コラム・特集
三浦 るり 2022.6.16
いま注目の建設スタートアップ

i-Con大賞受賞の「スキャン・エックス」が大幅バージョンアップ!ユーザーの声を存分に反映した新機能とは!?

令和3年度i-Construction大賞において国土交通大臣賞を受賞した、ローカスブルー株式会社(旧社名スキャン・エックス株式会社)の「ScanX(スキャン・エックス)」。

ScanXはクラウドタイプの3D点群データ処理ソフトとしてすでに注目を集めているが、このほど、デザインを一新し、様々な新機能も追加された「 ScanX Ver.2.0 」が、2022年6月15日にリリースされた。

気になる新機能やアップデート前との違いについて、ローカスブルー代表取締役である宮谷 聡氏(以下、敬称略)に話しをうかがった。


i-Con大賞受賞で高まった「ScanX(スキャン・エックス)」の期待値を、さらに超えていきたい


――前回のインタビュー(※2021年2月)以降、会社を取り巻く状況に変化はありましたか?また、ScanXの反響はどうですか?


宮谷:大きく変わりましたね。ひとつが2022年3月のi-Construction大賞  国土交通大臣賞の受賞です。まさかScanX(スキャン・エックス)が受賞できるとは。とても嬉しかったですね。ユーザーはじめ関係者の皆様のおかげによるものですので、心より感謝しています。

ローカスブルー株式会社 代表取締役 宮谷 聡氏

―― i-Construction大賞受賞のインパクトはやはり大きかったのでしょうか?

宮谷:大きかったです。この実績により、訪問する先々で認知度・信頼度が上がっていることを実感しますし、社内メンバーのモチベーションにも大きく影響しています。受賞が決まったときにはメンバーみんなで、祝杯を挙げましたよ(笑)。

i-Construction大賞 受賞式の様子(写真提供:ローカスブルー)

受賞以降、おかげさまでユーザーも増え、それに伴いScanX(スキャン・エックス)の期待値も上がっていることを痛感しています。


以前から「まだまだやらねば」という思いは抱いていたのですが、ScanX(スキャン・エックス)をアップデートするごとに「ユーザーの期待をさらに上回らなければ」という焦りに近いものも出てきました。期待に応えるべく社員一同、日々、全力で取組んでいます。

――開発スピードに関してはローカスブルーのストロングポイントとも言えるほど、以前から際立っていたように感じますが。

宮谷:そこは当初から力を入れていた部分です。ここ半年くらいはエンジニアの大半のリソースを「ScanX Ver. 2.0」の開発に注いでいて、「ScanX Ver. 2.0」のリリース後も、引き続き迅速にアップデートを行っていく予定です。この1年は勝負の時期と考えています。

――2022年4月には社名変更もされました。社名が「スキャン・エックス」から「ローカスブルー」に変わりましたが、新社名の由来を教えていただけますか?

宮谷:ローカスには「空間、空間、軌跡」、ブルーは「地球、宇宙」という意味が込められています。私が航空宇宙系エンジニア出身ということと、宇宙が好きなのでこのようなワードを選びました。
 
―― サービス名と社名を切り分けることにしたのには理由があるのですか?

宮谷:日本国内向けと海外でブランドを分けるなど、今後を勘案して社名を変えました。また、日本のユーザーと海外ユーザーではニーズが異なることも変更理由のひとつです。



ユーザーの声を丁寧に汲み取りながら、「ScanX Ver 2.0」を再構築していった


―― さて、2022年6月15日に「ScanX Ver.2.0」がリリースされますが、新バージョンはどういった部分が新しくなりますか?

宮谷:「ScanX Ver. 2.0」は"2.0”と謳っていますが、ゼロから作り直したものです。私たちにとっては「全く新しいプロダクト」で、すべてを見直し全社員のエネルギーを注いで開発しました。
 
「Ver. 1.0」の時は開発メンバーが数名しかおらず、需要の有無を探るためにテストリリースをして反応やフィードバックをもらうようにしていました。


想定以上に大きな反響をいただくことができて、「Ver.1.0」のリリース以降の約1年半は、ひたすらユーザーからのフィードバックに対応しつつ、新たな機能や仕様の構想をあたためて、満を持して「Ver. 2.0」に実装しました。

変更点として、まず見た目からして大きく変化しています。UIにも徹底的にこだわって作り込んでいます。旧バージョンは私がデザインを手掛けましたが、アイコンが小さかったり、フォントが統一されていなかったり……という、ちょっとした使いづらさがありました。ですので、新バージョンは、プロフェッショナルのプロダクトデザイナーをメンバーに加えて、UIを全て見直して設計しています。

新しいUI(資料提供:ローカスブルー)

―― デザインには具体的にどのような工夫が施されているのですか?


宮谷:メニューによって色を使い分けるとか、フォントサイズの大小をロジックに基づいてデザインするなどしています。プロの視点が入ったことで、多くの発見が多くありましたね。新バージョンでは初心者の方でも、より直感的に扱えるUIになっていると思います。


さらに点群属性の分類のアルゴリズムも変えて、より精度を上げています。従来は、ドローンで撮影したものは得意だったのですが、地上型3Dレーザースキャナーのデータには弱いという課題がありました。たとえば屋根のない建物が、植生に誤分類されてしまうことがありましが、「Ver. 2.0」ではその点を大きく改善しています。

平均すると16%精度が向上。「Ver.1.0」でも精度は8割近くあったため、その先より精度を上げるのは、難度の高いことでした。
 

さらに高精度な分類を目指していく予定で、今後、さまざまなアルゴリズムを実装していく計画です。一例をあげると、ディープラーニング(深層学習)を使った分類を実験していて、送電線や電柱など、これまで人力でも分類するのが難しかったようなものの、完全自動分類を目指しています。
 
最近は都市部の3次元点群データを取得する企業や団体が増えており、分類のカテゴライズが従来以上に求められるようになっていくかと思いますが、ディープラーニングにより対応できるようになります。

――都市部にあるものというと、信号などもありますよね。細かな分類ができるんですか?

宮谷:信号や車両も識別が可能になります。実証は始めており年内の実装を目指しています。
 
―― ディープラーニングということは、精度がどんどん向上していくのですか?

宮谷:そうですね。教師データで学習させ、精度を向上します。データ数が多ければいいということではなく、最適な教師データを見つけ、入れる必要があります。

弊社にはリードデータサイエンティストが所属していますので、そのメンバーが3Dデータとディープラーニングのデータを専門に扱っています。

次に紹介したい機能が、「ベースマップ機能」です。これまでは点群データをアップロードしても、それがどの場所のデータなのかがわかりにくいという声がありました。山間部などはその好例です。今回の「Ver.2.0」では地図上に3D点群データが重なって表示できるようになります。

ベースマップの上に点群データを表示(資料提供:ローカスブルー)

―― 取得した3D点群データが地図上でどこにあるのかが直感的にわかるわけですね。すごい!

宮谷:3D点群データの場所を地図上で素早く照合するのに役立つことはもちろん、発注者の方や住民の皆様への説明などにも、活用いただけるようになるかと思います。


―― 「ベースマップ機能」はデフォルトの機能なのですか?

宮谷:そうです。地図と重ねることが不要な場合は、非表示設定も可能です。ベースマップは3Dだけでなく2D表示も選択でき、俯瞰図のように固定することも可能です。


ユーザーが本当に必要としている機能が満載


――3D、2D、非表示と切り替えられるのですね。ユーザーへの配慮が感じられます。

宮谷:ユーザーの利用方法をうかがっていると、現状、3D点群データの属性分類とデータ共有がもっとも使われているようです。リアルタイムにデータを共有できるのはクラウド(SaaS型サービス)の良さですよね。

データ共有(資料提供:ローカスブルー)

あと、こちらもユーザーのご要望から実装したのですが、点群データの「共有」をするにしても、「オープンな共有」と「クローズドな共有」の2種類のニーズがありました。そこで「Ver. 2.0」では、データ共有の相手を招待制にしたクローズドな共有機能を設けています。

―― Google ドライブでもありますよね。これはありそうでなかった機能ですね。

宮谷:アカウントページで共有先設定を選択。「編集者」「閲覧者」と権限を付与できます。工期や用件が終わったら共有を終了させるという使い方も可能です。

データ共有画面(資料提供:ローカスブルー)

―― シェア相手だけでなく、共有期間の限定という使い方もあるのですね。

宮谷:たとえば下請先企業に頼んでいた案件が終了したタイミングや、A社とB社と別で取引があり、すべてのデータがオープンな状況は困るとか、リンクずっと存在しなくてよいなど。ユーザーから共有機能へのご要望は上がっていたんです。

――なるほど。現場の声をしっかりと反映されているんですね。

宮谷:さらに「Ver.2.0」では、国交省指定の形式で帳票が出力できるようにもなっています。こちらもユーザーからのご要望を受け「Ver.2.0」に実装しました。

出来形帳票(資料提供:ローカスブルー)

点群データと設計データをScanX(スキャン・エックス)へアップロードし、わずか数クリックで出来形合否判定表を生成できます。工種は今後増やしていく計画です。この他にもユーザーからの声で様々な部分を改善し、実装しています。
 
―― 新しい機能が満載ですね。データをアップロードする際に改善された点もありますか?

宮谷:データのアップロードに関して、インターネット回線が途切れると、また最初からやり直さなければならないというトラブルはよくありますよね。

たとえば何十ギガという大容量な点群データをアップする場合に、チャンクといってデータを分割してアップロードしていく手法にしているため、最初からやり直しではなく、続きからアップロードできます。さまざまな現場でご利用いただいているので、なるべくスムーズにScanX(スキャン・エックス)へデータを上げられるようにしています。



他にもご要望の声が多い、様々なファイル形式への対応も考えています。3DモデリングソフトやBIM/CIM系のCADソフトに、今後対応させていく予定です。

さまざまな3Dデータ対応に向け実証実験中(資料提供:ローカスブルー)

――対応する拡張子の種類が増えると?

宮谷:そうです。複雑な構造物のモデルに点群データを重ねるといった使われ方も多く、他の拡張子データと重ねて共有できる点が、クラウドのメリットだと改めて感じています。

また土木・建設業界は使われているフォーマットの種類が多く、2次元データと3次元データが入り交じっているのが現況です。それらをすべて同じプラットフォームで共有できるようになると、業界の皆さんにとって効率化が図れるのではないかと考えています。


ニーズに合った機能が揃う。プランの切り替えも可能


――気になる新たなプラン内容についても教えていただけますか。

宮谷:月額29,800円(税込)「ベーシックプラン」は、点群の基本的な処理ができます。「プロプラン」はCADで作成した設計データなどのインポートや帳票を出せます。「エンタープライズプラン」では、膨大なデータ容量をアップロードしたいというユーザーのニーズに対応できるようにしています。
 
いずれも1ライセンスを複数のユーザーで利用できるというのが大きな特長です。1ライセンスの価格を抑え、同時に複数名でデータ処理や共有ができるのでコストパフォーマンスは良いと言えるのではないでしょうか。


――オプションで「編集者」や「閲覧者」のIDの追加も可能なんですね。出来形帳票出力は「プロ」以上のプランで利用可能となっていますね。

宮谷:例えば測量会社様などの、点群データのフィルタリング機能だけを利用されている方向けには、「ベーシックプラン」が、建設コンサルタント様や建設会社様のような方々には「プロプラン」に含まれる機能のニーズが多いかと思います。プランは用途や時期によって月ごとに変えることも可能です。案件によって必要な機能と使わない機能などがあると思いますので、プランを選べるようにしました。
 

宮谷:
「ScanX Ver.2.0」を3D点群処理のエントリープロダクトのような感覚で手に取っていただけることを目指しています。ICTツールの導入が初めてだとか、点群ソフトを扱ったことがないとか、初めての方にもわかりやすく、使いやすくすることをかなり意識して設計しています。

――今後、これまで以上に慌ただしくなりそうですね。

宮谷:そうですね(笑)。「Ver.2.0」リリース後は先に申し上げた実証実験中の機能実装や、点群データの利活用がもっと広がるよう、セミナー開催など対外的な活動にも注力していきます。




さらに、ローカスブルーにジョインしてくれる仲間も募集しています。営業やバックオフィス、エンジニア、土木業界経験者など。「ローカスブルーメンバーとしてScanXを一緒に育てていきたい」という気概のある方が加わってくれると嬉しいですね。


――最後に「ScanX Ver.2.0」リリース以降の展望はどのようにお考えですか?

宮谷:3D点群データだけでなく他のさまざまなデータもScanX(スキャン・エックス)で扱えるようにしていきたいと考えています。あとは先ほどお伝えしたようにScanX(スキャン・エックス)にディープラーニングなどのより高度な点群分類機能を実装し、さらなる精度向上も目指していきます。


また、近年メタバースが盛り上がっていますよね。3Dにはさまざまなタイプがありますが、ScanX(スキャン・エックス)がそれらにも関わっていければという想いはあります。


―― 「ScanX Ver.2.0」のリリースもワクワクしますが、その後の展開も非常に楽しみです。

(ローカスブルーのメンバー(一部))


【編集部 後記】

2020年9月に「ScanX(スキャン・エックス)」をリリースして以降、次への展開に向けて市場反応や顧客ニーズに耳を傾けてきたという宮谷氏。「ユーザーの期待に応えられるものを、スピーディに届けたい」という熱意が込められた「ScanX Ver.2.0」は6月15日にリリースだ。

高性能でありながら点群処理や3D初心者にも扱いやすいよう設計されているとのことで、その使い心地に期待が高まる。また、宮谷氏曰く、ローカスブルーの今後についてはさまざまな展望があるという。「ScanX Ver.2.0」を皮切りにさらなる飛躍を目指すローカスブルーの展開にも引き続き注目したい。


ローカスブルー株式会社
東京都渋谷区渋谷1-3-9 ヒューリック渋谷1丁目ビル
https://scanx.jp/



◎ 撮影時のみマスクを外していただきました。

取材・編集:デジコン編集部/文:三浦 るり/写真:赤木 遥
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WRITTEN by

三浦 るり

2006年よりライターのキャリアをスタートし、2012年よりフリーに。人材業界でさまざまな業界・分野に触れてきた経験を活かし、幅広くライティングを手掛ける。現在は特に建築や不動産、さらにはDX分野を探究中。
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