標高を測量する際に行う水準測量について、今回くわしく解説していこう。
基礎中の基礎から、最近注目されているGNSSを使った水準測量まで、測量士補の国家試験でも問われるような大切なポイントを中心にまとめた。
水準測量とは、2点間の高低差や、新点の標高を求める測量のことである。水準測量は主に、直接水準測量と間接水準測量という2種類の手法があり、これに加えて近年は衛星測位システム(GNSS)を用いたGNSS水準測量が使われる。
直接水準測量は、レベル(level:水準儀)と標尺(leveling staff:スタッフ)という道具を用いる。
レベルの視準線を基準に、高さを知りたい点に立てた標尺の目盛りを読むことで高低差を確認するというやり方である。
レベルには自動レベル(オートレベル)、ティルティングレベル(チルチングレベル)、電子レベル(デジタルレベル)といった種類がある。
また、標尺とは長さの刻んである道具で、大きな直定規。バーコードが刻まれていて、レベルのボタンを押すだけで数値を表示するバーコード標尺もあり、これは電子式レベルとセットで使用する。
間接水準測量はトータルステーション(TS)などで、2点間の鉛直角と水平距離もしくは斜距離を測定し、三角法により高低差を求める。
間接水準測量は直接水準測量よりも精度が劣るが、直接水準測量を実施しにくい渡海水準測量や渡河水準測量に用いられている。
GNSS水準測量は、人工衛星を利用した測位システム(GNSS)を使って水準測量を行う手法である。
GNSS測量機を用いてスタティック法で観測を行う。既知点に基づき、3級水準点を新設する作業に使われる。
もともと、ジオイド・モデル※が提供されている地域のみで実施可能であった。
しかし、高精度なジオイド・モデルが整備されてきたこと、また、準天頂衛星を含めたGNSSによる測量の環境が整ってきたことから、公共測量でも実施されるようになった。
レベルによる水準測量を行う上で、気を付けるべきポイントを紹介する。水準測量の観測は国土交通省が定める作業規程の準則に準じて行う必要がある。
以下に紹介するポイントは、測量士補の国家試験でも問われるのでしっかりと押さえておきたい。
標石など新点の観測を行う場合は、永久標識を埋設したあと24時間以上経過してから行うことと準則64条で定められている。これは埋設後すぐでは沈下やコンクリートの硬化によりわずかに動くことがあるためだ。
測量器具の点検 レベルや標尺など器械・器具の点検調整は測量作業に着手する前から作業期間中にわたりおおむね10日ごとに行うこと(準則63条)。定期的に点検を行う必要がある。
標尺に附属する水準器(気泡管)の点検
標尺に附属する水準器の点検調整も重要である。標尺を鉛直に立てた状態で、水準器(気泡管)の中の気泡が中心になっているように視準性との平行性を確認しておく。
観測時には、標尺を前後に振って一番小さい値を読む場合もあるためである。
自動レベルや電子レベルを使用する場合、円形水準器や視準線の点検調整のほかにコンペンセータの点検を行う必要がある。
コンペンセータとはレベル本体に内蔵されている自動補正機構のことで、円形水準器を目安に器械を水平にすると、自動で器械を水平に補正してくれる。
作業規程の準則63条では、「気泡管レベルは、円形水準器および主水準器軸との平行性の点検調整を行うものとする」そして、「自動レベル、電子レベルは、円形水準器および視準線の点検調整並びにコンペンセータの点検を行うものとする」とされている。
標尺には等級がある。準則62条において、水準測量に使用できる器械・標尺の等級が定められている。測量の等級と器械・標尺の等級の違いに注意。たとえば、1級標尺は1~4級水準測量に使用できるが、2級標尺は3~4級水準測量に使用が限られる。
最大視準距離を確認
視準距離は、準則64条において最大距離が定められている。これは機器の精度と作業効率を踏まえたものである。
読定の単位
1級水準測量は標尺を0.1㎜単位で読定し、2・3・4級水準測量では1㎜単位で読定する。
直射日光を避けること
観測に際して、レベルに日光が直接当たらないように注意しなければならない。直射日光により気泡管やコンペンセータの機能が狂うためで、直射日光は避け、日傘などを利用します。
気温を測定しておく
1級水準測量では、観測開始時と修了時、固定点到達時ごとに、気温を1度単位で測定する必要がある。固定点とは、観測ミスが発生したり再測したりすることになった場合に目安となる固定した点のこと。
一定区間ごとに作り、往路・復路で共通して使用する。固定点は木杭ではなく石や金属でつくる。
記録数値は訂正してはいけない
水準測量に限らず測量全般でのルールではあるが、測定時に記録(記入)した読定値を訂正や消去することは禁じられている。
これは不正を防ぐためであり、また、どこでミスをしたのかがわかるようにするだめである。ミスが発覚した場合は、新しく記録を作成する必要がある。
較差が大きいときは再測する
準則において、往復観測を行う水準測量の較差の許容範囲が定められている。この許容範囲を超えた場合は、再測する必要がある。
往復の較差が大きいのは、往路もしくは復路、あるいは両方に誤差があると考えられるためである。
特定の水準点を用い、気象条件に注意して観測を行う
GNSS水準測量は、スタティック法という観測形式をもとに、一~二等水準点、水準測量により標高が取り付けられた電子基準点、1~2級水準点を既知点として行う。
なお、電子基準点であっても、標高が水準測量で測量されていない点は使えないことに注意したい。
また、大気の状態によって電波の遅延(大気遅延)が生じ、標高の精度に影響することがあるため、気象条件(台風・前線・集中豪雨等)の確認が必要だ。
スタティック法による基準点測量と異なり電子基準点のみを使用した場合、水準測量より標高が取り付けられた点を用いるため、座標にセミ・ダイナミック補正は適用しない。
GNSS測量を行って得た情報とジオイド・モデルという補正情報を組み合わせて標高を求める。ジオイド・モデルは国土地理院が水準測量をもとに構築したモデル(型)で、これを用いることにより3級水準点相当の標高決定に必要な精度を持つデータを求めることができる。
GNSS測量とジオイド・モデルを組み合わせることで、従来の水準測量よりも作業コストを抑えた標高決定が可能になる。
GNSSによる水準測量は“これからの技術”として、精度の向上にむけた研究が進められている。
人工衛星を活用したGNSS測量は、複雑な器械を揃える必要があるのではないか?と思うかもしれない。もちろん大小さまざまな製品があるのだが、なかにはスマートフォンで測量が行えるものがある。
「OPTiM Geo Point」はスマートフォンやタブレットで測量が行え、その作業は現地でアプリを開き画面をタップする程度。
高低差のある場所を測量する縦断測量では、トータルステーション(TS)を用いる場合と比べて97%※も工数を削減できる、超効率化が期待できる測量アプリだ。(※オプティム社が実施した調査結果による)
さらに「OPTiM Geo Point」は2次元測量のほか杭打ちにも利用できる。
事前にアプリに目標地点を登録しておき、現場でアプリを開いてGNSSレシーバーで位置情報を確認すれば、アプリ上の地図で目標地点まで誘導してくれる。
杭打ちといえば、複数人で何時間もかかるのが常であるが、Geo Pointを使えば、1人でサクサクと作業を進めることができるのだ。
現地調査で現況をパパっと把握するための測量や、境界の位置出し、地中埋設物の位置確認といった場面で気軽に利用するのにおすすめだ。
GNSS測量がひとりで手軽に行えるアプリ「OPTiM Geo Point」の導入の手順を紹介しよう。「OPTiM Geo Point」は「OPTiM Geo Scan」という3次元測量アプリのオプション機能である。
そのためまずは「OPTiM Geo Scan」の利用登録をする必要がある。「OPTiM Geo Scan」はLiDAR機能が搭載されているiPhone/iPad(proシリーズを含む)に対応している。
「OPTiM Geo Scan」を契約すれば、メインの3次元測量に加え、「OPTiM Geo Point」でGNSS測量や杭打ちが行え、測量データを図化するアプリ「OPTiM Geo Design」や面積計算アプリまでオプション機能として利用できる。
スマホ(タブレット)とGNSSレシーバーを揃えれば精度の高いGNSS測量が行える「OPTiM Geo Scan」。無料の拡張機能が充実しており、これだけで測量から図化や書類作成用のデータまで揃う。測量業務をIT化させたいとお考えの方にチャレンジしやすい製品となっている。
基礎中の基礎から、最近注目されているGNSSを使った水準測量まで、測量士補の国家試験でも問われるような大切なポイントを中心にまとめた。
水準測量とは?
水準測量とは、2点間の高低差や、新点の標高を求める測量のことである。水準測量は主に、直接水準測量と間接水準測量という2種類の手法があり、これに加えて近年は衛星測位システム(GNSS)を用いたGNSS水準測量が使われる。
直接水準測量と間接水準測量
直接水準測量は、レベル(level:水準儀)と標尺(leveling staff:スタッフ)という道具を用いる。
レベルの視準線を基準に、高さを知りたい点に立てた標尺の目盛りを読むことで高低差を確認するというやり方である。
レベルには自動レベル(オートレベル)、ティルティングレベル(チルチングレベル)、電子レベル(デジタルレベル)といった種類がある。
また、標尺とは長さの刻んである道具で、大きな直定規。バーコードが刻まれていて、レベルのボタンを押すだけで数値を表示するバーコード標尺もあり、これは電子式レベルとセットで使用する。
間接水準測量はトータルステーション(TS)などで、2点間の鉛直角と水平距離もしくは斜距離を測定し、三角法により高低差を求める。
間接水準測量は直接水準測量よりも精度が劣るが、直接水準測量を実施しにくい渡海水準測量や渡河水準測量に用いられている。
GNSS水準測量について
GNSS水準測量は、人工衛星を利用した測位システム(GNSS)を使って水準測量を行う手法である。
GNSS測量機を用いてスタティック法で観測を行う。既知点に基づき、3級水準点を新設する作業に使われる。
もともと、ジオイド・モデル※が提供されている地域のみで実施可能であった。
しかし、高精度なジオイド・モデルが整備されてきたこと、また、準天頂衛星を含めたGNSSによる測量の環境が整ってきたことから、公共測量でも実施されるようになった。
レベルによる水準測量 観測のポイント
レベルによる水準測量を行う上で、気を付けるべきポイントを紹介する。水準測量の観測は国土交通省が定める作業規程の準則に準じて行う必要がある。
以下に紹介するポイントは、測量士補の国家試験でも問われるのでしっかりと押さえておきたい。
新点(標石等)の観測のタイミング
標石など新点の観測を行う場合は、永久標識を埋設したあと24時間以上経過してから行うことと準則64条で定められている。これは埋設後すぐでは沈下やコンクリートの硬化によりわずかに動くことがあるためだ。
測量器具の点検 レベルや標尺など器械・器具の点検調整は測量作業に着手する前から作業期間中にわたりおおむね10日ごとに行うこと(準則63条)。定期的に点検を行う必要がある。
標尺に附属する水準器(気泡管)の点検
標尺に附属する水準器の点検調整も重要である。標尺を鉛直に立てた状態で、水準器(気泡管)の中の気泡が中心になっているように視準性との平行性を確認しておく。
観測時には、標尺を前後に振って一番小さい値を読む場合もあるためである。
コンペンセータの点検
自動レベルや電子レベルを使用する場合、円形水準器や視準線の点検調整のほかにコンペンセータの点検を行う必要がある。
コンペンセータとはレベル本体に内蔵されている自動補正機構のことで、円形水準器を目安に器械を水平にすると、自動で器械を水平に補正してくれる。
作業規程の準則63条では、「気泡管レベルは、円形水準器および主水準器軸との平行性の点検調整を行うものとする」そして、「自動レベル、電子レベルは、円形水準器および視準線の点検調整並びにコンペンセータの点検を行うものとする」とされている。
標尺のスペックと読定の決まり
標尺には等級がある。準則62条において、水準測量に使用できる器械・標尺の等級が定められている。測量の等級と器械・標尺の等級の違いに注意。たとえば、1級標尺は1~4級水準測量に使用できるが、2級標尺は3~4級水準測量に使用が限られる。
<機器の等級と使用できる測量>
- 1級レベル-1~4級水準測量
- 2級レベル-2~4級水準測量
- 3級レベル-3~4級水準測量/簡易水準測量
- 1級標尺-1~4級水準測量
- 2級標尺-3~4級水準測量
- 1級セオドライト-1~4級水準測量(渡海)
- 1級トータルステーション-1~4級水準測量(渡海)
- 測距儀-1~4水準測量(渡海)
- 水準測量作業用電卓-製品による
- 箱尺-簡易水準測量
最大視準距離を確認
視準距離は、準則64条において最大距離が定められている。これは機器の精度と作業効率を踏まえたものである。
<最大視準距離>
- 1級-50m
- 2級-60m
- 3・4級-70m
読定の単位
1級水準測量は標尺を0.1㎜単位で読定し、2・3・4級水準測量では1㎜単位で読定する。
直射日光を避けること
観測に際して、レベルに日光が直接当たらないように注意しなければならない。直射日光により気泡管やコンペンセータの機能が狂うためで、直射日光は避け、日傘などを利用します。
観測時に注意すべきこと
気温を測定しておく
1級水準測量では、観測開始時と修了時、固定点到達時ごとに、気温を1度単位で測定する必要がある。固定点とは、観測ミスが発生したり再測したりすることになった場合に目安となる固定した点のこと。
一定区間ごとに作り、往路・復路で共通して使用する。固定点は木杭ではなく石や金属でつくる。
記録数値は訂正してはいけない
水準測量に限らず測量全般でのルールではあるが、測定時に記録(記入)した読定値を訂正や消去することは禁じられている。
これは不正を防ぐためであり、また、どこでミスをしたのかがわかるようにするだめである。ミスが発覚した場合は、新しく記録を作成する必要がある。
較差が大きいときは再測する
準則において、往復観測を行う水準測量の較差の許容範囲が定められている。この許容範囲を超えた場合は、再測する必要がある。
往復の較差が大きいのは、往路もしくは復路、あるいは両方に誤差があると考えられるためである。
GNSS測量の観測におけるポイント
特定の水準点を用い、気象条件に注意して観測を行う
GNSS水準測量は、スタティック法という観測形式をもとに、一~二等水準点、水準測量により標高が取り付けられた電子基準点、1~2級水準点を既知点として行う。
なお、電子基準点であっても、標高が水準測量で測量されていない点は使えないことに注意したい。
また、大気の状態によって電波の遅延(大気遅延)が生じ、標高の精度に影響することがあるため、気象条件(台風・前線・集中豪雨等)の確認が必要だ。
スタティック法による基準点測量と異なり電子基準点のみを使用した場合、水準測量より標高が取り付けられた点を用いるため、座標にセミ・ダイナミック補正は適用しない。
GNSS測量での標高の求め方
GNSS測量を行って得た情報とジオイド・モデルという補正情報を組み合わせて標高を求める。ジオイド・モデルは国土地理院が水準測量をもとに構築したモデル(型)で、これを用いることにより3級水準点相当の標高決定に必要な精度を持つデータを求めることができる。
GNSS測量とジオイド・モデルを組み合わせることで、従来の水準測量よりも作業コストを抑えた標高決定が可能になる。
GNSSによる水準測量は“これからの技術”として、精度の向上にむけた研究が進められている。
GNSS水準測量にチャレンジするならスマホ測量アプリ「OPTiM Geo Point」。ひとりで!かんたんに測量ができる!
人工衛星を活用したGNSS測量は、複雑な器械を揃える必要があるのではないか?と思うかもしれない。もちろん大小さまざまな製品があるのだが、なかにはスマートフォンで測量が行えるものがある。
「OPTiM Geo Point」はスマートフォンやタブレットで測量が行え、その作業は現地でアプリを開き画面をタップする程度。
高低差のある場所を測量する縦断測量では、トータルステーション(TS)を用いる場合と比べて97%※も工数を削減できる、超効率化が期待できる測量アプリだ。(※オプティム社が実施した調査結果による)
さらに「OPTiM Geo Point」は2次元測量のほか杭打ちにも利用できる。
事前にアプリに目標地点を登録しておき、現場でアプリを開いてGNSSレシーバーで位置情報を確認すれば、アプリ上の地図で目標地点まで誘導してくれる。
杭打ちといえば、複数人で何時間もかかるのが常であるが、Geo Pointを使えば、1人でサクサクと作業を進めることができるのだ。
現地調査で現況をパパっと把握するための測量や、境界の位置出し、地中埋設物の位置確認といった場面で気軽に利用するのにおすすめだ。
無料アプリ「OPTiM Geo Point」を使うなら、3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」とセットで!
GNSS測量がひとりで手軽に行えるアプリ「OPTiM Geo Point」の導入の手順を紹介しよう。「OPTiM Geo Point」は「OPTiM Geo Scan」という3次元測量アプリのオプション機能である。
そのためまずは「OPTiM Geo Scan」の利用登録をする必要がある。「OPTiM Geo Scan」はLiDAR機能が搭載されているiPhone/iPad(proシリーズを含む)に対応している。
「OPTiM Geo Scan」を契約すれば、メインの3次元測量に加え、「OPTiM Geo Point」でGNSS測量や杭打ちが行え、測量データを図化するアプリ「OPTiM Geo Design」や面積計算アプリまでオプション機能として利用できる。
スマホ(タブレット)とGNSSレシーバーを揃えれば精度の高いGNSS測量が行える「OPTiM Geo Scan」。無料の拡張機能が充実しており、これだけで測量から図化や書類作成用のデータまで揃う。測量業務をIT化させたいとお考えの方にチャレンジしやすい製品となっている。
WRITTEN by
三浦 るり
2006年よりライターのキャリアをスタートし、2012年よりフリーに。人材業界でさまざまな業界・分野に触れてきた経験を活かし、幅広くライティングを手掛ける。現在は特に建築や不動産、さらにはDX分野を探究中。