コラム・特集
トータルステーション(TS)を使った多角測量(トラバース測量)とは?〜多角測量の方法や特徴、注意点を解説!〜
土木・建設現場の測量で広く使われている「TS(トータルステーション)」。
水平角・鉛直角と距離を測定できるTSは、基準点測量や地形測量、工事測量、出来形管理など、さまざまな場面で利用されている。
そのTSを使った代表的な測量方法の一つが、多角測量である。
では、多角測量とはどのような測量なのだろうか。
この記事では、TS(トータルステーション)を使った多角測量の基本から、測量の手順、閉合・結合・単路線の違い、誤差や注意点まで、測量初心者にもわかりやすく解説していく。
多角測量では複数の測点を線で結び、その線の方向と長さを測定する。
例えば、既知点Aから出発して、
A → B → C → D
と測量を進める場合、それぞれの点で角度と距離を観測する。
得られた観測値を使って計算することで、B、C、Dなどの測点の座標を求めることができる。
このように、複数の測点を結んで測量することから「多角測量」と呼ばれている。
なお、多角測量そのものがTS(トータルステーション)を意味するわけではない。
多角測量はあくまで「測量の方法」であり、TSはその観測に使用する測量機器の一つである。
では、多角測量で使われるTSとは、どのような機器なのだろうか。
従来は、角度を測るセオドライトと、距離を測る測距儀を別々に使用していた。
TSはこれらの機能を組み合わせ、角度と距離を一つの機器で測定できるようにしたものだ。

一般的なTSを使った測量では、測定対象となる点にプリズムを設置し、TSから光を照射する。
プリズムから反射した光を利用して距離を測定するとともに、TSで水平角や鉛直角を観測する。
これらの観測値をもとに計算することで、測点の位置を座標として求められる。
つまり、TSを使えば、
「どの方向に、どのくらい離れた場所に測点があるのか」
を数値として把握できるのである。
TSを使った多角測量では、単純に角度と距離を測ればよいわけではない。
測量の目的や精度に応じて、事前の計画から観測、計算、点検までを適切に行う必要がある。
基本的な流れを整理すると、次のようになる。
まず、
を決める。
公共測量では、測量の目的や必要な精度に応じて、使用する測量方法や機器、観測条件などを定める。
特に基準点測量では、既知点と新点の配置や測量路線の構成が重要になる。

次に、測量の基準となる既知点を確認する。
既知点とは、すでに位置座標などが明らかになっている点のことである。
多角測量では、この既知点を出発点や接続点として利用し、そこから新たな測点の位置を求めていく。
既知点の位置や成果が正しくなければ、その後に求める座標にも影響する。
そのため、使用する既知点の確認は重要な工程である。

TSを測点に据え付ける。
このとき、測量機器を正確に整置し、機器の中心と測点の位置を合わせる。
さらに、器械高など必要な情報を測定する。
TS(トータルステーション)を使って、次のような観測を行う。
測定対象となるプリズムを視準し、必要な観測を行う。
1点の観測が終わったら、次の測点へ移動する。
例えば、
A → B → C → D
という路線を測量する場合、
AからB、BからC、CからDというように順番に観測していく。
それぞれの点で得られた角度と距離をつなぎ合わせることで、測量路線全体の位置関係を求める。
観測した角度や距離を使って各測点の座標を計算する。
多角測量では、観測した値に誤差が含まれる。
そこで、路線を既知点に接続したり、出発点に戻したりすることで、計算上の誤差を確認する。
このとき重要になるのが閉合差である。
理論上は一致するはずの位置や方向が、実際の観測ではわずかにずれる。
その差を確認することで、観測結果が許容範囲に収まっているかを判断する。
多角測量について調べると、
などの言葉が出てくるのに気づくだろう。
これらは路線の形や既知点との接続方法に関係する。
ただし、一般的な解説で使われる「閉合・結合・開放」という分類と、公共測量の作業規程で使われる「結合多角方式・単路線方式」は、完全に同じ分類ではない。ここは混同しないようにしたい。
例えば、
A → B → C → D → A
のように測量する。
出発点と終点が同じになるため、理論上は座標が一致する。
しかし、実際の観測には誤差があるため、計算するとわずかなズレが生じる。
このズレを確認することで、観測結果を点検できる。
閉合多角は、測量路線の内部で閉じた形をつくれるため、観測結果をチェックしやすいという特徴がある。
例えば、
既知点A → 新点B → 新点C → 既知点D
という形だ。
出発点と終点の位置が既知であるため、測量した路線と既知点との関係を利用して観測結果を点検できる。
公共測量の基準点測量では、1級・2級基準点測量は原則として結合多角方式、3級・4級基準点測量は結合多角方式または単路線方式を標準としている。
公共測量では、3級・4級基準点測量において、結合多角方式または単路線方式が標準とされている。
ただし、どの測量でも自由に単路線方式を選べるという意味ではない。
測量の目的、等級、既知点の条件などを踏まえて、適切な方式を選択する必要がある。
開放多角は、測量路線が閉じておらず、出発点や終点の条件によっては十分な点検ができない形の多角測量を指す。
例えば、
A → B → C → D
と進んで、そのまま終わるような路線である。
この場合、閉合多角のように出発点へ戻ることも、結合多角のように既知点へ接続することもないため、観測結果の点検方法には注意が必要になる。
そのため、公共測量の基準点測量では、測量の等級に応じて結合多角方式や単路線方式など、定められた方式を用いることが重要になる。
TS(トータルステーション)は高精度な測量機器だが、測定値に誤差がまったく生じないわけではない。
多角測量では、複数の測点を順番に観測するため、個々の観測誤差が計算結果に影響する可能性がある。
主な注意点を見ていこう。
TSを測点に設置するとき、機器の中心と測点が正確に一致していなければ、観測結果に影響する。
そのため、整準や求心を正確に行う必要がある。また、三脚が不安定な状態では、観測中に機器が動いてしまう可能性もある。
TSによる測量では、器械高や反射鏡高などの値も重要になる。これらの入力値を誤ると、特に高さ方向の計算結果に影響する。
公共測量の基準点測量では、器械高、反射鏡高、目標高をミリメートル単位まで測定することが定められている。
プリズムを正確に視準できていなければ、角度や距離の観測にも影響する。
自動追尾機能を搭載したTSでは、プリズムを自動的に追尾することで作業を効率化できるが、機器の設置状態や視通など、現場条件が観測に影響することは変わらない。
TSによる距離測定では、気温や気圧などの環境条件も関係する。
特に光波による距離測定では、大気の状態によって光の伝搬速度が変化するため、必要に応じて気象補正などを行う。
公共測量の基準点測量でも、距離測定に関する気象補正のため、気温や気圧を測定する規定が設けられている。
ここまで見ると、「TSは高精度なのだから、誤差はほとんどないのでは?」と思うかもしれない。
しかし、測量では誤差を完全になくすことより、どの程度の誤差が生じているのかを把握し、許容範囲内に収めることが重要である。
そのため、多角測量では、
といった工程によって測量結果の品質を管理する。
公共測量の作業規程の準則は、こうした測量の標準的な作業方法や必要な精度を定めるための基準となっている。
TSを使った多角測量には、いくつかのメリットがある。
TSは水平角、鉛直角、距離を一つの機器で測定できる。
測定したデータを利用して座標計算を行えるため、基準点測量など精度が求められる測量で利用されている。
近年のTS(トータルステーション)では、観測データを内部メモリや外部端末などに保存できる機種も多い。
紙の野帳への転記を減らせるほか、測量データを後工程の計算や図面作成などにつなげやすい。
従来型のTSでは、TSを操作する人とプリズムを持つ人の2人以上で作業する場面が多かった。
一方、自動追尾機能を搭載したTSでは、プリズムを自動的に追尾できるため、条件が整えば1人での測量にも対応できる。
ただし、「TSなら必ず2人」「自動追尾なら必ず1人」と単純化することはできない。測量の目的や現場条件、使用機器、必要な作業内容によって必要な人員は変わるだろう。
TSは高精度な測量を行える一方、誰が使っても同じ結果になるというわけではない。
特に注意したいのが、機器の操作だけでなく、測量計画・整置・観測・計算・点検までを適切に行う必要があることだ。
公共測量であれば、適用される作業規程や測量目的に応じた観測条件を確認する必要がある。
また、使用するTSについても、必要な精度を満たしているか、検定や点検が適切に行われているかを確認したい。
ここまで見てきたように、TSによる多角測量は、角度と距離を高精度に観測し、複数の測点の位置関係を求めるための重要な測量方法である。
一方で、近年はGNSSやLiDAR搭載の機器を利用した新しい測量技術も登場している。
ただ、すべての測量をTSから置き換えられるという意味ではない。
重要なのは、測量の目的や必要精度に応じて、適切な技術を使い分けることだ。
例えば、施工現場での位置出しや墨出し、現況の座標取得など、業務によってはスマートフォン(iPhone)を利用した測量という選択肢もある。
その一つが、オプティムの高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」だ。
「OPTiM Geo Scan」は、iPhone ProとGNSSレシーバーなどを活用して、現場の測量を支援するアプリケーションである。

LiDARを搭載したiPhone Pro(iPad含む)を利用して3次元データの取得はもちろん、単点計測にも対応している。
2026年3月には、Geo Scanの単点計測について、ミリ単位の測位精度を実現したとオプティムが発表した。

ミリ精度の実現により、従来は自動追尾型TSなどを利用していた構造物の位置出しや墨出し、施工用基準点の位置出し・復旧などへの活用も可能になっているのだ。
ここで注意したいのが、「TSが古いからスマホ測量に置き換える」という考え方ではない。
基準点測量や高精度な多角測量など、TSが適している領域は現在もある。

一方で、施工現場の位置出しや座標取得など、別の方法でも効率化できる業務がある。
つまり、「どの測量に、どの機器・技術を使うか」という視点が重要なのである。
TSによる多角測量を理解したうえで、自社の現場にスマホ測量を組み合わせられる業務がないかを検討してみるのも一つの方法だ。
水平角・鉛直角と距離を測定できるTSは、基準点測量や地形測量、工事測量、出来形管理など、さまざまな場面で利用されている。
そのTSを使った代表的な測量方法の一つが、多角測量である。
では、多角測量とはどのような測量なのだろうか。
この記事では、TS(トータルステーション)を使った多角測量の基本から、測量の手順、閉合・結合・単路線の違い、誤差や注意点まで、測量初心者にもわかりやすく解説していく。
多角測量とは? TSを使って「点」の位置を求める測量
多角測量とは?
既知点を基準として、測点間の角度や距離を順番に測定し、未知点の位置を求めていく測量方法のこと。
既知点を基準として、測点間の角度や距離を順番に測定し、未知点の位置を求めていく測量方法のこと。
多角測量では複数の測点を線で結び、その線の方向と長さを測定する。
例えば、既知点Aから出発して、
A → B → C → D
と測量を進める場合、それぞれの点で角度と距離を観測する。
得られた観測値を使って計算することで、B、C、Dなどの測点の座標を求めることができる。
このように、複数の測点を結んで測量することから「多角測量」と呼ばれている。
多角測量は「トラバース測量」と呼ばれることもある。
なお、多角測量そのものがTS(トータルステーション)を意味するわけではない。
多角測量はあくまで「測量の方法」であり、TSはその観測に使用する測量機器の一つである。
TS(トータルステーション)とは?
では、多角測量で使われるTSとは、どのような機器なのだろうか。
TS(トータルステーション/Total Station)は、水平角・鉛直角と距離を測定できる測量機器のこと。
従来は、角度を測るセオドライトと、距離を測る測距儀を別々に使用していた。
TSはこれらの機能を組み合わせ、角度と距離を一つの機器で測定できるようにしたものだ。

一般的なTSを使った測量では、測定対象となる点にプリズムを設置し、TSから光を照射する。
プリズムから反射した光を利用して距離を測定するとともに、TSで水平角や鉛直角を観測する。
これらの観測値をもとに計算することで、測点の位置を座標として求められる。
つまり、TSを使えば、
「どの方向に、どのくらい離れた場所に測点があるのか」
を数値として把握できるのである。
TS(トータルステーション)を使った多角測量の基本的な流れ
TSを使った多角測量では、単純に角度と距離を測ればよいわけではない。
測量の目的や精度に応じて、事前の計画から観測、計算、点検までを適切に行う必要がある。
基本的な流れを整理すると、次のようになる。
① 測量計画を立てる
まず、
- どの範囲を測量するのか?
- どの既知点を利用するのか?
- どこに新しい測点を設置するのか?
を決める。
公共測量では、測量の目的や必要な精度に応じて、使用する測量方法や機器、観測条件などを定める。
特に基準点測量では、既知点と新点の配置や測量路線の構成が重要になる。

② 既知点を確認する
次に、測量の基準となる既知点を確認する。
既知点とは、すでに位置座標などが明らかになっている点のことである。
多角測量では、この既知点を出発点や接続点として利用し、そこから新たな測点の位置を求めていく。
既知点の位置や成果が正しくなければ、その後に求める座標にも影響する。
そのため、使用する既知点の確認は重要な工程である。

③ TSを測点に設置する
TSを測点に据え付ける。
このとき、測量機器を正確に整置し、機器の中心と測点の位置を合わせる。
さらに、器械高など必要な情報を測定する。
《 公共測量の基準点測量では? 》
器械高、反射鏡高、目標高をミリメートル単位まで測定することが定められている。
器械高、反射鏡高、目標高をミリメートル単位まで測定することが定められている。
④ 水平角・鉛直角・距離を観測する
TS(トータルステーション)を使って、次のような観測を行う。
- 水平角
- 鉛直角
- 距離
測定対象となるプリズムを視準し、必要な観測を行う。
公共測量の基準点測量では、TSを使用する場合、水平角観測・鉛直角観測・距離測定を1視準で同時に行うことが原則とされている。
⑤ 次の測点へ移動して観測する
1点の観測が終わったら、次の測点へ移動する。
例えば、
A → B → C → D
という路線を測量する場合、
AからB、BからC、CからDというように順番に観測していく。
それぞれの点で得られた角度と距離をつなぎ合わせることで、測量路線全体の位置関係を求める。
⑥ 観測値を計算する
観測した角度や距離を使って各測点の座標を計算する。
《 公共測量では? 》
単純に順番に計算するだけではなく、観測値の点検や平均計算、網平均計算など、測量の種類や等級に応じた処理を行う。
単純に順番に計算するだけではなく、観測値の点検や平均計算、網平均計算など、測量の種類や等級に応じた処理を行う。
⑦ 閉合差などを確認する
多角測量では、観測した値に誤差が含まれる。
そこで、路線を既知点に接続したり、出発点に戻したりすることで、計算上の誤差を確認する。
このとき重要になるのが閉合差である。
理論上は一致するはずの位置や方向が、実際の観測ではわずかにずれる。
その差を確認することで、観測結果が許容範囲に収まっているかを判断する。
多角測量の種類。「閉合」「結合」「単路線」の違い
多角測量について調べると、
- 「閉合多角」
- 「結合多角」
- 「単路線」
- 「開放多角」
などの言葉が出てくるのに気づくだろう。
これらは路線の形や既知点との接続方法に関係する。
ただし、一般的な解説で使われる「閉合・結合・開放」という分類と、公共測量の作業規程で使われる「結合多角方式・単路線方式」は、完全に同じ分類ではない。ここは混同しないようにしたい。
閉合多角とは?
閉合多角とは?
測量路線を一周させ、出発した点に戻る形の多角測量のこと
測量路線を一周させ、出発した点に戻る形の多角測量のこと
例えば、
A → B → C → D → A
のように測量する。
出発点と終点が同じになるため、理論上は座標が一致する。
しかし、実際の観測には誤差があるため、計算するとわずかなズレが生じる。
このズレを確認することで、観測結果を点検できる。
閉合多角は、測量路線の内部で閉じた形をつくれるため、観測結果をチェックしやすいという特徴がある。
結合多角とは?
結合多角とは?
既知点から出発して複数の測点を経由し、別の既知点へ接続する方式である。
既知点から出発して複数の測点を経由し、別の既知点へ接続する方式である。
例えば、
既知点A → 新点B → 新点C → 既知点D
という形だ。
出発点と終点の位置が既知であるため、測量した路線と既知点との関係を利用して観測結果を点検できる。
公共測量の基準点測量では、1級・2級基準点測量は原則として結合多角方式、3級・4級基準点測量は結合多角方式または単路線方式を標準としている。
単路線方式とは?
単路線方式とは?
既知点から出発して、複数の新点を経由し、別の既知点などへ接続する単一の路線として構成する方式
既知点から出発して、複数の新点を経由し、別の既知点などへ接続する単一の路線として構成する方式
公共測量では、3級・4級基準点測量において、結合多角方式または単路線方式が標準とされている。
ただし、どの測量でも自由に単路線方式を選べるという意味ではない。
測量の目的、等級、既知点の条件などを踏まえて、適切な方式を選択する必要がある。
開放多角とは?
開放多角は、測量路線が閉じておらず、出発点や終点の条件によっては十分な点検ができない形の多角測量を指す。
例えば、
A → B → C → D
と進んで、そのまま終わるような路線である。
この場合、閉合多角のように出発点へ戻ることも、結合多角のように既知点へ接続することもないため、観測結果の点検方法には注意が必要になる。
そのため、公共測量の基準点測量では、測量の等級に応じて結合多角方式や単路線方式など、定められた方式を用いることが重要になる。
TSを使った多角測量で生じる「誤差」とは?
TS(トータルステーション)は高精度な測量機器だが、測定値に誤差がまったく生じないわけではない。
多角測量では、複数の測点を順番に観測するため、個々の観測誤差が計算結果に影響する可能性がある。
主な注意点を見ていこう。
TSの整置による誤差
TSを測点に設置するとき、機器の中心と測点が正確に一致していなければ、観測結果に影響する。
そのため、整準や求心を正確に行う必要がある。また、三脚が不安定な状態では、観測中に機器が動いてしまう可能性もある。
器械高・反射鏡高の測定誤差
TSによる測量では、器械高や反射鏡高などの値も重要になる。これらの入力値を誤ると、特に高さ方向の計算結果に影響する。
公共測量の基準点測量では、器械高、反射鏡高、目標高をミリメートル単位まで測定することが定められている。
視準による誤差
プリズムを正確に視準できていなければ、角度や距離の観測にも影響する。
自動追尾機能を搭載したTSでは、プリズムを自動的に追尾することで作業を効率化できるが、機器の設置状態や視通など、現場条件が観測に影響することは変わらない。
気象条件による影響
TSによる距離測定では、気温や気圧などの環境条件も関係する。
特に光波による距離測定では、大気の状態によって光の伝搬速度が変化するため、必要に応じて気象補正などを行う。
公共測量の基準点測量でも、距離測定に関する気象補正のため、気温や気圧を測定する規定が設けられている。
多角測量では「誤差をなくす」のではなく「誤差を管理する」意識で
ここまで見ると、「TSは高精度なのだから、誤差はほとんどないのでは?」と思うかもしれない。
しかし、測量では誤差を完全になくすことより、どの程度の誤差が生じているのかを把握し、許容範囲内に収めることが重要である。
そのため、多角測量では、
- 観測方法を統一する
- 機器を適切に整置する
- 器械高・反射鏡高などを正確に測る
- 必要な観測回数を確保する
- 観測値を計算する
- 閉合差などを確認する
といった工程によって測量結果の品質を管理する。
公共測量の作業規程の準則は、こうした測量の標準的な作業方法や必要な精度を定めるための基準となっている。
TSによる多角測量(トラバース測量)のメリットは?
TSを使った多角測量には、いくつかのメリットがある。
高精度な角度・距離観測ができる
TSは水平角、鉛直角、距離を一つの機器で測定できる。
測定したデータを利用して座標計算を行えるため、基準点測量など精度が求められる測量で利用されている。
観測データを電子的に扱える
近年のTS(トータルステーション)では、観測データを内部メモリや外部端末などに保存できる機種も多い。
紙の野帳への転記を減らせるほか、測量データを後工程の計算や図面作成などにつなげやすい。
自動追尾型なら1人測量(ワンマン測量)にも対応できる
従来型のTSでは、TSを操作する人とプリズムを持つ人の2人以上で作業する場面が多かった。
一方、自動追尾機能を搭載したTSでは、プリズムを自動的に追尾できるため、条件が整えば1人での測量にも対応できる。
ただし、「TSなら必ず2人」「自動追尾なら必ず1人」と単純化することはできない。測量の目的や現場条件、使用機器、必要な作業内容によって必要な人員は変わるだろう。
TSによる多角測量の注意点は?
TSは高精度な測量を行える一方、誰が使っても同じ結果になるというわけではない。
特に注意したいのが、機器の操作だけでなく、測量計画・整置・観測・計算・点検までを適切に行う必要があることだ。
公共測量であれば、適用される作業規程や測量目的に応じた観測条件を確認する必要がある。
また、使用するTSについても、必要な精度を満たしているか、検定や点検が適切に行われているかを確認したい。
「1人測量(ワンマン測量)」という新たな選択肢が登場!
ここまで見てきたように、TSによる多角測量は、角度と距離を高精度に観測し、複数の測点の位置関係を求めるための重要な測量方法である。
一方で、近年はGNSSやLiDAR搭載の機器を利用した新しい測量技術も登場している。
ただ、すべての測量をTSから置き換えられるという意味ではない。
重要なのは、測量の目的や必要精度に応じて、適切な技術を使い分けることだ。
例えば、施工現場での位置出しや墨出し、現況の座標取得など、業務によってはスマートフォン(iPhone)を利用した測量という選択肢もある。
その一つが、オプティムの高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」だ。
スマホで高精度測量を実現「OPTiM Geo Scan」とは?
「OPTiM Geo Scan」は、iPhone ProとGNSSレシーバーなどを活用して、現場の測量を支援するアプリケーションである。

LiDARを搭載したiPhone Pro(iPad含む)を利用して3次元データの取得はもちろん、単点計測にも対応している。
2026年3月には、Geo Scanの単点計測について、ミリ単位の測位精度を実現したとオプティムが発表した。

ミリ精度の実現により、従来は自動追尾型TSなどを利用していた構造物の位置出しや墨出し、施工用基準点の位置出し・復旧などへの活用も可能になっているのだ。
TSとスマホ測量は「どちらか一方」ではない
ここで注意したいのが、「TSが古いからスマホ測量に置き換える」という考え方ではない。
基準点測量や高精度な多角測量など、TSが適している領域は現在もある。

一方で、施工現場の位置出しや座標取得など、別の方法でも効率化できる業務がある。
つまり、「どの測量に、どの機器・技術を使うか」という視点が重要なのである。
TSによる多角測量を理解したうえで、自社の現場にスマホ測量を組み合わせられる業務がないかを検討してみるのも一つの方法だ。
WRITTEN by
建設土木のICT活用など、
デジコンからの最新情報をメールでお届けします
