ICT基礎知識
デジコン編集部 2025.4.24
ICT活用工事の基礎をプロセスごとに紐解く

ICT土工の実践ガイド 〜 i-Constructionが変える建設現場のこれからとは?〜【2025年版】

CONTENTS
  1. ICT土工とは何か?
  2. i-Constructionの3本柱とICT土工の位置づけ
  3. ICT土工における各プロセスの革新
    1. 1. 3次元測量
    2. 2. 3次元設計データの作成
    3. 3. ICT建機による施工
    4. 4. 3次元出来形管理
    5. 5. 電子納品
  4. ICT土工の導入による効果
  5. ICT土工の最新動向
  6. まとめ
建設現場の生産性向上を目指す「i-Construction(アイコンストラクション)」。

この国家的プロジェクトにおいて最も重要な柱となっているのが「ICT土工」である。

本記事では、ICT土工の基本概念から最新の取り組み、そして実際の現場での活用事例まで、包括的に解説する。

建設現場の生産性を飛躍的に向上させるICT土工の全容を理解し、明日の建設業界を生き抜くための知識を身につけよう。

ICT土工とは何か?


ICT土工とは、Information and Communication Technology(情報通信技術)を活用した土工事のプロセス全体を指す。

従来の土工事と比較して、調査・測量、設計、施工、検査、維持管理に至るまでの全工程においてICT技術を導入することで、作業効率と精度の向上を実現する。

国土交通省が推進する「i-Construction」は、建設業界の生産性向上を目指す取り組みであり、そのなかでもICT土工は中心的な役割を担っている。


近年の労働人口減少や高齢化、さらに建設現場における労働災害の高さを背景に、より少ない人員でも高い生産性を維持できる建設プロセスへの転換が急務となっているのだ。

国土交通省によれば、i-Constructionは2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させることを目標としている。

さらに、最新の「i-Construction 2.0」では、2040年までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上させることを目指している。


i-Constructionの3本柱とICT土工の位置づけ


i-Constructionは次の3本柱から成り立っている。

  • 土工等におけるICT技術の全面的な活用
  • 規格の標準化
  • 施工時期の平準化

このうち、ICT土工は第一の柱「ICT技術の全面的な活用」の中核を担っている。

ICT技術を土工事の全プロセスに導入することで、建設現場の生産性向上を図るだけでなく、安全性の向上や担い手不足の解消も目指している。

ICT土工における各プロセスの革新


1. 3次元測量


従来の測量では、測量技術者が現場を歩き回り、ポイントごとに計測を行っていた。

これに対し、ICT土工では、UAV(ドローン)やレーザースキャナー、スマホ測量アプリを活用した3次元測量が行われる。

国土交通省関東地方整備局によると、UAVによる測量では、従来の測量と比較して作業時間が最大で9割削減できるケースもある。

また、人が立ち入ることが難しい危険な場所や急斜面などでも安全に測量が可能になるという大きなメリットがある。

特に、ワンマン測量アプリ「OPTiM Geo Scan」は、LiDARセンサー搭載のスマートフォンとGNSSレシーバーの位置情報を組み合わせることで、高精度な3次元測量を可能にしている。


同アプリは小規模現場において光波測量(トータルステーションによる測量)と比較すると、測量作業時間を最大90%削減できる とされ、国土交通省推奨のICT施工の出来形管理要領に適合する±50mm程度の高精度測量が可能 である。

さらに、このワンマン測量アプリの導入により、測量素人でも簡単に測量が行える ようになり、1人測量が当たり前の時代へと建設現場を変革している。


これにより、ICT施工未経験者の活躍をサポートし、作業の効率化だけでなく、若手技術者や女性技術者の現場参入障壁を下げる効果も期待されている。

3次元測量によって得られるデータは従来よりも高密度で、地形の細部まで正確に捉えることができる。これにより、設計段階での精度向上につながっている。



2. 3次元設計データの作成


測量によって得られた3次元データを基に、3次元の設計データを作成する。設計データはICT建機の制御に活用されるほか、施工前のシミュレーションにも利用される。

3次元CADソフトウェアを使用することで、複雑な地形や構造物の設計も視覚的に把握しやすくなり、設計ミスの減少や関係者間での情報共有の円滑化につながっている。

国土交通省のガイドラインによれば、3次元設計データの作成により、設計変更の検討が容易になり、手戻りの減少や工期短縮に寄与している。

3. ICT建機による施工


3次元設計データを活用したICT建機(ショベル、ブルドーザー、ローラーなど)による施工が行われる。ICT建機は、GNSS(全球測位衛星システム)やTSK(トータルステーションシステム)による位置情報と、3次元設計データを照合しながら作業を進める。

例えば、ICT油圧ショベルでは、バケットの位置をリアルタイムで把握し、設計面に合わせて自動的に制御することができる。

これにより、熟練オペレーターでなくても高精度の施工が可能になり、作業効率も向上する。

国土交通省の調査によれば、ICT建機の導入により、従来工法と比較して施工期間が約3割短縮され、作業員の労働時間も約3割削減できるとの結果が出ている。

4. 3次元出来形管理


施工後は、再びUAVやレーザースキャナー、測量アプリを用いて出来形計測を行い、設計データとの差異を確認する。

従来は測点ごとの計測結果を手作業で記録し、書類にまとめていたが、ICT土工では3次元データを活用した自動処理が可能になる。

国土交通省の「ICT活用工事実施要領」によれば、3次元出来形管理では、面的な評価が可能になり、品質の均一性も確認できるというメリットがある。

また、計測結果はヒートマップなどで視覚化され、一目で品質の良否が分かるようになっている。

5. 電子納品


最終的には、これらのデータを電子納品することで、発注者側の検査作業も効率化される。

3次元データは維持管理段階でも活用可能であり、建設生産システム全体の最適化につながっている。

ICT土工の導入による効果


国土交通省の「i-Construction 推進コンソーシアム」が公表しているデータによれば、ICT土工の導入により以下のような効果が確認されている。

  • 生産性の向上:従来工法と比較して、作業時間が約3割削減
  • 安全性の向上:危険箇所での人の立ち入りが減少し、労働災害リスクが低減
  • 品質の向上:3次元データを活用した施工により、精度と均一性が向上
  • 若手技術者の育成:ICT技術により経験の浅いオペレーターでも高精度施工が可能に
  • 働き方改革への貢献:業務効率化による労働時間の削減

さらに、最新の「i-Construction 2.0」では、自動施工技術の導入やBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling/Management)との連携により、さらなる効率化が期待されている。

中小企業のためのICT土工導入支援
ICT土工の導入に際しては、特に中小建設業者にとって、機器やソフトウェアの導入コスト、技術者の育成、ノウハウの蓄積などが課題となる。

この課題に対応するため、国土交通省は「i-Construction サポート事務所」を各地方整備局に設置し、技術的なサポートや情報提供を行っている。また、「ICT活用証明書」の発行や、「ICT活用工事」の発注拡大など、ICT土工の普及を促進するための様々な取り組みを実施している。

国土交通省関東地方整備局によれば、ICT土工の導入を支援するために、各種講習会やセミナーも定期的に開催されており、これらを通じて技術者の育成が進められている。

ICT土工の最新動向


最新の「i-Construction 2.0」では、より高度なICT技術の活用が推進されている。例えば、AIを活用した施工管理や、5Gを活用した遠隔操作技術、ロボット技術の導入などが検討されている。

国土交通省の発表によれば、2025年度の取り組みでは、自動施工技術の拡大やBIM/CIMを活用したデータ連携の強化、ARなどのデジタル技術による施工管理の効率化などが予定されている。

まとめ


ICT土工は、単なる建設機械の自動化や3次元データの活用にとどまらず、建設生産システム全体を最適化するための重要な取り組みである。

労働人口の減少や高齢化が進む中、建設業界の生産性向上は喫緊の課題であり、ICT土工はその解決策として大きな可能性を秘めている。

既に多くの現場でICT土工の効果が実証されており、今後はさらなる技術革新や普及促進により、より高度な建設プロセスの実現が期待される。

建設業界に携わる全ての人が、この変革の波に乗り遅れることなく、新たな技術やプロセスを積極的に取り入れていくことが重要だ。

ICT土工は、建設業界の未来を創る鍵となる取り組みである。この技術革新の波に乗ることで、より効率的で、安全で、魅力ある建設業界の実現を目指していこう。






参考元:2.ICT の全面的な活用(ICT 土工)について 【国土交通省】[PDF]https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000648822.pdf/ICT活用工事の概要[PDF]http://www.a-kenkyo.or.jp/news/h28/280610_i-construction_overview.pdf/i-Construction ~建設現場の生産性向上の取り組みについて~【国土交通省】[PDF]http://www.mlit.go.jp/common/001118342.pdf
WRITTEN by

デジコン編集部

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