コラム・特集
平田 佳子 2022.1.25

育児と3Dモデリングを両立するママさんがいた!未経験でも楽しんでICTにチャレンジする「西建工業(和歌山)」の北野沙織さん

和歌山県に拠点を構え、河川・道路・法面工事などの土木工事を中心に手がける「西建工業株式会社」は、2013年からいち早くICT施工をスタートし、現在も続々と最新技術を導入している。

代表の西口氏のインタビュー記事では、積極的にICT施工を推進する、その背景について紹介したが、実は西建工業には、未経験から3Dモデリングを習得した女性スタッフがいる。子育てと両立しながらICT系の業務を担う西建工業・ICT事業部の北野 沙織氏(以下、敬称略)に、仕事のやりがいや大変さについて伺った。


まったくの未経験から、建設業界、そしてICT事業部へ


ーー 北野さんはICT事業部でお仕事をされているんですよね。西建工業にはどういった経緯で入社されたのですか?

北野:私はもともとIT系の企業でシステムエンジニア(SE)をしていました。しかし、結婚と子育てを機に一度、仕事を退職。その後、子どもが少し大きくなってきたタイミングで、自宅近くで働けるパートタイマーの求人を探していたら、たまたま西建工業で事務職の募集を見つけたんです。それで面接に行くと「ICT事業部でお仕事してみませんか?」と、西口社長からお誘いを受け、約2年前に入社しました。

西建工業株式会社 ICT事業部 北野 沙織 氏

ーー ICT事業部にスカウトされたんですね。具体的にどのようなお仕事をしているのでしょう?

北野:現場の平面図や横断図をもとに3Dモデルを作成し、ドローンで取得した現況の3D点群データと組合わせて、現場との差異の確認や土量計算を行い、そのデータを建機用のマシンガイダンス(MG)に取り込んでいます。社内には、私のように3Dモデルをつくったり、点群データを加工したりする方が何人かいて、協力し合って仕事をしていますね。


ーー 3Dモデリングをされているのですね。もともとシステムエンジニアをされていたとはいえ、こうした業務は初めてですよね?

北野:そうなんです(笑)。建設業界で働くこと自体が初めてで、土木工事や専門用語も全くわからなくて……。3D測量に対応した「Trimble Business Center Pro」や土木CADの「A-NOTE」などの専用のソフトウェアも、西建工業に入社して初めてさわりました(笑)。­­­


ーーゼロから勉強するのは大変だったのでは?

北野:大変でした(笑)。今も分からないことがまだまだあります。疑問が出てきたら、先輩に聞いたり、メーカーのサポートセンターに電話したりして解決しています。サポートセンターでは、リモートで画面を確認しながら丁寧に教えてくださるので、初心者でもわかりやすいですね。


土木の仕事は、やりがいだらけ


ーー 仕事をする中で、課題や難しさを感じることはありますか?

北野:私自身、現場に出て作業をしたことがないので、現場のオペレーターさんがどんなデータを求めているかが見えにくい部分があります。


私は図面通りに3Dモデルを作ったつもりでも、重機オペレーターさんが操作をする中で、「ここは使いにくいよ」「ここの形が合ってないんじゃないですかね?」と指摘されることもありますね。例えば、3Dモデルを作る際にガタつきが出てしまったり、高さの違う面と面がぶつかるような複雑な形状のデータを作る際に形が異なってしまったり……。

ーー現場に詳しくないために、イメージしずらいこともあると。

北野:そうですね。今は現場のことやデータの作り方についてなど、勉強中のことも多いです。でもそのうち、現場の人が「めちゃくちゃ使いやすいやん!」って思ってもらえるような3Dモデルを作れるように、試行錯誤を重ねながら頑張っています。

ーー土木・建設の仕事に携わってみていかがですか?

北野:この仕事は本当におもしろくて、やりがいだらけです。新しい技術も勉強すればするほど、スキルとして自分に返ってきますし。とくに達成感を得られるのは、完成した3Dデータをクルクル回転させて“キレイなデータを作れた”と思えた時です。


ICTに積極的に取り組んでいる建設会社じゃなかったら体験できなかった業務なので、西建工業に入って良かったなと実感しています。

ーー自分が暮らしている街を3Dモデルにしているという面白さもありますか?

北野:それはあるかもしれません(笑)。実は、私がモデリングに関わった現場の何箇所かは、完成後に見に行ったこともあるんです。「私が作った3Dモデルと同じ形をしている!」って(笑)。地域のインフラに貢献できる奥深くてやりがいのある世界だなと感じます。


子育てと両立。女性も十分に活躍できるフィールド


ーー 北野さんは今、どんな勤務形態なのでしょうか?

北野:現在はパートタイマーで、基本的に週3~5日で9時半〜16時の勤務です。頑張った分は認めていただける職場環境で、お給料も条件が良く、パートタイマーでも昇給やボーナスがありますので、モチベーションにもつながっています。今は子どもが小さいので子育てと両立するためにパートタイマーを選んでいますが、西口代表からは「正社員になりたい時はいつでも言ってね」と言ってくださるので、ゆくゆくは社員として活躍できればと思っています。


あとは、お休みの融通がきくのも、とても助かっています。子どもの学校行事や急な看病はもちろん、コロナ禍で学校が休校になり、長めのお休みを相談したときも、「かまへんよ。できることをできるときにやろう」と快く承諾してくれました。

ーー 職場の雰囲気も良さそうですね?

北野:オフィスには女性が多く、明るい雰囲気です。また現場の方たちって、職人気質のイメージがあるかもしれませんが、とても親切で失敗しても怒られることはなく、「分からなかったら聞いていいから」と声をかけていただいています。


また、西口社長との距離も近く、いい仕事をしたら直接「これ、ええやん!」と褒めてくださるので、素直に嬉しいですね。実は、社長が直々に3Dデータの作り方を教えてくれることも多いんです(笑)

ーー 西口社長はデータの作り方まで詳しいのですね!ちなみに、西建工業に入る前は建設業界にどんなイメージを抱いていましたか?

北野:建設業界でICTが積極的に活用されているなんて想像もしていませんでした……。設計はハードルが高いし、施工現場は、夏は暑くて冬は寒い。体力が必要だし、建機の操作だって専門的だし、男性社会のイメージがありました。でも、入ってそのイメージは変わりましたね。3Dモデリングなどデジタル系の仕事は体力を問わずにオフィスでできますし、女性もどんどん活躍できると思います。


ーー今後、挑戦したい分野についてもお聞かせください。

北野:社外の方とはあまり交流がないので、今後は、ICT関連やソフトウェアについて社外の方とも情報交換できる機会を増やしたいなと考えています。ICTが、実際にどれくらい各現場で広まっているのかも知りたいですし、ソフトウェアの活用法なども教え合える機会をつくれればと。

ーー 確かに、北野さんのように未経験から3Dモデリングをされている方もいらっしゃると思うので、会社を超えた横のつながりができるといいですよね。

北野:ひとりで仕事を進めていたのでは気づかないことでも、「こうやったら早いよ」「データをイチからつくらなくてもこっちで少し直したらすぐできるよ」など、客観的にアドバイスをいただける機会はありがたいですからね。質とスピードをより上げるためにも、県内外関係なく、新しい出会いや新しい知識をたくさん増やしていきたいです。



【編集部 後記】
完全未経験から3Dモデリングに挑戦し、数多くの現場の生産性向上に貢献している西建工業の北野さん。取材でも、日々の仕事に対して、とても楽しんでいることが伝わってきた。子育てと両立しながらICT事業部で活躍する北野さんの姿は、男性中心だった土木業界の古いイメージを変えていくだろう。



西建工業株式会社
和歌山県紀の川市桃山町調月563番地1
TEL:0736-60-4811
HP:https://nishikenkougyou.co.jp/


◎撮影時のみマスクを外していただきました。

取材・編集:デジコン編集部 / 文:平田 佳子 / 写真:宇佐美 亮
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WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

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