コラム・特集
楠田 悦子 2021.2.19
モビリティジャーナリスト楠田悦子と考える、暮らしやすい街づくりとインフラ

大成ロテック代表 西田義則インタビュー 〜 高齢化社会やスマートシティへの道路からの挑戦 〜


大成建設グループの筆頭子会社である大成ロテック。経営の立て直し役として代表取締役社長に着任し、一般社団法人日本道路建設業協会(以降、道建協)会長を務める西田義則(にしだ よしのり)氏に、モビリティジャーナリストの楠田悦子が聞きました。

「日本の復興は道路から」建設業界の中では最も古い協会


楠田
:私はモビリティジャーナリストとして主に移動手段について取材してきた経歴が長く、人と移動手段に目が行きがちでした。しかし、高齢化社会のモビリティを考える上で人と移動手段と道路の3つのバランスが非常に大切だと考え、道路の重要性を再認識しています。道路の歴史を遡り、今これから、道路建設はどのようなことが重要とお考えですか。

西田社長:道建協は建設業界の中では最も古い協会で、「日本の復興は道路から」と言われ1945年の終戦の年にできました。「道路整備の推進」、「道路技術の向上」、「道路建設業の健全な発展」の3つの使命があります。

道路の歴史は非常に古く、江戸時代では参勤交代のために道路整備が進みましたし、明治維新にも道路は欠かせないインフラでした。

大成ロテック 代表取締役社長 西田義則氏

現在のようなクルマが通りやすいアスファルト舗装などの道路が日本全国に整備されたきっかけとなったのが1964年に開催された東京オリンピックでした。急ピッチに整備されたので、50年以上が経過した今,道路の老朽化が一斉に起きています。補修したり作り替えたりしていく必要があります。

例えば、弊社が入っているビルが点検や整備を熱心にするように、道路はビル以上に1日にたくさんの人が使う公共物ですから、日々の点検や整備が非常に大切です。

一歩外に出れば道路ということを忘れがち


楠田:私たちは自宅から一歩外に出れば道路ということを忘れがちです。もし自宅の前の道路が自分のクルマが通れない、歩けないとなれば、生活ができません。このように道路は生活に非常に密接ですね。


西田社長:道路を作り替えるには莫大な予算が必要になります。道路は、アスファルト、路盤、路床、路体といった何層かの層になっています。表面のアスファルトだけの補修であれば、切削して、水が入らないようにするなど、ライフサイクルが延びるようにできます。


もしメンテナンスが疎かになれば、路盤や路床まで直す必要があります。日々の点検を行ってメンテナンスを行う、つまり予防保全に努めれば、将来の維持修繕費を約30%削減できるという試算も出ています(国交省調べ)。

そのためにも道建協では、人材育成にも努めており、国交省が認定する舗装診断士の資格制度を設け、実施しています。

自治体は道路の状況を点検する予算すらない


楠田:しかし地方自治体は道路整備にかける予算が非常に少なく、点検や調査する費用すらかけられない状況にあります。これからのまちづくりと道路を描いて新しく道路を変えていく余裕もなく、市民などから上がってくる苦情への対応で大変になっていますね。幹線道路は力を入れていますが、生活道路にまで意識が行っていないように思います。

西田社長:アスファルト合材出荷量が10年前と比べて約7500万トンから約4000万トンへとおおよそ半分になっています。弊社の工場の稼働も40%に落ちました。新設道路がなくなっただけではなく、維持管理費も削られている影響ではないかと思います。

昨今の異常気象による自然災害の発生などによりインフラに対する考え方が変わってきています。2020年12月にも概ね15兆円程度規模の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定されました。


これまでの道路整備については、災害が起きるなど現実的に課題がないと予算がつかない状況でしたが、今回の閣議決定では、道路ネットワークの強化に加え、舗装施設の老朽化対策についても予算の対象となりました。

道路は国民の命と生活を支える基盤でもあり、地域の方々の安全で快適な生活環境を確保するうえで道路整備事業はとても重要なものとなります。業界として高い社会的使命が課されていることを強く意識し、しっかりと対応したいと考えています。

民間委託なども話にあがる


西田社長:予算もそうですが、国や自治体の人材不足も深刻化しています。単なる舗装表面の補修のみならず、一定区間の道路の維持管理を請け負い,調査や調査結果に基づく補修などを一括して実施するというニーズも出てきています。例えば、広島の呉の国道は、当社が維持管理を実施していますし,道路以外でも空港の民営化や有料道路の民営化の話もあります。


楠田:民間への移行は今後どうなりそうですか?

西田社長:国主導での民営化があるかもしれません。また地方自治体は予算が少ないだけではなく、技術者も不足しているため,民間委託が増加していくかもしれません。

道路のDX


楠田:他の業界も同様に人材獲得が難しい時代を迎えています。デジタル活用が必要ですね。

西田社長:道路建設業は、これまで3K(きつい、きたない、危険)や税金の無駄遣いをしいるなどのイメージが付いてしまっていました。そこで、新3K(給与が良い、休暇がとれる、将来に希望が持てる)へと業界を上げて移行していこうとしています。

さらに無人化施工技術の開発に取り組むなど、道路のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に推し進めています。道路の測量を3Dで行い、設計データを読み込ませて、そのデータをもとに機械でコントロールさせる取り組みもすでに各社では始まっています。

弊社でも独自の新技術を開発しており、道路の締固めでは密度管理が大変なのですが、その自動化を実現しました。新技術導入は、国や地方自治体で使って下さらないと技術が進化しないと思っていますので、積極的に活用してもらいたいものです。

大成ロテック エントランスには自社の技術を紹介したスペースが設けられている

また維持管理では、クルマに加速度計やカメラをつけて路面の凹凸を測定する技術(技術名:スタンパー)を開発し、普及に努めています。

国道の道路整備を発注する国土交通省も道路のDXを進めようと、発注仕様に情報化(ICT)施工の縛りを設けるようになってきており、ICT施工を条件とする国の発注工事が増加しています。今後はさらに道路のDXは国道から地方へと展開されていくでしょう。

施工技術として目指すのは、完全無人化です。もし人が現場からいなくなれば悲しい事故は起きなくなります。事故ゼロを目指し,無人化を実現させようと思っています。

“生きた道路”づくりが欧米で進む


楠田:日本ではようやく道路予算に目を向け始めてきた気がします。一方、イギリスは脱炭素や新型コロナウイルス対策として自転車道の整備を拡充するなど、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、デンマークなどの欧米では、歩行者や自転車でも安全に使える道路整備が進んでいて、予算が増えているように感じます。


デンマークでは、女性や子どもが怖いと感じる道路は作らない。交通事故が発生する原因は道路にあるといった強い気概が感じられ、試行錯誤が繰り返され道路が生きていると感じました。他国も近いものを感じました。

今の日本の道路の状況では、安心してクルマの運転免許を返納できませんし、自転車、電動キックボード、さらには自動運転車両も怖くて通れませんね。

西田社長:日本も道路のあり方を変えていく必要があるでしょう。高齢者がクルマを運転できなくなっても活動範囲を確保する必要がありますから、人手不足でバスが走らせられないなら、道路側の工夫で自動運転車を走らせられるようにしたい。自転車に乗っていても危ない所を道路が知らせてくれるようなこともしていきたいです。

EVが走りながら充電できる道路


楠田:トヨタ自動車がWoven City(ウーブンシティ)を作るなどスマートシティやスーパーシティが着目されています。これからのモビリティ社会の創造として、挑戦してみたいことを教えてください。

西田社長:異業種連携など挑戦してみたいことはたくさんあります。自動車メーカーは道路を作ったことはないでしょうから、これからの道路の創造についてはお役に立ちたいです。


例えば、電気を道路で作って、走りながら充電できたらどうでしょう。車両に大きなバッテリーを積む必要がなくなるかもしれませんから、車体価格や航続距離の問題も解消されるでしょう。画期的だと思います。この技術は実験段階にきており、実験ではもうバッテリーを積まずに走っています。人体への影響もありません。クルマが走る振動で電気を発電したり、アスファルトの熱を用いて発電できないかなども検討しています。





楠田悦子/ モビリティジャーナリスト

〜Profile〜
心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化と環境について、分野横断的、多層的に国内外を比較し、社会課題の解決に向けて活動を行っている。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。「東京モーターショー2013 スマートモビリティシティ2013」編集デスク、国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。共著に「最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本 」(ソーテック社2020年)。


◎ 撮影時のみマスクを外していただきました。

撮影:宇佐美 亮
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WRITTEN by

楠田 悦子

モビリティ―ジャーナリスト。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化と環境について考える活動を行っている。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。
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