コラム・特集
高橋 奈那 2023.5.10

【防災産業展2023レポート】自治体/企業の防災対策を支援するソリューションを紹介!〜 テクノロジーの力で災害に備える〜

2023年2月1日(水)〜3日(金)の3日間、日刊工業新聞社が主催する4つの展示が東京ビッグサイトで開催された。本記事では、その中の一つ「防災産業展2023」の各展示ブースを紹介する。


コンセプトは「防災・減災によるレジリエンス社会の実現へ」。世界でも有数の地震国家とも言える日本。公共インフラの経年による劣化が問題視されているなか、首都直下型の巨大地震が今後40年以内に発生する可能性は、約90%とも言われている。


毎年、集中豪雨による河川の氾濫や地すべりといった豪雨災害の発生頻度が上がっていると肌感覚でも感じているだろう。

東京ビッグサイト南展示棟で開催された今回の展示には、災害への備えや被害状況の把握、早期復旧を支援するソリューションを発表。本記事ではその中から、デジコン編集部が注目した7つのブースをピックアップしていく。


地中空間見える化ツール「MPL-11HP」「iエスパー・R」/ エクシオテック


わたしたちの足元には、たくさんの「管」が埋まっている。それは、電気やガス、水道を届ける、通信インフラを支える重要なものばかりだ。

自然災害やトラブル発生時に即座に復旧工事をするためにも、事前に埋設物の状況を詳細に把握しておく必要がある。


しかし、地面を掘り返して行う調査は、高圧電流との接触や埋設管の破損事故などのリスクをともなうため、一歩間違えれば大きな事故に繋がりかねない。

そこで役立つのが、地中を見える化するツールだ。

電磁誘導探知機MPL-H11Pは、微弱電流を流し、埋設物の位置と深度を調査するものだ。手元で周波数を調整しながら調査でき、輻輳している埋設管でも目的管路の判断ができる。


さらに、埋設物のアース状況が十分であるかも確認できるので、埋設物が露出した場合に、感電事故などを事前に防ぐことができる。

iエスパー・Rは、台車を押すような簡単な動作で地中の断面映像を捉えられるツールだ。埋設物だけでなく、地中や構造物内部の空洞やコンクリートの劣化をタブレット上でリアルタイムに表示しながら調査ができる。



本体は2.5kgと超軽量で、台車のように折りたたんで持ち運びできる。地面やコンクリートを掘り返して行っていた維持・管理業務が、たった一人でも可能になり、大幅に効率化が実現する。道路や橋梁の劣化を事前に把握して、災害発生時の二次被害の防止に役立てよう。



過酷な環境下でも使えるPC 「Latitude Ruggedシリーズ 」/DELL Technologies


思いつく限りの過酷な環境、そのどこにいても、いつも通りの仕事ができるノートPCがこちらだ。

温度、湿度、振動、衝撃、菌類などあらゆるダメージに耐えられるよう設計されている上、5G通信に対応。CPUは最新のプロセッサーを搭載とPC単体としての性能にも申し分ない。


ショルダーストラップやハンドベルト、ハーネスなど用途やシーンに合わせたキャリングアクセサリを使えば、過酷な現場でも両手を自由に使いながら作業ができる。




液晶画面へタッチ入力にも対応しているため、キー操作が難しい場面で重宝しそうだ。5G通信に対応しているモデルなら、データのクラウド保存もスムーズかつ、データが破損する心配もない。



堅牢性、そして精密機器としてのスペックの高さのみならず、屋外におけるPC業務をいかに快適にするか?という視点が細部にまで宿る一台は、日常業務から非常時まで、安定した作業環境を約束してくれるだろう。



World Robot Summit (インフラ災害・対応)


広々としたブース内で、ロボットが黙々と作業を進めている。彼らが取り組んでいるミッションは、インフラ設備の災害対応だ。

ポンプエリアやボイラー室など工場を想定したエリア分けがされており、バルブ開閉やガス漏れ爆発発生時の異常箇所の確認や消火対応、ダクト内に発生したサビの健全性の検査など、そのすべてロボットによる遠隔操作で行う。


今回の展示は、2021年10月に福島県南相馬市で開催されたWorld Robot Summit福島大会で行われた競技の一部を、再現したもので、実際の大会では、災害発生時に人の立ち入りが困難になった危険エリアの復旧対応や、狭いダクト内の点検など性能が勝敗の鍵となったそうだ。




そのほかにも、競技に使用するロボットの操作体験や、防災・減災分野へのロボット活用に関する講演の枠も設けられており、ロボットの有用性を啓蒙するさまざまなプログラムが展開されていた。



熱中症注意喚起システムDK-SF100 | Air-InCom. /アルインコ


夏の暑さは、もはや季節災害と呼べるレベルになりつつある。対策しようにも、気温のほかに湿度や直射日光や路面への照り返しによる日照時間等々さまざまな状態を併せて見る必要があるため、地域の気温や天気欄の確認だけでは不十分だが、暑熱中症注意喚起システムDK-SF100ならば、今この地点の危険度を知らせてくれる。


屋外や熱のこもりやすい場所で業務にあたる作業員の安全確保に役立つ。内蔵電池で稼働するため電源の確保や配線に頭を悩ませることもない。機能がシンプルなので、初めて使用する場合もすぐに理解できる点も、現場に喜ばれるポイントの一つだろう。

こちらは、普段使っているiPhoneが、業務仕様のトランシーバーに早変わりするツールだ。アプリをインストールするだけで、すぐに使用開始できる。携帯電話のキャリア回線かWi-Fiで繋がる場所ならどこでも通話可能。




大人数で同時通話や、個別通話、アプリを利用したテキストメッセージの送付など、トランシーバーとスマートフォンのいいとこ取りかつシンプルな機能が魅力的だ。携帯のキャリア回線環境下であれば通話できるため、屋外作業環境下における報告・連絡・相談が非常にスムーズになりそうだ。




オートセンシングによる災害予兆検知 / 近計システム


エネルギーインフラなどの安定供給を支える、計測・監視・制御するソリューションを開発している近計システム。

同社が提案するのは、災害予兆検知だ。これまで培ってきたオートセンシング技術を、目的や災害の種類に適した方法で活用し、災害の予兆がないかを調査・監視するものだ。


たとえば斜面変異監視システムは、がけ崩れや地すべりなどの土砂災害が発生する前兆を多面的に察知するシステムだ。

がけにひび割れが発生したり、小さな落石、湧き水の増加などの変動を土壌水分計が、地中水分の増加を雨量計が、地表面の変動を変位センサが計測し、災害発生の前兆があれば、すぐにアラートを発令するという仕組みだ。


「いつか起きるかもしれない」を、数値で把握するソリューション。これまでが気のせいと片付けていたような些細な予兆を捉えることで、被害規模を最小限に抑えられるもしれない。



停電対策ソリューション / 髙田製作所


創業1919年の歴史をもつ髙田製作所。停電発生に電源ルートを非常用に切り替えて灯りを届ける、切替器メーカーだ。非常時について考え続けてきた会社だけあって、展示には多種多様なニーズを満たす製品が並ぶ。


非常用電源ターミナルには、スマホ充電用のケーブル以外にもライトやコンパクト太陽光パネル、非常用ラジオ、そしてなんと机まで一式が入ったセットだ。オフィスや自治会・学校にこれが一台あれば、避難者はバッテリー残量を気にせず被害状況の確認や安否連絡ができる。


デジタル化が進んだいま、停電による損失は計り知れない。同社の提供する“もしもの備え”は、非常に幅広いため、「これならあってもいいね」と思える製品がきっとみつかるはずだ。




止水板ラクセット /SHUTTER GUARD 文化シヤッター


毎年のように発生しているゲリラ豪雨や、台風による浸水被害。被害を最小限に食い止めるためには、水を屋内に入れないツールが必要不可欠だ。

指折のシャッターメーカーである同社が提案する浸水対策が止水板「ラクセット」だ。あ大きさ・形状など、あらゆる開口部に、事前工事不要で設置できる。しかも軽量のアルミ製なので、降雨時でもスピーディーな持ち運びが可能だ。


こちらは、個人商店や個人宅のガレージなど軽量シャッター向けの製品「シャッターガード」。突っ張り棒のようにシャッターの開口部に固定するだけで、強風によるシャッターの破損を防ぎ、風による音も軽減してくれる。


発売以来じわじわと認知を広めてきたロングセラー商品で、2007年にはグッドデザイン賞を受賞。小柄な方でも一人で設置できる手軽さにも関わらず、シャッターガードを追加するだけで風速36m相当の風、800Pa相当の威力に耐える強度を上乗せできる。




津波救命艇シェルター+CAL 4 /オーシャンランド計画 減災サステイナブル技術協会


減災サステナブル技術協会のブースでは、会長である浅沼博氏の提唱する“近未来の防災・減災学”を自由な発想で体現した数々のソリューションや研究構想が展示されていた。


この乗り物は、津波シェルター+CAL(タスカル)4。緊急時に自力での避難が困難な方々でも、これに乗り込むだけで迅速に安全を確保できるという。



水上で横転しても起き上がりこぼしのように自動復帰し、機内に浸水した場合にも沈まない。漂流中にガレキにぶつかっても、衝撃を吸収してくれるので安全だ。内部はまるで公園の湖にあるスワンのようで、閉塞感はない。4人乗りで、軽自動車一台分のスペースがあれば設置可能だそうだ。

“災害ゼロ”と書かれたのぼりが目を引くこちらでは、「オーシャンランド計画」のプロモーションが行われていた。

その計画とは、洋上に直径10kmを超える大きな浮体(メガフロート)を浮かべ、その上に都市を建造するというもの。


実現した暁には、建設した高層ビルから得る揚力を利用してメガフロート全体を動かし、台風や竜巻、豪雨災害などを避けながら回遊する、災害とは無縁の人工島が完成するそうだ。まるでSF映画のような計画だが、都市機能を止めることなく、安心・安全を守る海上の新しい都市の実現にむけ、研究が進行中だそうだ。



取材・編集:デジコン編集部 / 文:高橋奈那 / 撮影:砂田耕希
印刷ページを表示
WRITTEN by

高橋 奈那

神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。

建設土木の未来を
ICTで変えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を案内するメールマガジンが購読できるほか、会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。