コラム・特集
CLASとは?CLAS(センチメータ級測位補強サービス)の活用方法を紹介!日本の衛星インフラを使いこなそう
日本の測位・建設業界に転機が訪れている。内閣府(宇宙開発戦略推進事務局)が運用する準天頂衛星システム「みちびき」から配信される「CLAS(センチメータ級測位補強サービス)」により、基準局の設置を必要とせず、センチメータ級精度のRTK(リアルタイムキネマティック)測位が実現可能になっているからだ。
これまでのRTK測位といえば、その精度確保のためにネットワーク型基準局システムの構築が必須だった。
複数の基準局をネットワークで連結し、受信機側への補正データ配信によってセンチメータ単位での位置決定を可能にする仕組みである。
一般的に「VRS(バーチャル・リファレンス・ステーション/仮想基準点方式)」と呼ばれるこの方式は、導入・運用コストが重く、特に中小ゼネコンや地方の測量業者にとっては大きな負担だった。
しかし、CLASの登場によって、その構図が一変しようとしている。日本発の衛星インフラを活用し、測位の民主化を進める時代が、すでに始まっているのだ。
CLASは、上述したように、内閣府宇宙開発戦略推進事務局が配信するセンチメータ級補強サービスである。
(画像元:みちびき センチメータ級測位補強サービスWEBサイトより引用)
国土地理院は全国約1,300箇所に展開する「電子基準点(GEONET)」を運用し、その観測データがCLAS補強情報の計算に活用されている。
(画像元:国土地理院 電子基準点WEBサイトより引用)
つまり、国土地理院はGEONETの維持管理と基礎データの提供という役割を担い、配信・運用の主体は内閣府ということだ。
従来のRTK測位(VRS方式)では、測量対象地の通信圏内に基準局ネットワークを敷設する必要があった。
複数の基準局からの受信電波を統合し、移動局(受信機)へ補正データをリアルタイムで配信することで、初めてセンチメータ級精度が得られたのである。
一方、CLASはこのプロセスを衛星側で実施する。基準局の役割を衛星と内閣府の処理センターが担い、その結果を全国に配信する形態となる。
つまり、RTK測位に必要な補正情報を、基準局を建設することなく、衛星から受け取ることができるのだ。
しかし現状、現場での「使い分け」は避けられない。
VRS方式の大きな強みは「固定化(Fix)の速さ」である。
基準局から送信される補正データは通信回線を経由するため、受信機の初期化時間(衛星信号をキャッチしてからFixするまでの時間)が短く、数秒から数十秒で精密測位が可能になる。
対してCLASは衛星信号の受信と内閣府処理センターでの計算結果を待つため、初期化時間はやや長くなる傾向がある。
測量開始時点でいきなり高精度が必要な施工現場では、VRSの方が現実的な場合も多いのだ。
ただし、CLASの価値は「通信圏外での活躍」にある。
山間部、海上、リモート地域など、携帯電話やWi-Fi網が到達しない場所では、VRSの補正データ配信そのものが成立しない。
こうした環境において、CLASは衛星からの直接配信であるため、地上通信インフラを必要としない。
測位精度はセンチメータ級であり、通常の施工管理には十分な精度である。
つまり、「VRSが活躍する場面」と「CLASが活躍する場面」は現場の電波環境によって決まるのである。
現時点では、両者を併行運用する体制が、中小ゼネコンにとって最も現実的な選択肢となるだろう。
CLASを利用するには、L6帯受信モジュール搭載のGNSS受信機が必須だ。
(画像元:みちびき/ 小峰無線電機「RJCLAS-L6」サイトより引用)
各メーカーが対応機器を投入しているものの、従来型のRTK受信機と比べてまだ単価が高い水準にある。
既存の測量機器をすべて買い替えるのは、中小企業にとって現実的ではないかもしれない。
段階的な機器更新の中で、特に新規導入する機械からL6帯対応を選ぶという戦略が、実装現場では主流になりつつある。
CLASの最大の強みは、衛星信号自体が「無料」という点だ。
ネットワーク型RTK(VRS)では、基準局の構築・運用のため年間数百万円規模の通信費やシステム保守コストが生じる場合も珍しくない。
CLASであれば、衛星からの補正信号は料金がかからない。
このブレイクスルーにより、小規模な測量業者や地方のゼネコンにとって、センチメーター級RTK測位の敷居が大きく下がることは確実だ。しかし、ここで「現実」を直視する必要がある。
CLASサービスが無料であっても、中小ゼネコンが実装する際には複数の障壁が存在する。
第一に、L6帯対応GNSS受信機の購入コストである。
既存のRTK受信機と比較して単価が高く、複数台の導入を検討している企業にとっては大きな投資額になる。
また、既存の測量機器とのシステム連携も簡単ではない。
RTKデータをCAD設計データと紐付けたり、建設機械のマシンコントロール端末と統合したりするには、システムインテグレーションのコストと工数が必須だ。
さらに人材の教育・研修コストも軽視できない。新しい測位方式への習熟には時間がかかり、導入初期段階では施工精度にばらつきが生じるリスクがある。
「CLASは無料だから導入する」という単純な判断では、実装後に問題が生じる。
大切なのは「初期投資の回収期間」という経営的な視点だ。
L6帯対応受信機の購入費、システム連携のコスト、オペレーター教育の工数などを合計すると、中小企業にとっては決して軽くない投資である。
その投資がVRS方式からの乗り換えで実際にコスト削減につながるまでに、どの程度の期間を要するのか。
このテーブル上の計算なしに、単なる「新技術の導入」に終わってしまうのは危険だ。
現時点では、以下のような段階的な導入アプローチが現場での主流になっている。

既存のVRSシステムを継続運用しながら、新規に購入する測量機器にはL6帯対応を選ぶ。
山間部や通信圏外での測量案件が増えた時点で、CLASを活用する端末の比率を高めていく。
こうした「段階的な移行」により、初期投資のリスクを分散させながら、長期的にRTK測位の運用コストを削減するという戦略だ。
CLASの配信精度のさらなる向上、配信遅延の削減、悪天候下での信号安定性改善など、技術面での改良が進められている。
加えて、民間企業との連携による受信機開発支援や、導入マニュアルの整備、オペレーター研修プログラムの拡充など、実装環境の充実が急務となっている。
L6帯対応受信機の単価低下も、業界全体で注視されている。コモディティ化が進めば、中小企業の導入障壁はさらに下がるだろう。
ネットワーク型RTK(VRS)からCLASへの段階的移行、あるいは両者の併用により、建設現場の測位インフラは進化すると予想される。
日本の衛星インフラ「みちびき」が提供するCLASサービスは、RTK測位技術の新しい形態を示唆している。
基準局設置不要のセンチメータ級精度測位が、より多くの企業に利用可能になる時代が到来したのだ。
しかし、無料の衛星信号と現場実装の間には、機器価格、システム連携、オペレーター教育といった現実的な課題が存在する。
これらの課題を認識しながら、VRSとCLASの「使い分け」や「段階的移行」をすることが求められるだろう。
これまでのRTK測位といえば、その精度確保のためにネットワーク型基準局システムの構築が必須だった。
複数の基準局をネットワークで連結し、受信機側への補正データ配信によってセンチメータ単位での位置決定を可能にする仕組みである。
一般的に「VRS(バーチャル・リファレンス・ステーション/仮想基準点方式)」と呼ばれるこの方式は、導入・運用コストが重く、特に中小ゼネコンや地方の測量業者にとっては大きな負担だった。
しかし、CLASの登場によって、その構図が一変しようとしている。日本発の衛星インフラを活用し、測位の民主化を進める時代が、すでに始まっているのだ。
CLASの仕組みと現場での使い分け。VRSとの比較
CLASとは?何が画期的なのか?
CLASは、上述したように、内閣府宇宙開発戦略推進事務局が配信するセンチメータ級補強サービスである。
(画像元:みちびき センチメータ級測位補強サービスWEBサイトより引用)国土地理院は全国約1,300箇所に展開する「電子基準点(GEONET)」を運用し、その観測データがCLAS補強情報の計算に活用されている。
(画像元:国土地理院 電子基準点WEBサイトより引用)つまり、国土地理院はGEONETの維持管理と基礎データの提供という役割を担い、配信・運用の主体は内閣府ということだ。
VRSとCLASの現場での実態
従来のRTK測位(VRS方式)では、測量対象地の通信圏内に基準局ネットワークを敷設する必要があった。
複数の基準局からの受信電波を統合し、移動局(受信機)へ補正データをリアルタイムで配信することで、初めてセンチメータ級精度が得られたのである。
一方、CLASはこのプロセスを衛星側で実施する。基準局の役割を衛星と内閣府の処理センターが担い、その結果を全国に配信する形態となる。
つまり、RTK測位に必要な補正情報を、基準局を建設することなく、衛星から受け取ることができるのだ。
しかし現状、現場での「使い分け」は避けられない。
VRS方式の大きな強みは「固定化(Fix)の速さ」である。
基準局から送信される補正データは通信回線を経由するため、受信機の初期化時間(衛星信号をキャッチしてからFixするまでの時間)が短く、数秒から数十秒で精密測位が可能になる。
対してCLASは衛星信号の受信と内閣府処理センターでの計算結果を待つため、初期化時間はやや長くなる傾向がある。
測量開始時点でいきなり高精度が必要な施工現場では、VRSの方が現実的な場合も多いのだ。
ただし、CLASの価値は「通信圏外での活躍」にある。
山間部、海上、リモート地域など、携帯電話やWi-Fi網が到達しない場所では、VRSの補正データ配信そのものが成立しない。
こうした環境において、CLASは衛星からの直接配信であるため、地上通信インフラを必要としない。
測位精度はセンチメータ級であり、通常の施工管理には十分な精度である。
つまり、「VRSが活躍する場面」と「CLASが活躍する場面」は現場の電波環境によって決まるのである。
現時点では、両者を併行運用する体制が、中小ゼネコンにとって最も現実的な選択肢となるだろう。
L6帯対応受信機の現状
CLASを利用するには、L6帯受信モジュール搭載のGNSS受信機が必須だ。
(画像元:みちびき/ 小峰無線電機「RJCLAS-L6」サイトより引用)各メーカーが対応機器を投入しているものの、従来型のRTK受信機と比べてまだ単価が高い水準にある。
既存の測量機器をすべて買い替えるのは、中小企業にとって現実的ではないかもしれない。
段階的な機器更新の中で、特に新規導入する機械からL6帯対応を選ぶという戦略が、実装現場では主流になりつつある。
CLASの活用シーンと導入の現実。建設現場での課題と今後
無料の衛星信号だが、課題は山積
CLASの最大の強みは、衛星信号自体が「無料」という点だ。
ネットワーク型RTK(VRS)では、基準局の構築・運用のため年間数百万円規模の通信費やシステム保守コストが生じる場合も珍しくない。
CLASであれば、衛星からの補正信号は料金がかからない。
このブレイクスルーにより、小規模な測量業者や地方のゼネコンにとって、センチメーター級RTK測位の敷居が大きく下がることは確実だ。しかし、ここで「現実」を直視する必要がある。
CLASサービスが無料であっても、中小ゼネコンが実装する際には複数の障壁が存在する。
第一に、L6帯対応GNSS受信機の購入コストである。
既存のRTK受信機と比較して単価が高く、複数台の導入を検討している企業にとっては大きな投資額になる。
また、既存の測量機器とのシステム連携も簡単ではない。
RTKデータをCAD設計データと紐付けたり、建設機械のマシンコントロール端末と統合したりするには、システムインテグレーションのコストと工数が必須だ。
さらに人材の教育・研修コストも軽視できない。新しい測位方式への習熟には時間がかかり、導入初期段階では施工精度にばらつきが生じるリスクがある。
中小企業が投資判断をする際の現実的な視点
「CLASは無料だから導入する」という単純な判断では、実装後に問題が生じる。
大切なのは「初期投資の回収期間」という経営的な視点だ。
L6帯対応受信機の購入費、システム連携のコスト、オペレーター教育の工数などを合計すると、中小企業にとっては決して軽くない投資である。
その投資がVRS方式からの乗り換えで実際にコスト削減につながるまでに、どの程度の期間を要するのか。
このテーブル上の計算なしに、単なる「新技術の導入」に終わってしまうのは危険だ。
現実的な導入戦略
現時点では、以下のような段階的な導入アプローチが現場での主流になっている。

(画像元:みちびき センチメータ級測位補強サービスWEBサイトより引用)
既存のVRSシステムを継続運用しながら、新規に購入する測量機器にはL6帯対応を選ぶ。
山間部や通信圏外での測量案件が増えた時点で、CLASを活用する端末の比率を高めていく。
こうした「段階的な移行」により、初期投資のリスクを分散させながら、長期的にRTK測位の運用コストを削減するという戦略だ。
今後の検討課題
CLASの配信精度のさらなる向上、配信遅延の削減、悪天候下での信号安定性改善など、技術面での改良が進められている。
加えて、民間企業との連携による受信機開発支援や、導入マニュアルの整備、オペレーター研修プログラムの拡充など、実装環境の充実が急務となっている。
L6帯対応受信機の単価低下も、業界全体で注視されている。コモディティ化が進めば、中小企業の導入障壁はさらに下がるだろう。
ネットワーク型RTK(VRS)からCLASへの段階的移行、あるいは両者の併用により、建設現場の測位インフラは進化すると予想される。
まとめ
日本の衛星インフラ「みちびき」が提供するCLASサービスは、RTK測位技術の新しい形態を示唆している。
基準局設置不要のセンチメータ級精度測位が、より多くの企業に利用可能になる時代が到来したのだ。
しかし、無料の衛星信号と現場実装の間には、機器価格、システム連携、オペレーター教育といった現実的な課題が存在する。
これらの課題を認識しながら、VRSとCLASの「使い分け」や「段階的移行」をすることが求められるだろう。
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