コラム・特集
【電子基準点網(GEONET)】の強靭化対策とは?災害時も「測量の基準」を守る
建設現場でのGNSS測量や、i-Constructionの要となる「位置情報」。その基準を提供しているのが、国土地理院が管理する全国約1,300点の電子基準点網「GEONET(ジオネット)」だ。
このGEONETが今、かつてない規模で「強靭化(レジリエンス強化)」されていることをご存知だろうか。
日本は地震や台風などの自然災害が多発する国だ。
災害時こそ、地殻変動の監視や復旧活動のための位置情報が必要になる。しかし、過去の災害では停電や通信断絶により、観測データが途切れるリスクがあった。
本記事では、国土地理院が進める「電子基準点網の耐災害性強化」の具体的な中身と、それが建設現場にもたらす安心・安全について解説する。
電子基準点の強化は、単なる設備の老朽化更新ではない。
政府が進める「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和3年度~令和7年度)の一環として位置づけられた国家プロジェクトだ。
(画像元:国土地理院電子基準点WEBページより引用)
激甚化する風水害や、切迫する巨大地震(南海トラフ地震など)。これらが発生した際、広域で長期間の停電が起きても、「測量の基準」と「地殻変動の監視」という2つの機能を絶対に止めない。
そのために、ハードウェアの大規模な改修が全国で行われている。
GEONETは、1996年から国土地理院が運用するGNSS連続観測システムだ。
24時間365日、衛星からの信号を受信し続けており、大きく2つの役割を担っている。
電子基準点網強化は、以下の規模で実施されている。
令和4年度時点で既に643件の対策を完了しており、令和7年度の目標達成に向けて計画通り進捗している。
(画像元:内閣官房 高度強靭化PDF資料より引用)
これは国土交通省が所管する53の対策のうちの1つ「電子基準点網の耐災害性強化対策」として、道路やダムと並ぶ重要インフラの強靭化の一翼を担っている。
電子基準点は、主に以下の要素で構成されている。強靭化対策は、これらの要素それぞれに対して実施されている。
高さ約5mのステンレス製支柱(ピラー)は、堅固な基礎に固定されている。
(画像元:国土地理院 電子基準点とはWEBページより引用)
重要なのが、電気や通信線を引き込むための「引込柱」だ。従来は木製やスチール製が使われていたが、腐食や劣化による倒壊リスクがあった。
今回の対策では、これらをコンクリート製などの高耐久素材に交換。暴風や塩害によるポールの倒壊で、電子基準点自体が機能不全に陥るリスクを最小限に抑えている。
ここが今回の強化の要だ。従来、短時間の停電に対応するバッテリーは搭載されていたが、数日に及ぶ大規模停電には耐えられない場合があった。
(画像元:国土地理院 電子基準点とはWEBページより引用)
今回の対策では、バッテリー等の非常用電源装置を更新・増強。
さらに受信機や通信機器の省電力化も実施し、外部電源が遮断されても従来より大幅に長時間の連続稼働(約72時間以上など)が可能となるよう整備が進む。
台風災害などで電力復旧に時間を要する場合でも、GEONETは生き残り、現地の正確な位置情報を発信し続けることができる。
レドーム内部には、マルチパスの影響を抑える高性能な「チョークリングアンテナ」等が設置されている。
また、通信回線の冗長化により、一部の通信経路が途絶しても、代替ルートでデータ送信を継続できる体制を整備。「観測はできているが、データが中央局に届かない」という事態を防ぐ。
GEONETは、これまで数々の大災害でその真価を発揮してきた。同時に、課題も明らかになっている。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、GEONETが地震学に革命をもたらした。
この実績により、GEONETは世界有数の地殻変動観測網として国際的にも高く評価されている。
2024年1月1日に発生した能登半島地震でも、GEONETは重要な役割を果たした。
しかし、課題も明らかになった。道路の寸断により、一部の電子基準点へのアクセスが困難となり、保守作業に時間を要したケースもあった。
また、長期停電が発生した地域では、非常用電源の容量不足も指摘された。
電子基準点のデータは、以下の方法で建設現場において活用されている。
民間の測位サービス事業者(トプコン、ソキア、Leica、パスコなど)が、GEONETのリアルタイムデータを元に、VRS補正情報を配信している。
これを受信することで、1台のGNSSローバー機でcm級RTK測位が可能だ。
建設現場でのICT施工、出来形管理、起工測量など、日常的に使われているネットワーク型RTKの基盤がGEONETである。
国土地理院の「基準点成果等閲覧サービス」で、全電子基準点の座標値(緯度・経度・楕円体高)を無料で閲覧できる。
スタティック測量の基準点として活用したり、VRS測量の検証に使用したりすることが可能だ。
電子基準点網が強靭化されているとはいえ、現場レベルでも測量の冗長性(バックアップ手段)を持っておくことが重要だ。
ネットワーク型RTK(VRS)は、GEONETのリアルタイムデータを活用する便利な測量方式だが、以下のリスクも存在する。
このような現場レベルの備えと、強靭化されたGEONET、両方を組み合わせることで、真に「止まらない測量」が実現できる。
いくら国がGEONETを強靭化しても、現場でその恩恵を受けるための測量機材が「重くて扱いづらい」「専門知識がないと使えない」ものであっては、災害時や緊急時の迅速な対応は難しい。
そこで今、現場のスタンダードになりつつあるのが、iPhoneのLiDARセンサーと小型GNSSレシーバーを組み合わせた1人スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」だ。

従来の測量といえば、トータルステーション(TS)やなどの測量機を据え付け、熟練の技術者が操作する必要があった。
しかし、Geo Scanは違う。 手持ちのiPhone(またはiPad)とコンパクトなGNSSレシーバーを手に持つだけ。

あとは測りたい対象にカメラを向けて歩くだけで、誰でも直感的に測量ができる。
重機が入れない狭い場所や、足場の悪い被災現場でも、ポケットからスマホを取り出すだけで即座に現況測量が完了するのだ。
電子基準点は、単なる「測量の杭」ではなく、日本の国土を見守る高度なITインフラである。
「非常用電源の大容量化」「引込柱のコンクリート化」「通信回線の冗長化」など、見えない部分で進む強靭化により、GEONETは災害時における最後の砦としての機能を高めている。
建設現場においても、こうしたインフラの進化を理解し、VRS測量やスタティック測量を適切に使い分けることで、より効率的で信頼性の高い測量が実現できる。
最寄りの電子基準点がどこにあるか、国土地理院の地理院地図で一度確認してみてはいかがだろうか。
普段は意識することのない「測量の基準」が、実は身近な場所で日本の安全を支えていることに気づくはずだ。
このGEONETが今、かつてない規模で「強靭化(レジリエンス強化)」されていることをご存知だろうか。
日本は地震や台風などの自然災害が多発する国だ。
災害時こそ、地殻変動の監視や復旧活動のための位置情報が必要になる。しかし、過去の災害では停電や通信断絶により、観測データが途切れるリスクがあった。
本記事では、国土地理院が進める「電子基準点網の耐災害性強化」の具体的な中身と、それが建設現場にもたらす安心・安全について解説する。
1. 国土強靱化5か年加速化対策としての「GEONET」
電子基準点の強化は、単なる設備の老朽化更新ではない。
政府が進める「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和3年度~令和7年度)の一環として位置づけられた国家プロジェクトだ。
(画像元:国土地理院電子基準点WEBページより引用)激甚化する風水害や、切迫する巨大地震(南海トラフ地震など)。これらが発生した際、広域で長期間の停電が起きても、「測量の基準」と「地殻変動の監視」という2つの機能を絶対に止めない。
そのために、ハードウェアの大規模な改修が全国で行われている。
GEONET(ジオネット)とは何か?
GEONETは、1996年から国土地理院が運用するGNSS連続観測システムだ。
24時間365日、衛星からの信号を受信し続けており、大きく2つの役割を担っている。
- ① 測量の基準点として
公共測量や民間の測量において、正確な位置情報の基準を提供する。VRS方式などのネットワーク型RTK測量では、このGEONETの観測データが補正情報として活用されており、ICT施工や出来形管理など、現代の建設現場における「大元の基準」となっている。
- ② 地殻変動の監視
GEONETは1mm単位での地殻変動を捉え続けている。東日本大震災では、宮城県牡鹿半島の電子基準点が5m以上の地殻変動を観測。
この即座のデータが津波予測に活用された。この功績により、GEONETは2019年に日本地震学会技術開発賞を受賞している。「測量インフラ」であると同時に、命を守る「防災インフラ」でもあるのだ。
2. 対策規模:5年間で23億円の投資
電子基準点網強化は、以下の規模で実施されている。
- 対策期間: 令和3年度~令和7年度(5年間)
- 事業費: 約23億円(5か年加速化対策分)
- 目標: 延べ2,000件程度の耐災害性強化対策を実施
- 対象: 全国47都道府県の電子基準点
令和4年度時点で既に643件の対策を完了しており、令和7年度の目標達成に向けて計画通り進捗している。
(画像元:内閣官房 高度強靭化PDF資料より引用)これは国土交通省が所管する53の対策のうちの1つ「電子基準点網の耐災害性強化対策」として、道路やダムと並ぶ重要インフラの強靭化の一翼を担っている。
3. 電子基準点の構造と強靭化のポイント
電子基準点は、主に以下の要素で構成されている。強靭化対策は、これらの要素それぞれに対して実施されている。
① ピラー(支柱)と引込柱
高さ約5mのステンレス製支柱(ピラー)は、堅固な基礎に固定されている。
(画像元:国土地理院 電子基準点とはWEBページより引用)重要なのが、電気や通信線を引き込むための「引込柱」だ。従来は木製やスチール製が使われていたが、腐食や劣化による倒壊リスクがあった。
今回の対策では、これらをコンクリート製などの高耐久素材に交換。暴風や塩害によるポールの倒壊で、電子基準点自体が機能不全に陥るリスクを最小限に抑えている。
② 非常用電源(バッテリー)
ここが今回の強化の要だ。従来、短時間の停電に対応するバッテリーは搭載されていたが、数日に及ぶ大規模停電には耐えられない場合があった。
(画像元:国土地理院 電子基準点とはWEBページより引用)今回の対策では、バッテリー等の非常用電源装置を更新・増強。
さらに受信機や通信機器の省電力化も実施し、外部電源が遮断されても従来より大幅に長時間の連続稼働(約72時間以上など)が可能となるよう整備が進む。
台風災害などで電力復旧に時間を要する場合でも、GEONETは生き残り、現地の正確な位置情報を発信し続けることができる。
③ GNSSアンテナと通信の冗長化
レドーム内部には、マルチパスの影響を抑える高性能な「チョークリングアンテナ」等が設置されている。
また、通信回線の冗長化により、一部の通信経路が途絶しても、代替ルートでデータ送信を継続できる体制を整備。「観測はできているが、データが中央局に届かない」という事態を防ぐ。
4. 災害時のGEONET:実績と課題
GEONETは、これまで数々の大災害でその真価を発揮してきた。同時に、課題も明らかになっている。
東日本大震災(2011年)での貢献
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、GEONETが地震学に革命をもたらした。
- 地震直後の地殻変動を即座に観測: 宮城県牡鹿半島の電子基準点で5m以上の変動を記録
- 震源断層モデルを発震後数分で推定: リアルタイムデータにより、津波予測の精度が向上
- 余効変動を10年以上継続観測: 地震後も続く地殻変動を1mm単位で捉え続けている
この実績により、GEONETは世界有数の地殻変動観測網として国際的にも高く評価されている。
令和6年能登半島地震(2024年)での対応と課題
2024年1月1日に発生した能登半島地震でも、GEONETは重要な役割を果たした。
- 停電発生地域でも多くの電子基準点が稼働を継続:非常用電源により観測データを送信
- 地殻変動により一部の電子基準点が大きく移動:最大で4m近い変動を観測
- 国土地理院は迅速に暫定成果・改定成果を公表:復旧測量の基準として活用された
しかし、課題も明らかになった。道路の寸断により、一部の電子基準点へのアクセスが困難となり、保守作業に時間を要したケースもあった。
また、長期停電が発生した地域では、非常用電源の容量不足も指摘された。
5. 建設現場でGEONETを活用するには
電子基準点のデータは、以下の方法で建設現場において活用されている。
① リアルタイムデータの利用(VRS/NTRIP配信)
民間の測位サービス事業者(トプコン、ソキア、Leica、パスコなど)が、GEONETのリアルタイムデータを元に、VRS補正情報を配信している。
これを受信することで、1台のGNSSローバー機でcm級RTK測位が可能だ。
建設現場でのICT施工、出来形管理、起工測量など、日常的に使われているネットワーク型RTKの基盤がGEONETである。
② 電子基準点成果の閲覧
国土地理院の「基準点成果等閲覧サービス」で、全電子基準点の座標値(緯度・経度・楕円体高)を無料で閲覧できる。
スタティック測量の基準点として活用したり、VRS測量の検証に使用したりすることが可能だ。
6.現場レベルでの測量の冗長性(バックアップ手段)の確保
電子基準点網が強靭化されているとはいえ、現場レベルでも測量の冗長性(バックアップ手段)を持っておくことが重要だ。
VRS方式だけに依存しないリスク管理
ネットワーク型RTK(VRS)は、GEONETのリアルタイムデータを活用する便利な測量方式だが、以下のリスクも存在する。
- 通信障害時にはVRS補正情報を受信できない: 携帯電話回線に依存しているため、通信エリア外では利用不可
- 大規模災害直後は通信インフラが不安定: 基地局の停電や回線の輻輳(ふくそう / 物が一か所に集中して混み合うこと)により、接続できないリスク
- 山間部や離島では電波が届かないエリアも: 地形や距離の制約により、カバー範囲外の現場も存在
現場での対応策
- ① ローカル基準局(現地基準局)の活用
既知点に基準局を設置し、VRSに依存しない測量体制を構築する。特に重要な現場や、通信環境が不安定な現場では有効だ。
- ② スタティック測量による検証
重要な測量では、RTK測量だけでなく、スタティック測量で相互検証を行う。測量成果の信頼性を高めるとともに、災害時の代替手段としても機能する。
- ③ 軽量・機動的な測量機材の配備
災害現場や急傾斜地でも持ち運びやすい小型GNSS受信機を用意しておく。近年では、スマートフォンと連携する小型レシーバーなど、機動性の高い測量ツールも登場している。
このような現場レベルの備えと、強靭化されたGEONET、両方を組み合わせることで、真に「止まらない測量」が実現できる。
7. 測量の常識を変える。iPhone × GNSSレシーバーで実現する1人測量「OPTiM Geo Scan」
いくら国がGEONETを強靭化しても、現場でその恩恵を受けるための測量機材が「重くて扱いづらい」「専門知識がないと使えない」ものであっては、災害時や緊急時の迅速な対応は難しい。
そこで今、現場のスタンダードになりつつあるのが、iPhoneのLiDARセンサーと小型GNSSレシーバーを組み合わせた1人スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」だ。

「測量士」でなくても、誰でも簡単!高精度な測量が可能に
従来の測量といえば、トータルステーション(TS)やなどの測量機を据え付け、熟練の技術者が操作する必要があった。
しかし、Geo Scanは違う。 手持ちのiPhone(またはiPad)とコンパクトなGNSSレシーバーを手に持つだけ。

あとは測りたい対象にカメラを向けて歩くだけで、誰でも直感的に測量ができる。
- iPhoneのLiDAR機能: 対象物の形状(3次元点群データ)をスキャン。
- 小型GNSSレシーバー: 位置情報を取得・補正し、正確な座標を付与し続ける。
重機が入れない狭い場所や、足場の悪い被災現場でも、ポケットからスマホを取り出すだけで即座に現況測量が完了するのだ。
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まとめ
電子基準点は、単なる「測量の杭」ではなく、日本の国土を見守る高度なITインフラである。
「非常用電源の大容量化」「引込柱のコンクリート化」「通信回線の冗長化」など、見えない部分で進む強靭化により、GEONETは災害時における最後の砦としての機能を高めている。
建設現場においても、こうしたインフラの進化を理解し、VRS測量やスタティック測量を適切に使い分けることで、より効率的で信頼性の高い測量が実現できる。
最寄りの電子基準点がどこにあるか、国土地理院の地理院地図で一度確認してみてはいかがだろうか。
普段は意識することのない「測量の基準」が、実は身近な場所で日本の安全を支えていることに気づくはずだ。
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大人気シリーズ!【いまさら聞けない?】測量のことイチから解説 〜 連載記事一覧 〜
- 【電子基準点網(GEONET)】の強靭化対策とは?災害時も「測量の基準」を守る
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