コラム・特集
デジコン編集部 2026.9.8
大人気シリーズ!【いまさら聞けない?】測量のことイチから解説 〜 連載記事一覧 〜

杭ナビショベルとは?〜 杭ナビを3Dマシンガイダンスに活用する仕組みとメリットを解説 〜

CONTENTS
  1. 杭ナビショベルとは? “杭ナビ”をセンサーに使う3Dマシンガイダンス
    1. 3次元設計データ上で刃先を誘導する
    2. システム構成と刃先位置の算出方法
  2. 杭ナビショベルの強み
    1. ローカライズ作業が不要
    2. 小型ショベルにも後付けできる
    3. 上空視界に左右されにくい
  3. 導入前に押さえておきたい制約
    1. LPS方式ゆえに「見通し」は必要
    2. マシンガイダンス(MG)であってマシンコントロール(MC)ではない
    3. NETIS登録情報は最新の掲載状況を確認しよう
  4. 2026年度「導入型ICT活用工事」との関係
  5. 杭ナビショベルとスマホ測量は、どう使い分ければいい?
小規模工事へのICT施工の広がりを背景に、トプコンの「杭ナビショベル」への関心が高まっている。

すでに現場で使っている“杭ナビ”をそのままセンサーに転用できるという設計思想が、この製品を特徴づけている。

杭ナビショベルとは? “杭ナビ”をセンサーに使う3Dマシンガイダンス


《 杭ナビショベルとは? 》
トプコンのレイアウトナビゲーター“杭ナビ”を油圧ショベルの位置情報センサーとして利用する3Dマシンガイダンスシステム(3D MG)であり、製品名は「3D-MG LPS ショベル X-M3x LN」である。

GNSSではなく自動追尾型トータルステーションを基準とするためローカライズ作業が不要で、機械質量6t未満の小型ショベルにも装着できることから、小規模ICT施工の導入手段として活用されている。

3次元設計データ上で刃先を誘導する


杭ナビショベルは、3次元設計データ上でバケットの刃先位置をリアルタイムに表示するシステムだ。

オペレーターは設計面と刃先との差を画面で確認しながら掘削や整形を進められるため、丁張りに頼らない施工が可能になる。


最大の特徴は、位置情報センサーに専用のGNSS受信機ではなく、杭打ちや墨出しで広く使われている“杭ナビ”LN-160/LN-150を使う点にある。

トプコンによれば、現在使用中のLN-160/150をそのままマシンガイダンスのセンサーとして利用できるため、ICT建機導入のハードルを大きく下げられるという。

ただしこの転用にあたっては、LN-160/150のソフトウェアアップグレード(有償オプション)が別途必要になる。

システム構成と刃先位置の算出方法


システムは、杭ナビ本体と三脚、ショベルに取り付ける360°プリズム、機体の姿勢を検出するチルトセンサー、コントローラー、表示用の端末で構成される。



杭ナビはショベルに取り付けた360°プリズムを自動追尾し、そこで得た位置情報と機体側のチルトセンサーなどの情報を組み合わせることで、バケット刃先の座標が算出される仕組みだ。



つまり、杭ナビが測っているのはあくまでプリズムの位置であり、刃先の位置は機体センサーとの組み合わせによって求められている。

なお、センサーとなるLN-160の測定範囲は直径260mであり、トプコンはICT施工から土木の杭打ちまで十分な作業エリアを確保できるとしている。

杭ナビショベルの強み


杭ナビショベルが小規模ICTに向くとされる理由は、大きく三つに整理できる。

ローカライズ作業が不要


トプコンは、GNSSタイプのICT建機で必要となるローカライズ(現地座標変換)作業が杭ナビショベルでは不要であり、杭ナビが使えてショベルが操作できる人であれば誰でも扱える簡便さを備えていると説明している。

専門オペレーターを新たに手配しなくても運用に乗せやすいということであり、人員に余裕のない中小規模の施工体制とは相性がよい。

小型ショベルにも後付けできる


機械質量6t未満の小型ショベルにも装着でき、様々なメーカー・サイズの油圧ショベルに後付けできるため、既存の保有機を活かしたまま導入できる。


オプション対応も進んでおり、スイングブームやチルトローテータに加えてオフセットブームにも対応している。

ブーム途中をオフセットした状態でも先端位置を高精度に計測できるため、壁際や障害物付近といった、小型機が受け持つことの多い施工条件をカバーする。

さらに、バケットの刃先位置を計測して施工履歴データとして記録する機能を備え、リアルタイム施工マネジメントシステム「Sitelink3D」と連携させることで、従来は手作業だった出来形検査を省略する運用も視野に入る。

上空視界に左右されにくい


GNSSを使う方式では、山間部や高い切土斜面、高層建築物の周辺など、衛星の受信環境が悪い現場で精度が安定しないことがある。

杭ナビショベルはトータルステーションを基準とするLPS方式のため、上空視界の影響を受けにくく、山間部や都市部の狭小地、下水道工事といった現場でも運用しやすい。

なお、将来的により大規模の現場に対応する必要が生じた場合は、GNSSタイプのマシンガイダンスおよびマシンコントロールへアップグレードできる拡張性も用意されている。

導入前に押さえておきたい制約


魅力的な選択肢である一方、導入検討にあたって確認しておくべき前提もいくつかある。

LPS方式ゆえに「見通し」は必要


上空視界に強いという利点は、そのまま裏返しの制約を伴う。

トータルステーションがショベル上のプリズムを追尾する方式である以上、器械とプリズムとの間に見通しが確保されていなければ計測が成立しない。

構造物や土工の形状、あるいはショベル自身の姿勢によって視線が遮られる可能性があり、施工範囲や現場条件によっては器械の据え替えが必要になる。

したがって「GNSSが使えない現場だから杭ナビショベル」と短絡するのではなく、その現場で見通しを確保し続けられるかという別の条件を、設置計画とあわせて事前に詰めておく必要がある。

マシンガイダンス(MG)であってマシンコントロール(MC)ではない


次に、杭ナビショベルはマシンガイダンス(MG)であり、バケットを自動制御するマシンコントロール(MC)ではないという点だ。

刃先の位置は画面上に案内されるものの、掘削操作そのものはオペレーターが行う。

自動制御まで求める場合は、トプコンの「X-53x Auto」や「MC-Maxショベル」など、マシンコントロールに対応したシステムが選択肢となる。

これらは杭ナビショベルの直接の上位機種というわけではなく、測位方式も制御機能も異なる別カテゴリーの製品として位置づけられている。

NETIS登録情報は最新の掲載状況を確認しよう


公共工事での活用を想定するなら、NETIS登録の有無も確認しておきたい。

杭ナビショベルで活用される「3Dテクノロジーを用いた計測及び誘導システム」はNETISに登録されており、登録番号は「KT-170034-VE」である。

掲載終了予定年月日については、現在公表されている登録情報では2028年3月31日となっている。

NETIS登録技術の活用は工事成績評定や総合評価方式での加点対象となり得るが、登録情報は更新されるため、実際の運用にあたってはNETIS公式サイトで最新の掲載状況を確認するのが確実である。

2026年度「導入型ICT活用工事」との関係


杭ナビショベルのような小規模向けシステムは、制度面でも後押しを受けつつある。

国交省は2026年度を「i-Construction 2.0躍動の年」と位置づけ、規模に依らないICT施工の普及策として「ICT活用工事(導入型)」を新設した。

この枠組みでは、3次元建設機械を用いる「全面活用型」に加えて、2次元マシンガイダンス建設機械による「ステップアップ型」、ICT建設機械を用いずトータルステーション等のICT機器を活用する「ファーストステップ型」の3類型が用意されている。

ICT施工の未経験企業や、地方自治体発注工事を主に受注する企業を想定した設計だ。

同省は「小規模工事におけるICT活用の手引き」も公表しており、小規模現場での実践方法を示す資料は着実に整いつつある。

ここで注意したいのは、制度上の類型と製品の機能区分は別物だという点である。

杭ナビショベルは3次元設計データを用いる3D-MGであり、2次元マシンガイダンスを想定した「ステップアップ型」とは機能区分が異なる。

実際にどの類型で扱われるかは要領や発注者との協議によるため、制度の枠組みと製品スペックを混同しないよう整理して臨みたい。

いずれにせよ、「まず測量機からICTに触れ、次に建機へ広げる」という段階的な導入経路が制度の側でも想定され始めていることは確かだ。

杭ナビショベルは、日常的に使っている測量機を起点に建機のICT化へ進む選択肢の一つといえる。

杭ナビショベルとスマホ測量は、どう使い分ければいい?


ここまで見てきたとおり、杭ナビショベルは小規模ICT施工の有力な選択肢である。

一方で、ICT施工は建機側だけで完結するものではない。

起工測量、3次元設計データの作成、出来形管理といった前後の工程をどう回すかが、実際の生産性を左右する。

測量工程から着手する場合の選択肢が、OPTiMが提供する高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」だ。


LiDARを搭載したiPhone Pro/Pro MaxシリーズとGNSSレシーバーの位置情報を組み合わせ、対象をスキャンするだけで3次元データを取得できる仕組みで、衛星電波が届かないトンネル内や屋内では杭ナビとの連携にも対応する。



なお、Geo ScanはNETISにもQS-210050-VEとして登録されている。


杭ナビショベル「施工工程のICT化」であるのに対し、Geo Scan「測量工程のICT化」であり、両者はアプローチが異なる。

自社の現場規模や体制、そしてどの工程がいちばんボトルネックになっているかを踏まえて、どこからICT化に着手するかを検討することが重要だ。

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WRITTEN by

デジコン編集部

建設土木のICT化の情報を日々キャッチして、わかりやすく伝えていきます。
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