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「測地系」とは? 日本測地系・世界測地系・JGD2024・WGS84などをしっかり理解しよう!
測量を行う事業者にとって「測地系」という言葉を目にする機会が増えてきた。
2025年4月1日、建設・測量業界にとって大きな変更が施行された。
国土地理院が全国の基準点の標高成果を「測地成果2024」に改定し、これに伴い測地系の名称が「日本測地系2011(JGD2011)」から「日本測地系2024(JGD2024)」に変更されたのだ。
ここで誤解してはならない点がある。JGD2024は単なる名称変更ではない。 水平座標(緯度経度・平面直角座標)はJGD2011から引き継がれ変わらないが、標高(高さ)は局所的に最大約60cm変わっている。
この認識のまま古い標高値をICT建機に入力すれば、舗装厚や土工の高さが数cm〜数十cmずれる可能性がある。
本記事では、測地系の基礎から、JGD2024で何が変わり何が変わらないのかまでを、国土地理院の情報をもとに解説していく。
国土地理院は測地系を「測量、地図作成、土地の管理、大規模土木工事などの基準となる測地体系」と定義している。
そもそも、地球は完全な球体ではなく、自転の影響で赤道付近が膨らんだ扁平な楕円体に近い形をしている。
緯度・経度はこの楕円体上で定義されるため、「どの楕円体を使うか」「楕円体の重心・自転軸をどこに置くか」によって、同じ場所でも座標の値が異なってくる。
これが測地系の違いが座標ずれを生む根本的な理由だ。
2001年以前の測量成果(経度、緯度)は、経緯度原点の座標を天文観測によってベッセル楕円体面に定めていた旧日本測地系で表現されていた。
当時の技術的な限界から楕円体の重心と地球の実際の重心が一致しないものとなり、国内基準としては問題がなかったが、世界との整合性に課題があった。
宇宙測地技術の発展により正確な地球の形状・重心位置が判明し、楕円体の重心と地球の重心を一致させた世界測地系が定義された。
旧日本測地系と世界測地系は東京付近で約450m程度ずれる。
測量法等の改正により2002年4月1日から日本測地系2000(JGD2000)を採用。
さらに東日本大震災による大規模な地殻変動を受け、国土地理院は2011年10月に測地成果2011を公表し、2012年の測量法改正を経て日本測地系2011(JGD2011)へ正式に移行した。
世界測地系とは、世界で共通に利用できる位置基準をいう。
測量分野では、地球上での位置を経度・緯度で表わすための基準となる座標系及び地球の形状を表わす楕円体を総称して、測地基準系という。
つまり、世界測地系は、世界共通となる測地基準系のこと。測量法では、世界測地系を次のように定義している。
世界測地系におては、地球を、良く近似している楕円体(準拠楕円体)で地球上の位置(経度・緯度及び平均海面からの高さ)を表す。
(画像元:国土地理院WEBサイト日本の測地系ページより引用)
また、これに代えて地球重心を原点とする3次元直交座標系を用いて表わすこともできる。
世界測地系は、概念としては一つのものだが、国ごとに採用する時期や構築に当たっての詳細な手法及び実現精度が異なる。
構築にあたって詳細な手法のうち代表的なものに、ITRF系(国際地球基準座標系)、WGS系、PZ系の3種類がある。
ITRF系は、日本をはじめ多くの国家が陸域で採用している。WGS系は、高精度・継続性よりはリアルタイム性が重要視される軍事、航法、海図、ナビゲーションの分野に適した世界測地系だ。PZ系は、ロシアが採用している。
数年おきに更新(ITRF94、ITRF2000、ITRF2008、ITRF2014、ITRF2020)されており、日本国内の測量では「測地成果2024」と称し、ITRF座標系とGRS80楕円体を用いるよう定められている。
令和7年度全国の標高改定により測地成果2024を公表し、測地系の名称を「日本測地系2011(JGD2011)」から「日本測地系2024(JGD2024)」に変更している。
JGD2024への移行を正確に理解するには、X・Y・Zを分けて考える必要がある。
国土地理院は「緯度経度や平面直角座標の数値は改定しない」と明示している。
しかし同時に、全国の電子基準点・三角点・水準点の標高成果を令和7年4月1日に改定した。変化量は地域によって異なる。
これまで標高は、日本水準原点(東京)からの水準測量により決定されてきた。
しかしこの方式には以下のような課題があった。
国土地理院は標高の仕組みを、衛星測位を基盤とするものに移行した。
衛星測位(GNSS)で得られる高さは楕円体高(楕円体面からの高さ)であり、そのままでは従来の「標高(海抜)」と異なる。ここで役割を担うのがジオイドモデルだ。
(画像元:国土地理院WEBサイト 標高、重力、ジオイドの関係(イメージ図)より引用)
ジオイドとは平均海面に対応する重力ポテンシャル面(標高の基準面)であり、楕円体高からジオイド高と基準面補正量を差し引くことで標高が求まる。
(画像元:国土地理院WEBサイト ジオイドとは?WEBページより引用)
今回、国土地理院は新しいジオイドモデル「ジオイド2024 日本とその周辺(JPGEO2024)」を構築・公表した。これにより以下が実現する。
測地成果2024では高さ方向の座標(標高・ジオイド高)が更新されるため、2025年3月31日以前のRTK測位結果と4月1日以降のRTK測位結果で高さ方向に違いが出る。
使用しているGNSS受信機(レシーバー)や標高を計算するソフトウェアは、この変更に対応したアップデートが必要だ(詳細は購入した販売店に確認することが推奨される)。
JGD2011(測地成果2011)の標高成果を測地成果2024の標高に変換するには、国土地理院が提供するPatchJGD(標高版)を使用する。
(画像元:国土地理院WEB PatchJGD 標高版WEBサイトより引用)
既知点の種類によって使用するパラメータが異なる点に注意が必要だ。
Web版は国土地理院の測量計算サイトから利用できる。また、ダウンロード版のソフトウェア(PatchJGD_HV)にパラメータファイルを読み込ませて計算する方法もある。
なお、この補正計算には一定の誤差が生じるため、当該事業における誤差の許容範囲を踏まえた上での利用が必要だ。
旧日本測地系から世界測地系(JGD2000)への水平座標変換には、国土地理院の「Web版TKY2JGD」が利用できる。
TKY2JGDは、「旧・日本測地系(Tokyo Datum):ベッセル楕円体」に準拠した座標値を、世界測地系「日本測地系2000(=ITRF94系=JGD2000):GRS80楕円体」の座標値に座標変換するソフトウェアだ。
また、JGD2000からJGD2011への水平座標変換には「PatchJGD」が提供されている。これはPatchJGD(標高版)とは別のツールであるため、混同しないよう注意が必要だ。
2025年4月1日、建設・測量業界にとって大きな変更が施行された。
国土地理院が全国の基準点の標高成果を「測地成果2024」に改定し、これに伴い測地系の名称が「日本測地系2011(JGD2011)」から「日本測地系2024(JGD2024)」に変更されたのだ。
ここで誤解してはならない点がある。JGD2024は単なる名称変更ではない。 水平座標(緯度経度・平面直角座標)はJGD2011から引き継がれ変わらないが、標高(高さ)は局所的に最大約60cm変わっている。
この認識のまま古い標高値をICT建機に入力すれば、舗装厚や土工の高さが数cm〜数十cmずれる可能性がある。
本記事では、測地系の基礎から、JGD2024で何が変わり何が変わらないのかまでを、国土地理院の情報をもとに解説していく。
1. 測地系とは何か?
測地系(測地基準系):
地球上の位置を緯度・経度・高さで表すための基準のこと
地球上の位置を緯度・経度・高さで表すための基準のこと
国土地理院は測地系を「測量、地図作成、土地の管理、大規模土木工事などの基準となる測地体系」と定義している。
そもそも、地球は完全な球体ではなく、自転の影響で赤道付近が膨らんだ扁平な楕円体に近い形をしている。
緯度・経度はこの楕円体上で定義されるため、「どの楕円体を使うか」「楕円体の重心・自転軸をどこに置くか」によって、同じ場所でも座標の値が異なってくる。
これが測地系の違いが座標ずれを生む根本的な理由だ。
2. 旧・日本測地系と世界測地系
旧・日本測地系(2001年以前)
2001年以前の測量成果(経度、緯度)は、経緯度原点の座標を天文観測によってベッセル楕円体面に定めていた旧日本測地系で表現されていた。
当時の技術的な限界から楕円体の重心と地球の実際の重心が一致しないものとなり、国内基準としては問題がなかったが、世界との整合性に課題があった。
世界測地系への移行
宇宙測地技術の発展により正確な地球の形状・重心位置が判明し、楕円体の重心と地球の重心を一致させた世界測地系が定義された。
旧日本測地系と世界測地系は東京付近で約450m程度ずれる。
測量法等の改正により2002年4月1日から日本測地系2000(JGD2000)を採用。
さらに東日本大震災による大規模な地殻変動を受け、国土地理院は2011年10月に測地成果2011を公表し、2012年の測量法改正を経て日本測地系2011(JGD2011)へ正式に移行した。
3. 世界測地系のいろいろ
世界測地系とは、世界で共通に利用できる位置基準をいう。
測量分野では、地球上での位置を経度・緯度で表わすための基準となる座標系及び地球の形状を表わす楕円体を総称して、測地基準系という。
つまり、世界測地系は、世界共通となる測地基準系のこと。測量法では、世界測地系を次のように定義している。
世界測地系とは、地球を次に掲げる要件を満たす扁平な回転楕円体であると想定して行う地理学的経緯度の測定に関する測量の基準をいう
- その長半径及び扁平率が地理学的経緯度の測定に関する国際的な決定に基づき政令で定める値であること。
- その中心が、地球の重心と一致するものであること。
- その短軸が、地球の自転軸と一致するものであること。
世界測地系におては、地球を、良く近似している楕円体(準拠楕円体)で地球上の位置(経度・緯度及び平均海面からの高さ)を表す。
(画像元:国土地理院WEBサイト日本の測地系ページより引用)また、これに代えて地球重心を原点とする3次元直交座標系を用いて表わすこともできる。
世界測地系は、概念としては一つのものだが、国ごとに採用する時期や構築に当たっての詳細な手法及び実現精度が異なる。
構築にあたって詳細な手法のうち代表的なものに、ITRF系(国際地球基準座標系)、WGS系、PZ系の3種類がある。
ITRF系は、日本をはじめ多くの国家が陸域で採用している。WGS系は、高精度・継続性よりはリアルタイム性が重要視される軍事、航法、海図、ナビゲーションの分野に適した世界測地系だ。PZ系は、ロシアが採用している。
数年おきに更新(ITRF94、ITRF2000、ITRF2008、ITRF2014、ITRF2020)されており、日本国内の測量では「測地成果2024」と称し、ITRF座標系とGRS80楕円体を用いるよう定められている。
令和7年度全国の標高改定により測地成果2024を公表し、測地系の名称を「日本測地系2011(JGD2011)」から「日本測地系2024(JGD2024)」に変更している。
《 楕円体の種類 》
- ベッセル楕円体:旧日本測地系
- GRS80楕円体:世界測地系(ITRF・JGD2024等)。ITRFが推奨
- WGS84楕円体:WGS84。GRS80とほとんど差がない
4. 日本測地系2024(JGD2024)とは?「水平は変わらず、高さが変わった」
JGD2024への移行を正確に理解するには、X・Y・Zを分けて考える必要がある。
- 水平(X・Y:緯度経度・平面直角座標) → 変わらない(JGD2011から引き継ぎ)
- 高さ(Z:標高) → 変わる(局所的に最大約60cm)
国土地理院は「緯度経度や平面直角座標の数値は改定しない」と明示している。
しかし同時に、全国の電子基準点・三角点・水準点の標高成果を令和7年4月1日に改定した。変化量は地域によって異なる。
5. なぜ標高が変わったのか?水準測量基盤から衛星測位基盤へ
これまでの標高の仕組みと課題
これまで標高は、日本水準原点(東京)からの水準測量により決定されてきた。
しかしこの方式には以下のような課題があった。
- 水準測量で全国の測量を終えるには10年以上の歳月を要する
- 地殻変動の影響を受け、誤差が累積する
- 日本水準原点から距離が離れるほど標高の誤差が大きくなる
- 大地震直後に標高成果を迅速に改定できない
新しい標高体系。GNSSとジオイドモデル
国土地理院は標高の仕組みを、衛星測位を基盤とするものに移行した。
衛星測位(GNSS)で得られる高さは楕円体高(楕円体面からの高さ)であり、そのままでは従来の「標高(海抜)」と異なる。ここで役割を担うのがジオイドモデルだ。
(画像元:国土地理院WEBサイト 標高、重力、ジオイドの関係(イメージ図)より引用)ジオイドとは平均海面に対応する重力ポテンシャル面(標高の基準面)であり、楕円体高からジオイド高と基準面補正量を差し引くことで標高が求まる。
(画像元:国土地理院WEBサイト ジオイドとは?WEBページより引用)今回、国土地理院は新しいジオイドモデル「ジオイド2024 日本とその周辺(JPGEO2024)」を構築・公表した。これにより以下が実現する。
- 現況にあった標高を迅速に取得できる
- 大地震直後でも標高成果を速やかに改定できる
- 公共測量に「GNSS標高測量」が新たに導入(令和7年4月1日)され、従来の水準測量に比べて業務の効率化・省力化が図れる
6. 建設現場・公共測量での実務上の注意点
N-RTK(VRS)機器のアップデート
測地成果2024では高さ方向の座標(標高・ジオイド高)が更新されるため、2025年3月31日以前のRTK測位結果と4月1日以降のRTK測位結果で高さ方向に違いが出る。
使用しているGNSS受信機(レシーバー)や標高を計算するソフトウェアは、この変更に対応したアップデートが必要だ(詳細は購入した販売店に確認することが推奨される)。
旧JGD2011の標高成果を持つ既存データへの対応
JGD2011(測地成果2011)の標高成果を測地成果2024の標高に変換するには、国土地理院が提供するPatchJGD(標高版)を使用する。
(画像元:国土地理院WEB PatchJGD 標高版WEBサイトより引用)既知点の種類によって使用するパラメータが異なる点に注意が必要だ。
Web版は国土地理院の測量計算サイトから利用できる。また、ダウンロード版のソフトウェア(PatchJGD_HV)にパラメータファイルを読み込ませて計算する方法もある。
なお、この補正計算には一定の誤差が生じるため、当該事業における誤差の許容範囲を踏まえた上での利用が必要だ。
旧日本測地系(2001年以前)データの水平変換
旧日本測地系から世界測地系(JGD2000)への水平座標変換には、国土地理院の「Web版TKY2JGD」が利用できる。
TKY2JGDは、「旧・日本測地系(Tokyo Datum):ベッセル楕円体」に準拠した座標値を、世界測地系「日本測地系2000(=ITRF94系=JGD2000):GRS80楕円体」の座標値に座標変換するソフトウェアだ。
また、JGD2000からJGD2011への水平座標変換には「PatchJGD」が提供されている。これはPatchJGD(標高版)とは別のツールであるため、混同しないよう注意が必要だ。
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大人気シリーズ!【いまさら聞けない?】測量のことイチから解説 〜 連載記事一覧 〜
- 「測地系」とは? 日本測地系・世界測地系・JGD2024・WGS84などをしっかり理解しよう!