国土交通省が推し進める「生産性革命プロジェクト」の一つである「i-Construction(アイコンストラクション)」は、建設業界全体の生産性向上を目的としている。
なかでも土工工事におけるICT施工の活用は中心的な取り組みだ。
本記事ではアイコンストラクション の中心的取り組みであるICT土工の基礎を解説する。
ICTの技術は土工工事の生産性向上に大きく貢献している。
アイコンストラクションは建設・土木現場のなかでも、とくに生産性向上が遅れている土工やコンクリート工事に焦点を当てている。
それはバブル崩壊後に建設投資が労働者の減少を上回っていたため、生産性向上は見送られてきた背景にある。さらに若年層の労働人口の減少や建設現場の労働災害率の高さから、今後の労働者不足が予想される。
そこで、建設業界の体制を抜本的に改善するためにも生産性向上への取り組みは避けられない。
アイコンストラクションは2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させることを目標としている。
土工におけるプロセス全体を最適化するために、アイコンストラクションは3本柱として「土工におけるICT技術の全面的な活用」「規格の標準化」「施工時期の平準化」を掲げている。
特に、調査・設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての土工のプロセスにおけるICT技術の導入に力を入れている。
国土交通省は、各都道府県への普及体制として連携体制の設定、ICT土工の人材育成として施工業者と発注者向けの講習などを行い、活用促進に取り組むとしている。
一企業が生産性向上に取り組むには、建設・土木業界は複雑すぎる。
下請けへの発注が前提となっている多重構造であり、仕事を分担しているため、企業単体で努力をしても良い影響を与えにくいのだ。
加えて最先端のICT施工の情報も入りにくく、導入するための資金や学習コストを負担する余裕もない。
ただ建設・土木のICT化が国を挙げての施策になったことで、建設・土木業界全体を改善するきっかけになるだろう。
発注側と受注側の双方からの既存の仕組みの変換や教育に、積極的に取り組むことによって、建設・土木業界全体の意識を変えようとしている。
地方企業であっても取り残されないように各地方整備局等にも「i-Construction推進本部」を設置して、対策は手厚く行なっている。
従来の土工では、2次元データを使用して完成後をイメージしながら進めなければならず、一定の作業員と時間を要するプロセスとなっている。
確認や見直し、進捗報告などにも手間が掛かっている。
土工におけるICT導入では、アイコンストラクション以前にも「情報化施工」として進められていた。
従来のプロセスの施工部分のみに3次元データを使用して生産性向上を計る取り組みで、現場作業に活用されている。
しかしさらなる改善にはプロセス全体へのICT導入が必要となり、アイコンストラクションの取り組みによって施工以外の部分にもICTの導入が推し進められたのだ。
まず測量の段階では、UVA/ドローン(小型無人飛行装置)による3次元測量を実施。
人が近付けない地形でも高所からの写真測量で定量的に把握できるようになっている。測量時間は短時間で抑えられ、高密度のデータを測量できるため、測量時間や人件費の削減になり、コストカットが実現する。
ただし測量現場の条件によっては導入効果も変わるため注意が必要。
設計・施工計画の段階では、3次元測量データを用いることで、設計図と3次元測量データの差分を検出して自動で施工量を計算できる。
3次元の設計図はそのまま完成後のイメージ図として使用することで、関係者間で共有もしやすい。
従来、複雑な構造では2次元データから完成図をイメージして作業しなければならなかったが、3次元データによるビジュアル化は多様な活用方法がある。
設計の段階から共通認識を揃えられるところはICTの良さである。
施工段階のICT活用では、ICT建設機械による自動制御でIoTを実施している。
IoTは情報伝達機能をモノに組み込んでインターネットに繋ぐことであり、3次元データを活用して重機制御の高度化に成功した。
自動制御によって作業効率や精度を高めて、作業日数を少なくする狙いがある。また機械操作の一部を補助するICT建設機械は、オペレータの負担を軽減する。
経験と知識が豊富なオペレータ以外でも素早い作業を行えるメリットがある。若年層の労働人口増加に直接役立つ取り組みであろう。
さらに3次元データは検査の省力化も担っている。
従来は人力で計測した結果を書類にまとめて確認する方法を採用しており、検査日数がある程度必要だった。
しかしドローンによる3次元測量などICTの活用によって出来形の書類作成が不要となり、検査項目は半減している。データはパソコンでまとめられ、検査の確認は容易になった。
ICT土工はアイコンストラクション において重要な施策であり、建設現場のプロジェクト全体の生産性向上に直結する。
土工の現場作業の効率化により工事日数は削減され、作業従事者の休日を拡大できる。従来よりも少ない人数と日数で同じ工事量を実現できる仕組みだ。
今後ICT土工の標準化が進むにつれて、建設業界の状況も変化するだろう。
建設・土木は社会資本を整備するために必要不可欠な仕事だ。
人口減少や高齢化のなかでも持続していくためにはICTなどのテクノロジーを導入した改革は必須となってくる。
2.ICT の全面的な活用(ICT 土工)について 【国土交通省】[PDF]
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000648822.pdf
ICT活用工事の概要[PDF]
http://www.a-kenkyo.or.jp/news/h28/280610_i-construction_overview.pdf
i-Construction ~建設現場の生産性向上の取り組みについて~【国土交通省】[PDF]
http://www.mlit.go.jp/common/001118342.pdf
なかでも土工工事におけるICT施工の活用は中心的な取り組みだ。
本記事ではアイコンストラクション の中心的取り組みであるICT土工の基礎を解説する。
ICTの技術は土工工事の生産性向上に大きく貢献している。
ICT土工とは「ICT技術を活用した土工工事の工程」
アイコンストラクションは建設・土木現場のなかでも、とくに生産性向上が遅れている土工やコンクリート工事に焦点を当てている。
それはバブル崩壊後に建設投資が労働者の減少を上回っていたため、生産性向上は見送られてきた背景にある。さらに若年層の労働人口の減少や建設現場の労働災害率の高さから、今後の労働者不足が予想される。
そこで、建設業界の体制を抜本的に改善するためにも生産性向上への取り組みは避けられない。
アイコンストラクションは2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させることを目標としている。
土工におけるプロセス全体を最適化するために、アイコンストラクションは3本柱として「土工におけるICT技術の全面的な活用」「規格の標準化」「施工時期の平準化」を掲げている。
特に、調査・設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての土工のプロセスにおけるICT技術の導入に力を入れている。
国土交通省は、各都道府県への普及体制として連携体制の設定、ICT土工の人材育成として施工業者と発注者向けの講習などを行い、活用促進に取り組むとしている。
一企業が生産性向上に取り組むには、建設・土木業界は複雑すぎる。
下請けへの発注が前提となっている多重構造であり、仕事を分担しているため、企業単体で努力をしても良い影響を与えにくいのだ。
加えて最先端のICT施工の情報も入りにくく、導入するための資金や学習コストを負担する余裕もない。
ただ建設・土木のICT化が国を挙げての施策になったことで、建設・土木業界全体を改善するきっかけになるだろう。
発注側と受注側の双方からの既存の仕組みの変換や教育に、積極的に取り組むことによって、建設・土木業界全体の意識を変えようとしている。
地方企業であっても取り残されないように各地方整備局等にも「i-Construction推進本部」を設置して、対策は手厚く行なっている。
土工の各工程におけるICTの活用
従来の土工では、2次元データを使用して完成後をイメージしながら進めなければならず、一定の作業員と時間を要するプロセスとなっている。
確認や見直し、進捗報告などにも手間が掛かっている。
土工におけるICT導入では、アイコンストラクション以前にも「情報化施工」として進められていた。
従来のプロセスの施工部分のみに3次元データを使用して生産性向上を計る取り組みで、現場作業に活用されている。
しかしさらなる改善にはプロセス全体へのICT導入が必要となり、アイコンストラクションの取り組みによって施工以外の部分にもICTの導入が推し進められたのだ。
ICT技術の全面的な活用の例
まず測量の段階では、UVA/ドローン(小型無人飛行装置)による3次元測量を実施。
人が近付けない地形でも高所からの写真測量で定量的に把握できるようになっている。測量時間は短時間で抑えられ、高密度のデータを測量できるため、測量時間や人件費の削減になり、コストカットが実現する。
ただし測量現場の条件によっては導入効果も変わるため注意が必要。
設計・施工計画の段階では、3次元測量データを用いることで、設計図と3次元測量データの差分を検出して自動で施工量を計算できる。
3次元の設計図はそのまま完成後のイメージ図として使用することで、関係者間で共有もしやすい。
従来、複雑な構造では2次元データから完成図をイメージして作業しなければならなかったが、3次元データによるビジュアル化は多様な活用方法がある。
設計の段階から共通認識を揃えられるところはICTの良さである。
施工段階のICT活用では、ICT建設機械による自動制御でIoTを実施している。
IoTは情報伝達機能をモノに組み込んでインターネットに繋ぐことであり、3次元データを活用して重機制御の高度化に成功した。
自動制御によって作業効率や精度を高めて、作業日数を少なくする狙いがある。また機械操作の一部を補助するICT建設機械は、オペレータの負担を軽減する。
経験と知識が豊富なオペレータ以外でも素早い作業を行えるメリットがある。若年層の労働人口増加に直接役立つ取り組みであろう。
さらに3次元データは検査の省力化も担っている。
従来は人力で計測した結果を書類にまとめて確認する方法を採用しており、検査日数がある程度必要だった。
しかしドローンによる3次元測量などICTの活用によって出来形の書類作成が不要となり、検査項目は半減している。データはパソコンでまとめられ、検査の確認は容易になった。
ICT土工は今後も標準化されていく
ICT土工はアイコンストラクション において重要な施策であり、建設現場のプロジェクト全体の生産性向上に直結する。
土工の現場作業の効率化により工事日数は削減され、作業従事者の休日を拡大できる。従来よりも少ない人数と日数で同じ工事量を実現できる仕組みだ。
今後ICT土工の標準化が進むにつれて、建設業界の状況も変化するだろう。
建設・土木は社会資本を整備するために必要不可欠な仕事だ。
人口減少や高齢化のなかでも持続していくためにはICTなどのテクノロジーを導入した改革は必須となってくる。
2.ICT の全面的な活用(ICT 土工)について 【国土交通省】[PDF]
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000648822.pdf
ICT活用工事の概要[PDF]
http://www.a-kenkyo.or.jp/news/h28/280610_i-construction_overview.pdf
i-Construction ~建設現場の生産性向上の取り組みについて~【国土交通省】[PDF]
http://www.mlit.go.jp/common/001118342.pdf
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