BIM/CIM施策の導入・発展のために活動を続ける「一般社団法人Civilユーザー会」。その団体の幹事を務める長谷川充氏に、様々なテーマで「BIM/CIM」について語っていただく。4回目の今回は、「計画線形から自動で配管をしたい」。
BIM/CIMをまだよくわかっていない方は、BIM/CIMについて「なんとなく今までの仕事を3次元モデルで表現してリアルにシミュレーションできるのだろう」「モデルを作ったらそのモデルから2次元の図面・数量などを取り出せて積算がラクになるのだろう」などといった感覚があるのではないでしょうか?
そのとおり!ラクになります!理想はそうでなければいけませんよね。
ただ、現実を見てみると、既成概念と融通無碍、機械語と人間語、フィジカル空間とサイバー空間の歪み、などなど、カチッとしたものとふんわりとしたものが常に共存しています。これが矛盾を生み、悩みや不安を生むのでしょう。
企業からはよく「CIM推進室を組織し、積極的に利用を促す支援をしているのだが、一向に成果が出ない……。」といった悩みを聞きます。
BIM/CIMの“あるある”です。
なぜ活用が進まないのかを深掘りしていくと、「知らないアプリだから使わない」「忙しくて覚えていられないから使わない」「今困っていないから使わない」といった回答が現場から寄せられます。
既存の仕様が定まっているならば、目の前の作業を完了するためにわざわざ時間をかけて新しい手法を取り入れなくても完成させられる。だから効率よく仕事を消化するために、今の手法に磨きをかけて時間短縮を進めればいいじゃないか!
そのとおりです。どこも間違ってなどいないと思います。
前置きが長くなりましたが、「使わない」=「捨てる」、大量消費社会で染みついた感覚。データはゴミか?では、属性情報が必要か否かの判断をどこでするのでしょうか。
少し具体的な話をしていきます。
例えば、Autodesk製品のMAP3D等を用いると、シェイプファイルから読み込んだ属性情報を見ることができます。この例では「Mpolygon」によって用途地域が確認できました。ここで、提出する成果(商品)は、きれいに着色された紙図面です。
この図面を作りたいだけであれば、属性を持ったデータがあろうがなかろうが、一切関係ありません。だから、操作性を優先させるために分解してデータを捨てることにしました。
ところが、実際には別の人が同じ図面を使って面積の集計をしなければなりませんでした。その人にとってみれば、この属性を使って区域の整理を簡単に集計できるという巧妙が、そこに存在していたのです。
上記はほんの一例ですが、データ連携・活用のひとつと言っても良いかもしれません。この例でお伝えしたいのは、一つの視点にこだわらなければ、身近なところにBIM/CIMは存在しているというヒント。
「BIM/CIM≠3D model」「BIM/CM≠CG」ということでもあると思います。
私が主に使用しているソフトウェアベンダ、あるいはアプリケーションは、Autodesk、シビルソフト、パイプデザイン、川田テクノシステム、フォーラムエイト、エムティシー、Bigvan、Innovyze 、QGIS、です。
それぞれの特徴をつなぎ合わせて利用するというトライをしています。
トライする目的は、直接的なアウトプットが繋がらなくても間に〇〇を挟むことで連携が図れたりして作業の整合性、効率性が高くなる場合があるからです。
例えば、Autodesk Civil 3Dは、主に線形構造物の検討から設計図作成を得意とするアプリケーションで、道路設計やパイプネットワーク(自然流下および圧力管)の自動化をサポートしてくれる一方、排水施設断面などの計算は別途になります。ですので、そのほかにアドオンとして、以下のようなツールがあり、必要に応じて機能を拡充、あるいは補完できるようになっています(サードパーティー含む)。
細かい説明は割愛しますが、Autodesk製品の特長としては、ユーザサイドが必要なアプリケーションを組み合わせて使うようなスタイルだと私は理解しております。ちょうど、iPhoneにアプリを入れて自分好みのデバイスに仕上げていくようなイメージでしょうか。
日本製のアプリの多くは、各専門分野の仕様に合わせた形でパッケージされている印象を受けるのと同時に、仕様書に沿った納品をするのに役立ちます。その点では、海外製のAutodesk製品はラインアップの感覚が少々異なっている印象です。
どんなツール(アプリケーション)を使うかは、各自の目的に合わせて変化すると思いますので一様である必要はありません。
そんな折、私をはじめとする水インフラに関わる方々へニュースが飛び込みました。
2021年2月にAutodesk社が、世界でも有数の水道インフラストラクチャーソフトウェア開発会社であるInnovyze社の買収で最終合意に達したと発表したことです。個人的に長らくこうなったらいいなと思っていたことが実現されそうです。
これからの時代、データを制する者はインフラを制すです。目の前の仕事消化はもちろんのこと、将来へのデータ連携を日課にしてみてはいかがでしょうか?
近い将来データベースを統括する様々なプラットフォームの連携が進み、各アプリケーションは、逐次データベースにアクセスして必要な情報を取り込むようになるでしょう。ファイルベースからデータベースへの移行です。いま各企業・団体は、この綱引きに注力しています。
線形計画が出来たら、その管路の径を計算して求め、解析してまたモデルへ戻す、配管する。単一のソフトウェアでは不可能なことも、いくつかのアプリケーションを繋いでいくことで、Information(あい)を継承しつつ、モデリング、あるいはマネジメントすることが少なからず可能になります。
今回テーマの「自動で配管」というのがどこまでのことを指すのか、それはユーザーの欲望に大きく左右されると思いますが、もしもあなたが「“半”でも良い」と、寛容になれるならば、半自動から全自動に至るまでのバトンを繋ぐことで出来ることは限りなく広がる可能性があります。ぜひ、智慧を以て取り組んでまいりましょう。
1.理想と現実
BIM/CIMをまだよくわかっていない方は、BIM/CIMについて「なんとなく今までの仕事を3次元モデルで表現してリアルにシミュレーションできるのだろう」「モデルを作ったらそのモデルから2次元の図面・数量などを取り出せて積算がラクになるのだろう」などといった感覚があるのではないでしょうか?
そのとおり!ラクになります!理想はそうでなければいけませんよね。
ただ、現実を見てみると、既成概念と融通無碍、機械語と人間語、フィジカル空間とサイバー空間の歪み、などなど、カチッとしたものとふんわりとしたものが常に共存しています。これが矛盾を生み、悩みや不安を生むのでしょう。
企業からはよく「CIM推進室を組織し、積極的に利用を促す支援をしているのだが、一向に成果が出ない……。」といった悩みを聞きます。
BIM/CIMの“あるある”です。
なぜ活用が進まないのかを深掘りしていくと、「知らないアプリだから使わない」「忙しくて覚えていられないから使わない」「今困っていないから使わない」といった回答が現場から寄せられます。
既存の仕様が定まっているならば、目の前の作業を完了するためにわざわざ時間をかけて新しい手法を取り入れなくても完成させられる。だから効率よく仕事を消化するために、今の手法に磨きをかけて時間短縮を進めればいいじゃないか!
そのとおりです。どこも間違ってなどいないと思います。
2.そこにあるものは何だ?
前置きが長くなりましたが、「使わない」=「捨てる」、大量消費社会で染みついた感覚。データはゴミか?では、属性情報が必要か否かの判断をどこでするのでしょうか。
少し具体的な話をしていきます。
例えば、Autodesk製品のMAP3D等を用いると、シェイプファイルから読み込んだ属性情報を見ることができます。この例では「Mpolygon」によって用途地域が確認できました。ここで、提出する成果(商品)は、きれいに着色された紙図面です。
この図面を作りたいだけであれば、属性を持ったデータがあろうがなかろうが、一切関係ありません。だから、操作性を優先させるために分解してデータを捨てることにしました。
ところが、実際には別の人が同じ図面を使って面積の集計をしなければなりませんでした。その人にとってみれば、この属性を使って区域の整理を簡単に集計できるという巧妙が、そこに存在していたのです。
上記はほんの一例ですが、データ連携・活用のひとつと言っても良いかもしれません。この例でお伝えしたいのは、一つの視点にこだわらなければ、身近なところにBIM/CIMは存在しているというヒント。
「BIM/CIM≠3D model」「BIM/CM≠CG」ということでもあると思います。
3.愛を繋ぐ
私が主に使用しているソフトウェアベンダ、あるいはアプリケーションは、Autodesk、シビルソフト、パイプデザイン、川田テクノシステム、フォーラムエイト、エムティシー、Bigvan、Innovyze 、QGIS、です。
それぞれの特徴をつなぎ合わせて利用するというトライをしています。
トライする目的は、直接的なアウトプットが繋がらなくても間に〇〇を挟むことで連携が図れたりして作業の整合性、効率性が高くなる場合があるからです。
例えば、Autodesk Civil 3Dは、主に線形構造物の検討から設計図作成を得意とするアプリケーションで、道路設計やパイプネットワーク(自然流下および圧力管)の自動化をサポートしてくれる一方、排水施設断面などの計算は別途になります。ですので、そのほかにアドオンとして、以下のようなツールがあり、必要に応じて機能を拡充、あるいは補完できるようになっています(サードパーティー含む)。
- Dynamo for Civil 3D
- Storm and Sanitary Analysis
- SHP Import/Export Utillity for Civil 3D
- River and Flood Analysis Module for Civil 3D
- Geotechnical Module for Civil 3D
- GEORAMA for Civil 3D
- Pipe Design Pro
細かい説明は割愛しますが、Autodesk製品の特長としては、ユーザサイドが必要なアプリケーションを組み合わせて使うようなスタイルだと私は理解しております。ちょうど、iPhoneにアプリを入れて自分好みのデバイスに仕上げていくようなイメージでしょうか。
日本製のアプリの多くは、各専門分野の仕様に合わせた形でパッケージされている印象を受けるのと同時に、仕様書に沿った納品をするのに役立ちます。その点では、海外製のAutodesk製品はラインアップの感覚が少々異なっている印象です。
どんなツール(アプリケーション)を使うかは、各自の目的に合わせて変化すると思いますので一様である必要はありません。
そんな折、私をはじめとする水インフラに関わる方々へニュースが飛び込みました。
2021年2月にAutodesk社が、世界でも有数の水道インフラストラクチャーソフトウェア開発会社であるInnovyze社の買収で最終合意に達したと発表したことです。個人的に長らくこうなったらいいなと思っていたことが実現されそうです。
これからの時代、データを制する者はインフラを制すです。目の前の仕事消化はもちろんのこと、将来へのデータ連携を日課にしてみてはいかがでしょうか?
近い将来データベースを統括する様々なプラットフォームの連携が進み、各アプリケーションは、逐次データベースにアクセスして必要な情報を取り込むようになるでしょう。ファイルベースからデータベースへの移行です。いま各企業・団体は、この綱引きに注力しています。
4.自動化のバトン
線形計画が出来たら、その管路の径を計算して求め、解析してまたモデルへ戻す、配管する。単一のソフトウェアでは不可能なことも、いくつかのアプリケーションを繋いでいくことで、Information(あい)を継承しつつ、モデリング、あるいはマネジメントすることが少なからず可能になります。
今回テーマの「自動で配管」というのがどこまでのことを指すのか、それはユーザーの欲望に大きく左右されると思いますが、もしもあなたが「“半”でも良い」と、寛容になれるならば、半自動から全自動に至るまでのバトンを繋ぐことで出来ることは限りなく広がる可能性があります。ぜひ、智慧を以て取り組んでまいりましょう。
WRITTEN by
長谷川 充
Civilユーザー会 幹事/水都環境 代表。昭和45年名古屋生まれ埼玉育ち。現在はCivilユーザ会の幹事兼、有限会社 水都環境の代表。夜間大経済学部在学中にアルバイト入社した企業が“水コン”と呼ばれる会社だったことがこの世界に入ったきっかけ。水の魅力に惹き込まれるとともに、PCを用いた仕事に興味を持つ。平成18年に水専門の建設コンサルタントを創業し、Pipeline BIMのパイオニアを目指す傍ら、専門学校でCIMの講義を受け持つなどBIM/CIM普及活動に繋げている
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- 第4回 計画線形から自動で配管をしたい
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