コラム・特集
高橋 奈那 2021.7.19
測量アプリの現在地〜現場で使える?最新事例を紹介

「これは、地に足のついた測量革命だ!」 iPhone・iPadで誰でもカンタンに測量できる『OPTiM Geo Scan』を徹底解剖

CONTENTS
  1. 「測量→3次元モデル化」が手元で完結
  2. 課題解決型の開発を支えた、松尾建設の存在
  3. 価格面でも革命を。誰もが導入しやすいサービスに
株式会社オプティムは、iPad Pro 2020年(セルラーモデル)、iPhone 12 Pro / Pro MAXで誰でも簡単に高精度3次元測量ができるプロダクト「OPTiM Geo Scan(以下、Geo Scan)」をリリースした。

リリースと同時にOPTiMが出展した「CSPI-EXPO 2021」(2021 5/12-5/14 @幕張メッセ)では革新的かつ実用性の高いサービス設計に、多くの称賛の声が寄せられた。現場ニーズに応えたソリューション誕生の背景には、共同開発者である松尾建設株式会社の存在が大きいようだ。

今回は、Geo Scanの開発までの道のり、製品の特徴を株式会社オプティム ゼネラルマネージャー 坂田 泰章氏(以下、敬称略)に伺った。

「測量→3次元モデル化」が手元で完結


ーー CSPI-EXPO 2021注目を集めた「OPTiM Geo Scan」ですが、どういった測量ソリューションなのでしょうか?

坂田:UAVでの写真測量やレーザースキャンで取得したい点群が、iPad Pro 2020年(セルラーモデル)、iPhone 12 Pro / Pro MAX 上で、誰でも手軽に、しかも安く、早くできる、測量プロダクトです。

株式会社オプティム ゼネラルマネージャー 坂田 泰章氏

一般的なUAV写真測量の場合、基準点となる対空標識を設置・計測し、UAVが撮影してきた写真を事務所でオルソ画像化して、そこから点群をとるというプロセスを経て、ようやく3次元モデル化することができます。

それがGeo Scanであれば、現場でiPhoneをかざして、ディスプレイ上に表示されたAR上でGNSSデバイスをタップしていくだけで、測量と3次元モデル化が完了します。


対空標識を設置して定めていた標定点も、計測地面に置いたGNSSレシーバーをAR上でタップすれば、自動で緯度経度座標を読み込み、標定点を打ち込むことができるので、あとは、GNSSレシーバを手に持ち、測量現場を歩きながら順に標定点を打っていくだけです。最後に精度誤差を測るための検証点を打ち込めば、計測作業は終了です。






UAVやレーザースキャンが苦手とする障害物のある地点でも、スムーズに測量をすることができます。

ーー 草木や障害物のある場所でも、iPhoneを手に持って計測すればいいだけなので、スムーズですね。

坂田:画面上の計測完了ボタンをタップすれば、3次元モデルの作成と検証点誤差の確認を、その場で瞬時に行うことができます。写真データをメモリーカードに保存したり、スキャンデータをUSBメモリに移し替える必要はありません。


ーー 本当に一瞬ですね。測量した地点があっという間に3Dの点群になりました。

坂田:写真やレーザーによる測量の場合、データの処理には早くても4〜5時間ほどかかります。それに、時間をかけて点群化しても、一箇所でも計測漏れをしていれば、また現場に戻り、最初からやり直しになってしまいます。Geo Scanであれば、その場で3次元モデルを確認することができるので、計測漏れがあった場合も、すぐにその場で、測量し直すことができます。


ーー 直感的な操作で計測ができるので、測量経験がない新入社員でも測量を任せられますね。

坂田:熟練の技術者と、若手1〜3名体制で測量作業を行っている現場がほとんどです。人手不足が深刻化している現場からは、技術力がなくても使えるソリューションが求められているんです。

課題解決型の開発を支えた、松尾建設の存在


ーー 現場ニーズを的確に汲み取ったプロダクトには、共同開発者である松尾建設の影響も大きいのでしょうか?

坂田:そうですね。松尾建設 高田 弘樹さんの存在なくしては、今のGeo Scanが生まれることはなかったでしょう。2019年5月頃から、ああでもない、こうでもないと、二人三脚で取組んできました。


高田さんから最初に挙がったのは、「図面の確認」→「測量機材の準備」→「測量」→「丁張りの設置」と、一人の技術者が何日間も測量作業に追われる現状を、なんとかしたいという、切実な声でした。

大規模現場では、すでにUAVを活用した測量で、省人化・効率化を叶えている現場も出てきています。しかしそれは、全体の数%程度。ほとんどは、中小事業者による小規模の現場ですから、UAVやレーザーを使った測量は、現場の規模や費用面からも、現実的ではないことが多いんです。



そういった小規模現場のICT化にマッチするプロダクトは何か?と考えたときに、たどり着いたのがスマートフォンの活用でした。

ーー LiDAR対応のiPhoneやiPadが誕生したことも、開発には影響したのでしょうか?

坂田:当初は、スマートフォンで撮影した動画の録画データをオルソ画像化し、そこから点群をとり、モデル化という方法を検討していたのですが、どうしても動作や精度が安定せず、開発は難航していました。


ちょうどその頃、iPadにLiDARが搭載されたんです。私たちにとって、これは大ニュースでした。そして弊社 代表の菅谷 俊二が「このプロジェクトは、LiDARの活用を前提として進めよう」と大きく舵を切りなおしたんです。

ーー LiDARの活用を前提のプロダクトにする……。つまり、開発を一旦白紙に戻したということですか?

坂田:そうなんです。世界測地系の座標を読み込んでデータ化するなど、私たちの実現したいプロダクトが完成するかどうかは、その段階では不明瞭でしたが、現場の課題解決を実現できるプロダクトにするためには、LiDARが必要だと私たちも腹を括り、開発に邁進していきました。


弊社 開発部に松尾建設 高田さんがほぼ常駐していただけたことで、ちょっとした相談がいつでもできたり、時間を気にせず気になることは徹底的に議論ができたり、現場視点のアドバイスをつねに受けられたりと、良いことばかり。そのため、開発スピードが早まっただけでなく、私たちが目指すゴールに対して、ブレずに開発が進行していけたと思います。

ーー現場のニーズが汲み取れたという部分で、Geo Scanにはどのような特徴がありますか?

坂田:そうですね。まず、国土地理院が定めた平面直角座標系(日本を19ゾーンに分割して横メルカトル図法で投影し、各ゾーンに座標原点を設けて、その原点を通る子午線をX軸、これに直交する方向をY軸としたもの)に対応しているため、より精緻で狂いのない測量が可能になっている点です。


そして、ローカル座標でも測量が可能であることも、Geo Scanの特徴といえます。ローカル座標を使用している事業者は、各地に多く存在しますから、従来通り、慣れたローカル座標でストレスなく測量をしていただけます。

ーー 実用性が本当に高いですね。

坂田:CSPI-EXPO 2021で、業界関係者から多くの関心が寄せられたことで、手応えを感じました。とある企業の担当者の方からは、「ここまで現場で使えるものは久しぶりに見た。地に足のついたイノベーションだ」と、有難いお言葉をいただきました。


私どももGeo Scanについて「測量革命」と謳っていますが、単に先進技術を用いているだけではなく、実用性の高いテクノロジーという意味での「測量革命」だと考えているんです。


価格面でも革命を。誰もが導入しやすいサービスに


ーー アプリ利用料で「定額制(月契約/年契約)」を採用していることも、Geo Scan の特徴と言えますよね

坂田:Geo Scanのコンセプトは、「安い、早い、誰でも簡単に」です。アプリ利用料は、年契約で81,000円/月、月契約で109,200円/月ですが、この価格設定には徹底的にこだわりました。


LiDARと同程度の精度をもつレーザーやGNSSを利用した測量器の場合、何百万円もかかってしまいます。しかし、Geo Scanであれば、iPhoneやiPadを最新機種にしていただき、GNSSレシーバさえ購入していただければ、あとはアプリをインストールするだけです。

ーー イニシャルコストとランニングコスト、どちらも低く抑えられるのは、中小事業者にとってはありがたいですね。ちなみに、データ使用制限はありますか?

坂田:100GBまでという制限はありますが、一つの現場の測量が完了したら、その都度データをダウンロードしてパソコンなどに保存していけば、アプリ内の容量が100GBを越えることは、ほとんど無いかと思います。

「ICT化を検討していて、まずは測量から試してみたい」という事業者さんに、とにかく一度、試していただきたいですね。きっとその、実用性の高さと使いやすさに驚いていただけると思います。私、全国各地どこにでも飛んでいって、体験会を開催させていただきますので、いつでもお気軽にお声がけください。







取材・文:デジコン編集部 / 文:高橋 奈那 /写真:齋藤 葵
WRITTEN by

高橋 奈那

神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。
測量アプリの現在地〜現場で使える?最新事例を紹介

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