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トランシット(セオドライト)の水平角観測の誤差について解説!〜 正反観測で消える誤差、消えない誤差 〜
はじめに 〜 水平角観測の精度は「正反観測」に支えられている 〜
トランシット(セオドライト)は、水平角と鉛直角を測定する測量機器である。
現在では距離測定機能を備えたトータルステーション(TS)が主流となっているが、角度を測る基本原理はセオドライトと変わらない。
しかし、どれほど精密な器械であっても、角度観測には必ず何らかの誤差が生じる。
(画像元:NT GEOTECS WEBサイトより引用)器械の構造上避けられないわずかな狂い、整準や据付の不完全さ、目盛盤そのものが持つ誤差など、その原因はさまざまだ。
とはいえ、多くの器械誤差は観測方法を工夫することで打ち消すことができる。
その代表的な方法が、望遠鏡を正位置と反位置の両方で観測し、その平均値を採用する正反観測である。
本記事では、水平角観測で生じる器械誤差を種類ごとに整理するとともに、正反観測によって多くの誤差が消える理由、そして鉛直軸誤差だけが消去できない理由まで、仕組みから解説していく。
誤差の名称・原因・消去法をセットで理解しておけば、実務はもちろん、測量士・測量士補試験の対策にも役立つだろう。
水平角観測で生じる誤差は「自然・過失・器械」の3種類
まずは、トランシット(セオドライト)による水平角観測で発生する誤差の全体像を整理しておこう。
観測誤差は、大きく次の3種類に分類される。
自然誤差
自然誤差とは、観測者や器械ではなく、周囲の環境によって生じる誤差である。
例えば、気温変化による大気の揺らぎや屈折、風による器械の振動、地盤の沈下などがこれにあたる。
完全に防ぐことは難しいが、観測条件を選ぶことで影響を小さくできる。
過失(過誤)
過失(過誤)は、観測者のミスによって生じる誤差である。
目標の視準ミス、目盛の読み違い、記録ミスなど、人為的な原因によって発生する。
十分な確認や適切な観測手順によって防止できる誤差だ。
器械誤差
器械誤差とは、トランシットそのものの構造や調整状態に起因する誤差である。
製造時のわずかな誤差や経年変化、器械調整の不備などが原因となる。
本記事で扱うのは、この器械誤差である。
器械誤差の特徴は、多くの場合、器械の構造や誤差の性質が明らかになっているため、適切な観測方法によって消去または軽減できる点にある。
つまり、「どのような誤差なのか」と「どの方法で消せるのか」を理解しておくことが重要なのだ。
トランシットの「3軸」と、それぞれに対応する3つの誤差
トランシットの器械誤差の中でも特に重要なのが、器械を構成する3つの軸に関する誤差である。

トランシットには、次の3本の基準となる軸が存在する。
- 鉛直軸:器械全体が水平方向へ回転する軸
- 水平軸:望遠鏡が上下方向へ回転する軸
- 視準軸:対物レンズの中心と十字線の中心を結ぶ軸
本来、この3つの軸は一定の幾何学的な関係を保っている。しかし、その関係がわずかに崩れるだけでも、水平角観測には系統的な誤差が生じてしまう。
以下、それぞれの誤差を見ていこう。
視準軸誤差
視準軸誤差とは、視準軸が水平軸と直交していないために生じる誤差である。
視準軸とは、望遠鏡の対物レンズの中心と十字線の中心を結ぶ基準軸を指す。

この軸が水平軸と正しく直交していないと、望遠鏡を上下に回転させた際に視準方向が理想位置からずれ、水平角の測定値にも誤差が生じる。
特に、高い建物や鉄塔など、高度角の大きい目標ほど影響は大きくなる。
この誤差は、望遠鏡を正位置・反位置の両方で観測し、その平均値を採用する正反観測によって消去できる。
水平軸誤差
水平軸誤差とは、水平軸が鉛直軸と直交していないために生じる誤差である。
本来、望遠鏡は鉛直軸に対して直角の水平軸を中心に上下へ回転する。

しかし、この関係が崩れていると、望遠鏡を上下に向けるほど視準方向が理想位置から外れ、水平角に誤差が現れる。
こちらも、高度角が大きい目標ほど影響を受けやすい。
視準軸誤差と同様に、正反観測によって相殺できる誤差である。
鉛直軸誤差
鉛直軸誤差とは、鉛直軸そのものが鉛直方向から傾いているために生じる誤差である。
器械が完全に整準されていない状態では、水平目盛盤そのものが傾いた状態で回転するため、水平角の観測値に誤差が生じる。

この誤差も、高度角が大きい目標ほど影響が大きくなる。ただし、ここが他の誤差との大きな違いである。
鉛直軸誤差は正反観測を行っても消去できない。
望遠鏡を反転させても、傾いているのは器械全体の基準となる鉛直軸であるため、正位置・反位置とも同じ向きの誤差が現れてしまうからだ。
そのため、対処法は観測方法ではなく、器械を適切に調整し、観測時には正しく整準して鉛直軸を鉛直に保つことである。
3軸以外にもある。押さえておきたい器械誤差
トランシット(セオドライト)の器械誤差には、3軸誤差以外にも理解しておきたいものがある。
代表的なのが、偏心誤差、外心誤差、そして目盛誤差である。それぞれ原因も消去方法も異なるため、違いを整理して覚えておこう。
偏心誤差(目盛盤の偏心誤差)
偏心誤差とは、目盛盤の中心と鉛直軸(器械の回転軸)の中心が一致していないために生じる誤差である。
本来、目盛盤は回転軸を中心として回転する構造になっている。

しかし、目盛盤の中心がわずかにずれていると、目盛を読み取る位置にも系統的なずれが生じ、水平角の測定値に影響を与える。
この誤差は、正反観測によって消去できる。
その理由は、正位置と反位置では目盛盤のちょうど180°反対側を読み取ることになるためだ。
偏心によるずれは対向する位置で反対向きに現れるため、両者の平均を取れば相殺される。
このように、偏心誤差は180°対向読取りによって打ち消されると理解しておくとよい。
外心誤差
外心誤差とは、視準線が器械の回転軸の中心を通らず、わずかに偏心しているために生じる誤差である。
回転軸と視準線の位置関係が理想どおりでない場合、目標を視準した際の角度にわずかなずれが生じる。
この誤差も、正位置と反位置では誤差の向きが逆になるため、正反観測の平均を取ることで消去できる。
目盛誤差
目盛誤差とは目盛盤の目盛間隔が完全に均一ではないために生じる誤差である。
これは器械の加工精度や経年変化などによって生じるもので、これまで紹介した器械誤差とは少し性質が異なる。
目盛誤差は、正反観測だけでは完全に消去できない。
そのため、複数回の観測で目盛盤の異なる位置を使用し、目盛の不均一さを平均化することで影響を小さくする。
つまり、目盛誤差は軽減はできても完全には消去できない誤差である。
なぜ「正反観測の平均」で誤差が消えるのか
ここまで見てきたように、鉛直軸誤差と目盛誤差を除く多くの器械誤差は、正反観測によって消去できる。
では、なぜ正位置と反位置の平均を取るだけで誤差がなくなるのだろうか。その理由を見ていこう。
正反観測とは
正反観測とは、望遠鏡を正位置と反位置の両方で観測し、その平均値を採用する観測方法である。

まず望遠鏡を正位置で目標に視準して観測する。次に望遠鏡を反転させ、器械を約180°回転させて同じ目標を反位置で観測する。
この2回を1組として観測し、その平均値を採用することで、多くの器械誤差を打ち消すことができる。
多くの器械誤差は「符号が逆転する」
視準軸誤差や水平軸誤差、外心誤差などは、正位置と反位置で観測すると、同じ大きさで逆向きの誤差として現れる。
例えば、正位置で観測値に「+」の誤差が生じる場合、反位置では同じ大きさの「−」の誤差となる。
そのため、正位置と反位置の観測値を平均すると、互いの誤差が打ち消し合い、真の角度に近い値が得られる。
これが、正反観測によって多くの器械誤差を消去できる理由である。
偏心誤差が消える理由
偏心誤差だけは、少し考え方が異なる。偏心誤差は、誤差の符号が反転するというよりも、目盛盤の180°反対側を読み取ることによって相殺される。
目盛盤の中心が回転軸からずれていても、対向する位置の読みを平均すれば、偏心によるずれは互いに打ち消し合う。
そのため、偏心誤差も正反観測によって実質的に消去できるのである。
鉛直軸誤差だけは消えない
一方で、鉛直軸誤差は正反観測を行っても消去できない。
その理由は、傾いているのが望遠鏡ではなく、器械全体の基準となる鉛直軸そのものだからである。
望遠鏡を反転させても、水平目盛盤は同じように傾いた状態のままであり、正位置でも反位置でも同じ向きの誤差が生じる。
つまり、誤差の符号が反転しないため、平均を取っても打ち消されない。
そのため、鉛直軸誤差を防ぐには、観測前に器械を正しく整準し、鉛直軸を鉛直に保つことが何より重要となる。
おさらい 〜 器械誤差の一覧 〜
ここまで解説した器械誤差を、原因と正反観測による消去の可否で整理すると、次のようになる。
| 誤差 | 原因 | 正反観測 | 主な対処法 |
| 視準軸誤差 | 視準軸が水平軸と直交していない | ○ | 正反観測 |
| 水平軸誤差 | 水平軸が鉛直軸と直交していない | ○ | 正反観測 |
| 鉛直軸誤差 | 鉛直軸が鉛直方向から傾いている | × | 器械調整・整準 |
| 偏心誤差 | 目盛盤中心と回転軸中心が一致していない | ○ | 正反観測(180°対向読取り) |
| 外心誤差 | 視準線が回転軸中心から偏心している | ○ | 正反観測 |
| 目盛誤差 | 目盛盤の目盛間隔が均一でない | △ | 複数位置で観測して平均化 |
一覧にするとわかるように、器械誤差の多くは正反観測によって消去できる。
一方で、鉛直軸誤差は器械の調整・整準によって防ぐ誤差であり、目盛誤差は複数回の観測によって影響を平均化する誤差である。
それぞれの原因と対処法をセットで理解しておくことが、正確な角度観測につながる。
角度観測の考え方も変わる。高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」
ここまで見てきたように、トランシットによる水平角観測では、器械の構造に起因するさまざまな誤差が生じる。
しかし、それらの多くは誤差の性質を理解し、正反観測や適切な整準といった正しい観測手順を実践することで、十分に抑えることができる。
これは、長年にわたって培われてきた光学測量の基本的な考え方であり、現在のトータルステーション(TS)でも受け継がれている。
一方で、近年は測量技術そのものが進化し、角度と距離を積み上げて位置を求める従来の方法とは異なるアプローチも普及し始めている。

例えば、オプティムが提供する高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」は、スマートフォンとGNSSレシーバーを組み合わせることで、高精度な位置座標を取得できる測量サービスだ。
従来のトランシットやトータルステーションのように角度観測を積み重ねるのではなく、衛星測位によって位置座標を直接取得する仕組みを採用している。

同社によると、独自の測量データ処理技術により、単点計測で水平・鉛直方向ともにミリ単位の測位精度を実現。
また、国交省の新技術情報提供システム(NETIS)では、事後評価において最高評価である「VE」を取得している(登録番号:QS-210050-VE)。
測量の目的や現場の条件によって適した手法は異なるが、新しい測量技術を知っておくことは、現場の選択肢を広げることにもつながる。
詳しくは、以下のスGeo Scanペシャルサイトで確認してほしい。
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