コラム・特集
国内最大級!3Dプリンタで土木施工!「建設用3Dプリンタをもっと当たり前に」ポリウス × 中部土木(愛知)【現場見学会レポート】
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2022年7月28日、中部地方で初めてとなる3Dプリンタ活用施工の現場見学会が行われた。
建設用3Dプリンタ開発を手がける株式会社ポリウス(以下、ポリウス)と、名古屋に本社を構える施工会社・中部土木株式会社(以下、中部土木)による共同プロジェクトで、現場は中部地方整備局の管轄となる愛知県豊田市にある豊田南バイパスの道路整備工事。
(国内最大級 3Dプリンタで作られた重力式擁壁)
国内最大級の建設用3Dプリンタ活用工事で、最新のデジタル技術が導入され、道路を支える土木構造物が製造された。
( 資料提供:平面図・横断図 ポリウス)
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3Dプリンタ現場見学会の会場には、厳しい暑さにも関わらず、多くの人が訪れ、オンライン視聴も含めると、官公庁や建設業者・マスコミなど200人以上の人が集まった。
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中部地方整備局や中部土木による挨拶を経て、ポリウスによる3Dプリンタの実演と技術解説、質疑応答タイムが設けられ、質問も活発に飛び交っていた。
今回のプロジェクトの発端は、ポリウスのCEOである岩本卓也氏が中部土木の代表である難波陽一氏に建設用3Dプリンタの話をしたところ、“すごく面白いですね。やりましょう!”と賛同いただいたことから始まったという。
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3Dリンタで製造された構造物は、中部土木が施工を担う道路工事現場の重力式擁壁(建設物が崩れないように、擁壁の重さで支えて安定させる壁状の構造物)。
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プログラミングされた設計図から3Dプリンタで型枠を製造し、その型枠の空洞部分にコンクリートを流し込んで打設する。これまでは重力式擁壁の製造に1週間以上もかかっていたが、3Dプリンタを活用すれば実質1日に。作業時間の大きな短縮が期待できる。
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今回の施工現場を牽引する中部土木の 正治英剛氏に、3Dプリンタ施工についてうかがった。
中部土木 正治 英剛氏
「当社ではi-Construction(アイ・コンストラクション)に力を入れ、ドローンや3Dレーザースキャナーなどを現場に積極的に取り入れてきました。3Dプリンタ施工については2022年の春頃に話があり、わずか数週間というスピード感で準備を進めました」(正治氏)
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「Youtubeなどで3Dプリンタの動画は見ていましたが、今回、自分たちで重力式擁壁を作って、“ここまでできるんだ”と実感しましたね。今後ますます技術が発展すると、作業スピードが早くなったり、大きい構造物まで作れたりするのではないかと。そうすれば建設業界の生産性も大きく上がると思います」(正治氏)
中部土木の若手社員に、操作のレクチャーを行ったポリウス CTOであり技術部門を統括する 松下将士氏は、操作状況や手応えをこう語る。
Polyuse CTO 松下将士氏
「今回は3Dプリンタの出力操作だけでなく、材料の調整から中部土木の若手社員の方に挑戦してもらいました。皆さん、ポリウスにぜひ入ってほしいと思うほど覚えが早くて(笑)」(松下氏)
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「ここはどうすればよいかなどの具体的な質問を受けました。私たちも現場の方に使いやすいようにしたいと考えているので、リアルな声が聞けてとても良い機会でしたね」(松下氏)
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3Dプリンタ技術の詳細はPolyuseの取材記事へ:
『建設用3Dプリンターを牽引する「Polyuse」。地道に泥くさく開発を進めるその先に、彼らが見据えるのは、人とテクノロジーが共存する、わくわくする未来だった』
今回、3Dプリンタの技術が進化した点はあるのだろうか。開発のポイントや今後の課題などについて、CTO 松下将士氏、さらには材料部門研究開発責任者 鎌田太陽氏にも話を聞いた。
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「2022年2月に行われた高知の現場見学会と比較すると、マシンが大幅に変わりました。外装の素材はこれまで樹脂でしたが、今回から金属部品を導入して現場で組み立てやすいようにしたり、3Dプリンタを実際に現場に持ち運んで日差しがガンガン当たる環境でもモーターが問題なく動くように設定したり。制御ボックスも、簡易な樹脂ボックスから本格的なものにアップデートしました」(松下氏)
Polyuse 材料部門研究開発責任者 鎌田 太陽氏
「今回は、3Dプリンタを使ってモルタルを素材に作った枠に、コンクリートを流し込んで打設しました。モルタルとコンクリートではそもそも素材が違うので、境界となる面にひび割れや大きな亀裂がなく一体化できるかが難しいところで検証のポイントになりましたが、問題なく実証できましたね。」(鎌田氏)
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「また、今日のような厳しい暑さと高湿度の環境でも問題なく製造できるよう、水分量と練り混ぜて出てきたモルタルの温度を調整し、それを見ながら印刷できるペーストの状態と固まった後の強度を所定の仕様におさまるようにしました。私たちは夏場の製造経験も多いため、その知見をしっかり生かして皆さんに共有できたと思います」(鎌田氏)
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「マシンに関しては、まだ人手が必要な部分がありますが、データの取得部分などをアップデートして使いやすくし、製品版として提供していきたいですね。ソフトウェアに関しても、専門的な知識がなくても、3Dモデルをアプリに入れて読込めるデータを作って印刷できるようなアルゴリズムを開発しています。また、大きな進化の一つは、材料の価格を抑えた点。2022年内により安価なバージョンでいけるようになる予定です」(松下氏)
現場見学会でも技術について熱意を込めて自らが解説し、現場内を動き回っていた姿が印象的だったのが、ポリウスのCEOである岩本卓也氏だ。
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岩本氏は現場の反応をどう感じているのだろうか。
「見学会に来られる方が、ここ最近、一気に増えていますね。でも、今はムーブメントだと思っているんです。何となく面白そうだから、目新しいからと見に来る方も多いと思うので、次のステップは、実際の現場でどのように活用できるかを検討できる場にできればと考えています。そのために、私たちも必要な情報を惜しみなくお伝えしていきたいと思います」(岩本氏)
Polyuse CEO 岩本 卓也氏
続けて建設用3Dプリンタにおける今後の展望について聞くと、「建設用3Dプリンタ元年に相応しいのは"量”」だと言及。
「2021年は3Dプリンタでどれだけ新しいことを実現できたかという“質”が大事でした。しかし今は、いかに現場にたくさん導入できるかという“量”がテーマ。ユースケースをどんどん作っていかないと、見えてこない課題も多いですから。そして、建設用3Dプリンタが現場で当たり前に使われることを目指しています。」(岩本氏)
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「開発サイドとしては、現場をいかに回していけるかが次のキーポイント。そのために費用を下げたり、現場の方に簡単にできる効果を実感してもらうことが重要になってくると思います」(岩本氏)
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3Dプリンタ施工を当たり前にしたいという、ポリウスの熱意が感じられた今回の現場見学会。技術がどんどん進化している上に、価格面のハードルも下げていくという。土木・建設の施工現場に3Dプリンタをどう活かしていくのか、これからのプロジェクトにも注目していきたい。
中部土木株式会社
愛知県名古屋市名東区社台三丁目125番地
TEL: 052-777-3311
HP:http://www.chubudoboku.co.jp/
株式会社Polyuse
東京都港区浜松町2-2-15 浜松町ダイヤビル2F
HP:https://polyuse.xyz/
建設用3Dプリンタ開発を手がける株式会社ポリウス(以下、ポリウス)と、名古屋に本社を構える施工会社・中部土木株式会社(以下、中部土木)による共同プロジェクトで、現場は中部地方整備局の管轄となる愛知県豊田市にある豊田南バイパスの道路整備工事。
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国内最大級の建設用3Dプリンタ活用工事で、最新のデジタル技術が導入され、道路を支える土木構造物が製造された。
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3Dプリンタ現場見学会の会場には、厳しい暑さにも関わらず、多くの人が訪れ、オンライン視聴も含めると、官公庁や建設業者・マスコミなど200人以上の人が集まった。
![](/images/upload/2022/09/08801d3447835757b4927fa3ee8f3a6d.jpg)
中部地方整備局や中部土木による挨拶を経て、ポリウスによる3Dプリンタの実演と技術解説、質疑応答タイムが設けられ、質問も活発に飛び交っていた。
「3Dプリンタでここまでできるんだ!」と実感
今回のプロジェクトの発端は、ポリウスのCEOである岩本卓也氏が中部土木の代表である難波陽一氏に建設用3Dプリンタの話をしたところ、“すごく面白いですね。やりましょう!”と賛同いただいたことから始まったという。
![](/images/upload/2022/09/8905fbdc82cba4dbe6fd996fe012d8a4.jpg)
3Dリンタで製造された構造物は、中部土木が施工を担う道路工事現場の重力式擁壁(建設物が崩れないように、擁壁の重さで支えて安定させる壁状の構造物)。
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プログラミングされた設計図から3Dプリンタで型枠を製造し、その型枠の空洞部分にコンクリートを流し込んで打設する。これまでは重力式擁壁の製造に1週間以上もかかっていたが、3Dプリンタを活用すれば実質1日に。作業時間の大きな短縮が期待できる。
![](/images/upload/2022/09/ebd039504e16a63867c15527c9e14b70.jpg)
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今回の施工現場を牽引する中部土木の 正治英剛氏に、3Dプリンタ施工についてうかがった。
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「当社ではi-Construction(アイ・コンストラクション)に力を入れ、ドローンや3Dレーザースキャナーなどを現場に積極的に取り入れてきました。3Dプリンタ施工については2022年の春頃に話があり、わずか数週間というスピード感で準備を進めました」(正治氏)
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「Youtubeなどで3Dプリンタの動画は見ていましたが、今回、自分たちで重力式擁壁を作って、“ここまでできるんだ”と実感しましたね。今後ますます技術が発展すると、作業スピードが早くなったり、大きい構造物まで作れたりするのではないかと。そうすれば建設業界の生産性も大きく上がると思います」(正治氏)
中部土木の若手社員に、操作のレクチャーを行ったポリウス CTOであり技術部門を統括する 松下将士氏は、操作状況や手応えをこう語る。
![](/images/upload/2022/09/2f3032def7d613d64d89569e0c0fd6de.jpg)
「今回は3Dプリンタの出力操作だけでなく、材料の調整から中部土木の若手社員の方に挑戦してもらいました。皆さん、ポリウスにぜひ入ってほしいと思うほど覚えが早くて(笑)」(松下氏)
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「ここはどうすればよいかなどの具体的な質問を受けました。私たちも現場の方に使いやすいようにしたいと考えているので、リアルな声が聞けてとても良い機会でしたね」(松下氏)
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3Dプリンタ技術の詳細はPolyuseの取材記事へ:
『建設用3Dプリンターを牽引する「Polyuse」。地道に泥くさく開発を進めるその先に、彼らが見据えるのは、人とテクノロジーが共存する、わくわくする未来だった』
ハードもソフトも進化するポリウスの建設用3Dプリンタ
今回、3Dプリンタの技術が進化した点はあるのだろうか。開発のポイントや今後の課題などについて、CTO 松下将士氏、さらには材料部門研究開発責任者 鎌田太陽氏にも話を聞いた。
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「2022年2月に行われた高知の現場見学会と比較すると、マシンが大幅に変わりました。外装の素材はこれまで樹脂でしたが、今回から金属部品を導入して現場で組み立てやすいようにしたり、3Dプリンタを実際に現場に持ち運んで日差しがガンガン当たる環境でもモーターが問題なく動くように設定したり。制御ボックスも、簡易な樹脂ボックスから本格的なものにアップデートしました」(松下氏)
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「今回は、3Dプリンタを使ってモルタルを素材に作った枠に、コンクリートを流し込んで打設しました。モルタルとコンクリートではそもそも素材が違うので、境界となる面にひび割れや大きな亀裂がなく一体化できるかが難しいところで検証のポイントになりましたが、問題なく実証できましたね。」(鎌田氏)
![](/images/upload/2022/09/d6140696a5b83fbdffd11aa0d250aa71.jpg)
「また、今日のような厳しい暑さと高湿度の環境でも問題なく製造できるよう、水分量と練り混ぜて出てきたモルタルの温度を調整し、それを見ながら印刷できるペーストの状態と固まった後の強度を所定の仕様におさまるようにしました。私たちは夏場の製造経験も多いため、その知見をしっかり生かして皆さんに共有できたと思います」(鎌田氏)
![](/images/upload/2022/09/0a8248c37d27ebcb81ec8f72fcf9b9e9.jpg)
「マシンに関しては、まだ人手が必要な部分がありますが、データの取得部分などをアップデートして使いやすくし、製品版として提供していきたいですね。ソフトウェアに関しても、専門的な知識がなくても、3Dモデルをアプリに入れて読込めるデータを作って印刷できるようなアルゴリズムを開発しています。また、大きな進化の一つは、材料の価格を抑えた点。2022年内により安価なバージョンでいけるようになる予定です」(松下氏)
「どれだけ多く導入できるか」。建設3Dプリンタを当たり前にするのが、これからのミッション
現場見学会でも技術について熱意を込めて自らが解説し、現場内を動き回っていた姿が印象的だったのが、ポリウスのCEOである岩本卓也氏だ。
![](/images/upload/2022/09/d1880231c6f6f91b0bbc82e3d20258fc.jpg)
岩本氏は現場の反応をどう感じているのだろうか。
「見学会に来られる方が、ここ最近、一気に増えていますね。でも、今はムーブメントだと思っているんです。何となく面白そうだから、目新しいからと見に来る方も多いと思うので、次のステップは、実際の現場でどのように活用できるかを検討できる場にできればと考えています。そのために、私たちも必要な情報を惜しみなくお伝えしていきたいと思います」(岩本氏)
![](/images/upload/2022/09/624ab9757b9ca781cd06e9969084690c.jpg)
続けて建設用3Dプリンタにおける今後の展望について聞くと、「建設用3Dプリンタ元年に相応しいのは"量”」だと言及。
「2021年は3Dプリンタでどれだけ新しいことを実現できたかという“質”が大事でした。しかし今は、いかに現場にたくさん導入できるかという“量”がテーマ。ユースケースをどんどん作っていかないと、見えてこない課題も多いですから。そして、建設用3Dプリンタが現場で当たり前に使われることを目指しています。」(岩本氏)
![](/images/upload/2022/09/5e9f51f02f8024823bb59bf6f2ffa904.jpg)
「開発サイドとしては、現場をいかに回していけるかが次のキーポイント。そのために費用を下げたり、現場の方に簡単にできる効果を実感してもらうことが重要になってくると思います」(岩本氏)
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3Dプリンタ施工を当たり前にしたいという、ポリウスの熱意が感じられた今回の現場見学会。技術がどんどん進化している上に、価格面のハードルも下げていくという。土木・建設の施工現場に3Dプリンタをどう活かしていくのか、これからのプロジェクトにも注目していきたい。
中部土木株式会社
愛知県名古屋市名東区社台三丁目125番地
TEL: 052-777-3311
HP:http://www.chubudoboku.co.jp/
株式会社Polyuse
東京都港区浜松町2-2-15 浜松町ダイヤビル2F
HP:https://polyuse.xyz/
取材・編集:デジコン 編集部 / 文:平田 佳子 / 撮影:砂田 耕希
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