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デジコン編集部 2026.7.23
大人気シリーズ!【いまさら聞けない?】測量のことイチから解説 〜 連載記事一覧 〜

レベルによる水準測量の【誤差と消去法】について解説! 〜 視準線誤差・鉛直軸誤差・零点誤差はなぜ消せるのか? 〜

CONTENTS
  1. はじめに
  2. レベルに関する誤差とその消去法
    1. 視準線(軸)誤差
    2. 球差
    3. 気差
    4. 鉛直軸誤差
    5. 三脚の沈下による誤差
    6. 視差による読取誤差
    7. レフラクション(大気の屈折誤差)
  3. 標尺に関する誤差とその消去法
  4. 主要な消去法を紹介
    1. ① 前後の視準距離を等しくする(視準線誤差・球差)
    2. ② 望遠鏡を常に特定の標尺に向けて観測する(鉛直軸誤差)
    3. ③ 標尺の地表面に近い部分を視準しない(レフラクション)
    4. ④ 地盤の堅固な場所にレベルを整置する
    5. ⑤ レベルの整置回数を偶数回にする(零点誤差)
  5. 標尺の傾きによる誤差は、計算で補正できる
  6. 誤差との付き合い方も変わる。高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」という測量の新たな選択肢

はじめに


レベルと標尺による水準測量は、原理そのものは「後視から前視を引く」というシンプルなものだ。しかし、実際の観測には誤差がつきまとう。

器械の内部構造のわずかな狂い、地球が球体であること、大気の状態、標尺の摩耗、地盤の沈下……など。

これらは避けようのない条件でありながら、観測の手順を工夫することでその多くを打ち消すことができる。

水準測量が高い精度を保ってきたのは、この「誤差を消去する技術」が体系化されてきたからにほかならない。

本記事では、水準測量で生じる誤差を「レベルに関するもの」と「標尺に関するもの」に分けて整理し、代表的な消去法がなぜ成立するのかを解説していく。

誤差の種類・原因・消去法の3点をセットで理解しておくことが、実務でも測量士補試験でも役に立つはずだ。

レベルに関する誤差とその消去法


まず、器械側(レベル)に起因する誤差から見ていこう。


誤差の種類 主な原因 消去・軽減の方法
視準線(軸)誤差 望遠鏡の視準線と気泡管軸が平行でない 視準距離(レベルと前後の標尺までの距離)を等しくする
球差 地球が球体であることにより生じる 同上(視準距離を等しくする)
気差 気温変化などで大気密度が変わり、光が屈折する 気温変化などで大気密度が変わり、光が屈折する
鉛直軸誤差 レベルの鉛直軸が傾いている 三脚の特定の1本を、常に同じ標尺に対向させて据え付ける(完全には消去できない)
三脚の沈下による誤差 地盤の弱い場所に三脚を据えたことによる沈下 脚杭や足場で沈下を防ぐ/地盤の堅固な場所に据えかえる
視差による読取誤差 対物レンズと接眼レンズの焦点が合っていない 接眼レンズを調節し、十字線が明瞭に見える状態にしてから観測する
レフラクション(大気の屈折誤差) 地表面に近いほど気温が上がって大気密度が小さくなり、密度の大きい上方へ視準線が曲がる 標尺の下方を視準しない/視準距離を短くする


上記の表を踏まえて、それぞれの誤差を、再度一文で定義しておこう。

視準線(軸)誤差


望遠鏡の視準線と気泡管軸が平行になっていないために生じる誤差

球差


地球が球体であることによって生じる誤差

気差


気温の変化などで大気の密度が変わり、光が屈折することによって生じる誤差

鉛直軸誤差


レベルの鉛直軸が傾いているために生じる誤差

三脚の沈下による誤差


地盤の弱い場所に三脚を据え付けたことで、観測中に三脚が沈下して生じる誤差

視差による読取誤差


望遠鏡の対物レンズと接眼レンズの焦点が合っていないために生じる読み取りの誤差

レフラクション(大気の屈折誤差)


大気密度の違いによって視準線が屈折し、標尺の読定値がずれる現象

これらを踏まえたうえで注目したいのは、視準線誤差球差という原因のまったく異なる2つの誤差が、「視準距離を等しくする」という同一の操作で消去できる点だ。

さらに気差も、前後の視準距離を等しくすることで軽減できる。

前視と後視の距離を揃えるという一手間が、複数の誤差に同時に効く。これが水準測量の作法として徹底されている理由である。

標尺に関する誤差とその消去法


次に、標尺(スタッフ)側に起因する誤差を整理する。

誤差の種類 主な原因 消去・軽減の方法
標尺の傾きによる誤差 標尺が鉛直に立てられていない 標尺を前後にゆっくり動かし、最小の読定値を読み取る/鉛直気泡管や支持棒を用いて鉛直に立てる
零目盛誤差(零点誤差)  標尺底面の摩耗などで、零目盛の位置が正しくない 測定回数を偶数回にする(出発点に立てた標尺を終点に立てる)
 
標尺の目盛誤差
 
標尺の目盛そのものが正しくない
 
 所定の精度を満たす標尺を使用する/標尺改正数により補正する
 標尺の沈下・移動による誤差 観測中に標尺が沈下・移動する
 
標尺台を用いる/標尺台の爪を地面にしっかり食い込ませる
 

上記、標尺の誤差で特徴的なのは、「傾き」は読み方の工夫で、「摩耗」は観測回数の工夫で対処するという点だ。

原因が器械の外側にある分、現場の所作がそのまま精度に直結する。

主要な消去法を紹介


ここからは、代表的な消去法について、なぜ誤差が打ち消されるのかを見ていく。暗記ではなく理屈で押さえておけば、現場で応用が利く。

① 前後の視準距離を等しくする(視準線誤差・球差)


視準線が水平軸よりわずかに傾いたレベルで観測する場合を考える。

レベルから標尺までの距離をL、視準線の傾きをθとすると、そこで生じる読みの誤差eは L×tanθ で表される。

つまり誤差の大きさは視準距離に比例する。



ここで、後視側の距離と前視側の距離を等しく(L₁=L₂)すれば、後視の読みに乗る誤差と前視の読みに乗る誤差は同じ大きさになる。

高低差は「後視−前視」で求めるため、両者に等しく含まれた誤差は引き算の過程で相殺され、結果に残らない。

球差も距離に応じて生じる誤差であるため、同じ理屈で消去できる。

② 望遠鏡を常に特定の標尺に向けて観測する(鉛直軸誤差)


鉛直軸が傾いているレベルでは、望遠鏡を回転させたときに視準線も傾いてしまう。

(画像:レベルの鉛直軸が傾いた状態)

(画像:鉛直軸が傾いたレベルだと上図のような誤差が生じる)

このため、器械を反転させて別の標尺を視準すると、本来読むべき値より誤差e の分だけ大きく(あるいは小さく)読むことになる。

そこで、三脚の向きと望遠鏡の向きを、下図のように、常に特定の標尺に対向させるように据え付けて観測する。


こうすると、区間ごとに生じる誤差e が、次の区間で逆向きに現れる。

各区間の高低差を合計していく過程でe が打ち消し合い、最終的な高低差からは消える、という仕組みだ。

ただし注意が必要だ。

この理屈が成立するには、レベルと標尺が「その前後で等間隔にあり、かつ一直線上にある」という条件が必要になる。

現実の観測でこの条件を完璧に満たすのは難しいため、鉛直軸誤差は完全には消去できず小さくできるにとどまる。

③ 標尺の地表面に近い部分を視準しない(レフラクション)


はじめに押さえておきたいのは、視準線が曲がる向きは日射の状況によって変わるという点だ。

通常時と、陽炎が発生するような強い日射の下とでは、屈折の方向が逆になる。順に見ていこう。

大気密度は地表面に近づくほど大きくなり、密度が大きくなれば光の屈折率も大きくなる。

望遠鏡を通る視準線は、大気密度の大きい地表面に向かって屈折してしまうため、正確な値を読み取れない。

一方、日射しが強い日には陽炎(かげろう)が発生しやすくなる。


このときは地表面付近の温度上昇によって大気密度が小さくなり、視準線は逆に上方へと屈折する。

いずれにせよ、標尺の読定値に誤差が生じることになる。そこで、標尺の下部の視準を避ける。

1級水準測量の場合、地上20cm以上を視準するようにすればよいとされる。

こうすることで、光の屈折の影響を最小限に抑えられ、陽炎で標尺の目盛が大きく揺らぐ場合の読み取りにも有効だ。

あわせて視準距離を短くすれば、レフラクションの影響をさらに小さくできる。

④ 地盤の堅固な場所にレベルを整置する


軟弱地盤の上にレベルや標尺を据えれば、観測している間に地盤が沈下・隆起し、観測値が変化してしまう。

やむを得ずこうした場所に据える場合は、丸太や樽木で「足場」を構築するか、割グリ石などを敷いてつき固めるといった沈下防止の処置が必要になる。

⑤ レベルの整置回数を偶数回にする(零点誤差)


底面がe だけ摩耗した標尺を使うと、その標尺の読みは常にe だけ大きく読まれることになる。

この誤差を消すのが、水準点間でのレベルの整置回数を偶数回にするという方法だ。

具体的には、2本の標尺を交互に使用し最初に使った標尺を最後にも使うようにする。

すると、摩耗量e が高低差の計算式の中でプラスとマイナスの両方に現れ、相殺されて消える。

「測定回数を偶数回にする」「出発点に立てた標尺を終点に立てる」という作法は、この計算上の相殺を成立させるための手順なのである。

標尺の傾きによる誤差は、計算で補正できる


標尺が鉛直から傾いた状態で読み取ってしまった値も、幾何学的に正しい値へ補正できる。

考え方はこうだ。

標尺の長さをH、標尺の先端が傾いた分の水平方向の長さをℓ とすると、傾いた標尺は直角三角形の斜辺にあたる。

その長さは、ピタゴラスの定理により √(ℓ²+H²) で求められる。

ここで、標尺全体がつくる大きな三角形と、実際に読み取った位置までの小さな三角形は相似の関係にある。

したがって、次の比例式が成り立つ。

H : √(ℓ²+H²) = 求めたい正しい値 : 傾いたままの観測値

この式を解けば、鉛直に立てた場合の正しい読定値が求められる。

たとえば、標尺の長さが3m、先端の傾きが0.3m、傾いたまま読み取った値が1.500mだったとしよう。

斜辺は √(0.3²+3²) = √9.09 ≒ 3.015m となる。

比例式より、正しい値は 1.500 × 3 ÷ 3.015 ≒ 1.493m と求められる(数値は計算方法を示すための例)。

傾きによって、読定値がわずかに大きく出ていたことがわかる。

誤差との付き合い方も変わる。高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」という測量の新たな選択肢


ここまで見てきたように、レベルによる水準測量の精度は、視準距離を揃える、標尺の下部を視準しない、整置回数を偶数回にするといった、観測手順の積み重ねによって支えられている。

これらは光学器械と標尺を使う以上、避けて通れない作法である。

一方、近年は現場の測量に普段使いのスマホを使うという選択肢も登場している。


オプティム社の高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」はiPhone ProとGNSSレシーバーで測量が完結するサービスだ。

精度面では、独自の測量データ処理技術により、単点計測において水平・鉛直方向ともにミリ単位の測位精度を実現している。


鉛直方向でミリ級に踏み込んだ点は注目に値するだろう。

国土交通省の新技術情報提供システムNETISでも、事後評価における最高評価「VE」を獲得しているのだ(登録番号:QS-210050-VE)。

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