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デジコン編集部 2022.12.30

熊本のダム工事にて、準天頂衛星システム「みちびき」の測位技術を活用。西松建設

西松建設は、熊本県南阿蘇村にある立野ダムで、準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位情報をダム工事に活用する実証実験を行ったことを発表した。

RTK測位との計測値差は水平精度では約4センチ、垂直精度は約9センチ


内閣府と準天頂衛星システムサービス社では「みちびき」の利用が期待される新たなサービスと技術の実用化を推進している。

こういった取組みの一環として行われた今回の西松建設の実証実験では、通信環境が不安定な状況での作業を効率化するために、谷でも受信しやすい準天頂衛星を活用し、CLAS※の実用性について調査

さらに、ケーブルクレーンの材料運搬で、吊り荷(コンクリートバケット)の高精度測位を達成することを目標に掲げた。

※1CLAS:Centimeter Level Augmentation Serviceの略称で、センチメータ級測位補強サービスで、みちびきから送信されるL6D信号を使用した測位。

具体的には、吊り荷上部のフックブロックにGNSSアンテナと受信機を設置し、CLASでのFIX率と測位精度を確認。

ちなみに、周囲の地形により河床付近では、仰角が平均35度程度と衛星の可視性が制限されていたため、計測範囲の評価は遮蔽(しゃへい)の影響を考慮し、ダム天端(標高282メートル)を境として、堤体上部と下部に分類し、統計処理を実施した。

その結果、ダムの最深部(河床近く)にフックブロックを下した状態でも、CLASのFIX状況や測位精度が劣化することなく、FIX率が高い状態を保てていることが確認された。

(評価基準のイメージ)

このことから、従来のRTK測位に代わって、コンクリートバケットの自動運搬制御などで、ダム建設工事でCLASが使えることが判明した。

なお、ダムの最深部(河床近く)にフックブロックを下した状態でも、上空でFIXしている状態であれば、衛星数が減少してもFIXステータスが維持されることが判明した。

ちなみに、レファレンスとしたRTK測位との計測値差は、水平精度は約4センチで、垂直精度は約9センチ(FIX率は約98%)となっており、ダム天端を境として上下に分けても大きな差異は見られなかった。

(作業日ごとの測位精度・FIX率・衛星数の状態)

FIX率と測位精度に関しては、みちびきを活用したCLASのダム工事への適用性をチェックした。

また、西松建設が開発し現場運用を進めているケーブルクレーン自動運転システムでは、これまでRTK測位を使用していたが、CLASを使用することで、RTK測位で用いられる基準局の配置が不要となり、基準局からの補正情報を常時受信する必要がなくなる。

今回の実証実験の結果を受けて、ダム工事におけるケーブルクレーンやその他建設機械の位置情報取得へのCLASの適用性が確認できたため、西松建設では、他の用途を含めた効果的な活用について検討していく。



参考・画像元:西松建設プレスリリース
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デジコン編集部

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