2021年の一回目の開催から規模を1.5倍に拡大し、2022年の建設DX展が再び東京へやってきた。会期は2022年12月5日(月)〜7日(水)の3日間、会場は東京ビックサイト。
会場内には、450社もの企業がブースを構え、自社製品のPRを熱心に行った。バックオフィス支援や現場の効率化、作業員の安全性確保、そして3次元系のソリューション、さらには業界の未来を感じさせる企画展まで、その内容は多種多様。
本記事では、最新技術がずらりと立ち並ぶ展示エリアから、10ブースをピックアップ。会場の賑わいとともに、建設DX化を支援する最新のプロダクトをご紹介していく。
最初にご紹介するのは、バックオフィス業務を支援するソリューションだ。グリーンファイルと一口に言っても、その内容は多岐にわたる。
作業員名簿や各種免許・許可証などの有効期限のチェック等、必要項目は相当数になるため、ミスが発生しやすい業務の一つだが、グリーンサイトを活用すれば、複雑な手続きが一気にシンプルになる。
インターネット環境とログインパスワードさえあれば、元請け会社(管理者)だけでなく協力会社も、いつでもどこでも書類の作成・提出が可能だ。管理者の確認・受領作業は、すべてPCやタブレットの画面上で完結する。
また、一度入力したデータは再利用できるので、現場ごとに何度も同じ情報を入力する必要がない。さらに、iOSアプリとスマートリーダーを活用すれば、作業員の入退場履歴の管理にも対応できる。現在は大手ゼネコン複数社で採用されており、今後は中小事業者への利用拡大が期待されている。
建機のレンタル会社は、中小事業者にとって重要なパートナーだ。しかし、両社間のやりとりにはまだ改善の余地も多い。
SaaS型サービス「Rentals」を使えば、自社オリジナルのオンラインカタログが開発費ゼロで作成できる。
レンタル機器の種類や機数、レンタル状況の管理はオンラインで一元管理できるので、保有建機の稼働状況などは一目瞭然。対応はシステム内のチャット機能を使用する。電話やメール、FAXによるやりとりがすべて集約されるので、都度対応する必要もなり効率的だ。
24時間いつでもどこでも依頼が可能なので、建設会社もレンタル会社の営業時間を待たずに注文ができるのは大きなポイントと言えるだろう。
誤納品によるロスをなくし、建設会社からの質問や納品日の変更などにもスピーディーに対応。レンタル会社の負担を軽減するとともに、建設事業者目線でも、利便性の高いサービスといえるだろう。
大規模な公共工事や建設現場で活躍する溶接工。長年の経験によって培われた職人の勘が品質を左右するが、技術継承は思うように進んでいない。
その要因のひとつに、溶接工の作業現場では、強烈な閃光が発生する。そのため熟練技を見て盗むこと自体が難しいのだ。
しかし、川田テクノロジーズが開発した「3D溶接マスク」を装着すれば、画像解析技術で溶接部を可視化が可能になる。
左右に設置された2つの小型カメラユニットが捉えた映像をリアルタイムに合成し、ヘッドマウントディスプレイに遅延なく表示する仕組みだ。
ひとつのカメラユニットにつき、複数のイメージセンサを用いており、溶接部から周辺まで、異なる広範囲の露出条件をもつ同一画角の映像を同時に取得、リアルタイムに画像処理演算して映像化する。
このリアルタイム映像により、溶接状況を広い視野で立体的に視認しながら確実な溶接作業が行えるようになった。フィルタや液晶で遮光する従来のマスクとは異なり、リアルタイム映像を通して間接的に視認する仕組みなので、アーク光やUV光から完全に瞳を保護でき、作業員の安全性が向上。
また、技術者の手元の映像を保存できるようにあったので、教育・始動に役立つ資料としても活用も期待されている。
500mlペットボトルとほぼ同サイズのこちらの端末(下)。一見すると電源ボタンのみのシンプルなデザインだが、端末の上下左右には8Kの高画質撮影に対応した8つの魚眼レンズが搭載されている。
撮影モードは、パノラマ360°撮影モードと、動画60°撮影モードのふたつ。両モードを組み合わせて、データの一部を動画に変換した動くパノラマ画像の撮影も可能だ。
そして一番の目玉は、720°のVR空間を超高画質で撮影できる機能だ。カメラと専用アプリを連携させれば、撮影からデータの処理・アップロードが非常にスムーズで、なんと最短5分ほどで完了するという。自動生成された3D空間上で、距離寸法の計算もできるのだとか。
ポケットに収まるコンパクトさ、そして撮影からデータ化まで一切の煩わしさがないので、足場の悪い現場や、さまざまなデータを繰り返し確認したい現地調査、現場の進捗管理などで、ポテンシャルを発揮するだろう。
SF映画に登場するロボットを思わせるこちらの端末は、2022年にグッドデザイン賞も受賞した、モバイル3DスキャナField LiDERだ。
高精度IMU(3軸の角速度と加速度を計測するセンサー)とRTK-GNSSレシーバー、高精度GNSSレシーバー搭載しており、山間部の舗装面など、光が届きにくい場所でも、安定して高精度な点群データを取得できるうえ、リアルタイムでカラー点群データの生成が可能だ。
計測範囲は半径100m以内、計測時間は10分以内と申し分ない。移動速度は時速4km 以内となっているので、作業員が徒歩で現場を歩きまわりながら計測するのが良いだろう。
そしてこの3Dレーザースキャナーの使用用途を更に広げる産学連携プロジェクト「Field Laser」が現在進行中だ。このシステムは、建機に設置した3Dレーザースキャナ、自動追尾型のTSとデータロガ、ネット環境、制御端末装置で構成されている。
仕上がり面の形状をスキャナで計測し、現場に設置した自動追尾型TSで取得した点群をリアルタイムに処理していく。そして処理したデータはアクセスポイントを介して、順次クラウド上にアップロードされていく仕組みだ。
タイヤローラーで整えた舗装面は同時に出来形データが完成するので、出来形管理用のデータを改めて計測する手間を、まるごと削減できる。
クラウド上には最新の出来形管理データが随時アップロードされるので、発注者も遠隔で工事の進捗状況を確認したり、現場を訪れずとも検査業務を行えるなど、大幅な効率化が期待できる。
施工のICT化に欠かせないのが、現場の高速インターネット環境だ。広域な工事現場の場合、工区が進むにつれてWi-Fi環境の見直しが必要になるケースもあるだろう。
FURUNOが提供するのは、そんな建設現場のニーズにマッチする3タイプのWi-Fiシステムだ。
たとえば、トンネル坑内などに適した「ホップワイドLAN」は、アンテナとアクセスポイントが一体になったBOX型の装置を等間隔に設置するだけで、Wi-Fi環境を構築できる。工事不要なうえに、設置や移動が非常に簡単だ。
容量無制限・大容量データ伝送にも対応しているので、ICT機器や建機を何機も動かす現場でも使用可能だ。
そして、一見すると普通の工事灯だが、これは内部に通信用モジュールが組み込まれた照明一体型ゲートウェイだ。
この工事灯を介して、作業者や資材の位置・動向をリアルタイムに計測・確認ができるというもの。
たとえば、温湿度や騒音などの環境センサ、作業員のバイタルセンサなど、現場内のさまざまな情報をモニターできるので、作業員自身が安全・衛生環境の保護に気を紛らわされることなく、作業に集中できるだろう。
高スペックなPCがなくても、インターネット環境さえあれば3次元点群データの加工や処理・編集ができるソリューションとして着実に認知を広めている、ScanX。
例年はOPTiMと共同出展をしてきたが今回は初の単独出展だ。とりわけ参加者の関心を集めたのは、追加されたばかりの新機能。
これまでも、点群を自動でクラス分けする機能はあったが、今回はそこからさらに掘り下げ、3次元点群データから3Dメッシュデータを自動生成する機能が追加されたという。
また、森林の点群データから樹木を一本ずつ自動抽出する樹木解析機能も追加された。建物と森林が混在している場合も、樹木のみを抽出できるので、建物と隣接する樹木や、樹木同士の距離を計測する等の細かな作業が可能になる。
月額利用プランはベーシック、プロ、エンタープライズと3段階に分かれている点も良心的だ。点群を初めて扱うビギナーからヘビーユーザーまで幅広くカバーする、高品質サービスと言えるだろう。
ICT施工やBIM/CIMの活用に欠かせないのが、地図情報。ここでは建設業向けの2つのサービスを紹介する。
ゼンリンが提供するサービス「3D地図データ」は、目的に応じて3D地図データをオンラインで配布してくれる。
たとえば、2Dの地図データと3Dデータが予めリンクしたDXFデータや、建物情報と地形データなどから作成した簡易3D地図データ、そしてゼンリンの保有する詳細な地図情報に加え、専用車両で計測したデータにより、建物の形状や質感、サイン類に至るまで現実の街並みを忠実に再現した3D都市モデルデータ(国内21都市対応)だ。
オンライン上で地図データの編集ができるので、不要なオブジェクトを予め省いたデータをダウンロードできる。BIM/CIMへの活用だけでなく、VRを使った映像コンテンツなど、幅広い活用シーンが想定されている。
ゼンリンは他にも、建設業者に特化したGISパッケージを展開している。
設計・建設コンサル向けには、CADソフトに直接取り込めるDXF形式の住宅地図データの配布などのコンテンツを、建設事業者向けには、現地案内図や近隣住民への説明資料などが簡単に作成できる、大型車両用のルート検索機能など、施工目線に立った地図の活用プランをそれぞれ提供している。
最新の地図情報を買い揃えたり、工事予定地周辺の詳細な道路状況の確認などが予めパッケージ化され、しかも24時間オンラインですぐに入手できるため、資料を一から揃える事前準備をまるごと省力化できる。
地図情報とは切っても切れない建設業界にとって、まさに縁の下の力持ちと呼べるサービスだろう。
展示ブースに設けられた、スカイツリーがそびえ立つビル群の模型。これは実際の東京都内の街並みを3Dプリンターで制作したものだ。
この模型をゴーグル状のデバイス「Hololens2」を装着して見ると、打ち上げ花火や手持ち花火が表示される。AR・MRを連動させ、花火やフライトシミュレーターを体験できる企画展示だ。手持ち花火で枠を焼き切り、枠の中を飛行機が無事通過できたら成功だ。
さらに、国交省 国土技術政策総合研究所(国総研)をUC-win/Roadで丸ごとVR化し、テストコースをドライビングシミュレーターで走ることができる「デジタルツイングランプリ in VR国総研」も同時出展。
国総研のテストコースをドライブするという、リアルではなかなか体験できないことが、デジタル空間上では、いともカンタンに実現できてしまう。そんな、VRならではの特徴が全面に出た企画。たくさんの来場者が、ハンドルを握り、目を輝かせながら国総研を突っ走っていたのが印象的だった。
ゲームを楽しんでいるうちに、なにかと混同しがちなAR、MR、VRのそれぞれの特性や活用シーンを遊びながら学ぶことができる。前回の「プラトーで遊ぼう!」に続き、随所にエンターテインメント性の光る企画に、遊び心をくすぐられた来場者も少なくないのではないだろうか。
最後に、来場者が足を止め、ひときわ注目を集めていた建設RXコンソーシアムの展示ブースを紹介する。建設RXコンソーシアムとは、2021年に結成された、大手ゼネコンや関連企業の会員からなる団体だ。
当初の正会員数は16社だったが、急速に会員数を伸ばし、すでに正会員は114社にのぼる。その実績を示すように、ブース壁面には加盟企業のロゴがずらりと並び、その前には大手ゼネコンが共同開発した自動搬送ロボットなどの最新機器や、研究発表のパネルが展示されていた。
建設の新しい未来を感じさせる展示内容に、多くの来場者がじっくりと見入っている姿が印象的だった。
【編集部 後記】
今回が二度目となった、建設DX展。会場で交わされる商談内容や、来場者が出展企業に寄せる質問を聞くに、明確な目的意識を持った来場者が増えたように感じた。
またユーザーと直接コミュニケーションが取れる建設DX展のような大規模展示会は、出展企業にとっても貴重な機会であることは、言うまでもないだろう。事業者のリアルな声、現場の切実な要望を元に、画期的なソリューションは生まれる。今年(2023年)、第3回 建設DX展の開催がすでに決定している。次回は、一体どんな技術に出合えるだろうか。
会場内には、450社もの企業がブースを構え、自社製品のPRを熱心に行った。バックオフィス支援や現場の効率化、作業員の安全性確保、そして3次元系のソリューション、さらには業界の未来を感じさせる企画展まで、その内容は多種多様。
本記事では、最新技術がずらりと立ち並ぶ展示エリアから、10ブースをピックアップ。会場の賑わいとともに、建設DX化を支援する最新のプロダクトをご紹介していく。
労務安全書類(グリーンファイル)をクラウド上で一元管理「グリーンサイト」
最初にご紹介するのは、バックオフィス業務を支援するソリューションだ。グリーンファイルと一口に言っても、その内容は多岐にわたる。
作業員名簿や各種免許・許可証などの有効期限のチェック等、必要項目は相当数になるため、ミスが発生しやすい業務の一つだが、グリーンサイトを活用すれば、複雑な手続きが一気にシンプルになる。
インターネット環境とログインパスワードさえあれば、元請け会社(管理者)だけでなく協力会社も、いつでもどこでも書類の作成・提出が可能だ。管理者の確認・受領作業は、すべてPCやタブレットの画面上で完結する。
また、一度入力したデータは再利用できるので、現場ごとに何度も同じ情報を入力する必要がない。さらに、iOSアプリとスマートリーダーを活用すれば、作業員の入退場履歴の管理にも対応できる。現在は大手ゼネコン複数社で採用されており、今後は中小事業者への利用拡大が期待されている。
建機のレンタルを、もっとわかりやすく!もっと便利に!自社のオンラインカタログが作れる「Rentals」
建機のレンタル会社は、中小事業者にとって重要なパートナーだ。しかし、両社間のやりとりにはまだ改善の余地も多い。
SaaS型サービス「Rentals」を使えば、自社オリジナルのオンラインカタログが開発費ゼロで作成できる。
レンタル機器の種類や機数、レンタル状況の管理はオンラインで一元管理できるので、保有建機の稼働状況などは一目瞭然。対応はシステム内のチャット機能を使用する。電話やメール、FAXによるやりとりがすべて集約されるので、都度対応する必要もなり効率的だ。
24時間いつでもどこでも依頼が可能なので、建設会社もレンタル会社の営業時間を待たずに注文ができるのは大きなポイントと言えるだろう。
誤納品によるロスをなくし、建設会社からの質問や納品日の変更などにもスピーディーに対応。レンタル会社の負担を軽減するとともに、建設事業者目線でも、利便性の高いサービスといえるだろう。
瞳を保護しながら、溶接工の技術力を底上げ「3D溶接マスク」
大規模な公共工事や建設現場で活躍する溶接工。長年の経験によって培われた職人の勘が品質を左右するが、技術継承は思うように進んでいない。
その要因のひとつに、溶接工の作業現場では、強烈な閃光が発生する。そのため熟練技を見て盗むこと自体が難しいのだ。
しかし、川田テクノロジーズが開発した「3D溶接マスク」を装着すれば、画像解析技術で溶接部を可視化が可能になる。
左右に設置された2つの小型カメラユニットが捉えた映像をリアルタイムに合成し、ヘッドマウントディスプレイに遅延なく表示する仕組みだ。
ひとつのカメラユニットにつき、複数のイメージセンサを用いており、溶接部から周辺まで、異なる広範囲の露出条件をもつ同一画角の映像を同時に取得、リアルタイムに画像処理演算して映像化する。
このリアルタイム映像により、溶接状況を広い視野で立体的に視認しながら確実な溶接作業が行えるようになった。フィルタや液晶で遮光する従来のマスクとは異なり、リアルタイム映像を通して間接的に視認する仕組みなので、アーク光やUV光から完全に瞳を保護でき、作業員の安全性が向上。
また、技術者の手元の映像を保存できるようにあったので、教育・始動に役立つ資料としても活用も期待されている。
コンパクトボディのデジタル8眼レフ8K 3DスキャナーでVR空間を瞬時に作成「4DKanKan」
500mlペットボトルとほぼ同サイズのこちらの端末(下)。一見すると電源ボタンのみのシンプルなデザインだが、端末の上下左右には8Kの高画質撮影に対応した8つの魚眼レンズが搭載されている。
撮影モードは、パノラマ360°撮影モードと、動画60°撮影モードのふたつ。両モードを組み合わせて、データの一部を動画に変換した動くパノラマ画像の撮影も可能だ。
そして一番の目玉は、720°のVR空間を超高画質で撮影できる機能だ。カメラと専用アプリを連携させれば、撮影からデータの処理・アップロードが非常にスムーズで、なんと最短5分ほどで完了するという。自動生成された3D空間上で、距離寸法の計算もできるのだとか。
ポケットに収まるコンパクトさ、そして撮影からデータ化まで一切の煩わしさがないので、足場の悪い現場や、さまざまなデータを繰り返し確認したい現地調査、現場の進捗管理などで、ポテンシャルを発揮するだろう。
舗装工の作業現場を効率化!三菱電機エンジニアリングの「モバイル3Dスキャナ Field LiDER」&「建機搭載型出来形管理システムFirld 」
SF映画に登場するロボットを思わせるこちらの端末は、2022年にグッドデザイン賞も受賞した、モバイル3DスキャナField LiDERだ。
高精度IMU(3軸の角速度と加速度を計測するセンサー)とRTK-GNSSレシーバー、高精度GNSSレシーバー搭載しており、山間部の舗装面など、光が届きにくい場所でも、安定して高精度な点群データを取得できるうえ、リアルタイムでカラー点群データの生成が可能だ。
計測範囲は半径100m以内、計測時間は10分以内と申し分ない。移動速度は時速4km 以内となっているので、作業員が徒歩で現場を歩きまわりながら計測するのが良いだろう。
そしてこの3Dレーザースキャナーの使用用途を更に広げる産学連携プロジェクト「Field Laser」が現在進行中だ。このシステムは、建機に設置した3Dレーザースキャナ、自動追尾型のTSとデータロガ、ネット環境、制御端末装置で構成されている。
仕上がり面の形状をスキャナで計測し、現場に設置した自動追尾型TSで取得した点群をリアルタイムに処理していく。そして処理したデータはアクセスポイントを介して、順次クラウド上にアップロードされていく仕組みだ。
タイヤローラーで整えた舗装面は同時に出来形データが完成するので、出来形管理用のデータを改めて計測する手間を、まるごと削減できる。
クラウド上には最新の出来形管理データが随時アップロードされるので、発注者も遠隔で工事の進捗状況を確認したり、現場を訪れずとも検査業務を行えるなど、大幅な効率化が期待できる。
設置や移動、増設もラクラク。現場のDX化を支援する「Wi-Fiシステム」と「照明一体型ゲートウェイ」
施工のICT化に欠かせないのが、現場の高速インターネット環境だ。広域な工事現場の場合、工区が進むにつれてWi-Fi環境の見直しが必要になるケースもあるだろう。
FURUNOが提供するのは、そんな建設現場のニーズにマッチする3タイプのWi-Fiシステムだ。
たとえば、トンネル坑内などに適した「ホップワイドLAN」は、アンテナとアクセスポイントが一体になったBOX型の装置を等間隔に設置するだけで、Wi-Fi環境を構築できる。工事不要なうえに、設置や移動が非常に簡単だ。
容量無制限・大容量データ伝送にも対応しているので、ICT機器や建機を何機も動かす現場でも使用可能だ。
そして、一見すると普通の工事灯だが、これは内部に通信用モジュールが組み込まれた照明一体型ゲートウェイだ。
この工事灯を介して、作業者や資材の位置・動向をリアルタイムに計測・確認ができるというもの。
たとえば、温湿度や騒音などの環境センサ、作業員のバイタルセンサなど、現場内のさまざまな情報をモニターできるので、作業員自身が安全・衛生環境の保護に気を紛らわされることなく、作業に集中できるだろう。
大規模展示会の単独出展は初!SaaS型3次元点群処理・解析・加工ソフト「スキャン・エックス」
高スペックなPCがなくても、インターネット環境さえあれば3次元点群データの加工や処理・編集ができるソリューションとして着実に認知を広めている、ScanX。
例年はOPTiMと共同出展をしてきたが今回は初の単独出展だ。とりわけ参加者の関心を集めたのは、追加されたばかりの新機能。
これまでも、点群を自動でクラス分けする機能はあったが、今回はそこからさらに掘り下げ、3次元点群データから3Dメッシュデータを自動生成する機能が追加されたという。
また、森林の点群データから樹木を一本ずつ自動抽出する樹木解析機能も追加された。建物と森林が混在している場合も、樹木のみを抽出できるので、建物と隣接する樹木や、樹木同士の距離を計測する等の細かな作業が可能になる。
月額利用プランはベーシック、プロ、エンタープライズと3段階に分かれている点も良心的だ。点群を初めて扱うビギナーからヘビーユーザーまで幅広くカバーする、高品質サービスと言えるだろう。
地図のプロフェッショナルが、BIM/CIM活用をサポート!ゼンリン「3D地図データ」&「ZENRIN GISパッケージ」
ICT施工やBIM/CIMの活用に欠かせないのが、地図情報。ここでは建設業向けの2つのサービスを紹介する。
ゼンリンが提供するサービス「3D地図データ」は、目的に応じて3D地図データをオンラインで配布してくれる。
たとえば、2Dの地図データと3Dデータが予めリンクしたDXFデータや、建物情報と地形データなどから作成した簡易3D地図データ、そしてゼンリンの保有する詳細な地図情報に加え、専用車両で計測したデータにより、建物の形状や質感、サイン類に至るまで現実の街並みを忠実に再現した3D都市モデルデータ(国内21都市対応)だ。
オンライン上で地図データの編集ができるので、不要なオブジェクトを予め省いたデータをダウンロードできる。BIM/CIMへの活用だけでなく、VRを使った映像コンテンツなど、幅広い活用シーンが想定されている。
ゼンリンは他にも、建設業者に特化したGISパッケージを展開している。
設計・建設コンサル向けには、CADソフトに直接取り込めるDXF形式の住宅地図データの配布などのコンテンツを、建設事業者向けには、現地案内図や近隣住民への説明資料などが簡単に作成できる、大型車両用のルート検索機能など、施工目線に立った地図の活用プランをそれぞれ提供している。
最新の地図情報を買い揃えたり、工事予定地周辺の詳細な道路状況の確認などが予めパッケージ化され、しかも24時間オンラインですぐに入手できるため、資料を一から揃える事前準備をまるごと省力化できる。
地図情報とは切っても切れない建設業界にとって、まさに縁の下の力持ちと呼べるサービスだろう。
建設ITワールド家入龍太郎氏の企画展!AR・MR・VRを使って「デジタルツインで遊ぼう!」
展示ブースに設けられた、スカイツリーがそびえ立つビル群の模型。これは実際の東京都内の街並みを3Dプリンターで制作したものだ。
この模型をゴーグル状のデバイス「Hololens2」を装着して見ると、打ち上げ花火や手持ち花火が表示される。AR・MRを連動させ、花火やフライトシミュレーターを体験できる企画展示だ。手持ち花火で枠を焼き切り、枠の中を飛行機が無事通過できたら成功だ。
さらに、国交省 国土技術政策総合研究所(国総研)をUC-win/Roadで丸ごとVR化し、テストコースをドライビングシミュレーターで走ることができる「デジタルツイングランプリ in VR国総研」も同時出展。
国総研のテストコースをドライブするという、リアルではなかなか体験できないことが、デジタル空間上では、いともカンタンに実現できてしまう。そんな、VRならではの特徴が全面に出た企画。たくさんの来場者が、ハンドルを握り、目を輝かせながら国総研を突っ走っていたのが印象的だった。
ゲームを楽しんでいるうちに、なにかと混同しがちなAR、MR、VRのそれぞれの特性や活用シーンを遊びながら学ぶことができる。前回の「プラトーで遊ぼう!」に続き、随所にエンターテインメント性の光る企画に、遊び心をくすぐられた来場者も少なくないのではないだろうか。
最新の研究発表と技術で、業界の未来を照らす。初出展「建設RXコンソーシアム」
最後に、来場者が足を止め、ひときわ注目を集めていた建設RXコンソーシアムの展示ブースを紹介する。建設RXコンソーシアムとは、2021年に結成された、大手ゼネコンや関連企業の会員からなる団体だ。
当初の正会員数は16社だったが、急速に会員数を伸ばし、すでに正会員は114社にのぼる。その実績を示すように、ブース壁面には加盟企業のロゴがずらりと並び、その前には大手ゼネコンが共同開発した自動搬送ロボットなどの最新機器や、研究発表のパネルが展示されていた。
建設の新しい未来を感じさせる展示内容に、多くの来場者がじっくりと見入っている姿が印象的だった。
【編集部 後記】
今回が二度目となった、建設DX展。会場で交わされる商談内容や、来場者が出展企業に寄せる質問を聞くに、明確な目的意識を持った来場者が増えたように感じた。
またユーザーと直接コミュニケーションが取れる建設DX展のような大規模展示会は、出展企業にとっても貴重な機会であることは、言うまでもないだろう。事業者のリアルな声、現場の切実な要望を元に、画期的なソリューションは生まれる。今年(2023年)、第3回 建設DX展の開催がすでに決定している。次回は、一体どんな技術に出合えるだろうか。
WRITTEN by
高橋 奈那
神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。
建設土木の未来を
ICTで変えるメディア