コラム・特集
デジコン編集部 2026.5.27
大人気シリーズ!【いまさら聞けない?】測量のことイチから解説 〜 連載記事一覧 〜

杭ナビでの「杭打ち(位置出し)」のやり方を解説!後方交会法での器機設置と誘導画面の見方まで 【 LN-100 / 150シリーズ(TopLayout使用)】

CONTENTS
  1. そもそも「杭打ち」とは何か?
  2. STEP1:器械設置(後方交会法)の準備
  3. STEP2:1点目と2点目の後視点観測(自動追尾の開始)
  4. STEP3:誤差の確認と設置完了
  5. STEP4:杭打ち(測設)の実行と誘導画面の見方
  6. 「細かな設定を気にせず、さくっと位置出し」できる時代へ
    1. 器械設置の手間が不要
    2. スマホなのにミリ精度!

そもそも「杭打ち」とは何か?


土木・建設現場における「杭打ち(測設・位置出し)」とは、設計図面上に存在する2次元あるいは3次元の「座標点」を、実際の物理的な現場の地面や構造物の上にミリ単位の精度で復元し、目印(杭や墨)を落としていく作業のことである。

すべての構造物は、この杭打ちによって示された位置を基準として造られるため、現場の品質を決定づける初期工程となる。

従来、この作業はトータルステーション(TS)を覗き込む観測者と、プリズムを持って現場を走り回る作業者の「2名体制」が必須であり、熟練のコミュニケーションと多くの時間を要していた。

しかし、ターゲットを自動追尾する「杭ナビ(自動追尾型TS)」の登場により、この概念は覆された。

本記事では、専用アプリ「TopLayout」を使用し、たった1人で高精度な位置出しを完結させるための具体的な杭打ち手順を解説していく。

STEP1:器械設置(後方交会法)の準備


杭打ちを始めるためには、まず器械(杭ナビ)自身に「今、現場のどこにいるのか」を認識させる「器械設置」が必要となる。

今回は、現場内の好きな(任意)場所に器械を据えることができる、汎用性の高い「後方交会」の手順を解説する。

TopLayoutのメニュー画面から〈杭打ち〉タップする。



器械設置の方法から〈後方交会〉を選択する。

後方交会は、既知点さえあれば器械を任意の場所に据えられるため、最も自由度が高い手法だ。


TopLayoutには他にも「基準軸(原点と基準軸)測定」「後視点(既知点)測定」「後視点(原点での基準軸)測定」があり、4種類の設置方法が選択できる。

マップ画面が表示され、事前に入力された座標が確認できる。


マップ上の点をダブルタップすると詳細な座標値が確認可能だ。



後方交会では、後視点(バック点と基準点)を2点測距する必要がある。

マップ上の1点目の既知点長押しして選択する。


画面上部のリストアイコンから、座標リストを開いて選択することも可能。



STEP2:1点目と2点目の後視点観測(自動追尾の開始)


それでは、仮にT-1(5,0,0)を1点目の後視点として選択する。


画面はプリズムサーチ画面へと切り替わる。

ここから杭ナビの自動追尾機能を利用して観測を行う。

器械の旋回(コントローラー操作): 杭ナビは手元の端末(TopLayout)から遠隔操作が可能だ。


コントローラー画面の「<」「>」ボタンで左右に旋回、「<< 」「 >>」で高速旋回させることができる。器械をターゲットの方向へ向けよう。

サーチの実行: 「虫眼鏡」アイコンをタップすると、杭ナビの鏡筒が上下に動きプリズムのサーチを開始する。


ガイドライトによる正対確認: 杭ナビ本体から照射されるガイドライトの色を確認する。


  • 緑:自分が器械の向いている方向より「右」にいる
  • 赤:自分が器械の向いている方向より「左」にいる
  • 白・オレンジ(切り替わり):器械が真正面を向いている(正対状態)

追尾の開始:正対の位置で体の中心にプリズムを持ち、〈サーチボタン〉をタップして静止する。


ガイドライトが「点滅」すれば、自動追尾が開始した合図だ(追尾中はプリズムを動かしても視準が外れない)。

追尾が開始したら、画面下の「◁(戻る)」をタップして、コントローラーを閉じる。

1点目の後視点上にプリズムを正確に据え、気泡管を合わせる。

画面の〈OK〉ボタンを押す。


〈OK〉ボタンから指を離した瞬間に記録されるため、タッチしたまま気泡管のブレを最終確認し、静止した状態で指を離すこと。

同じ手順で2点目の後視点を選択し、観測を行う。

STEP3:誤差の確認と設置完了


2点目の観測が完了したら、設置精度の確認を行う。

マップの背景部分(何もない場所)を長押しする。


「既知点の確認」メニューから、1点目と2点目の観測に基づく計算誤差が表示される。


誤差が現場の許容値内であることを確認し、〈OK〉を選択する。

これで器械設置は完了だ。

【 精度を重視する際のポイント 】

後方交会は器械を任意の場所に据えられる便利な手法だが、構造物の観測など極めて高い精度が求められる作業では、既知点上に器械を据えてから観測する「後視点(既知点)測定」を用いると、より高い精度が得られる。

要求精度に応じて、設置方法を使い分けることが望ましい。

STEP4:杭打ち(測設)の実行と誘導画面の見方


いよいよ、実際に杭を打つポイントを探し出す作業に入る。

画面の座標リストから、杭打ちしたい点を選択する(全選択や複数選択も可能)。

チェックを入れて〈OK〉をタップすると、杭ナビ本体が自動的に選択した座標の方向へ旋回し、サーチを始める。


STEP2と同様に、ガイドライトの赤と緑が両方見える位置(正対位置)に立ち、プリズムを追尾させる。

誘導の開始: 追尾が始まると画面が切り替わり、目標点への矢印誘導がスタートする。



画面の杭ナビマークを実際の本体の方向に向けた状態で、矢印に従って移動しよう。


精密誘導(1m以内): 目標点まで1m以内に入ると、画面が「十字線」と「青丸(🔵)」の表示に切り替わる。



画面左下には「水平距離」右下には「比高(高さの差)」が数値で表示される。

「青丸(🔵)」が「十字線」の中心に重なるように、そして水平距離と比高の数値が「ゼロ」になるようにプリズムを微調整していく(移動していく)。


数値がゼロになったポイントが、正確な杭打ちの座標である。

地面に印を付け、〈記録〉タップする。

複数の座標を選択していた場合、記録が完了すると杭ナビは自動的に「次の杭の方向」へと旋回を始めるため、スムーズに連続作業が可能となる。

追尾が外れた場合でも、再度杭の方向に旋回しているため、振り返っての確認も容易だ。

 【 補足:記録できないときは】

〈記録〉をタップしても記録されない場合は、杭打ち点の較差が「杭打ち精度制限」で設定した値を超えている可能性がある。

精度制限を超えた状態では記録処理が行われないため、プリズムの位置をより正確に合わせてから記録すること。

ここまで解説してきたとおり、杭ナビ(LN-100/LN-150)と純正アプリ「TopLayout」を使った杭打ちは、洗練された自動追尾アルゴリズムによって、ワンマンでの高精度な位置出しを実現する。

器械設置(後方交会)、後視点の観測、ガイドライトによる正対確認、誤差の確認、誘導画面に従った精密な位置出しといった、一連の手順をしっかり踏むことで、杭ナビ本来の高精度な測量性能が発揮される。

つまり、杭ナビは精密な測量機器であり、その性能を引き出すには、現場のオペレーターによる正確な器械設置と細やかな操作が前提条件となる。

「細かな設定を気にせず、さくっと位置出し」できる時代へ


ただし、現場の現実問題として「器械設置や後視点観測に時間を割けない」「もっと手軽にサクッと杭打ち・位置出しをしたい」「ベテランの測量経験がなくても誰でも使いこなしたい」という声があるのも事実だ。

特に小規模な現場や、施工管理者(現場監督)がスポット的に位置出しをしたい場面では、精密機器のセットアップ作業そのものが負担となる。

そこで今、新たな選択肢として注目を集めているのが、オプティム社の高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」だ。

器械設置の手間が不要


Geo Scanは、iPhone ProとRTK-GNSS受信機を組み合わせたコンパクトな測量ソリューションである。

衛星測位による絶対座標を取得する仕組みであるため、後方交会や後視点観測といった器械設置作業が原理的に不要となる。


iPhoneを持って打設したいポイントに向かうだけで、その場で位置出しができる。

ガイドライトの色で正対位置を探す必要も、後視点を観測する必要も、誤差を確認する必要もない。



「現場でさくっと位置出しをしたい」というニーズに、これまでにない直感的な体験で応える設計なのだ。

スマホなのにミリ精度!


2026年3月、Geo Scanは独自の測量データ処理技術により、リアルタイム測位データのバラツキを数ミリ以内に収束させ、水平・鉛直方向ともにミリ精度を実現した。



一般的なRTK-GNSS測位がプラスマイナス2cm程度のセンチ精度に留まる中、スマートフォンによる測量がミリ精度に近づいたのだ。

これにより、土工管理だけでなく、構造物の墨出しや施工用の基準点の位置出しまで対応可能になっている。

杭ナビは、専門的な測量経験を持つオペレーターによる本格的なワンマン測量を実現する優れたツールだ。

そして、その精度は本記事で解説したような正確な器械設置と操作手順を踏むことで担保されている。

一方で、Geo Scan「器械設置不要 + ミリメートル級精度」という、これまでにない運用スタイルを提示している。



現場の規模、作業内容、要求される精度、操作者のスキルによって、どちらが最適かは異なるだろう。

しかし、「精密機器の繊細なセットアップ」という長年の当たり前に対する新しい答えが業界に登場したことは、今後の機材選定に大きな影響を与えていくと考えられる。

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WRITTEN by

デジコン編集部

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