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デジコン編集部 2023.7.20

令和5年度『日本建設機械施工大賞』受賞者発表!【7/20更新】

令和5年度、日本建設機械施工大賞(旧会長賞)の各受賞者が発表された。

本賞は、建設機械や建設施工の技術に関して、調査・研究、技術開発、実用化により、その向上・普及に顕著に寄与したと認められる業績を表彰し、国土の利用、開発・保全、経済・産業の発展に寄与することを目的として開設された。

令和5年度は、大賞部門には16件、地域賞部門には4件の応募があり、その中から日本建設機械施工大賞選考委員会(委員長:深川良一 立命館大学特命教授)において審査を行った結果、下記のとおり、大賞部門で5件、地域賞部門で3件が選ばれた。

【大賞部門】


最優秀賞
大型プレキャストブロック据付の自動化施工/鹿島建設


【概要】
大規模土砂崩落の災害復旧を行う工事に おいて、プレキャストブロックの据付を 遠隔操作で計画していたが、作業員の疲労に よる生産性の低下や誤操作が予想されたため、 当該作業を自動化。


本システムは、汎用のバックホウにカメラを 取り付け、ブロックに貼り付けたARマーカ からブロックの位置情報等を読み取り、重機の 姿勢を把握してブロック据付を自動化する もので、赤谷3号砂防堰堤工事に初適用し その効果を確認した。

【業績の特徴】
「大型プレキャストブロック据付の自動化施工」は、以下の要素技術を組み合わせて自動運転システムを構築し、大型プレキャストブロックを設置した。

  1. ARマーカとカメラを用いたAR測量
  2. バックホウを自動運転するキャビン搭載型ロボット
  3. リアルタイムに重機の姿勢を把握する姿勢計測システム
(運転席内のキャビン搭載型ロボット)

(リアルタイム姿勢計測システムの各種センサ)

汎用のバックホウに上記要素技術を組み合わせた自動運転システムを設置することにより、高精度な自動化施工を行うことができる。


優秀賞

山岳トンネルにおける鋼製支保工建込の完全機械化工法「T-支保工クイックセッター」/大成建設、アクティオ


【概要】
山岳トンネル工事の鋼製支保工建込は、切羽近傍での人力作業が必要なため、重篤災害発生のリスクが高くなっている。

支保工建込作業を完全機械化することによって、安全性を飛躍的に向上させ、さらに省人化や生産性の向上を実現した。また専用機を使用せず、既存の機械に後付けすることが可能な汎用性の高い工法となっている。


今後は、トンネル現場へ広く普及させ、担い手不足解消や生産性の向上とともに、トンネル現場の鋼製支保工建込作業中における災害の撲滅を目指す。

【業績の特徴】
  1. 鋼製支保工建込作業を完全機械化⇒切羽近傍への立ち入り無く運転席からの機械操作により鋼製支保工建込が可能、安全性を飛躍的に向上
  2. 新開発『ワンタッチ式継ぎ手ボルト』により、鋼製支保工の天端締結が可能(3)ガイダンス・モニタリング装置等により、鋼製支保工の建込位置合わせが可能
  3. 生産性向上(施工時間15分→10分に33%短縮)
  4. 省人化(作業員数5人→1人に80%削減)(4)専用機不要で、装置の後付け可能な汎用性の高い支保工建込工法⇒現場導入が容易

優秀賞

水質を汚濁させない高揚程浚渫工法の開発/フジタ、河本組


【概要】
ダム湖の水質を汚濁させずに水深20 m以上、陸上揚程10m以上の堆砂除去が可能な浚渫工法を開発。

本工法は、真空とスラリー搬送のハイブリッドシステムにより、真空吸引のみでは不可能とされていた水上10m以上の揚程でも効率よく堆砂を除去でき、作業にともなう水質汚濁を発生させないという特⾧から、従来のダム浚渫工法とは異なり、ダムの発電運転を停止させることなく、取水口近傍で連続的に堆砂除去が可能である。


また、河川の渇水期に限らず施工が可能なため、要求工期への適応性が高いなどの点で有用な工法となっている。

【業績の特徴】
  • 「環境への配慮」:濁りの発生が認められない環境下での浚渫作業が可能。
  • 「機能維持」:高深度(2~30m)の堆積物を除去。ダム水位を低下せずに浚渫作業が可能。
  • 「施工性」:汎用性の高い設備規模。設備最大重量が4t(組立台船重量)、最大運搬車が8t 車であるため狭い山道でも運搬できる。
  • 「施工性」:ICTを駆使し施工の集中管理。各台船設備の船上で集中管理のため1名のみ で施工できる。
  • 「外部不経済の軽減」:発電中のダム取水口近傍での浚渫作業が可能。浚渫作業と発電が並行して可能なため、機能停止期間が無く外部不経済を軽減できる。


優秀賞

ニューマチックケーソン工法の自動掘削システム/
大林組、大本組、日本工業大学


【概要】
近年、熟練作業員の高齢化や若い世代の担い手の減少により人手不足や技術の継承が課題となっており、建設現場の生産性向上に資する技術として建設機械の自動化・自律化が期待されている。


ニューマチックケーソン工法においても掘削作業はオペレーターの経験と勘に依存するため、ICT等を活用した省人化につながる技術が求められている。

本システムは、従来、オペレーターによる遠隔操作で行われていた掘削を自動で施工できる技術である。掘削範囲と排土位置を予め指定しておくと、運転を開始してから指定した範囲の掘削が完了するまで自動で作業できる。システムは天井走行式掘削機、状態管理PCおよびLiDAR等で構成されている。

【業績の特徴】
  • 掘削作業の自動化
    自動掘削は管理ソフトにより状態を管理されており、掘削および排土動作がセンサ-データに応じて逐次選択され、状態遷移するようになっている。これより掘削動作(掘削~運搬~排土)を繰り返し、指定した範囲の地盤の掘削を完全自動で行うことができる。


  • 精度の高い掘削動作の再現性
    PID制御理論を適用した自動運転プログラムの確立により、熟練オペレーターの効率的な掘削動作を精度高く再現することができる。

  • LiDARによる自動認識
    掘削地盤形状の点群データから掘削位置や排土位置の決定し、さらに掘削機の目標位置と姿勢を自動算出する。特に排土位置は、点群データを形状処理することにより排土バケットの有無および開口部中心位置と傾き、バケット内の土量、バケットを吊るワイヤーを自動で認識することができる。



選考委員会賞

施工と品質管理の一貫した自動化システム「T-iCompaction」の開発/

大成建設、大成ロテック、ソイルアンドロックエンジニアリング



【概要】
土工事などにおける締固め作業では品質管理として締固め度の計測が行われる。

計測の方法として、これまでは材料を直接採取する方法(砂置換法)や、RI(放射性同位体)線源を材料中に打ち込んで行う方法(透過型RI法)等の抜き取りによる破壊試験であり、労力と時間を要している。


T-iCompactionは、散乱型RI法による計測を転輪型の筐体にて実施するものである。振動ローラー等の締固め機械に搭載して用いることで施工と同時に全数計測が可能になり、作業の効率化と省力化が可能となる。

【業績の特徴】
従来のRIを用いた計測では、計器のキャリブレーションを行うため、厳重な管理を必要とする「RI線源棒」を測定場所(計測器)から数十m以上隔離して、自然界に存在する微量な放射線を把握する必要があった。

これにより、隔離したRI線源棒を誤って埋め立てたり、紛失してしまうという社会的にも影響の大きい事案も存在した。T-iCompactionは、効率化・安全化という観点で下記の3つの問題点を解決している。

  1. 建設機械に搭載して走行しながら計測が可能であるため、人が立ち入るという行為自体が無くなるため、重機等との接触リスクを低減できる。
  2. 高精度の検出器を搭載しているため、自然放射線の影響を受けずに計測が可能であるため、RI線源は計測器を同一筐体にパッケージしている。よって、線源棒を紛失するといったリスクも存在しない。
  3. 取得したデータを即時にクラウド上で共有し、自動的に帳票へ加工することが可能であり、日々の煩雑な業務削減に貢献できる。


地域賞部門


最優秀賞

日本三大秘境宮崎県椎葉村で未来型無人化施工への挑戦/

旭建設


【概要】
作業員の安全確保が課題となる工事において、遠隔操作無人化バックホウを使った土木工事は安全面では非常に有効な手段であるが生産性の面で課題があると思われる。

このため丁張設置作業を無くし、完全無人状態の危険ゼロ現場を目標に、ICT技術を融合した施工を考案した。


汎用性に富むマシンガイダンス技術を目視操作・モニター操作の両方の 遠隔操作で利用できるシステム 『どこでもICT』で、安全にかつ生産性の向上が図れるものである。

【業績の特徴】
台風による大規模な土石流が発生した直後の砂防堰堤工事など、急峻地における土木工事においては工事中の落石や土砂崩壊、急な土石流発生など作業員の安全確保が最大の課題である。このため、全国各地の災害現場などでは遠隔操作による土工事の実績がある。



今回の技術『どこでもICT』の特徴は以下のとおりである。

  1. 丁張設置作業や丁張を基準とした掘削作業では完全無人化が不可能であるが、この技術 を使うと文字通り人が介在しない無人化施工とすることができ、危険ゼロが可能となる。
  2. 危険区域外の遠隔操作で無人のバックホウを操作し、手元のタブレットに映し出された 3D設計データに基づいた正確な作業が可能となる。
  3. 目視及びモニターによる遠隔操作では現段階ではバックホウバケット先端部の遠近感が つかめず正確性が要求される作業には不向きであったが、この技術では手元のタブレットに表示された3D設計データで数値(高さ)や3D図により視覚的に容易に確認が可能。

優秀賞
人力作業を排除した、次世代型 ロッドハンドリングシステム「RHS-2」/

鉱研工業


【概要】
Safety , Save , Satisfactionの3Sをテ―マとして、ボーリング現場の人力作業を排除したロッドハンドリングマシンを提案。



直線的動作を基本とした機構を採用して操作性の難しさを排除し、トレーニングによりスムーズな操作を行うことができる。

また、乗車不要のリモコン操作式で、ドリリングマシンの機側で操作することでロッドネジの噛み合わせを目視でき、安全かつスムーズにロッド接続、切り離し、収納操作を行うことができる。

【業績の特徴】
  • 安心・安全
    ロッド継ぎ足し時や抜管時の事故削減のため、人力を排した機械作業により捲込まれや指つめ事故を撤廃する。

  • 2人での接続・抜管作業が欠かせないP216とP165の二重管ロッドでも、本システム導入により1人での作業を実現して経済性を向上させ、また重量物作業の解消により、身体疲労を軽減する。

  • 満足向上
    大口径2重管ロッドを楽に取り扱えることで施工品質の向上や経費削減効果のほか、リモコンによって経験の浅い作業員でも安全かつ確実に作業できることで、これからの2重管掘削工事では欠かせないシステムとなることを目指している。




参考・画像元:日本建設機械施工協会プレスリリース
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デジコン編集部

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