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デジコン編集部 2021.1.28

北陸新幹線の開業遅れは1年程度に収まる?敦賀駅工事の短縮は可能なのか

北陸新幹線の金沢~敦賀間は、計画当初の2026年春開業から3年前倒しされ、2023年春の開業が予定されていた。しかし、2020年11月、工事が1年半程度遅延していること、事業費がさらに約2880億円追加される見込みであることが発覚。これを受け国土交通省は専門家を交え、その事実関係の検証を行い、2020年12月10日、「北陸新幹線の工程・事業費管理に関する検証委員会」の中間報告書を公表した。


このなかで開業が遅れる見込みとなった要因は大きく2つ挙げられている。石川・福井県境の加賀トンネルと、敦賀駅の工事の遅れだ。加賀トンネルでは、2020年3月に盤ぶくれという自然現象による亀裂を確認。対策工事などで10か月以上の遅延が見込まれることになった。ただ、加賀トンネルの工事遅延は、敦賀工区の遅れの範囲内に収まる見通し。


問題となっているのは敦賀駅の工事遅れだ。そもそも、敦賀駅は新幹線と在来線特急の上下階での乗り換えを可能にする大きな設計変更のため、土木工事の着手が大きく遅延。土木・建築の同時施工などの工事の工夫により、当初は予定通りの開業は可能としていたが、作業員や機材の確保が進まず、各方面との協議の結果、土木・建築の同時施工なども難しいことが判明。発注者である鉄道・運輸機構は2年程度の工期遅延の恐れがあると、国交省に報告した。

国交省への報告に先立つ2019年10月の時点でJVから「遅延回復は困難」との申し出がありながら、鉄道・運輸機構の大阪支社から本社には遅延の回復が可能と報告されていたことなどを中間報告では確認し、機構内のチェック体制の不備、国交省の監督の不備、関係自治体との調整の不備などが指摘されている。


また、報告書では人員確保による土木工事の短縮、クレーンの増備などによる建築工事の短縮、検査の効率化などで、6か月程度の遅延の回復が可能としている。開業時期の遅れを1年半から1年に短縮できることになる。ただし、悪天候や災害、新型コロナ感染拡大といった「リスク要因が想定の範囲内に収まっている場合」。

しかし、工事の複雑化で熟練の人員を確保する必要があり、建築工事の短縮は土木工事の短縮を前提としているなど、リスク要因が想定内に収まった場合でも、工期短縮は難しい点が多い。そもそも厳しい日程を強いるなかで、人員の増加や機材の追加などがスムーズに進むことは難しいのではないか。短縮を前提とするのではなく、実現可能な工期で確実な施工を目指してもらいたい。

なお、追加でかかる事業費についても、想定を超える物価上昇などのリスクがなければ、約222億円縮減の2658億円になるという見込みだという。

国交省は原因究明・再発防止策についてさらに検討を進め、2021年夏を目途に最終報告をとりまとめるとしている。

北陸新幹線画像:mTaira / Shutterstock.com
その他の本文中の資料は北陸新幹線の工程・事業費管理に関する検証委員会の中間報告書より
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