コラム・特集
平田 佳子 2026.5.8
大人気シリーズ!【いまさら聞けない?】測量のことイチから解説 〜 連載記事一覧 〜

RTK測位はどこで使えるの?〜 衛星配置・上空視界・電離層など環境条件について解説!〜

CONTENTS
  1. RTK測位を成立させる環境条件とは?
  2. 受信機(レシーバー)周辺の環境が大切 〜 上空視界・衛星配置・マルチパス 〜
    1. 上空視界の確保がRTK測位の前提
    2. 衛星配置の指標。PDOPの考え方
    3. 電子基準点が示す「理想的な観測条件」
    4. マルチパス。RTK測位の隠れた精度劣化要因
  3. 大気層と太陽活動。RTK測位への影響
    1. 電離層が衛星電波に与える影響
    2. 太陽活動の活発化がもたらす新たな課題
    3. 気象条件(雨・雪等)の影響
  4. みちびき7機体制とRTK測位のこれから
    1. 内閣府が進める準天頂衛星システムの拡充
  5. 【実践編】高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」で高精度!しかも、誰でも簡単にRTK測位ができる!

RTK測位を成立させる環境条件とは?


RTK(リアルタイムキネマティック)測位は、衛星からの搬送波位相を利用してセンチメーター級の高精度位置情報を取得する技術である。

(画像元:国土地理院WEBサイトより引用)

しかし、RTK測位はあらゆる環境で同じ精度を発揮できるわけではない。

衛星からの電波がどのように受信機に届くかという物理的条件が、RTK測位の成否を大きく左右するのである。

国土地理院、内閣府などの公式情報を整理すると、RTK測位の環境条件は大きく以下の5つに分けられる。

  • 上空視界(衛星の可視性)
  • 衛星配置(PDOPなどの幾何学的指標)
  • 電離層(電波が通過する大気層の状態)
  • 太陽活動(電離層への影響)
  • マルチパス(建物や地表での電波反射)

これらの要因はそれぞれ独立しているわけではなく、相互に関連してRTK測位の精度に影響を及ぼす。

本記事では、各要因の内容と、現場での実装にあたって留意すべきポイントを解説していく。

受信機(レシーバー)周辺の環境が大切 〜 上空視界・衛星配置・マルチパス 〜


上空視界の確保がRTK測位の前提


RTK測位は、衛星からの電波を受信できることが前提となる。

そのため、上空視界(衛星が見える範囲)が確保されていることが、最も基本的な環境条件である。

国土地理院の「ネットワーク型RTK-GPSを利用する公共測量作業マニュアル(案)」(平成17年6月)では、GPS衛星の最低高度角を15°とすることが標準とされている。

(画像元:国土地理院WEBサイトより引用)

ただし、上空視界の確保が困難な場合は、最低高度角を30°まで緩和することができるとも記述されている。

これは、低い角度の衛星信号を採用しないことで、マルチパスなど低品質な電波の影響を避けるための運用上の措置である。

いずれの場合も、上空視界が十分に確保された環境がRTK測位の前提条件となる。

ビルや高層構造物に囲まれた現場、樹木が密集した山林の中、トンネル内や地下構造物などでは、上空視界が遮蔽され、RTK測位の精度が低下するリスクがある。

衛星配置の指標。PDOPの考え方


上空視界が確保されていても、衛星の「配置」が悪ければ、RTK測位の精度は低下する。

衛星配置の幾何学的な良し悪しを示す指標が「PDOP」(Position Dilution of Precision/位置精度低下率)である。

PDOPが小さいほど衛星配置が良好で、RTK測位の精度が高くなる。

理想値は1とされており、実務ではこの値を可能な限り小さく保つことが望ましいとされている。

(画像元:国土地理院/GEONETの高度化測地観測センター地殻監視課地殻監視課資料より引用)

衛星が空間的に分散して配置されている時間帯では、PDOPは良好となる。

逆に、複数の衛星が一方向に偏って分布している場合、PDOPは悪化し、特に高さ方向の測位結果に大きな変動が生じる。

衛星配置の状態は時間とともに変化するため、RTK測位の精度を最大化するには、PDOPの良好な時間帯を選んで観測することが現場では行われている。

電子基準点が示す「理想的な観測条件」


国土地理院が運用する電子基準点(GEONET)は、全国に約1,300箇所整備された高精度測位の拠点である。

電子基準点は高さ約5mのステンレス製のピラー構造で、上部の白い半球の中にGNSS衛星から電波を受信するアンテナが収納されている。

(撮影:宇佐美亮)

このピラー構造の意義は、上空視界を確保するとともに、マルチパスによる品質悪化を避けることにある。

つまり、RTK測位を高精度に行うには、地表からアンテナまでの高さを確保し、周囲の建物・樹木・地表からの反射波を最小化することが重要なのだ。

(撮影:宇佐美亮)

夏季は太陽の日射により南を向いた側でのみ熱膨張による変形が生じるとされ、それを回避するための覆いも順次整備されているという。

このような構造物としての配慮が、長期的なRTK測位の安定性を支えている。

マルチパス。RTK測位の隠れた精度劣化要因


マルチパスとは、衛星からの電波が建物や地表で反射し、本来の直接電波と反射波の両方が受信機に到達することで、信号の位相に誤差が生じる現象である。

国土地理院では、電子基準点周辺の樹木の生長等により、年を経るに従い受信環境が変化し、マルチパス等の影響が大きくなる場合があると指摘している。


「仰角マスク」を作成することで、マルチパス源を識別する技術も検証されている。

「仰角マスク」は、受信機の設定機能の一つで、「地平線に近い(角度が低い)衛星の電波を使わないようにする」フィルタリング機能である。

国土地理院は電子基準点周辺の樹木のような周囲の構造物・植生がマルチパス源となり得ると指摘しており、実装現場でも周囲に建物・反射体・樹木などがある場合には、マルチパスによる精度劣化が発生する可能性がある。

大気層と太陽活動。RTK測位への影響


電離層が衛星電波に与える影響


衛星からの電波は、地球の大気層(電離層と対流圏)を通過して受信機に到達する。

この通過の際、電波の伝播速度が変化し、衛星からの距離に誤差が生じる。
これが「電離層遅延」と呼ばれる現象である。電離層遅延は、衛星測位システムの誤差要因の一つとして広く認識されている。

RTK測位では、基準局と移動局がほぼ同時に同じ衛星を観測することで、両局で生じる電離層遅延を相互に打ち消し合うことができる。

ただし、基線長(基準局と移動局の距離)が長くなるほど、両局で観測される電離層の状態が異なるため、打ち消し効果が弱まり、精度が劣化する傾向がある。

太陽活動の活発化がもたらす新たな課題


電離層の状態は、太陽活動の活発さに大きく依存する。

太陽活動が活発化すると、電離層中の電子量が増加し、衛星電波の伝播経路に影響を与える。

内閣府の宇宙開発戦略推進事務局が2024年10月の衛星測位WGで公表した資料では、CLAS(センチメータ級補強サービス)について「太陽活動活発化により、オープンスカイであってもFIXしづらいケースが存在」という課題が指摘されている。

つまり、空が完全に開けた理想的な現場であっても、太陽活動の状態によってはRTK測位やCLASでのFIX解の取得が困難になる時間帯があるということだ。

太陽フレアによるGPS測位への影響については、東京海洋大学などの学術機関でも研究資料が公開されている。

実装現場では、太陽活動の状態によっては、通常はFIXする現場でもFIX解の取得が困難になる時間帯があり得ることを念頭に置く必要がある。

気象条件(雨・雪等)の影響


GNSS衛星からの電波はLバンドという比較的高い周波数帯を使用しており、雨や雪などの気象現象による電波の減衰は比較的小さいとされている。

ただし、アンテナ周辺に雪が積もったり、機器の物理的な不具合が発生したりするような悪条件では、観測そのものが不安定になる可能性がある。

雨雪等の気象条件そのものよりも、上空視界、衛星配置、電離層、太陽活動の方が、RTK測位の精度に与える影響は大きいと考えられる。

みちびき7機体制とRTK測位のこれから


内閣府が進める準天頂衛星システムの拡充


日本独自の衛星測位インフラとして、内閣府が運用する準天頂衛星システム「みちびき」がある。

内閣府およびJAXAなど関連機関の公式情報によれば、2025年6月時点で初号機後継機・2号機・3号機・4号機の4機体制でサービスが提供されており、2025年2月に打ち上げられた6号機のサービス開始がまもなく予定されている。


今後は5号機、7号機の打ち上げを経て、7機体制でのサービス開始が予定されている。

これまでの4機体制では、準天頂衛星とGPSや他国のGNSSを併用することで測位を実現していた。


しかし、7機体制になることで、日本近傍では常に4機以上の準天頂衛星から測位信号を受信でき、他のGNSSが利用できない場合においても準天頂衛星システム単独での測位(持続測位)が実現可能になる。

【実践編】高精度スマホ測量「OPTiM Geo Scan」で高精度!しかも、誰でも簡単にRTK測位ができる!


今、急速に土木や建設、インフラの現場で導入が進んでいるのが、GNSSレシーバーとスマホを組み合わせたソリューション「OPTiM Geo Scan」だ。

(画像:Geo Scanで活用する高性能GNSSレシーバー )

OPTiM Geo Scanで使用する「高性能タイプ」のレシーバーは、3周波解析に対応している。

  • 上空が木々で覆われた山間部: 2周波ではFixしにくい森林の現場でも、L5信号を含む3周波を活用することで解析能力が向上し、より安定した「高Fix」を実現
  • 高層ビルが立ち並ぶ都市部: マルチパス(反射波)の影響を受けやすいビル街でも、3周波とマルチGNSSの組み合わせにより、測位率を大幅に拡張

この高性能レシーバーは公共測量にも利用可能だ。

さらに、バッテリー持続時間は約20時間(標準添付)と、長時間の現場作業にも耐えうる仕様となっている。


「RTK測位に興味はあるけど、機材はどうすればいいのだろう?」と迷った場合、こうした高精度なGNSSレシーバーを活用するスマホ測量アプリを活用することが、現実的な解となるだろう。







WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。
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