コラム・特集
デジコン編集部 2026.7.18

TSや杭ナビをすでに持っている現場でも高精度スマホ測量 OPTiM Geo Scanを使うメリットとは?

「すでにTS杭ナビを持っているのに、わざわざGeo Scanを追加する意味はあるのか」——これは、測量機器をすでに保有している企業が、高精度スマホ測量OPTiM Geo Scanの導入を検討する際に、最も気にするポイントだ。数百万円をかけて導入した機器がまだ十分に使えるのに、別の測量手段に投資する理由が見いだせない、というのは自然な感覚だろう。「今あるものを捨てて乗り換えなければならないのか」という心理的な抵抗もある。

しかし、この問いの立て方そのものを見直す必要がある。Geo Scanは必ずしも既存機器の「置き換え」ではなく、「補完」として追加することで新たな効率化が生まれるケースが多いからだ。本記事では、TS・杭ナビを保有したままGeo Scanを併用するメリットと、現場での使い分けの考え方を整理する。

そもそもGeo Scanは「代替」か「補完」か?


この問いに対する答えは、「作業によって異なる」が正確だ。測量と一口に言っても、基準点測量から日常の位置出しまで幅は広く、それぞれに適した手段は違う。すべてをGeo Scanに置き換えるのでも、すべてを既存機器のままにするのでもなく、作業ごとに「どちらが向いているか」で使い分けるのが現実的な発想になる。

完全に置き換えられる作業 vs 補完が有効な作業


まず、自社の測量作業を「Geo Scanに移せるもの」と「既存機器が引き続き必要なもの」に仕分けて整理してみるとよい。

作業 既存機器との関係
起工・竣工測量、出来形管理、土量計算 Geo Scanへの置き換えが進めやすい(面的測量に強い)
位置出し・現況確認 Geo Scanで代替しやすい(ミリ単位の精度可能)
杭打ちICT建機連携(杭ナビショベル) 杭ナビが引き続き必要(Geo Scanは建機連携非対応)
基準点測量・多角測量・路線測量 一部TSが引き続き必要(ミリ単位の精度)
屋内・トンネルなど衛星電波が届かない測量 TSが引き続き必要(Geo Scanのオプション機能であるTS連携で部分対応。主用途はあくまで屋外のGNSS環境下)

この仕分けからわかるように、TS・杭ナビが担うべき高精度・特殊環境の領域は確かに残る。だが一方で、起工測量や出来形管理、さらに位置出しといった「頻度が高く手間のかかる作業」は、Geo Scanに移しやすい。言い換えれば、杭ナビが担ってきた位置出し・現況確認の一部は、Geo Scanで代替することも可能だということだ。

専用機にしかできない仕事は専用機に残し、日常的に発生する測量をGeo Scanが引き受けることで、機器全体の稼働を最適化できるわけだ。両者の役割分担を考える前提として、杭ナビとトータルステーションの違いもあわせて確認しておきたい。

「まず一部の作業だけ試す」アプローチが現実的


既存機器を持っているという事実は、実はGeo Scanを試すうえでの強みになる。これから測量を始める企業と違い、万一Geo Scanが合わない作業があっても、従来のTS・杭ナビでカバーできるからだ。つまり、業務を止めるリスクを負わずに新しい手段を試せる立場にある。

だからこそ、保有企業に向いているのは「まず一部の作業から試し、効果が出た範囲だけ広げる」という段階的な導入だ。いきなり全面的に運用を切り替えるのではなく、効果を確認しながら適用範囲を広げていけば、投資判断も社内の納得も得やすくなる。

TSや杭ナビを持ちながらGeo Scanを使うと便利なシーン



では具体的に、既存機器を持つ現場でGeo Scanが効くのはどんな場面か。代表的な4つのシーンを挙げる。

① TS担当者が手を離せない時間帯の測量


TSや杭ナビは専用機であるため、その機器を扱える担当者の数や機器の台数に制約がある。一台のTSを使える人が一人しかいなければ、その人が別作業に入っている間、測量は止まってしまう。

Geo Scanがあれば、TS担当者が別作業をしている間に、もう一人がスマホで簡易な測量や位置確認を並行して進められる。機器と人の「待ち」の時間を減らせるため、現場全体の段取りがスムーズになる。限られた測量リソースを止めずに回したい現場ほど、この並行運用の価値は大きい。

② 小規模・スポット的な位置確認作業


「ちょっとした高さや位置を確認したいだけ」という小さな作業は、現場では頻繁に発生する。しかしそのたびにTSや杭ナビを運搬し、据え付け・整準を行うのは手間が大きく、作業の手軽さに見合わない。

こうした場面では、Geo Scanを使えばスマホとGNSSレシーバーだけでその場ですぐに座標・位置を確認できる。本格的な機器をセットアップするほどでもない簡易確認を、身軽にこなせるのがGeo Scanの強みだ。専用機を「ここぞという作業」に温存しながら、日常の細かな確認はスマホで済ませるという使い分けができる。

③ 若手・別担当者への業務移管


TSの操作には後方交会や誤差管理など一定の習熟が必要なため、測量が特定のベテランに依存しがちだ。この属人化は、担当者の退職・異動が現場の遅延に直結するリスクを抱えている。

操作が容易なGeo Scanを併用すれば、若手や測量未経験の担当者にも一部の測量業務を移管でき、属人化の解消につながる。ベテランは高度な測量に集中し、定型的な作業は若手がGeo Scanで担う、という分担が可能になる。

実際の導入現場でも、岩手県の太田建設ではトータルステーション未経験の20代社員がTSを知らないまま1人で位置出しを行えるようになり、北海道の中川建設では入社2年目で測量未経験の社員が約10分のレクチャーで起工測量を完了している(参考:【新人社員 VS ベテラン技術者ガチンコ対決!】)。

④ データの二重確認・クロスチェック


精度に不安がある作業や、重要度の高い計測では、TSとGeo Scanで同じ箇所を計測し、結果を突き合わせることで測量の妥当性を確認できる。これは既存のTSがあるからこそできる活用法だ。

ここで注意したいのは、TS(ミリ単位・既知点設置などの良好条件下の値)とGeo Scan(単点測量でXYZ各5mm未満、面的スキャンでもmm単位。いずれもRTK-GNSS補正前提)では、もともとの測定方式・条件が異なる点だ。したがってクロスチェックの目的は「両者が完全に一致するか」ではなく、「その作業に求められる許容誤差の範囲内で両者が整合するか」を確認することにある。

特にGeo Scan導入初期は、社内に「スマホ測量で本当に大丈夫か」という慎重な声が残ることが多い。既存のTSと並行して計測し、許容誤差の範囲内で整合することを実地で示せれば、社内の信頼を着実に獲得できる。クロスチェックは精度検証であると同時に、新しい手段を組織に定着させる手段にもなる。

杭ナビとGeo Scanを使い分けるフロー



杭ナビを保有している現場では、作業ごとに次の判断軸で使い分けると整理しやすい。上から順に当てはめていくと、その作業をどちらで行うべきかが見えてくる。

その作業は…

Q1. ICT建機(杭ナビショベル)との連携が必要か?
└─ YES → 杭ナビ

Q2. 位置出し・杭打ちのみで、建機連携は不要か?
└─ YES → Geo Point(スマホで身軽に)/杭ナビ どちらでも可

Q3. 起工・竣工・出来形など面的な3次元測量か?
└─ YES → Geo Scan(杭ナビは面的測量に不向き)

Q4. 基準点測量・多角測量などミリ単位の絶対精度が必要か?
└─ YES → TS

なお、Q2の「位置出し・杭打ちのみ」のケースはどちらでも対応できるが、すでに杭ナビを保有している現場でも、建機連携が不要な日常の位置出しでは、三脚の運搬・据え付けが要らないGeo Scan(スマホ測量)のほうが小回りが利く場面が多い。

杭ナビは建機連携やまとまった位置出しに温存し、ちょっとした確認はスマホで身軽に、という使い分けが効率的だ。

このフローが示すのは、杭ナビとGeo Scanが競合するのではなく、得意領域がきれいに分かれているということだ。杭ナビが得意なICT建機連携や専用機ならではの位置出しはそのまま活かしつつ、杭ナビが苦手な面的測量(起工・出来形)をGeo Scanが補う。

この組み合わせが、杭ナビ保有現場での典型的な使い分けになる。それぞれの詳しい比較はOPTiM Geo Scan vs 杭ナビ 徹底比較を参照してほしい。

TSを保有しながらGeo Scanを追加した場合のコスト感


併用を検討するうえで避けて通れないのが、追加でいくらかかるのかという点だ。ここは保有企業にとって有利に働く部分でもある。

追加コストはスマホ+ライセンス費が中心


すでにTS・杭ナビを保有している現場がGeo Scanを追加する場合、新たに必要な初期費用はiPhone Pro+GNSSレシーバーで約20万円前後にとどまる。TS・杭ナビ本体が数百万円であることを考えれば、桁違いに小さい追加投資だ。これに年間ライセンス費用・GNSS補正配信サービス(月3,000円〜)・通信費が加わる構成になる。なおライセンス費用は非公表のため、正確な金額は資料請求・問い合わせで確認する必要がある。

すでに高額な専用機への投資を済ませている企業にとって、この程度の追加投資で測量の選択肢を一つ増やせるのは、費用対効果を見極めやすい。

人件費・移動コストの削減効果と比較する


追加コストは、それ単体ではなく削減効果とセットで評価したい。たとえば面的測量を2人作業から1人作業に変えられれば人件費が下がり、機器の運搬・据え替えが減れば段取り時間も短縮される。これらの削減効果を金額に換算して、追加コストと比べるのが正しい判断の仕方だ。

結論としては、削減できる人件費・時間のほうが追加コストを上回るのであれば、併用は十分に合理的な投資になる。特に測量の頻度が高い現場ほど、削減効果が積み上がり、追加コストの回収は早まる。

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TSとGeo Scanを「ハイブリッド運用」する考え方


先行する導入現場では、TS・杭ナビとGeo Scanを完全に二者択一にするのではなく、作業の性質に応じて使い分ける「ハイブリッド運用」が定着しつつある。これは、どちらが優れているかという議論ではなく、それぞれの長所を組み合わせて現場全体の効率を最大化する発想だ。

具体的には、高精度・特殊環境が求められる作業(基準点測量・トンネル・ICT建機連携)はTS・杭ナビが担い、面的測量・簡易位置出し・若手担当の作業はGeo Scanが担う、というすみ分けになる。このすみ分けにより、高価な専用機を「専用機にしかできない作業」に集中させ、日常的に発生する測量はスマホで身軽にこなすという、無駄のない体制が作れる。

どの作業をどちらに割り当てるかは、自社の業務構成によって変わる。割り振りを検討する際は、Geo Scanが向いている現場・用途を参考に、作業ごとの適性を整理するところから始めるとよい。

まとめ:「TS+Geo Scan」で現場のDXを一段進める


すでにTS・杭ナビを持っている現場にとって、Geo Scanは「今ある機器を捨てて乗り換えるもの」ではない。専用機が得意な領域は残しつつ、頻度が高く手間のかかる面的測量・簡易位置出しをGeo Scanに移すことで、機器全体の稼働を最適化し、人手不足・属人化・働き方改革といった課題への対応を一段進められる。

しかも追加コストはスマホ+ライセンス費が中心と低く、既存機器があるぶん業務を止めるリスクなく試せる。これは保有企業ならではの恵まれた条件だ。まずは一部の作業から併用を試し、効果を確認しながら活用範囲を広げていくのが、無理のない現実的な進め方になる。

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