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RTKとCLASの違いとは? RTKとCLASの精度比較・動作原理・用途別使い分けを徹底解説【2026年版】
RTKとCLASの基本的な違い。通信環境で選択肢が変わる
高精度な衛星測位を必要とする土木・建設現場では、「RTK」と「CLAS」という2つの技術方式が共存している。
同じセンチメータ級の精度を目指しながらも、通信環境への依存度、必要な設備、運用方法は大きく異なる。
重要なのは、「RTK」と一口に言っても、RTKとVRS(ネットワーク型RTK)の2つが存在することだ。
この違いを理解せず「RTKは通信圏外で使えない」と判断するのは、現場の可能性を見落とすことになる。
本稿では、RTKの2つの形態、CLASの仕組み、そして新しい実装例まで、実務者向けに解説していく。
RTK-GPS測位とは?基準局を現場に設置する方式
RTK-GPS測位は、両点で位相の測定を行い基準局で観測した位相データを観測点に送信。
観測点のGNSS受信機では、受信データと基準局から送信されたデータをリアルタイムで解析することにより、観測点の位置を決定する。
(画像元:国土地理院WEBサイトGNSSを使用した測量のいろいろページより引用)位置の分かっている基準局と位置を求めようとする観測点で同時にGPS観測を行い、基準局で観測したデータを無線等を用いて観測点へリアルタイムに送信し、基準局の位置成果に基づき観測点の位置をリ アルタイムに求める手法だ。
基準局は「事前に位置が正確に分かっている場所」に据えられ、その位置での受信信号から誤差を計算する。
山間部、海上、通信圏外のリモート地域でも、無線が届く範囲であれば高精度なRTK測位が可能だ。
VRS(ネットワーク型RTK)とは?電子基準点ネットワークを活用する方式
VRS(仮想基準点方式)は、国土地理院が整備した全国の電子基準点ネットワークを活用する方式である。
複数の基準局データを統合し、国土交通省のサービス事業者が補正情報を計算・配信する。
(画像元:国土地理院WEBサイトより引用)移動局はインターネット(携帯電話網)経由でこの補正情報を受信し、セミーター級精度を得る。
この方式の強みは、自前で基準局を設置する手間がないこと。初期投資が削減され、短期プロジェクトや小規模現場での導入が容易だ。しかし、携帯電波が到達しない場所では機能しない。
CLAS(センチメータ級測位補強サービス)とは?
CLASは、内閣府が運用する準天頂衛星システム「みちびき」が配信する補強情報を活用した測位方式である。
国土交通省国土地理院が全国に約1,300箇所整備している「電子基準点(GEONET)」のデータを利用して、内閣府の処理センターが補正情報を計算する。
(画像元:みちびき センチメータ級測位補強サービスWEBサイトより引用)その補正情報がL6D信号という特殊な電波で、みちびきから日本全域に配信される。
受信機側は、衛星からの補正信号を直接受け取るだけでよく、地上の通信インフラを一切必要としない。
つまり、CLASはローカルRTKと同じく「地上通信インフラ不要」を実現しながら、衛星を利用した新しい高精度測位方式なのである。
精度・設備・運用環境の実測比較
精度の数字で見る違い
AITOYA Inc.の実測データによると、精度は以下の通りだ。
RTKの方が圧倒的に高精度であり、特に鉛直方向での精度差は顕著だ。ただし、国土交通省関連の港湾工事等に関する資料では、CLASの精度を「10cm程度」と記述している場合もあり、測位環境や衛星配置によって精度にばらつきがある点に注意が必要である。
Fix時間の違い
RTKがほぼ瞬時にFixするのに対し、CLASは1分前後の時間を要する。この違いは、測位開始時点での実装上の課題となる。
RTKは基準局からのリアルタイム補正データにより、受信機が衛星信号をキャッチした瞬間から精密位置の計算が始まる。
一方、CLASは衛星経由の補正信号であるため、補強情報の作成から衛星での送信・受信までのプロセスに時間を要するのだ。
自動運転ラボの資料では、CLASの補強情報作成から送信までに「十数秒のタイムラグが生じる」と指摘している。
つまり、施工開始時にいきなり高精度が必須な現場では、RTKの方が現実的な場合が多いのである。
設備要件の根本的な違い
- ローカルRTK:基準局用受信機、無線機、ポール、バッテリーなど。携帯電波不要。
- VRS:インターネット回線(携帯電話網など)への接続が必須。基準局設置は不要。
- CLAS:L6D信号対応GNSS受信機のみ。地上通信インフラ不要。
通信環境への依存度の差
- ローカルRTK:無線が届く範囲(一般的に500m~1km程度)であれば、携帯圏外でも機能する。山間部での測量に最適。
- VRS:携帯電話の圏外では機能しない。都市部や平野部での短期利用に最適。港湾工事等の資料では「VRSは海上で精度の低下や電波遮断等の懸念がある」と記述されている。
- CLAS:衛星信号の特性上、樹木や建物による遮蔽、トンネル内など「空が見えない場所」では受信不能になる可能性がある。ただし、携帯圏外の山間部では衛星信号があれば機能する。
補正情報の配信方式の違いが精度を決める
RTKとCLASは同じ物理原理を使っている
RTKもCLASも、衛星からの電波の位相(波の満ち引き)を数えることでセンチメータ級の精度を出しているのだ。
つまり、「搬送波位相」という基本的な物理原理は両者で共通している。
両者の根本的な違いは、「どのような形式の補正情報を、どのように配信するか」という点にある。
RTKの補正情報とは?
RTKの基準局は、自身が受信した衛星信号の観測データそのものを、リアルタイムで移動局へ送信する。
移動局がこの観測データと自身の観測データを組み合わせて、位相の誤差を計算・補正するのだ。
CLASの補正情報とは?(SSR:状態空間表現)
CLASでは、電子基準点のネットワークから得られた観測データを、内閣府の処理センターが統合的に解析する。
その結果として「衛星軌道の誤差」「時計の誤差」「電離層遅延」など、衛星測位システム全体の状態情報を、L6D信号で配信する。
《送信している誤差情報》
- 衛星位置誤差
- 衛星時計誤差
- 信号バイアス
- 電離層遅延量推定誤差
- 対流圏遅延量推定誤差
受信機側は、この状態情報を用いて、単独で補正計算を実施することで高精度測位を実現する。この方式の違いが、CLASを「基準局不要」で「広範囲対応」にしている。
現場での用途別使い分けと新しい実装例
ローカルRTKが活躍する場面
中山間地の測量、山間部での情報化施工、携帯圏外のリモート現場での精密測位は、ローカルRTKの独壇場だ。
複数の基準局を配置して、より広いエリアをカバーすることも可能である。
初期化時間の速さと精度の高さが求められる施工現場では、ローカルRTKが有利である。
VRSが活躍する場面
都市部や平野部での短期プロジェクト、基準局設置が困難な狭隘地での測量は、VRSが最適だ。
初期投資が少なく、導入が即座に可能というメリットが活きる。
CLASが活躍する現場
山間部、海上、通信圏外のリモート地域での測位は、CLASの強みである。
林野庁の資料では、VRS運用が困難な森林調査・収穫調査での活用を想定し、「CLAS対応受信機を用いて山地の森林内で測位精度の検証を行った」と述べられている。
その結果、「既存方式と比較して精度の向上が確認され、収穫調査の周囲実測に十分活用できると考えられる」と記述されている。
内閣府の想定用途には「測量、情報化施工(建設機械を高精度に操作して施工する手法)、IT農業」が明記されている。
RTK測位の活用事例:Geo Scanのような新しい測量スタイル
最新の実装方式として、スマートフォンのカメラやLiDAR機能と小型RTK受信機を組み合わせた測量手法が登場している。
オプティムの高精度スマホ測量「Geo Scan」がその代表格だ。

- メリット:高額な専用機材が不要で、スマートフォンと数十万円程度の小型受信機で3次元測量が実現できる。直感的な操作が可能で、測量未経験者でも扱いやすい。
- デメリット: 屋内や樹木が密集する環境ではLiDARの機能が制限される場合がある。
RTKを活用した具体的な現場シーン
- 基準点測量 / 基準点の設置
国土地理院の電子基準点を基に現場の基準点を設定する際、従来は半日がかりだった作業を短時間で完了できる。 - 現況測量や地形測量
作業員がローバーを持って移動するだけで三次元座標群を取得できる。盛土・切土の出来形管理など、面的に大量のデータが必要な場面で威力を発揮する。 - 位置出し・丁張り設置
設計図面から座標データを取り出し、現場でその座標にマーキングする「位置出し」や、施工の基準となる「丁張り」設置にもRTKが使われる。
高精度スマホ測量Geo Scanであれば、図面を読み込ませ、図面上の座標を現場で位置出しすることがスマホ上でできる。しかも、Geo Scanであればミリ精度で可能なのだ。
(Geo Scanで高精度1人スマホ測量をしている様子/北海道玉川組/デジコン撮影)
(画像元:Geo ScanWEBサイト/ミリ単位の高精度スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」、構造物の位置出し・墨出しが可能により引用)高精度スマホ測量Geo Scanはトータルステーションのように後方交会法で基準点を確認する必要がなく、RTKで直接座標を得られるため、手順が大幅に簡素化されるのだ。
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「RTK測位の民主化」の象徴
かつてRTK測位は高額な専用機材と複雑な基準局構築が必須だった。
ローカルRTKの基準局設置、VRSの通信インフラ構築、そしてCLASの登場により、高精度測位の敷居は急速に下がっている。
Geo ScanのようなスマートフォンRTK測量の実用化により、測量未経験の技術者でも高精度測位を活用できる時代になったのだ。
まとめ
RTKとCLASは、同じセンチメータ級精度を目指しながらも、全く異なる技術的アプローチである。
精度ではRTKが優位、初期化時間と基盤インフラでもRTKが有利である。
一方、地上通信インフラ不要という点ではローカルRTKとCLASが共通し、特にCLASは広範囲対応と山間部・海上での活躍が期待されている。
2026年の建設現場では、「RTKだけ」「CLASだけ」という選択ではなく、「VRS+ローカルRTK+CLAS を戦略的に組み合わせる」という発想が必須になりつつある。
Geo Scanのようなスマートフォン測量の登場により、高精度測位データを取得した後、「現場でどう活用するか」というレイヤーの選択肢も急速に広がっている。
現場規模、工期、通信環境、精度要件、人員という5つの判断軸を踏まえた上で、自社に最適なシステムを選択すること。それが、建設DX時代における測位インフラの「本当の使いこなし」なのである。
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