国土交通省が主催する「i-Construction大賞」が2022(令和4)年度より「インフラDX大賞」に改称された。
建設現場の生産性向上を目指すi-Constructionをさらに発展させた「インフラ分野のDX」を推進するにあたり、賞の名称や内容もリニューアルするに至ったという。
国交省がi-Constructionに次いで肝いりで進めようとしている「インフラDX」とは、どんなものなのか?これまでの流れや今後の展開についてまとめた。
2015(平成27)年から導入されたi-Constructionは生産現場の生産性向上を図るものであった。
そんな中、新型コロナ感染拡大を契機とした社会経済状況の大きな変化にインフラ分野も対応していく必要性からスタートしたのがインフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション、つまり「インフラDX」である。
「インフラDX」は、データやデジタル技術を活用し、社会資本や公共サービスを変革させる取組みで、業務そのものだけでなく組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土そして働き方の改革も行なう。
これによりインフラ各分野が横断的につながりながら安全・安心で豊かな生活の実現を目指す。
2022(令和4)年度はインフラDX「挑戦の年」と位置付けられ、同年3月には「インフラ分野のDXアクションプラン」が策定された。
インフラ分野のDXでは、
その実現に向けて大きく3つの柱でアクションプランが構成されている。
国土交通省のインフラ分野に関する各種手続きのデジタル化を推進することによりリモート化、ペーパーレス化、タッチレス化を目指す。デジタル手続きにおいて即時にデータ表示や申請が行えるシステム構築および手続きの簡易化や一元的処理を可能にする。
3次元データを用いたコミュニケーションの推進。関係者間での正確でリアルな情報共有に加え、効果的な情報伝達や広報活動に取り組む。BIM/CIMといった3次元データを流通させるほか、XRやWEB会議システムの活用、インフラデータの公開や活用を促す。
建設業の現場における施工・出来高確認・災害復旧・点検などの作業を遠隔化・自動化・自律化する技術の開発および社会実装に取り組む。また、これらに関する各種技術基準類の標準化や環境開発、プラットフォームの整備を進める。
令和4年(2022年)度はインフラDX「挑戦の年」として、業界の内外・産学官を含め組織横断的に変革が進められている。インフラの作り方・使い方そしてインフラ周りのデータの伝え方を分野網羅的に取り組むという方針が示されている。
まず、インフラDXを支える基盤として、
という3種類のデータプラットフォームの構築が進められている。このほか合計53の個別施策が計画され、それぞれすでに着手されている。2022(令和4)年8月に発表された国土交通省の進捗報告より、代表的な施策に関するトピックスを紹介する。
国土交通省は令和2年4月より「国土交通データプラットフォーム」を一般公開している。
本プラットフォームでは、国土地盤情報など国土に関するデータ、道路交通センサスなど経済活動に関するデータ、そして気象データなど自然現象に関するデータの連携を進めながらユーザーインターフェースの改良に取組んでいる。
令和5年度以降はデータ連携のさらなる拡大・更新を行なうとともに検索やデータ取得機能に改良を加える予定だ。
道路局が管理する「xROAD(クロスロード)」は、データの利活用により道理管理や行政手続きの高度化・効率化を図るためにプラットフォーム。
2022(令和4)年度より一部データのオープン化を開始、データプラットフォームの開発が進められている。
3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」は2020(令和2)年より始動しており、現在は建築BIMや不動産IDとの連携が進められている。
これは建築生産および都市開発、不動産に関する業務の生産性向上を目的としている。同時に屋内空間(建築物)や屋外空間(都市)、不動産の快適性、安全性、利便性の向上を狙いとしたものである。
港湾における物流分野、施設利用手続きなどの管理分野、そしてインフラ分野にあたる施設情報をプラットフォーム「Cyber Port(サイバーポート)」で一体運用する。
データの一元化や連携を行なうことで情報の利活用を進め、適切なアセットマネジメントや災害対応力の向上を目指す。現在はシステムの構築とテストが行われており、2023年度は利用対象の拡大や機能の拡充を予定している。
Cyber Portイメージ/引用元:国土交通省「主な施策の進捗状況等」
2022年(令和4)年3月には関連業界、行政および有識者からなる「建設機械施工の自動化自律化協議会」が設置された。
無人エリアにおける自動・自律施工の安全ルールが策定され、2023年度は国土技術政策総合研究所のDX実験フィールドにおいて現場検証を実施。
現場条件を拡大した安全ルールや自動施工機械の機能要件が策定される予定だ。
国総研はBIM/CIMなど3次元データを一元的に保管するシステム「DXデータセンター」を構築。
受発注者が測量・調査・設計・施工・維持管理の事業プロセスで情報共有を行なうほか、災害対応での活用を目指す。2022(令和4)年4月より国土交通省職員の利用がスタートし、同年度内より順次、民間事業者の利用も始まっている。
インフラDXは単に新しい技術を取り入れるだけでなく、行政手続きをデジタル化し、プラットフォームなど一元管理化することで情報を高度化し活用することを目指している。
加えて、労働人口減や感染症対策として現場作業の遠隔化・自動化・自律化も推進している。
各種プラットフォームの一部では民間事業者の利用も始まっている。この動きに合わせていくにはBIM/CIMなどのソリューション導入が生じる可能性は高く、今後も進捗をチェックしながら対応を検討していく必要がありそうだ。
建設現場の生産性向上を目指すi-Constructionをさらに発展させた「インフラ分野のDX」を推進するにあたり、賞の名称や内容もリニューアルするに至ったという。
国交省がi-Constructionに次いで肝いりで進めようとしている「インフラDX」とは、どんなものなのか?これまでの流れや今後の展開についてまとめた。
インフラDXとは
2015(平成27)年から導入されたi-Constructionは生産現場の生産性向上を図るものであった。
そんな中、新型コロナ感染拡大を契機とした社会経済状況の大きな変化にインフラ分野も対応していく必要性からスタートしたのがインフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション、つまり「インフラDX」である。
「インフラDX」は、データやデジタル技術を活用し、社会資本や公共サービスを変革させる取組みで、業務そのものだけでなく組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土そして働き方の改革も行なう。
これによりインフラ各分野が横断的につながりながら安全・安心で豊かな生活の実現を目指す。
2022(令和4)年度はインフラDX「挑戦の年」と位置付けられ、同年3月には「インフラ分野のDXアクションプラン」が策定された。
インフラDXのアクションプラン3つの柱
インフラ分野のDXでは、
- 手続きなど、いつでもどこでも気軽にアクセスできる
- コミュニケーションをよりリアルに
- 現場にいなくても現場管理が可能に という姿を目指していく
その実現に向けて大きく3つの柱でアクションプランが構成されている。
行政手続きのデジタル化
国土交通省のインフラ分野に関する各種手続きのデジタル化を推進することによりリモート化、ペーパーレス化、タッチレス化を目指す。デジタル手続きにおいて即時にデータ表示や申請が行えるシステム構築および手続きの簡易化や一元的処理を可能にする。
情報の高度化とその活用
3次元データを用いたコミュニケーションの推進。関係者間での正確でリアルな情報共有に加え、効果的な情報伝達や広報活動に取り組む。BIM/CIMといった3次元データを流通させるほか、XRやWEB会議システムの活用、インフラデータの公開や活用を促す。
現場作業の遠隔化・自動化・自律化
建設業の現場における施工・出来高確認・災害復旧・点検などの作業を遠隔化・自動化・自律化する技術の開発および社会実装に取り組む。また、これらに関する各種技術基準類の標準化や環境開発、プラットフォームの整備を進める。
インフラDX各施策の進捗は?
令和4年(2022年)度はインフラDX「挑戦の年」として、業界の内外・産学官を含め組織横断的に変革が進められている。インフラの作り方・使い方そしてインフラ周りのデータの伝え方を分野網羅的に取り組むという方針が示されている。
まず、インフラDXを支える基盤として、
- 国土交通省データプラットフォーム
- 道路データプラットフォーム
- 3D都市モデル
という3種類のデータプラットフォームの構築が進められている。このほか合計53の個別施策が計画され、それぞれすでに着手されている。2022(令和4)年8月に発表された国土交通省の進捗報告より、代表的な施策に関するトピックスを紹介する。
国土交通データプラットフォーム
国土交通省は令和2年4月より「国土交通データプラットフォーム」を一般公開している。
本プラットフォームでは、国土地盤情報など国土に関するデータ、道路交通センサスなど経済活動に関するデータ、そして気象データなど自然現象に関するデータの連携を進めながらユーザーインターフェースの改良に取組んでいる。
令和5年度以降はデータ連携のさらなる拡大・更新を行なうとともに検索やデータ取得機能に改良を加える予定だ。
道路データプラットフォーム【xROAD(クロスロード)】
道路局が管理する「xROAD(クロスロード)」は、データの利活用により道理管理や行政手続きの高度化・効率化を図るためにプラットフォーム。
2022(令和4)年度より一部データのオープン化を開始、データプラットフォームの開発が進められている。
3D都市モデル【PLATEAU(プラトー)】
3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」は2020(令和2)年より始動しており、現在は建築BIMや不動産IDとの連携が進められている。
これは建築生産および都市開発、不動産に関する業務の生産性向上を目的としている。同時に屋内空間(建築物)や屋外空間(都市)、不動産の快適性、安全性、利便性の向上を狙いとしたものである。
港湾情報プラットフォーム【Cyber Port(サイバーポート)】
港湾における物流分野、施設利用手続きなどの管理分野、そしてインフラ分野にあたる施設情報をプラットフォーム「Cyber Port(サイバーポート)」で一体運用する。
データの一元化や連携を行なうことで情報の利活用を進め、適切なアセットマネジメントや災害対応力の向上を目指す。現在はシステムの構築とテストが行われており、2023年度は利用対象の拡大や機能の拡充を予定している。
Cyber Portイメージ/引用元:国土交通省「主な施策の進捗状況等」
建設施工における自動化・自律化
2022年(令和4)年3月には関連業界、行政および有識者からなる「建設機械施工の自動化自律化協議会」が設置された。
無人エリアにおける自動・自律施工の安全ルールが策定され、2023年度は国土技術政策総合研究所のDX実験フィールドにおいて現場検証を実施。
現場条件を拡大した安全ルールや自動施工機械の機能要件が策定される予定だ。
DXデータセンター
国総研はBIM/CIMなど3次元データを一元的に保管するシステム「DXデータセンター」を構築。
受発注者が測量・調査・設計・施工・維持管理の事業プロセスで情報共有を行なうほか、災害対応での活用を目指す。2022(令和4)年4月より国土交通省職員の利用がスタートし、同年度内より順次、民間事業者の利用も始まっている。
インフラDXは単に新しい技術を取り入れるだけでなく、行政手続きをデジタル化し、プラットフォームなど一元管理化することで情報を高度化し活用することを目指している。
加えて、労働人口減や感染症対策として現場作業の遠隔化・自動化・自律化も推進している。
各種プラットフォームの一部では民間事業者の利用も始まっている。この動きに合わせていくにはBIM/CIMなどのソリューション導入が生じる可能性は高く、今後も進捗をチェックしながら対応を検討していく必要がありそうだ。
WRITTEN by
三浦 るり
2006年よりライターのキャリアをスタートし、2012年よりフリーに。人材業界でさまざまな業界・分野に触れてきた経験を活かし、幅広くライティングを手掛ける。現在は特に建築や不動産、さらにはDX分野を探究中。
建設土木の未来を
ICTで変えるメディア