行政・政策
高橋 奈那 2021.4.27

令和3年度 i-Constructionの新たな取組み内容について【2021年4月 国交省 発表】

建設・土木業界の生産性向上を目指し、2016年度に始動したi-Construction国土交通省は工種拡大や補助金制度の活用支援、表彰制度など、多種多様なアプローチでi-Constructionの普及拡大に取り組んできた。

本記事では、2021年4月1日に国交省が発表した「今年度(令和3年度)のi-Constructionの取組み内容」について解説していく。

今年度のi-Constructionのポイントは、以下の3つ。

  1. 中小企業等のICT施工利活用環境の充実
  2. 生産性向上のための工法、材料の導入拡大
  3. i-Constructionの海外展開

まずはi-Constructionを推進する上で、現場の課題解決を支援する取組みから紹介していく。現場では今、「ICT技術を積極的に活用する事業者」と「そうでない事業者」の二極化が進みつつある。また人手不足も大きな課題となっている。これらの課題に対し、今回発表された施策がどのように役立つのか、取組み内容を抜粋しながら見ていこう。

中小企業のICT施工 利活用環境の充実


課題① ICT技術の活用が進んでいない

● ICT建機の導入支援に向けた認定制度創設
中小事業者でも、測量や設計にICT技術を取り入れる企業は年々増加している。しかし「施工」となると、高額なICT建機を気軽に買えない……といった費用面の問題から、導入に踏み切れない事業所も多いのではないか。

ICT施工の中小事業者への普及拡大に向け、従来の建設機械に後付けで装着する機器を含め(例えば、ランドログマーケティングの「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」等) 必要な機能等を有する建設機械を認定してその活用を支援する「認定制度」の創設を発表した。今年度中には認定スキームの構築や、制度運用体制の整理を行い、4年度以降の運用開始を目指していく。


ランドログマーケティング 「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」製品WEBサイトより


● 技術者育成を支援
C等級(受注予定価格3億円未満の)のICT施工経験企業は、直轄工事受注企業のおよそ半数に上る。注目したいのは、一度ICT施工を受注した企業がICT施工を繰り返し受注し、複数回経験しているという点だ。以下のグラフからも、ICT施工数の伸びに正比例して、およそ8倍に増加していることがわかる。



これらのノウハウを技術指導に役立てるべく、アドバイザー制度を設置して、ICTを推進してもらう狙いだ。現場経験を持つ技術者から直接指導を受けることで、ICT活用工事のメリットや活用シーンを具体的に想像できる機会が増えるのだろう。


課題 ②  働き方改革の障壁となっている業務プロセス

● 人力作業の負担軽減
人力に依存した作業は身体的負担が大きい一方で、機械化が難しい部分もある。人力作業の問題を解決すべく、今年度のi-Constructionの取組みでは、人力を補助する「パワーアシストスーツ技術」の導入が新たに検討されている。令和3年度中に実証実験を行い、試験結果および実施案をまとめる考えだ。



● データ活用とセキュリティの両立
測量や設計のプロセスをICT化していても、工事帳簿は手書きで記録している事業者はまだ多い。3次元データを活用した業務を進めていても、関係会社や行政とやり取りをする上で、データ形式の違いやセキュリティ面の懸念からすべての情報を活用できていないケースもある。


すべてのプロセスにおけるデータ活用と完全なオンライン化を目指し、情報共有システム(ASP)や民間のクラウドサービスなどを活用したICTプラットフォーム構想が動きはじめた。実装されれば、行政や関係会社とのデータのやり取りが一元化されるだけでなく、これまで反映されることのなかった手書き帳票やPDF書類など、大小さまざまなデータを余すことなく利活用することが可能になるだろう。


生産性向上のための工法、材料の導入拡大


課題 ① コンクリート構造物施工における効率化

● プレキャスト工法における比較検討項目の拡充
コンクリート構造物の設計は、工法の検討材料が「コストのみ」に留まっている。そこで、建設現場の生産性向上のため、新たな検討基準を策定。工期や維持管理において多様な評価項目を設けることで、費用の競争だけでなく、たとえ工事費用が高くても、新技術を活用し長期的な価値創造に挑戦している企業を評価するというもの。

●  現場打ちコンクリートの品質確認効率化のためのJIS規格改訂
現場打ちコンクリートの品質管理試験では、AIによる画像解析など、最新のテクノロジーが活用されている部分である。しかし一方で、「試験結果伝票」はJISによる紙伝票での提出を求められるケースが多い。画像解析やAI等を用いた品質管理試験の伝票をデジタル処理可能とするためのJIS改訂に向け、令和3年度中に改定案を整理し、4年度の改訂を目指していく。


課題 ② 交通誘導員の人手不足解消
施工現場における作業員だけでなく、直轄土木工事の交通誘導員の不足も課題になっている。このままでは、誘導員を確保できず、工事を発注できない事案の発生が懸念される。

そこでICTやAI等の新技術を活用し、交通誘導業務の一部をシステムにより支援することを目的に交通誘導ロボット等の開発・実証を推進していく。

課題 ③ 現場内運搬の省力化
現場では、重量や長さのある鉄筋などの運搬が必須。しかし、それらの運搬が人力や移動式のジブクレーンなどで行われている現場も珍しくはない。

今後、「生産性向上チャレンジ工事」等を活用し施工者への導入インセンティブを付与したり、利用者(特に技能労働者)の視点から活用ガイドラインを作成するなどして、運搬業務の省力化を目指していく。

i-Constructionの海外展開


最後に、海外展開について触れたい。

課題① i-Constructionの国内基準を国際基準に

日本と同様に、いま先進諸国でも新技術の活用が進んでいる。ガラパゴス化を抑止し、日本国内のICT利活用における国内基準類の国際標準化の推進も必須となる。

先進諸国のBIM/CIM活用状況や制度設計、データ管理手法を調査し、国際標準を踏まえた、設計業務・工事におけるデータ管理手法に関する試行案を作成し、令和4年度は、試行案に基づく現場実証を踏まえ、設計業務・工事におけるデータ管理手法を整理の上、BIM/CIMガイドライン等の国内基準類へ反映することで、国際標準への対応を図っていくという。

課題② 海外のデジタル人材育成

フィリピンなどi-Constructionに関心のある海外諸国を対象に、令和3年度は建機メーカーや建設事業者から構成される民間委員会と連携し、現地技術者育成のため研修設置や現地の課題調査などを実施することを取り決めた。


JICAや民間企業と連携し、デジタルを活用したインフラのオペレーションを担う現地デジタル人材の育成を目指す考えだ。

以上が、令和3年度に予定されているi-Constructionの新たな取り組みだ。ここ数年で大手企業だけでなく中小規模の事業者にも身近な存在になりつつあるi-Construction。現場の声を汲みとりながら、一年一年無理なく着実に、ICT化が普及していくことに期待したい。






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WRITTEN by

高橋 奈那

神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。

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