コラム・特集
高橋 奈那 2021.6.15

【CSPI-EXPO2021レポート】多彩な機能を搭載した、測量系ソリューションを提供する注目企業

2021年5月12日(水)〜14日(金)に幕張メッセで開催された建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO)。建設機械や測量機器BIM/CIMをはじめとするソフトウェアサービス会社など、次世代の土木・建設業界を担う数々の企業が、最先端技術を持ち寄り、一堂に会した。

本記事では新しいアプローチで効率化をもたらす、ICT測量ソリューションを紹介していく。

測量に革命が起きた!高精度3次元測量も、iPhoneで手軽に。「OPTiM Geo Scan」



最初に紹介する「OPTiM Geo Scan」は、iPad Pro 2020年(セルラーモデル)、iPhone 12 Pro / Pro MAXで手軽に点群データを収集できる、高精度3次元測量アプリケーションだ。LiDARセンサーと位置情報を組み合わせ、点群計測が可能となっている。


その方法もいたって簡単だ。まず、測量開始ボタンをタップすると、すぐにLiDARによる点群計測が開始される。スマホをかざして計測しながら現場を歩き回り、その間に適宜、地面にGNSSレシーバーを置いて、スマホのアプリ画面上に写るこのレシーバーをタップ。緯度・経度情報が座標として点群に追加される。この一連の動作を繰り返し、確認ボタンをタップすれば、計測は完了だ。

これなら経験の浅い人でも、ひとりで測量が可能だろう。それどころか、未経験でも測量ができそうだ。


「OPTiM Geo Scan」を提供するオプティムは、同製品を開発するにあたり、小規模な現場でも活用しやすい価格設定にこだわったという。アプリケーションとGNSSレーザーを、1現場あたり月額27,000円〜(年間契約の場合、3現場での同時利用前提)のサブスプリクションサービスとして提供される。設備投資がハードルになっていた中小事業者でも、気軽にICT測量を導入できそうだ。

>OPTiM Geo Scan


カンタン操作ですぐに役立つ現況データを計測 TOPCON「杭ナビ」「杭ナビショベル」



測量機器「杭ナビLN-150」は、「誰でも一人で簡単に3次元測量ができる」というコンセプトのもと開発された測量システムだ。杭ナビとスマートフォンがあれば、測量作業を省力化することができる。


主な仕様シーンは2つ。杭ナビ本機に設計データを取り込み、現場でオペレーターを誘導する活用方法。もう一つは、施工現場の現況データを測量する方法だ。

測定範囲が広く、高低差のある現場にも対応しているため、測量機器の移動回数を削減することができる。操作はAndroidを搭載したスマホなどで行うため、杭ナビ本体から離れた場所からでも計測地点を細かく設定することができる。

それだけではない。杭ナビ本体をMGセンサー「杭ナビショベル」として活用できるというから驚きだ※。

一般的なICT施工で位置情報の認識に使用するGNSSの代わりに、現場に設置された杭ナビが位置情報と建機の刃先位置を認識し、施工箇所へと誘導する。


杭ナビひとつでICT測量とICT施工がどちらにも活用することができる。また、6t未満の小型ショベルにも搭載可能というスペックは、幅広い中小事業者のICT化を促進する助けとなるだろう。

初代杭ナビは販売数およそ1万台に登り、多くの事業所でICT測量を採り入れるきっかけとなった。二代目となる杭ナビLS-150により、ICT施工が広まる可能性も高いのではないだろうか。

※ チルトセンサーや360°プリズムセンサー、コントローラーなどの追加購入が必要。


稼働時間が大幅改善 アミューズワンセルフ「ハイブリットUAV・グリーンLS」



株式会社アミューズワンセルフが、ガソリンエンジンを搭載したハイブリットUAVを独自開発。このドローンの最大の特徴は、稼働時間の長さだ。ガソリンを燃料とした発電機が電力を蓄えることで、飛行可能時間を飛躍的に伸ばしたのだ。30分の連続飛行が可能な一般的なUAVに対し、当ドローンなら最大6時間の連続飛行が可能になる(※ペイロードなしの場合)。


さらに同社は、グリーンレーザースキャナ「TDOT GREEN」も開発。グリーンレーザースキャナ測量には、水中透過性の高い波長のレーザーを照射し、地形データ点群を計測するという特徴がある。「TDOT GREEN」とハイブリットUAVを併用することで、沿岸域の防災計画や港湾開発に役立てることができるだろう。

計測した点群を自動で鮮明なデータに。 PENTAXの「地上型3Dレーザースキャナ」



PENTAXの「地上型3DレーザースキャナS-3180V」は、カメラ画像と点群を融合させた高精細三次元データが特徴だ。

320°縦回転する回転ミラーと内蔵型カメラi-cam、そして360°回転する測量機器本体が、一度に広範囲のスキャンを行う。


取得した点群データは、i-camで撮影したHDR(ハイダイナミックレンジ)画像をもとにカラー化し、まるで写真のような鮮明さで細部まで記録される。i-camにはCMOSカメラが内蔵されているため、測量現場の明暗に左右されることなく、適正露出でHDRパノラマ画像を生成することが可能だという。

スキャンデータは内蔵フラッシュメモリに保存され、さまざまなファイル形式で書き出し・利用することが可能だ。近年増加傾向にあるクラウド型にはない、独自性が光る。オフライン独立型という特徴は、森林や山間部などの過酷な状況で強みを発揮するだろう。

コンパクトな端末にあらゆるデータを集約 Nikon Trimble「Trimble Site Vision」


「Trimble Site Vision」は、測量・設計・施工に活用できる高精度屋外ARシステムだ。


スマートフォン、バッテリー内蔵のハンドル、そしてGNSSアンテナ一体型クレードルという、片手に収まるコンパクトさが特徴だ。主な機能は、スマートフォンのカメラで現場を移すだけで、画面上に設計データを投影する、というもの。

GNSSで得た位置情報に設計データを重ね合わせることで、現況データから三次元データを作成するプロセスを、まるごと省略することができる。


事前準備として、建設クラウドサービス「Trimble Connect」に位置情報ファイルと3次元設計データをアップロードしておき、現地で「Site Vision」にデータをダウンロードすれば、すぐにAR機能を利用することができる。

ハンドル部分にはEDM距離計も内蔵されている。スマホ画面上で計測ポイントをタッチ選択すれば、端点測定や面積・勾配などの値をその場で計測することができる。

また、現場でダウンロードしたAR表示した設計図データを、スマホ上で修正することも可能だという。いずれは、修正したデータをその場でICT施工に利用することも想定しているという。この機能を活用すれば、将来的にはリモート環境で設計データの修正や施工指示ができるようになるだろう。事務所や自宅にいながら施工管理ができる未来も、遠くはなさそうだ。

イメージング技術と高精度GNSS
Leica Geosystems「BLK2GO・MS60・GS18I」




最後に、Leica Geosystemsから発表された3つの製品を紹介する。

展示ブースでは、ハンディ型イメージングレーザースキャナーBLK2GOが紹介されていた。映像と点群データを同時に収集する、主に建造物を扱う現場での使用を想定した測量機器である。端末を手で持ち、スタートボタンを押して現場を歩くだけで、点群と映像による3次元デジタルデータとして現況データが計測される。特別なスキルは必要ない。


撮影される映像データは、映画制作の現場で活用されているほど高い鮮明さだという。建設業や不動産業で活用されているというが、測量前の調査のプロセスなどにも役立つのではないだろうか。


CSPI-EXPO 2021の最終日(5月14日(金))に開催されたセミナーでは、MS60とGS18Iの2製品が紹介された。スキャナ一体型TS 「MS60」は、TS機能を使いながら同時にレーザースキャナで点群を取ることのできる測量端末だ。


端末のディスプレイ上で位置を選択しながら計測することができるので、不要な地点の点群を後々削除する“ごみ処理工程”が不要に。データ作成のプロセスが効率化される。

計測時に予め設計データを読み込んでおけば、完成予定像を本機のディスプレイ上でAR表示することも可能だ。現況データと、読み込んだ設計データの差分を使えば、日々の作業進捗チェックなどにも役立つだろう。

「GS18I」は、GNSS・IMU・カメラ機能を向上させた、測量用GNSS受信アンテナだ。端末をポールの先端に設置し、Leica Captivate搭載のLeica CS35タブレットやLeica CS20コントローラーと組み合わせて使用する。


大きな特徴の一つが、カメラ機能だ。UAV写真測量と同じ要領で、現場を歩きながら撮影した画像から、点群データを作成することができる。計測データの処理・管理を行うソフトウェアLeica Infinityに取り込むと、30分ほどでGNSSによる測位データと、写真撮影で得られた点群データを融合させた3Dデータが完成する。

さらに、チルト機能にも注目したい。これまでGNSS測位技術を活用した計測作業には、受信機を水平に保つため、水準器を活用しながらポールを地面に立てるという属人的な技術が必要だった。IMUが内蔵されている本機の場合、たとえポールが斜めになっていたとしても水平レベルを計算し、計測データを自動補正することができる。チルト機能を活用すれば、たとえ測量現場に大型車が駐車していても、駐車スペースの地面にポールの先をあてることさえできれば、その地点の計測が完了する。

カメラやレンズなど光学製品の分野で培われた技術が、土木・建設の現場の省人化、省力化を支えている。これらの製品はすでに、人の立ち入りが困難な用水路や、広域に及ぶ農耕地、草木の生い茂る森林地帯などの測量に、広く活用されているという。


【編集部 後記】

製品の価格や活用シーンの幅広さ、操作性など、現場目線で開発された製品は、どれも利便性の高いものばかりだ。中小事業者がICT技術を導入するために、いかにしてハードルを下げるかという、各社の覚悟がひしひしと伝わってきた。

測量はICT技術導入の入り口とも言える重要なプロセスでもある。

興味はあるが、何から手を付けていいのか分からない。そんな事業者の方は、本記事で紹介しているサービスの中から、検討してみてはいかがだろうか。


取材・文:高橋奈那 /編集:デジコン編集部 / 写真:宇佐美亮
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WRITTEN by

高橋 奈那

神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。

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