コラム・特集
平田 佳子 2022.5.12
i-Constructionの先駆者たち

「土木で働くワクワクをつくりたい」。10代、20代の積極雇用を進める 「入交建設(高知)」の覚悟

高知県で土木や建築工事を手がける「入交建設株式会社(いりまじりけんせつ)」。2022年2月に3Dプリンタ開発のスタートアップ企業Polyuse(ポリウス)とタッグを組み、公共工事に3Dプリンタを日本初導入したことでも話題になった企業だ。

同プロジェクトの中心人物であり、入交建設 土木部 課長 石川淳氏(以下、敬称略)に、業界の課題や社内のICT化、そして入交建設の今後の展望について話をうかがった。


業界のイメージを華やかにしたい。入交建設は社員の多くが20代


ーー まずは入交建設の事業について教えていただけますでしょうか。

石川:入交建設は、明治39年に土木請負業「三谷組」として創業しました。今の事業は土木と建築で、国交省管轄の道路工事をメインでしています。道路の新設や高規格道路の延伸工事、インフラ整備、補修工事が多く、今年度の売上は22億円ほどになります。

(入交建設 土木部  課長 石川 淳氏)

ーー現在、社員の数はどのぐらいですか。


石川:社員全体が61名で、土木部の技術者は21名。そのうち、半数の10名が10代から20代です。会社全体でも3割が20代ですね。(2022年3月時点)


ーー 若手が入職しないと言われる建設業界で、20代が多いのは希望がありますね。若手の採用に力を入れようという会社の方針があるのでしょうか。

石川:若手の採用を意識し出したのは、ここ数年ですね。というのも、ずっと時代が厳しかったんです。バブルがはじけて公共事業が減り、雇用も思うようにできませんでした……。しかし今後を見据えたら、若い人がいないと会社が成り立ちません。実際30代は入交建設も1名のみだか、高知県内の建設会社さんは、どこも似たような状態なのではないでしょうか。


近年は業績が上向いてきたこともあり、若手を積極的に採用していこうと会社全体で力を入れています。2022年度も土木部に2名の新入社員を迎える予定です。インターンシップも積極的に受け入れていますね。

ーー 職場環境などで工夫はされているのでしょうか?

石川:3K(きつい・きたない・危険)と言われる業界のイメージを変えないと、若手は入ってこないと思います。例えば、建設現場に設置する事務所は簡素なプレハブが一般的ですが、当社ではボードやクロスを貼ってカラフルな絨毯を敷き、きれいな“オフィス”のイメージにしました。


(写真提供:入交建設 /若手のアイデアで現場事務所を明るい雰囲気に)

絨毯やクロスの色は若手社員に決めてもらったんですよ。若者の意見を取り入れて環境を整備したり、新しくて魅力あるデジタル技術をどんどん導入したり、若者がワクワクできるように、業界を華やかにできればと思いますね。


ICT導入で社員の気持ちや時間に余裕が生まれる


ーー 2016年頃から国交省i-Construction(アイ・コンストラクション)を掲げていますが入交建設でICTの導入を始めたのはいつ頃からでしょうか?

石川:平成23年頃に、TS(トータルステーション)を用いた出来形測量をしたのが最初です。タブレットのような機器で簡単に測量できて、測量前に内業したり現場に行って準備したりする手間がなくなったので、自分の仕事量がグッと減ったなと感じました。測量が画期的になったと思いましたね。

ーー石川さんは若い社員のためにもICTは必要というお考えだと思いますが、会社としてもそんな方向に進んでいるのでしょうか。

石川:もちろん。今も3現場ほど、UAVマシンガイダンスICT建機などを取り入れた施工をしています。最近、外注だった測量の部分を内製化しようとドローンや専用のソフトウェアも買いました。


ただ、まだ本格的に実用化できていなかったり、どこを外注してどこを内製化するかなどで悩む部分もあるので、ICTのコンサル業をしてくださっている方と一緒に、よりベストなやり方を詰めていこうとしています。一気に自社でICT化するというよりは、まずは入交建設でもできる範囲で進めていければと思っていますね。

ーー確かに、単に最新技術を取り入れればいいだけではないですからね。石川さんご自身は、ICT化のメリットはどういう点だと思いますか?

石川:施工が2Dから3Dになったことは大きいと思います。経験がないと2次元の図面では完成形がわかりにくい。だから従来は、経験が浅い若手に教える時は、わざわざ現場を撮影して、撮った写真に「ここがこうなるよ」と絵を描いて説明していました。


しかし今は、レーザースキャナーで一度取れば完成形の絵が見えます。現場の橋台のデータを入れたら橋台が表示されるし、床掘りの寸法を入れれば床掘りの絵が表示される。角度を変えて回転して確認することもできる。


技術や経験がない人にも視覚的に「こうなるよ」と説明して、すぐに共有できるのはとても良いですね。

ーー直感的に分かると。経験だけに頼ろうとすると、教える人も教わる人も大変ですもんね。

石川:「土木の世界は10年やって一人前」と言われますが、3D化で経験値のハードルが下がりますよね。見える化することで、施工前に問題点の洗い出しができて、事前準備の時間に余裕をもてる。工程が遅れるなどの不測の事態も大きく減ると思いますし。

ーー石川さんご自身の若い頃はとても大変だったけど、今から入職する若い人は楽できていいなと羨ましく感じそうですね(笑)

石川:ラクで楽しい仕事じゃないと、もう誰もやらないと思うんです。もちろん、土木業界は泥にまみれることもありますが、そういう機会を減らしていかないと、この世界に飛び込んでくる人はいません。


新しい技術をどんどん活用して、働く人の負担を減らす。そして、生産性が上がって、お給料も上がる。そうすれば、一人ひとりに気持ちや時間の余裕ができて、プライベートも充実する。そんな理想を叶える、現場づくり・会社づくりをこれからしていかないといけないと思いますね。


各所で反響があった、建設3Dプリンタ スタートアップ企業「ポリウス」との取組み


ーー 今年2月にPolyuse(ポリウス)さんとタッグを組み、3Dプリンタを公共工事で国内初めて導入されていましたね。見学会には、メディアも同業の方もたくさん来ていましたが、反応はいかがでしたか。    

 
石川:同業者からも反響が大きく、「実際どうなの?」などと質問をいっぱいいただきました。TVや新聞などメディアでも取り上げられ、多くの方に興味を持っていただいて、すごく良かったなと思っています。国交省からも今回のプロジェクトについて開発側と現場側の話を聞きたいとお声がけいただき、Polyuseさんと一緒に話をすることになりました。


ーー 3Dプリンタを打ち出したのは、ユニークで話題性もありますよね。

石川:それはたまたま(笑)。いろいろな人とのつながりの中で、「面白いものがあるよ」と紹介され、Polyuseさんの3Dプリンタと出会いました。


最初は「i-Con(アイコン)と言われる時代だし、私たちも何かアピールできて生産性向上につながったらいいな」ぐらいの軽い気持ちでした。


ですが、実際にPolyuseの工場に伺って、3Dプリンタで構造物を造形する様子を見たら、「すごいやん!」と。何よりこの優れた技術を高知の皆さんにも知ってもらいたくて、現場見学会をしようと提案したんです。

ーー今後、Polyuseさんと新たなプロジェクトを進める予定はありますか?

石川:Polyuseさんはこれからもどんどん新しい事業を手掛けていくと思いますので「私たちで力になれることがあればいつでも連絡してください」という話はさせていただいています。また面白いプロジェクトを立ち上げて、高知の土木を一緒に盛り上げられたら、嬉しいですね。

(入交建設 看板犬 コムギちゃんと)





【編集部 後記】
もともと土木系の仕事を志していたわけではなく、何となく土木の世界に飛び込んだという、石川氏。入交建設に新卒で入社して以来、長年、土木工事を中心に仕事をしてきた。

業界を深く知る石川氏だからこそ、その課題や危機感を肌で感じ「業界のイメージを変えたい」という思いも人一倍強い。

今後は現場環境の改善とともに、さまざまな企業や団体と連携してよりICT化に力を入れていくという。誰もがワクワクする土木の世界を、若手と一緒につくり上げていく入交建設に期待したい。


入交建設 株式会社
高知県高知市南久保4−47
http://www.iriken.co.jp/


◎ 一部、撮影時のみマスクを外していただきました。

取材・編集:デジコン編集部 / 文:平田 佳子 / 撮影:宇佐美 亮 
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WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。
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