コラム・特集
平田 佳子 2020.11.5

誰もがWin-Winになるモデルをめざして。建設IoTプラットフォーマー「ランドログ」井川社長に聞く


このインタビュー記事でお話をうかがったランドログ社長・井川氏が登場するウェブセミナーが、2020年11月6日(金)15時より、YouTube Liveにて再放送される。このなかでもランドログと建設ICTの未来について語られている。井川社長は後半のインダストリー編に登場。登録不要なので、ぜひ視聴してほしい。

■「OPTiM INNOVATION 2020 ハイライトセッション」
ソリューション編 & インダストリー編 再放送

日時:2020年11月6日(金)15:00~17:30
配信URL:https://youtu.be/u0ABf9OiFVk
上記URLにアクセスすることで視聴可能。(登録不要)

コマツ、NTTドコモ、SAPジャパン、オプティムという4社の出資で2017年に設立された、「株式会社ランドログ(LANDLOG)」。建設現場に特化したIoTプラットフォーム「LANDLOG」を手がけ、建設業界のイノベーションを引っ張る存在だ。そんな同社の取り組みや最新の動向、業界の展望などについて、ランドログ代表取締役社長の井川甲作氏に話をうかがった。

業界の生産性と安全性を高めるため、4社が結集


建設現場や機械などの様々なデータをAPI(Application Programming Interface。ソフトウェアの機能を共有できるインターフェイス)でプラットフォーム「LANDLOG」上に収集し、アプリケーションベンダー・デバイスベンダーなどのパートナー企業へ提供。そして、パートナー企業と連携しながら、建設業界を効率化するサービスを生み出しているランドログ。

コマツ、NTTドコモ、SAPジャパン、オプティムという、名だたる4社が結集した同社はどんな経緯で立ち上がったのか、井川氏はこう語る。

「根底には、建設業界の労働力不足などの社会問題を解消し、生産性と安全性を高めようという思いがあります。そんな中でICT化を進める際に、建機だけが良くなっても、他の工程でボトルネックが出てしまう。そこでコマツは、設計から完成までの全プロセスを3Dでつなぎ、最新の施工計画を提案するウェブソリューション”スマートコンストラクション”を2015年から始めました」


「とはいえ、コマツ一社だけでは業界全体の生産性を上げるには限界があります……。スマートコンストラクションのデバイスやプラットフォームを活かして、データの収集・管理をしようと、コマツが中心となって、IoT関連に知見のあるNTTドコモ、SAPジャパン、オプティムが結集し、ランドログが立ち上がりました」

建設現場を“見える化”し、現場が使えるデータを提供


そして2018年に、建設分野に特化したIoTプラットフォーム「LANDLOG」が業界に先駆けてスタートした。IoTプラットフォームはIoTを活用するためのシステム基盤であるが、具体的にどんなことをしているのだろうか。

「まずは“見える化”ですね。ドローンやレーザーで測量して点群データをとって地形を可視化し、それをロギング(情報などを時系列に記録・蓄積すること)して、日々の変化を追っていく。そのデータを見れば、土の動き、つまり生産量が見えてきます」

「さらに、デバイスやアプリケーション、センサーなどを活用して、建機の稼働や人、車両、資材など、建設現場に関する情報を徹底的に“見える化”しましょうというのが、第一歩です」


「そうやって収集した多様なデータを管理し、建設現場で使いやすい形に加工した上で、お客様の同意を得た上で、アプリケーションベンダー・デバイスベンダーなどのパートナー企業さんに提供しています」

見える化を進めるアプリケーションの一例に、オプティムとランドログが共同開発した「日々カメラ」がある。建設現場の建機や作業員などのデータをカメラで測定して、車両や地形、位置や稼働状況などをAIで分析し、管理できるサービスだ。

パートナー企業とともに、デバイスやアプリを創造していく


外部企業と連携して新しい技術やサービスを生み出していく、パートナー制度も特徴的だ。有料パートナー会員になると、パートナー同士の情報共有や、マーケティング・技術面のサポート、新ビジネスの支援などのメリットがあり、大手ゼネコン、建設・土木会社、建機メーカーから、アプリケーションやデバイスのベンダー企業、意外なところでは保険会社や商社まで、50社を超える企業が加盟している。

なかには、現場で施工に携わる中小企業も多いそうだ。実際に、パートナー企業と連携したプロジェクトには、どんなものがあるのだろうか。

「例えば、土木工事を手がけるAtos株式会社は、オプティムの製品を改良して遠隔作業支援スマートグラス『Generation-Eye(G-eye)』を開発・販売しています。映像を通してオペレーターと作業員がリアルタイムで情報共有ができ、移動時間や労力を大きく削減できます。最近の移動や人の集中を避ける流れのなかで、ニーズが高まっています」


「また、三井物産株式会社では、建機の給油を効率化するアプリケーションの実用化を進めています。今までは給油車が現場を回るときに、どの現場にどのくらい燃料があるかが明確でなく、時間をかけて現場に行ってもまだ燃料があったり、逆に燃料が空っぽで往復するようなこともありました。そこで、各建機の燃料情報をランドログ上にアップして給油業者に提供し、最適な運行ルートを知らせるサービスが生まれました」

「ほかにも、SAPジャパンとNTTドコモが連携して、中小・中堅建設企業向けクラウドERP『ランドログERP』を開発していますね。これまでバラバラだった工事原価管理、財務会計、販売管理、購買管理、顧客管理などの業務を一元管理するシステムで、来期後半頃には市場導入を想定しています」

さらにこの他にも、様々な企業で続々とプロジェクトが動いている。そんな中でランドログの立ち位置を井川氏に尋ねると、あくまで“建設業界の潤滑油”のようなポジションであるという。

「ランドログ自体は、建設業界の裏側にいる黒子だと思っています。私たちはオープンなプラットフォームを通して“場”の提供をしていて、アプリをつくりたい業者さんと建設業者さんとのマッチングをしたり、他社の面白い技術を生かして現場で使えるように改善したり、データの活用の仕方をディスカッションしたり、建設業の市場を一緒に開拓したりしています」

「パートナー企業、アプリケーションやデバイスを開発する企業、建設関係の企業など、「LANDLOG」に参加される皆さんがWin-Winになるようなモデルをめざしています。そしてIoTで建設業界全体がより良くなり、喜んでいただけるのが一番ですね」

プラットフォームの価値を高め、お客様に最適なソリューションを


業界を牽引するランドログが、今、とくに注力していることは何か。井川氏にうかがうと、“プラットフォームの強化”であるという答えが返ってきた。

「アプリを増やすためには、プラットフォームに価値がないといけません。そもそもプラットフォームの最大の価値は何かというとデータです。ニーズの高い付加価値のあるデータを集めて提供するために、仕組みをつくり、パートナー企業と協力しながらデバイスをつくっていこうと考えています」

「とはいえ、私たちがすべきことは、単純にデバイスを売るのではなく、お客様の課題を解決するソリューションです。例えば、『SC Fleet Device』という位置情報の見える化のデバイスをつくっていますが、お客様が求めるのはデバイスではなく、“ダンプトラックの運行を最適化したい”というソリューションを買っていただくということですね」

製造業や農業など他の業界と比べると構造が複雑で、ICT化に遅れをとっていた建設業界だが、井川氏はこの先の将来に大きな期待を寄せる。


「国交省も2016年からi-Constructionを立ち上げ、建設業のICT化を推進しています。ドローン測量をはじめとして、新たなICT機器を活用した施工の基準を作り、公共工事に導入を進めています。この流れに応じて、積極的にICT化を進め、3DやVRを活用して圧倒的な効率化を達成している中小の建設業の方々もでてきています」

「そういう状況を見ると、建設業界は他業界よりもITが融合し、クリーンで先端的な業種になる可能性があるのではないかと思いますね。それで、ITや新しい技術が好きな若い方たちがこの業界にたくさん入ってくることを期待しています。」


ICT化を通して業界の問題だけでなく、社会全体の課題も解決していくランドログ。彼らの挑戦を、今後も「デジコン」では追いかけていきたい。


取材・編集:デジコン編集部
文:平田佳子
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WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

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