国交省、直轄国道で道路標識の視認性点検試行を開始。4段階判定区分と3段階健全性診断区分を導入

国土交通省は、全国の地方整備局等の直轄国道において、道路標識の視認性点検の試行を開始すると発表した。

視認性の判定区分や健全性の診断区分などを盛り込んだ点検要領案を作成し、道路利用者の安全・安心や目的地までの円滑な移動確保に向けた取り組みを本格化する。

今年度の試行結果等を踏まえ、点検要領案の見直しを行い、道路標識の視認性点検の改善に取り組む方針である。

汚損・劣化・植生影響を4段階で判定、健全・予防保全・早期措置の3段階診断。車上遠望目視による体系的点検で道路巡視の目視確認を補完

道路標識の適切な修繕は、道路利用者の安全・安心や、目的地までの円滑な移動を確保するため重要な役割を果たしている。

現在、道路標識の視認性については、各道路管理者において、道路巡視等による目視確認や道路利用者の声などを踏まえ、順次、修繕を行っているのが現状である。

一方で、道路標識の視認性改善のニーズもあることから、今般、より体系的で客観的な点検手法の確立が求められている。

従来の道路巡視による目視確認では、点検者の主観的判断に依存する部分が大きく、統一的な評価基準の必要性が指摘されていた。

新たな点検手法では、適用範囲を国土交通省が管理する道路標識とし、点検方法は車上（遠望）目視による方式を採用している。




この車上目視方式により、実際の道路利用者の視点に近い条件での視認性評価が可能となる。

判定区分は4段階で区分され、視認性不良の原因を汚損、劣化、植生の3つのカテゴリーに分類。

汚損については、輝度不足や汚れによる影響を評価し、AA（判読ができない）、A1（判読困難）、B（不良軽微で判読可能）、OK（判読可能）の4段階で判定する。




劣化については、輝度不足や白亜化による影響を同様に4段階で評価する。白亜化とは、標識板の表面が紫外線や風雨により劣化し、白っぽく変色する現象であり、視認性の大幅な低下を引き起こす主要因の一つである。

植生による影響についても、樹木や草木の成長により標識が隠れる状況を4段階で評価する。

特に郊外部や山間部において、植生の影響により標識の視認性が著しく低下するケースが多発している。

健全性診断区分は3段階で区分され、I健全、II予防保全段階、III早期措置段階に分類される。I健全は、標識板の視認性の機能に支障が生じていない状態を示し、対応する個別判定区分はOKとなる。



今回の試行では、視認性不良の標識として、劣化により文字が読み取りにくくなった案内標識、汚損により矢印が判別困難な道路標識、植生により部分的に隠れた標識などが評価対象となる。

これらの具体的な事例により、点検手法の実効性が検証される。

車上目視による点検方式は、道路を走行しながら標識の視認性を評価する手法であり、実際のドライバーの視点に近い条件での評価が可能である。

この方式により、従来の徒歩による近接目視では把握困難だった、走行中の視認性問題を的確に捉えることができる。

今年度の直轄国道での試行結果等を踏まえ、点検要領案の見直しを行い、道路標識の視認性点検の改善に取り組む方針である。

試行期間中に収集されるデータや現場での運用課題を分析し、より実用的で効果的な点検手法の確立を目指す。

直轄国道での具体的な試行箇所等については、今後、地方整備局等において検討を行う予定だ。