BIM/CIM施策の導入・発展のために活動を続けている「一般社団法人Civilユーザー会(以下、CUG)」。
CUGは、国土交通省が2016年に建設・土木のICT化、「アイ・コンストラクション(i-Construction)」を掲げる以前から、3次元モデル利活用の推進を行なっている。今回は、代表理事の藤澤泰雄氏と監事の長谷川充氏にCUGの取組みなどをお聞きした。
―― Civilユーザー会、設立の経緯からお聞かせください。
藤澤氏 私は普段、八千代エンジニヤリングに所属しており、2005年にオートデスクのCivil 3Dという土木設計ソフトウェアを他社に先駆けて導入しました。ただ八千代エンジニヤリング1社だけだとどうしても普及しにくいだろう。また、多くのエンジニアと意見交換を行い3次元モデルの利活用を促していきたいという想いから2007年に「Civil 3D User Group」の呼称で当団体はスタートしました。
その後、さまざまな3Dのソフトウェアの登場や、国土交通省がCIM試行事業を始めたのを契機に、設計者・施工者をはじめとする土木技術者の集まりとして、固有のアプリケーション名を外して「Civil User Group」に団体名を変更し、現在に至っています。
――CUGの活動の目的も教えてください。
長谷川氏 建設・土木業界って、いまだに2次元の図面を引いている企業も多く、2次元の図面だと何度も修正したり、ひとつの図面を修正したら他の図面も直さなきゃいけなかったりと、ものすごく時間を取られるんですよね。それって、非効率で非生産的だなと……。
若手社員が上司に何度も言われたら、嫌になってしまいますしね。それであれば、3次元モデルを活用すれば、1つのモデルで全てが集約できますし、スピーディだし、間違いがない。この業界は、いまだに3Kのイメージが根強いですが、私たちはやっぱり、「どれだけラクをして、楽しんで仕事ができるか」が大切だと考えています。
藤澤氏 我々がCivil 3Dソフトウェアを導入した時も、「面白そうだな」というのが先にきたんです。今、CUGで開催している講習会の参加者さんの中には、CADオペレーターと呼ばれる職種の方も多いのですが、そういう方は、ソフトの使い方はすぐに吸収していただけるのですが、使い方だけ覚えて満足してしまうケースがあります。やはりソフトが使えるオペレーターではなく、ソフトを駆使したその先を創造できるような、クリエイターやエンジニアになっていただきたい。
―― ただの作業でとどまってほしくないと。
長谷川氏 そうですね。BIM/CIMを使いこなした先に、目的だったり、自分の想いだったりをのせてほしい。CUGは現在、2,700名を超える会員が登録していて、東京、大阪、広島、北海道、新潟、福岡の6カ所に分会を組織していて、定期的にハンズオンや意見交換を実施しています。
また会員有志によりワーキンググループが結成されており、設定したテーマについてユーザー目線による実質的な検証が日々行われています。こうした活動の際も、ただ、講習をするだけ、教えるだけではなく、やはりそこに何か「3次元モデルって面白いな」「CUGの活動って楽しいな」に繋がったら嬉しいですね。
――精力的にBIM/CIMを推進されてきて、まだまだ課題と感じる部分はありますか?
長谷川氏 土木学会のCIM講演会2018アンケートをみるとCIMについて40歳代を中心に「内容までよく知っている」人が50%以上と確実に認知度が上がっている一方、実際の取り組みについては、「すでに取り組んでいる」が2017年に49%だったのに対し、2018年では39%に落ちるなど、その普及程度はまだ安定していない様子がみられました。
また「CIMを導入するにあたって考えられる課題」の設問ではCIMの知識不足、担当者、人材育成の問題など「ヒト」に関わる課題を抱えている人が70%と依然として大多数を占めているのは大きな課題です。
業界の前例を最適としてきた慣習のためか、新たに創造することが苦手な技術者を見かけます。また国土交通省のガイドラインを気にするあまり、そこに記載のないことはできない、しない。または全部実施しなければいけないという発想に陥っており、柔軟に捉えられていないように思いますね。
藤澤氏 「これから3次元モデルは進むと思いますか?」と聞くと、みなさんほぼ「はい」と答えられます。ただ「いつ頃に普及すると思いますか?」と聞くと、「5年後」「10年後」「20年後」と回答はバラバラ。でも、いずれ普及するのであれば、今始めなくてどうするんですか?と思うわけです。
しかし、口でいくら言っても人はなかなか動いてくれませんので、先ほどから申している、勉強会の開催などを通して、BIM/CIM導入のキッカケづくりのお手伝いさせていただいています。
――CUGの今後の目標を教えてください。
藤澤氏 今まで通り、地道に講習会や意見交換会を実施していくことですかね。ただ、先ほども長谷川が申した通り、BIM/CIMの導入を単に促したり、便利さを伝えたりするだけでなく、「BIM/CIMを使うとこんなに仕事が楽しくなりますよ」という部分に重きを置いて普及活動はしていきたいです。
長谷川氏 数年後には、この業界も世代交代が起こるだろうと思っています。今の若者はICTへのアレルギーもありませんし、テクノロジーに対する飲み込みもはやいです。
そういった世代がどんどん増えていって、彼らの考え、仕事観が早く当たり前になればいいなと。そうなった時に、私たち古い世代が取り残されていく。なにもしてこなかった方々はジタバタするだろうなと。それを見るのが、ある意味、楽しみなんですよね(笑)。
藤澤氏 2016年から国交省がアイ・コンストラクションを掲げ始めましたが、まだまだ建設・土木業界のICT化は進んでいません。でもそれは裏を返せば、ICT化できる余白がものすごく残っているということ。つまり改善できる部分がまだまだあるんですね。CUGも、BIM/CIMの推進活動を通して、この業界の将来を明るくするために尽力していきたいです。
取材・文:デジコン編集部
撮影:砂田耕希
CUGは、国土交通省が2016年に建設・土木のICT化、「アイ・コンストラクション(i-Construction)」を掲げる以前から、3次元モデル利活用の推進を行なっている。今回は、代表理事の藤澤泰雄氏と監事の長谷川充氏にCUGの取組みなどをお聞きした。
いち早く3次元モデルの必要性と魅力を説いてきた。それがCivilユーザー会
―― Civilユーザー会、設立の経緯からお聞かせください。
藤澤氏 私は普段、八千代エンジニヤリングに所属しており、2005年にオートデスクのCivil 3Dという土木設計ソフトウェアを他社に先駆けて導入しました。ただ八千代エンジニヤリング1社だけだとどうしても普及しにくいだろう。また、多くのエンジニアと意見交換を行い3次元モデルの利活用を促していきたいという想いから2007年に「Civil 3D User Group」の呼称で当団体はスタートしました。
その後、さまざまな3Dのソフトウェアの登場や、国土交通省がCIM試行事業を始めたのを契機に、設計者・施工者をはじめとする土木技術者の集まりとして、固有のアプリケーション名を外して「Civil User Group」に団体名を変更し、現在に至っています。
ただ作業をこなすオペレーターではなく、創造できるエンジニアになってほしい。
――CUGの活動の目的も教えてください。
長谷川氏 建設・土木業界って、いまだに2次元の図面を引いている企業も多く、2次元の図面だと何度も修正したり、ひとつの図面を修正したら他の図面も直さなきゃいけなかったりと、ものすごく時間を取られるんですよね。それって、非効率で非生産的だなと……。
若手社員が上司に何度も言われたら、嫌になってしまいますしね。それであれば、3次元モデルを活用すれば、1つのモデルで全てが集約できますし、スピーディだし、間違いがない。この業界は、いまだに3Kのイメージが根強いですが、私たちはやっぱり、「どれだけラクをして、楽しんで仕事ができるか」が大切だと考えています。
藤澤氏 我々がCivil 3Dソフトウェアを導入した時も、「面白そうだな」というのが先にきたんです。今、CUGで開催している講習会の参加者さんの中には、CADオペレーターと呼ばれる職種の方も多いのですが、そういう方は、ソフトの使い方はすぐに吸収していただけるのですが、使い方だけ覚えて満足してしまうケースがあります。やはりソフトが使えるオペレーターではなく、ソフトを駆使したその先を創造できるような、クリエイターやエンジニアになっていただきたい。
―― ただの作業でとどまってほしくないと。
長谷川氏 そうですね。BIM/CIMを使いこなした先に、目的だったり、自分の想いだったりをのせてほしい。CUGは現在、2,700名を超える会員が登録していて、東京、大阪、広島、北海道、新潟、福岡の6カ所に分会を組織していて、定期的にハンズオンや意見交換を実施しています。
また会員有志によりワーキンググループが結成されており、設定したテーマについてユーザー目線による実質的な検証が日々行われています。こうした活動の際も、ただ、講習をするだけ、教えるだけではなく、やはりそこに何か「3次元モデルって面白いな」「CUGの活動って楽しいな」に繋がったら嬉しいですね。
BIM/CIMがスタンダードになるのは遠い未来の話ではない。
――精力的にBIM/CIMを推進されてきて、まだまだ課題と感じる部分はありますか?
長谷川氏 土木学会のCIM講演会2018アンケートをみるとCIMについて40歳代を中心に「内容までよく知っている」人が50%以上と確実に認知度が上がっている一方、実際の取り組みについては、「すでに取り組んでいる」が2017年に49%だったのに対し、2018年では39%に落ちるなど、その普及程度はまだ安定していない様子がみられました。
また「CIMを導入するにあたって考えられる課題」の設問ではCIMの知識不足、担当者、人材育成の問題など「ヒト」に関わる課題を抱えている人が70%と依然として大多数を占めているのは大きな課題です。
業界の前例を最適としてきた慣習のためか、新たに創造することが苦手な技術者を見かけます。また国土交通省のガイドラインを気にするあまり、そこに記載のないことはできない、しない。または全部実施しなければいけないという発想に陥っており、柔軟に捉えられていないように思いますね。
藤澤氏 「これから3次元モデルは進むと思いますか?」と聞くと、みなさんほぼ「はい」と答えられます。ただ「いつ頃に普及すると思いますか?」と聞くと、「5年後」「10年後」「20年後」と回答はバラバラ。でも、いずれ普及するのであれば、今始めなくてどうするんですか?と思うわけです。
しかし、口でいくら言っても人はなかなか動いてくれませんので、先ほどから申している、勉強会の開催などを通して、BIM/CIM導入のキッカケづくりのお手伝いさせていただいています。
CUGもBIM/CIM推進を通して、業界発展のお手伝いをしていきたい
――CUGの今後の目標を教えてください。
藤澤氏 今まで通り、地道に講習会や意見交換会を実施していくことですかね。ただ、先ほども長谷川が申した通り、BIM/CIMの導入を単に促したり、便利さを伝えたりするだけでなく、「BIM/CIMを使うとこんなに仕事が楽しくなりますよ」という部分に重きを置いて普及活動はしていきたいです。
長谷川氏 数年後には、この業界も世代交代が起こるだろうと思っています。今の若者はICTへのアレルギーもありませんし、テクノロジーに対する飲み込みもはやいです。
そういった世代がどんどん増えていって、彼らの考え、仕事観が早く当たり前になればいいなと。そうなった時に、私たち古い世代が取り残されていく。なにもしてこなかった方々はジタバタするだろうなと。それを見るのが、ある意味、楽しみなんですよね(笑)。
藤澤氏 2016年から国交省がアイ・コンストラクションを掲げ始めましたが、まだまだ建設・土木業界のICT化は進んでいません。でもそれは裏を返せば、ICT化できる余白がものすごく残っているということ。つまり改善できる部分がまだまだあるんですね。CUGも、BIM/CIMの推進活動を通して、この業界の将来を明るくするために尽力していきたいです。
取材・文:デジコン編集部
撮影:砂田耕希
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