ICT基礎知識
高橋 奈那 2023.9.23

【LiDARとは?】iPhone12 Pro / 13Pro /14pro/ 15Proに搭載の「LiDAR」の仕組みをやさしく解説!〜 建設業界でも注目度急上昇 〜

最近、至るところでよく耳にするLiDAR(ライダー)というワード。iPhone 12 Pro /12 Pro MaxやiPad Pro以降の機種に標準搭載されたことで、話題になっている。

どうやら計測技術らしいということは理解できるが、「じゃあどんな技術なの?」と聞かれて、あなたは正確に答えられるだろうか?

本記事では、iPhone 搭載の「LiDAR」について、基礎から活用法までを解説していく。今すぐ、上司や同僚、部下 に教えたくなる“LiDAR ウンチク”が満載の記事になっている。

「Radar(レーダー)」と「LiDAR(ライダー)」って、何がちがうの?


“LiDAR”は、Light Detection And Ranging(光による検知と測距)から生まれた略語だ。その言葉が意味するように、照射した光が対象物に当たり、センサーに戻ってくるまでの時間差を計測し、距離を測る技術のことを指す。


言葉が似ているため混同してしまうかもしれないが、電波を飛ばし対象との距離を計測するRadar(レーダー)とは、そもそも計測方法が異なる。


LiDARとRadarの違い
LiDAR:光を対象物に当て、距離を測る
Radar:電波を対象物に当て、距離を測る

電波と比較して、光は波形が短く光束密度が高いため、照射する対象がどんなに小さな物体であっても、その形状を正確に捉えることができる。

照射した点群をもとにデータ処理をすれば、3次元モデルが完成する。光の戻ってくる時間差だけでなく、センサーへの入射角や位置情報などを同時に記録することで、より正確な3次元モデルを作成することも可能だ。




実は、昔から活用されてきた「LiDAR」


新技術のように感じられる「LiDAR」だが、この技術が誕生したのは、実は1960年代頃。

位置情報を正確に把握するために利用され、宇宙開発分野や軍事利用が主な活躍の場であった。

その後、着々と計測技術は進化し、地質学や気象学の調査に使用されるなど、技術力の向上とともに、幅広い分野で活用されてきた。

私たちがLiDARという言葉を耳にするようになったのは、おそらく自動車の自動運転技術に、LiDARスキャナーが利用されはじめた頃からではないだろうか。車両に搭載されたLiDARスキャナーは、運転者の目に代わり、道路状況を細部まで正確に判断するという役割を担っている。


LiDARは、つねに変化する道路状況、路面の状態、街路樹や標識などはもちろん、先行車両との車間距離や歩行者の位置情報を瞬時に計測していく。

計測はリアルタイムで行われるため、車両の急停止や歩行者の飛び出しなどにも対応することも可能だ。

近年LiDARを搭載した一般車が市場に出回りはじめ、LiDARの計測技術はどんどん私達の身近な存在となりつつある。

さらに身近な例でいうと、一部のロボット型掃除機にもLiDAR機能が搭載されているものがあるようだ。

そして土木・建設業界に衝撃を与えたのが、iPad Pro、iPhone 12 Proへのモバイル用LiDARセンサーの標準搭載だ。


iOSデバイス(iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Max、iPad Pro 、iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Max、iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Max、iPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Max)に標準搭載されたトランスミッターから、パルス状の不可視光線を対象物にナノ秒単位で照射し、レシーバーへの戻り時間を計測して、5mの範囲内を瞬時にスキャニングする、立派な高精度LiDARスキャナーだ。

土木・建設、インフラの現場での活躍が期待される、iPhone搭載の「LiDARセンサー」


普段使いのiPhoneに標準搭載されているからといって、その実力を侮ってはいけない。

このモバイル用「LiDAR」は、土木・建設の現場で測量器として活用することができるほど、高い水準のものなのだ。

2021年には、LiDAR機能を最大限に活用することができるスマホ測量アプリOPTiM Geo Scan」がOPTiM社からリリースされた。

「OPTiM Geo Scan」を使った測量で利用するのはLiDARスキャナ―搭載のiPhoneまたはiPad、とGNSSレシーバー(緯度経度情報の受信と読み取りをする際に必要)の2点のみ。(※ データ処理・管理には、Webアプリケーション操作用のPCが別途必要)

写真:齋藤 葵

測量現場にて、スマホを手に持ち、歩きながらスキャンしていけば測量だけでなく、3次元モデル化までもが、その場で完了する。

UAVを利用した写真測量、TSを用いたLS起工測量などと比較して、測量時間を最大60%削減することが出来る上、機器導入コスト・維持費においても、最大80%の削減を可能にした。

OPTiM Geo Scan プロダクトサイトより

作業時間の削減と導入コスト・維持費の低価格化を両立した「OPTiM Geo Scan」は、全国の土木・建設事業者のICT化を加速させる起爆剤となり得るアプリだろう。

目の前の空間が瞬時に点群化されていく様子を目の当たりにすれば、現場でも使ってみたいと感じるはずだ。

「他現場の帰りについでに測量を終わらせる」「施工作業の進捗を、現況データとして3Dモデル化したい」「新卒社員や内勤スタッフに測量を任せたい」など、これまで測量業務の概念を根底から覆すプロダクトになっている。





参考:
https://www.apple.com/jp/iphone-12-pro/
https://www.keyence.co.jp/ss/general/automotive-manufacturing/010/https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/laser-diodes/ld_what10
https://time-space.kddi.com/ict-keywords/20201204/3020https://www.gizmodo.jp/2020/05/what-is-lidar-and-why-would-you-want-it-on-your-phone.html
https://wired.jp/2018/02/09/lidar-self-driving-cars/

画像:Shutterstockより
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WRITTEN by

高橋 奈那

神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。

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