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デジコン編集部 2025.4.23

NTT。ドローンによる雷の誘発・誘導に世界初成功。「空飛ぶ避雷針」で年間2000億円の被害軽減へ

NTTは、ドローンを使用した雷の誘発・誘導実験に世界で初めて成功したと発表した。独自の耐雷ケージを備えたドローンと電界変動を利用した雷誘発技術の有効性を実際の雷で実証した。

(耐雷ドローン)

150kAの人工雷にも耐える耐雷ケージ開発、地上とワイヤで接続し電界強度を急変させて雷を誘発


落雷は国内だけでも年間1000億円から2000億円の被害をもたらすとされる自然現象で、重要インフラにはさまざまな対策が施されているものの、現在でも被害はなくなっていない。

従来の雷対策では避雷針が広く使われているが、その保護範囲は限定的で、風力発電の風車や屋外イベント会場など避雷針の設置自体が困難なケースも存在する。

NTTは、近年発展が著しいドローン技術を活用し、雷雲の位置に合わせてドローンを移動させ、積極的に雷を誘発した上で安全な場所に誘導する「ドローン誘雷」の研究を進めてきた。

2024年12月から2025年1月にかけて、島根県浜田市山間部の標高900m地点で実施した実験では、フィールドミルと呼ばれる装置で地上電界を観測し、雷雲接近に伴い電界強度が高まったタイミングでドローンを飛行させた。


2024年12月13日、電界強度上昇時にワイヤをつけたドローンを高度300mまで飛行させ、地上に設置したスイッチでドローンと地上を導通させたところ、ワイヤに大電流が流れ、同時に周囲の電界強度が大きく変化することを確認した。

雷誘発の直前にはワイヤと地面の間に2000V以上の電圧が生じており、急激にドローン周囲の電界強度を変化させたことで雷が誘発された。

誘雷と同時に破裂音、ウインチ部の発光、ドローンの耐雷ケージの一部溶断を確認したものの、ドローン自体は安定して飛行を続けたという。

(雷誘発時の観測波形)

実験成功の鍵となったのは、二つの技術開発である。

まず「ドローンの耐雷化技術」では、雷が直撃しても誤作動・故障せず、市販ドローンに装着可能な耐雷ケージの設計手法を考案した。

金属製のシールドで雷電流をドローン本体から迂回させ、さらに放射状に流すことで発生する強磁界を互いに打ち消し合うよう設計されている。

(大電流・強磁界の耐雷化設計)

この耐雷ケージを備えたドローンは、自然落雷の98%以上をカバーし、自然落雷の平均値の5倍に相当する150kAの人工雷を印加した場合でも故障や誤作動が発生しないことを確認済みである。

次に「電界変動を利用した雷誘発技術」では、飛行させたドローンと地上の間を導電性ワイヤで接続し、その地上側に高耐圧スイッチを取り付けた。

(電界変動を利用した雷誘発技術の原理)

スイッチ操作によってドローン周囲の電界強度を急激に変化させることで、雷の誘発を促すことができる。

NTTは今後、ドローン誘雷の成功率を高めるため、高精度な発雷位置予測と雷の発生メカニズムに関する研究開発を推進するとしている。

さらに将来的には、誘雷した雷のエネルギーを蓄積・活用する手法の研究にも取り組む計画だ。



参考・画像元:NTTプレスリリースより
 
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デジコン編集部

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