建材のメーカー兼商社である桐井製作所と日本初のPropTech(不動産テック)特化型ベンチャーキャピタルを運営するデジタルキャピタルは、建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)促進に向けて、建設業者やスタートアップなどが交流できるオープンなコミュニティ「ConTech LAB(コンテックラボ)」を2020年10月に共同設立したばかりだ。
今回は、桐井製作所の社員であり、ConTech LABの運営メンバーである對馬達朗氏と末広一樹氏に、同プロジェクトの設立目的や今後について話を伺った。
ーーまずは ConTech LABがスタートした背景を教えていただけますか?
末広氏 :当社は建築用の鋼製下地材メーカー兼内装資材の商社で、お客様である建設業者の方とよく建設業界の将来について話をします。その中でお客様が感じている危機感として多いのが、建設従事者の働き手不足と事業承継の難しさ、そして同業者間の分断といった三つの問題です。
同業者間の分断というのは、建設業界の中でも、例えば住宅と施設、マンションと戸建てなど、少しでも業種が違うと交流がなく、情報の共有が不足しているんです。こうした建設業界の問題を共有・検討し、解決していくために、ConTech LABが始動しました。生産性の向上という点でも、業界に新しいIT技術を積極的に取り入れていくことが重要です。
そこで、建設業者やスタートアップがどんどん交流・連携できるコミュ二ティをつくって、建設業界のイノベーションを促進していこうというのが発端です。
ーー ConTech LABでは、どんな取り組みをされているのでしょうか。
對馬氏:今は最初のフェーズとして、ミートアップやセミナーなどのイベントを開催し、建設業界とスタートアップなどの交流の場を設けたり、建設DXの情報を発信したりしています。
そして次のフェーズとして、国内外のIT技術についてリサーチした上で、現在120社以上ある建設系スタートアップをマッピングしていこうと考えています。どんなスタートアップがあるのかわからない建設業界の方も多いため、各社がもつ技術・コンセプトなどをわかりやすくし、完成したWEBページ( https://www.contechlab.jp/ )で随時公開していく予定です。
ゆくゆくは、スタートアップと建設業者のマッチングやスタートアップの立ち上げ支援など、業界のイノベーションをサポートできる体制をつくりたいと思っていますね。
ーー なるほど。建設業界はスタートアップがまだ少ないイメージがありますが、この先、建設業界を変えていく可能性はすごいと感じます。
對馬氏:全く同感です。建設業界では、IT技術やスタートアップ企業についての情報不足がネックとなって、スタートアップが増えていないのではないかと思うんです。
また、ITリテラシーの面では、元請けと下請けで大きなギャップが生じていると感じています。例えば大手ゼネコンなどの工事を発注する一次元請け側はリテラシーをどんどん蓄積していく一方で、下請け会社ではあまり浸透していないという。
ーーそういった建設業界内でのITリテラシーの差に対して、どういうアプローチをしていくのでしょうか。
對馬氏:まずは現場の方が、IT技術やスタートアップについて把握できる環境をつくることに尽きると思うんですね。僕らは、現場で働く方々がITリテラシーが低いとは考えていません。実際の現場を見ても、レーザーで測量や計測をしたり、タブレットで図面を見てLINEで発注したり、最新の工具を使いこなしていたりと、便利だと思った技術はすぐに導入する柔軟性をお持ちです。
ただ、IT技術の情報が目の前に届いていないことが多いんです。だから工具のカタログのように、ConTech LABを通してIT技術の網羅的な情報を発信し、セレクトしやすい仕組みができないかと。「これを試してダメなら次はこれを試そう」のように、ライトな感覚でICT化にトライできる形になるのが理想的ですね。
末広氏:あとは、現場の建設従事者の方に向けて、いかにわかりやすくIT技術の情報を発信できるかというのも、一つの課題としてありますね。
ーー ConTech LAB設立時の記事を拝見したのですが、建設業界には「キツイ、汚い、危険」という“3K”に加えて「勘、根性、気合い、経験」などの“K”も根付いていると読んで、なるほどと思いました。そういった業界の問題を感じますか。
對馬氏:建設業界でよく言われるキツイ、汚い、危険といった“3K”は労働環境の問題ですが、勘、根性、気合い、経験とった“K”は個人のスキルにひもづくものです。実際に仕事をする中で勘や経験といったファクターは重要ですが、IT技術でそれらを助力できるのではないかと思いますね。
對馬氏:現場の方は「今までこれでやってきたから」という経験があるので難しいところですが、業界全体が人手不足を抱える中で、このまま属人的な仕事を続けるのは厳しいものです。新しいIT技術は導入できないと思っている方のマインドをシフトしてICT化へと後押しするという点でも、ConTech LABがお手伝いできるのと思っています。
ーー ConTech LABでのICT化や建設DX促進のための啓蒙活動と、会社として利益を出すこととのバランスは難しいのではないでしょうか。
末広氏:私は桐井製作所の営業担当ですが、現場の声を聞いて今後の課題を吸い上げるという意味では、ConTech LABでも桐井製作所でも一緒です。DXやICT化への不安や悩みは当社のお客様だけではなく、建設業界の皆様が共通で抱える部分でもあるので、そこをサポートすることが業界全体のサポートにもつながると思います。
對馬氏:私は桐井製作所では技術支援の部署にいますが、ConTech LABはその延長にあるイメージです。お客様が困っている分野が、物理的な面かIT分野かの違いだけですね。お客様は「DXやICT化に取り組まなければいけない」と感じていても、具体的にどうすればよいかは知らないし、どこに相談すればいいのかもわからない。そんな時に私たちが一番近い相談相手として良いアドバイスができればと思っています。
ーー 最後に、今後の目標をお聞かせいただいてもいいですか。
對馬氏:建設業界で仕事をする上で不便な部分を、IT技術を活用して変えていきたいですね。建設現場の方々にも良い技術を知っていただきたいですし、会社としてもお客様に喜んでいただくことが一番嬉しいことですので。そして建設業界の古いイメージを変え、若い方にとっても格好良いと思える業界にしたいと思っています。
末広氏:ConTech LABを通して、建設業者からスタートアップまで様々な方と意見を交わしながら、建設業界のICT化やDXの普及に力を入れていきたいです。自分自身も最先端のIT技術をどんどん学んでいきたいですね。
【編集部 後記】
2020年10月に設立され、建設業者からもスタートアップ企業からも大きな期待が寄せられる、ConTech LAB。国交省や大手ゼネコンなどの有識者による建設DXをテーマにしたオンラインセミナーも好評だ。この先も進化し続け、建設スタートアップの増加や建設DXの促進に大きく貢献していくに違いない。
今回は、桐井製作所の社員であり、ConTech LABの運営メンバーである對馬達朗氏と末広一樹氏に、同プロジェクトの設立目的や今後について話を伺った。
情報不足を解消。セミナーやスタートアップのマッピングも
ーーまずは ConTech LABがスタートした背景を教えていただけますか?
末広氏 :当社は建築用の鋼製下地材メーカー兼内装資材の商社で、お客様である建設業者の方とよく建設業界の将来について話をします。その中でお客様が感じている危機感として多いのが、建設従事者の働き手不足と事業承継の難しさ、そして同業者間の分断といった三つの問題です。
同業者間の分断というのは、建設業界の中でも、例えば住宅と施設、マンションと戸建てなど、少しでも業種が違うと交流がなく、情報の共有が不足しているんです。こうした建設業界の問題を共有・検討し、解決していくために、ConTech LABが始動しました。生産性の向上という点でも、業界に新しいIT技術を積極的に取り入れていくことが重要です。
そこで、建設業者やスタートアップがどんどん交流・連携できるコミュ二ティをつくって、建設業界のイノベーションを促進していこうというのが発端です。
ーー ConTech LABでは、どんな取り組みをされているのでしょうか。
對馬氏:今は最初のフェーズとして、ミートアップやセミナーなどのイベントを開催し、建設業界とスタートアップなどの交流の場を設けたり、建設DXの情報を発信したりしています。
そして次のフェーズとして、国内外のIT技術についてリサーチした上で、現在120社以上ある建設系スタートアップをマッピングしていこうと考えています。どんなスタートアップがあるのかわからない建設業界の方も多いため、各社がもつ技術・コンセプトなどをわかりやすくし、完成したWEBページ( https://www.contechlab.jp/ )で随時公開していく予定です。
ゆくゆくは、スタートアップと建設業者のマッチングやスタートアップの立ち上げ支援など、業界のイノベーションをサポートできる体制をつくりたいと思っていますね。
業界内のリテラシーの差を埋めていく
ーー なるほど。建設業界はスタートアップがまだ少ないイメージがありますが、この先、建設業界を変えていく可能性はすごいと感じます。
對馬氏:全く同感です。建設業界では、IT技術やスタートアップ企業についての情報不足がネックとなって、スタートアップが増えていないのではないかと思うんです。
また、ITリテラシーの面では、元請けと下請けで大きなギャップが生じていると感じています。例えば大手ゼネコンなどの工事を発注する一次元請け側はリテラシーをどんどん蓄積していく一方で、下請け会社ではあまり浸透していないという。
ーーそういった建設業界内でのITリテラシーの差に対して、どういうアプローチをしていくのでしょうか。
對馬氏:まずは現場の方が、IT技術やスタートアップについて把握できる環境をつくることに尽きると思うんですね。僕らは、現場で働く方々がITリテラシーが低いとは考えていません。実際の現場を見ても、レーザーで測量や計測をしたり、タブレットで図面を見てLINEで発注したり、最新の工具を使いこなしていたりと、便利だと思った技術はすぐに導入する柔軟性をお持ちです。
ただ、IT技術の情報が目の前に届いていないことが多いんです。だから工具のカタログのように、ConTech LABを通してIT技術の網羅的な情報を発信し、セレクトしやすい仕組みができないかと。「これを試してダメなら次はこれを試そう」のように、ライトな感覚でICT化にトライできる形になるのが理想的ですね。
末広氏:あとは、現場の建設従事者の方に向けて、いかにわかりやすくIT技術の情報を発信できるかというのも、一つの課題としてありますね。
個々のスキルは、テクノロジーで支えられる
ーー ConTech LAB設立時の記事を拝見したのですが、建設業界には「キツイ、汚い、危険」という“3K”に加えて「勘、根性、気合い、経験」などの“K”も根付いていると読んで、なるほどと思いました。そういった業界の問題を感じますか。
對馬氏:建設業界でよく言われるキツイ、汚い、危険といった“3K”は労働環境の問題ですが、勘、根性、気合い、経験とった“K”は個人のスキルにひもづくものです。実際に仕事をする中で勘や経験といったファクターは重要ですが、IT技術でそれらを助力できるのではないかと思いますね。
對馬氏:現場の方は「今までこれでやってきたから」という経験があるので難しいところですが、業界全体が人手不足を抱える中で、このまま属人的な仕事を続けるのは厳しいものです。新しいIT技術は導入できないと思っている方のマインドをシフトしてICT化へと後押しするという点でも、ConTech LABがお手伝いできるのと思っています。
ConTech LABは、お客様サポートの延長にあるもの
ーー ConTech LABでのICT化や建設DX促進のための啓蒙活動と、会社として利益を出すこととのバランスは難しいのではないでしょうか。
末広氏:私は桐井製作所の営業担当ですが、現場の声を聞いて今後の課題を吸い上げるという意味では、ConTech LABでも桐井製作所でも一緒です。DXやICT化への不安や悩みは当社のお客様だけではなく、建設業界の皆様が共通で抱える部分でもあるので、そこをサポートすることが業界全体のサポートにもつながると思います。
對馬氏:私は桐井製作所では技術支援の部署にいますが、ConTech LABはその延長にあるイメージです。お客様が困っている分野が、物理的な面かIT分野かの違いだけですね。お客様は「DXやICT化に取り組まなければいけない」と感じていても、具体的にどうすればよいかは知らないし、どこに相談すればいいのかもわからない。そんな時に私たちが一番近い相談相手として良いアドバイスができればと思っています。
ーー 最後に、今後の目標をお聞かせいただいてもいいですか。
對馬氏:建設業界で仕事をする上で不便な部分を、IT技術を活用して変えていきたいですね。建設現場の方々にも良い技術を知っていただきたいですし、会社としてもお客様に喜んでいただくことが一番嬉しいことですので。そして建設業界の古いイメージを変え、若い方にとっても格好良いと思える業界にしたいと思っています。
末広氏:ConTech LABを通して、建設業者からスタートアップまで様々な方と意見を交わしながら、建設業界のICT化やDXの普及に力を入れていきたいです。自分自身も最先端のIT技術をどんどん学んでいきたいですね。
【編集部 後記】
2020年10月に設立され、建設業者からもスタートアップ企業からも大きな期待が寄せられる、ConTech LAB。国交省や大手ゼネコンなどの有識者による建設DXをテーマにしたオンラインセミナーも好評だ。この先も進化し続け、建設スタートアップの増加や建設DXの促進に大きく貢献していくに違いない。
WRITTEN by
いま注目の建設スタートアップ
- スタートアップと建設事業者をつなぐ、新たなコミュニティ 「ConTech LAB」設立
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