コラム・特集
長谷川 充 2020.11.30
身近なところから始めるBIM/CIM

第1回 埋設ライフライン設計から視る、身近で小さなBIM/CIM

BIM/CIM施策の導入・発展のために活動を続ける「一般社団法人Civilユーザー会」。その団体の幹事を務める長谷川充氏に、様々なテーマで「BIM/CIM」について語っていただく。1回目の今回は、「埋設ライフライン設計とBIM/CIM」。

はじめに


私、長谷川は、Civilユーザー会幹事であると同時に、上下水道専門の建設コンサルタントをしております(有限会社 水都環境 代表)。上水道および下水道は、主に浄水場(処理場)・ポンプ施設と管路施設で構成されていますが、私たちの得意とする範囲は、下水道全体計画から管路施設の詳細設計です。

ここで私の言う管路施設の詳細設計には、調整池設計、簡易なポンプ場設計、水道の配管設計なども含んでいますので、いわゆるただの管路設計だけではありませんが、この埋設ライフライン設計の視点から見えるBIM/CIMの世界を探訪いたします。

私たちを取り巻く現状


日本におけるBIM/CIMは、平成28年8月に国土交通省によりCIM導入ガイドライン(素案)が発行されて以降、徐々に適用範囲を広げており、私の得意な下水道は、令和元年5月に第8編下水道編として例示されるに至りました。

しかしながら、同ガイドラインは、「下水道施設のポンプ場、終末処理場を対象に、BIM/CIMの考え方を用いて設計段階でBIM/CIMモデルを作成すること、作成されたBIM/CIMモデルを施工時に活用すること、さらには設計・施工のBIM/CIMモデルを維持管理、改築計画へ活用する際に適用する」と、その対象をポンプ場、終末処理場に限定していて、管路施設についてはi-Gesuidoのストックマネジメントで少々触れている以外に特段の案内がなく、さらに上水道に関しては管轄が違うこともあってか、かすりもしていない状況です。

図:BIM/CIMモデルの活用 現状と将来展望/ 出典:国土交通省 CIM導入ガイドライン(案)下水道編

そうは言っても、その下水道編の総則の中で、「部分的な利用を妨げるものではない。」と書いていただいているので、管路施設を対象にして自由にBIM/CIMしてしまおう!をテーマに書き進めていきます。

なりたい姿を想像する


BIM/CIMが効果的である事業は大規模プロジェクトの方であり、小規模なプロジェクトは得られる効果が小さく、実施するメリットが少ないと言われたりします。確かに、そもそもの施工費が小さいので、施工時における相対的なコストダウン効果が小さいことは間違いないでしょう。

しかしながら、建設コストだけがインフラストラクチャーではありません。維持管理から設計へ戻る部分を含めたライフサイクルコストで考えることが重要だと思うのです。

図:CIMの概念  / 出典:国土交通省 CIM導入ガイドライン(案)共通編

管路施設設計の仕事をしている中で、面倒だなぁ、とか、やりたくないなー、とか思うことがあります。また、設計図を得た施工者がなんでこんななの?と思うこともあるでしょう。そんなこんなの元凶となりうる事項を書き出してみました。「こうだったらいいな!ベスト5(水都環境 自社調べ)」です。

  1. 埋設状況の復元を簡単にしたい
  2. 更新事業のために経年変化が見たい
  3.  計画線形と一般構造を決めたら自動で解析や配管をしたい
  4. モデルができたら自動で数量を拾いたい
  5.  図面間の不整合をゼロにしたい

BIM/CIMの目的が云々とかも大切なことだと思いますが、やはり何と言っても自分たちにとって何かが楽にならないと苦しいです。だいぶ前に「苦CIM」から「楽CIM」へ、みたいなことを良く言っていたのを思い出します。

I(あい)に必要な材料


BIMもCIMも真ん中には「I(あい)」がありますね。私たちの日常を少しでも楽しく楽にしてくれるのはきっとこの「I(あい)」でしょう。言わずもがな「I(あい)」は、Informationの頭文字ですが、こうだったらいいな!の大半は、このInformationがそのカギを握っていると考えられます。

図:古すぎる台帳

たとえば、埋設状況の復元などは、まさに施工完了時の竣工情報がすべてで、のちに必要な情報が維持管理フェーズに引き継がれていれば、新たに計画する際の既往情報(設計条件)としてそのまま使えるし、経年変化も定期的に行っている調査情報を一元で追加していければ、何も倉庫に保管してある膨大な調査結果の山から宝探しのごとく1本のビデオを探し出す必要もなくなります。

ただし、今ある情報をすべてデータ化するのは大仕事になってしまうため、時間と予算があるときにやるとして、今できることは、これから始まる仕事に対して未来に有効な仕様を約束することではないかと考えます。

次回以降は、これから始まる仕事は、どのような情報に留意すべきか考えてみようと思います。例えば台帳管理システムで使用されるGIS、設計時に作られるモデル、施工前に確認のために行われる試掘、敷設時の竣工図書、などなど。今ある情報でできることのおさらい、あるいは未来へ向けての創造をしてみましょう。


長谷川 充   Civilユーザー会 幹事/水都環境 代表

〜Profile〜
 昭和45年名古屋生まれ埼玉育ち。現在はCivilユーザ会の幹事兼、有限会社 水都環境の代表。夜間大経済学部在学中にアルバイト入社した企業が“水コン”と呼ばれる会社だったことがこの世界に入ったきっかけ。水の魅力に惹き込まれるとともに、PCを用いた仕事に興味を持つ。平成18年に水専門の建設コンサルタントを創業し、Pipeline BIMのパイオニアを目指す傍ら、専門学校でCIMの講義を受け持つなどBIM/CIM普及活動に繋げている。
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WRITTEN by

長谷川 充

Civilユーザー会 幹事/水都環境 代表。昭和45年名古屋生まれ埼玉育ち。現在はCivilユーザ会の幹事兼、有限会社 水都環境の代表。夜間大経済学部在学中にアルバイト入社した企業が“水コン”と呼ばれる会社だったことがこの世界に入ったきっかけ。水の魅力に惹き込まれるとともに、PCを用いた仕事に興味を持つ。平成18年に水専門の建設コンサルタントを創業し、Pipeline BIMのパイオニアを目指す傍ら、専門学校でCIMの講義を受け持つなどBIM/CIM普及活動に繋げている
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