ除去
    合成処理が適切か確認し、車両や人といった不要なノイズデータを除去する
  6. 復元図の作成
    点群データをもとにCADソフトなどを用いて復元図を作成する



土木分野で点群データを利用する場合の課題とは?


地上レーザースキャナを用いた橋梁の計測には課題もある。例えば、橋桁の内部など、複数箇所から計測してもレーザーが当たらない部分がどうしても発生してしまう。

補修設計などでさらに正確な再現度が求められる場合には、ドローン(無人航空機、UAV)による計測などを行い、データの欠損部分を補うことが必要だ。


また、トンネルの計測でも点群データは活用されているが、暗いトンネル内では撮影に十分な光量が得られない場合があるため、ライト点灯専用の車両を用意する必要があるなど、大掛かりな準備とコスト増加が避けられない。

最近では、可搬型MMS(Mobile Measurement System)を利用して、デジタルカメラとレーザースキャナを搭載した車両でトンネル内を走行しながら計測する事例も増えてきている。

土木の現場で点群データを利用する際には、目的に沿って、コスト、精度、作業効率や指導のしやすさなどの面で最適な計測方法を選択することが大切だ。

低コストで高精度&手軽な測量をするなら、iPhoneアプリ「OPTiM Geo Scan」がオススメ!!


森林や河川、街全体、橋梁、道路、工事の一部箇所などで、準備に必要な業務負担とコストを減らし、3次元(3D)測量をスピーディーに実行するなら、土木・建設に特化した測量アプリOPTiM Geo Scan」がおすすめ。


高い精度が求められる土木・建設、インフラの測量現場で、多数のゼネコンや中小規模の建設会社が導入している実績あるアプリだ。

iPhone 12 Pro / Pro MAX以降の機種であれば、誰でも簡単に高精度3次元測量ができる本格的なスマホ測量アプリだ。

(画像:shutterstockより)

OPTiM Geo Scanは、LiDARセンサーを搭載したiPhoneと、GNSSレシーバーが取得した位置情報を組み合わせて測量する。

特徴は、対象をアプリでスキャンするだけという手軽な操作方法。測量の資格や経験がない人でも高精度の測量ができ、長時間の研修を受ける必要もない。


その場ですぐに測量ができるため、常にリアルタイムのデータを取得することが可能だ。

国交省の「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」に準拠しており、起工測量だけでなく、中間出来高測量、出来形測量など多様な工程で利用できるという。

土木・建設、インフラ業界で、手軽で高精度な3次元測量を取り入れるなら、「OPTiM Geo Scan」から試してみてはいかがだろうか。




画像:Shutterstock
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WRITTEN by

國廣 愛佳

創業支援や地域活性を行う都内のまちづくり会社に勤務後、2019年よりフリーランス。紙面やwebサイトの編集、インタビューやコピーライティングなどの執筆を中心に、ジャンルを問わず活動。四国にある築100年の実家をどう生かすかが長年の悩み。

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