土木・建設業界は、事業規模も大きく社会貢献度の高さが特徴。自分のたずさわった構造物や社会インフラが地図に残ったり、数十年、数百年と、後世に伝わるという経験が出来る仕事は、なかなかないだろう。
ただ、土木・建設業界と一口に言っても、その形態は様々。
ゼネコンや中小の建設会社をはじめ、土木の設計を担う「建設コンサルタント」企業や「測量」会社など多岐にわたる。
その中でもスーパーゼネコンと呼ばれる大手企業5社は、知名度の高さから就職を希望する大学生(就活生)も多い。
そこで、本記事では土木・建設業界を志望する方々のために、ゼネコンの基礎的な話から、仕事内容、業界の将来性などを解説。ぜひ、土木・建設の業界研究に役立ててほしい。
「ゼネコン」という言葉はよく耳にすると思うが、その意味を解説できるだろうか?「ゼネコン」とは、general contructor(ゼネラル・コントラクター、総合建設業者)の略称で、「設計」「施工」「研究」を自社で行っており、その中でも売り上げが数千億円~数兆円規模の会社を「ゼネコン」と呼ぶとされている。加えて、「建設会社」と「ゼネコン」の違いとして、「建設会社」は「施工」「設計」を担うが、「研究」までは行っていないことが多い。
また、ダムや橋梁、道路などの社会構造物やビルやマンション、商業施設、テーマパーク、競技場などの大型建築物の建設を担っている企業というイメージを持たれている方も多いだろう。
「ゼネコン」の中でも、「スーパーゼネコン」と呼ばれる企業がある。「スーパーゼネコン」とは、ゼネコンと呼ばれる企業群の中でも、売り上げが1兆円を超える企業のことをさす。日本では以下の5社のことを指すと、認識してもらえればよいだろう。
◎スーパーゼネコン5社
竹中工務店については、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、1兆円を割り込んでいるが、以前は売上が1兆円を超えており、スーパーゼネコンの一つとして数えられている。また、売上規模に準じてスーパーゼネコンの次は「準大手ゼネコン」、「中堅ゼネコン」に分類される。「準大手ゼネコン」と呼ばれる企業については、売上が3,000億円以上1兆円未満、「中堅ゼネコン」については、売上が1,500億円以上3,000億円未満と言われている。
建設業界は長らく大きな課題を抱えています。それが深刻な人手不足だ。特に若年層の人出が不足している現状があり、人手の確保が急務となっている。
一見すると業界の将来性は明るくないように見えるが、一概にそうとはいえない。現在、高度成長期に建設された交通網の老朽化問題が出ており、国もその対策に乗り出している。国土交通省が打ち出した、国土強靭化計画やインフラ長寿命化計画などが、その好例だ。老朽化する橋梁や道路などの改修・補修工事などの需要はこれから増えていくだろう。
加えて、東京オリンピック後に控える大型案件にも期待が寄せられている。その代表的なものが「大阪万博」と「リニア新幹線」だ。
2025年に開催される大阪万博は、東京オリンピックと同様に大阪を中心として建設需要を高めることが期待されている。また、2027年開通予定のリニア新幹線の建設工事については、開通にともなう都市再開発によって地方の建設需要を高める効果が期待されている。
また、課題である人手不足については、技術面においては、建設機械のICT化や現場へのICT機器の導入によって、活路を見出そうとしています。労働環境面においては、週休2日制の導入などの働き方改革を行うことで、従来のイメージを払拭して魅力的な職場を作り出す努力が進められている。
極端な話、大型の建設工事やインフラ整備などは人類が存続するかぎりあり続けるであろうし、ICT化や労働環境の改善に取組むことで、従来の激務というイメージからの脱却も図っている。土木・建設業界はこれから、ますます面白くなってくる業界の一つと言っても過言ではないだろう。
一口にゼネコンと言っても、その仕事内容は職種によって様々。そこで、ここでは職種別に仕事内容を紹介する。
◎ 顧客との強い信頼関係を築いていく「営業」
ゼネコンの営業はBtoBが基本。その取引先は、企業や官公庁、公共団体が主だ。なので、必然的に大型のプロジェクトを扱うことが多くなり、巨額な予算のプロジェクトを受注することにも。
◎ 必要資材の買い付けを担当する「調達」
土木・建設工事を行うには、資材が必須だ。資材の費用は、そのプロジェクトの予算を大きく左右することになる。また、どんなに安い資材であっても、その品質が悪ければ良い工事を行うことは不可能。資材調達の仕事は、原価を抑えつつ高品質な資材を調達する重要な仕事と言える。
◎ 発注者のイメージを現実のものに描き出す「設計」
発注者のイメージを具体的な形にして、利用しやすいように設計して図面や模型を作成するのが設計の仕事。自身が設計・デザインをしたものが実際に建物として作られるという醍醐味が設計の仕事にはある。
◎ 工事の円滑な進捗をマネジメントする「施工管理」
ゼネコンではプロジェクトを開始する場合、自社だけでなく建設事業者や土木事業者を雇い入れ、それら事業者を統括してプロジェクトを進めていく。その際に施工計画を立てて、それぞれの事業者が円滑に施工を行えているかをチェックするのが、施工管理の仕事になる。一番イメージしやすいのが「現場監督」と呼ばれる方々だろう。
◎ 建物が使いやすく作られているかを確認・管理する「設備」
建築物を建てるプロジェクトの場合、エレベーターや電気設備も必要となる。これらの設備が計画通り施工されているかをチェックし、実際に使用する場合に問題がないかどうかを管理するのが設備の仕事だ。
◎ 新しい技術や資材を生み出す「研究開発」
ゼネコンでは、建設の施工や設計だけではなく、新しい資材の開発や建築工法などの新技術を生み出していく使命がある。それらの仕事に携わっていくのが、研究開発の仕事だ。他社には無い独自の資材や技術を開発することで、他社と差別化を図ることができる。そのため、ゼネコンでは研究開発の部門に巨額の投資を行っている。
◎ ゼネコンの業務を裏で支える仕事「事務」
ゼネコンは大きく分けて「設計」「施工」「研究」を担っていると冒頭で解説したが、この業務だけで会社が回っている訳ではありません。ゼネコンも一般企業と同様に、総務や経理、人事などのバックオフィスの業務があることは、言うまでもないだろう。
就活を行っている学生の皆さんは、希望したとおりにゼネコンへの就職が決まったら、どの部門に配属されたいだろうか
多くの企業では、文系・理系を問わず、本人の配属希望先を考慮するとしている。だがやはり、文系と理系、どちらの出身であるかで配属が決まることは多いだろう。
というのも、理系の学生の場合、大学で学んできた専門分野によって配属先が決まることが多いからだ。建築を専門に学んできたのであれば、設計などの部署に配属される可能性が高くなる。また、企業によっては応募できる職種を、文系・理系で分けているところもある。
ここからはスーパーゼネコンと呼ばれる5社について解説していく。
● 清水建設株式会社
清水建設は1804年に創業した会社で、東京都中央区に本社を構えている。また、全国各地に拠点を構えるだけでなく、海外(アジア・アメリカ・ヨーロッパ地域)にも拠点を設けている。前身が「宮大工」ということもあり、建築分野に強い。
代表的な大型案件としては、
「子どもたちに誇れるしごとを。」を企業理念として、都市開発だけにとどまらず、未来に文化を残す仕事も担っている。
● 株式会社大林組
大林組は、1892年に創業。東京都港区に本社を構えている。また、全国各地に支店を構えるだけでなく、海外にも展開しており、日本国内にとどまらずグローバルな事業展開をしている。2010年までは大阪に本社があったため、西日本での実績も多々。
代表的な大型案件には、
など、時代を象徴するものを手掛けており、首都圏での都市開発にも強みを持つ。「地球に優しいリーディングカンパニー」を企業理念として、今後、再生可能エネルギー事業にも注力していくようだ。
● 大成建設株式会社
大成建設は、1873年創業した企業で東京都新宿区に本社を構える。全国各地に支社を持つと同時に、アジアやアフリカなど海外に幅広いネットワークを有する企業。市街地再開発事業に強みを持っているのが特徴的で、この分野で約20%のシェアを占めている。
代表的な大型案件は、
近年では新国立競技場といった、国家的プロジェクトも担当。「人がいきいきとする環境を創造する」を企業理念とし、大規模な建築土木工事はもちろん、一般向け住宅の「パルコン」など、高機能性住宅も提供している。
● 鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社は、1840年に創業した企業。東京都港区に本社を構える。全国各地に支社を置くだけでなく、アジア・オセアニア地域、北米地域、ヨーロッパ地域に現地法人を構えている。他のスーパーゼネコンと比べ、グループ会社の数が多く、その数は234社にのぼる。常に事業領域を拡大しているのが特徴。
代表的な大型案件としては、
ダムや橋梁、トンネルなどの土木工事にも強い。
● 株式会社竹中工務店
竹中工務店は、1610年創業の企業。大阪府大阪市に本社を構えている。全国に支店を持っている他、アジアやヨーロッパ、アメリカに海外事業所を設けている。
竹中工務店は職人気質が強いといわれ、特に設計部門は大手の設計事務所に肩を並べるほどの実力があると言われている。菊竹清訓や出江寛などの有名建築家は竹中工務店の出身。
代表的な大型案件には、
独特の雰囲気を持った質の高い設計の建造物が多く、その地域を象徴するものになっている。「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という企業理念のもと、注目を集める個性的な設計とスーパーゼネコンとしての質の高い施工を提供し続けている。
各スーパーゼネコンの選考プロセスに関しては、大きな違いはない。以下、選考プロセスを簡単に紹介する。
① エントリーシートの記入
学生時代に注力したエピソードや志望動機を記載。
② 筆記試験・Webテスト
SPI(webまたはテストセンター)、性格検査が課される。
③ 面接(数回実施される)
先述した通り、スーパーゼネコンの選考プロセスの最初に行われるのが、エントリーシート。他業界を含む多くの大手企業でもそうであるように、エントリーシートに記載された内容をもとに面接が行われるため、自己分析や企業研究などの準備を入念に行う必要がある。
特に「志望動機」は、数多くある企業の中から、なぜその企業を選んだのかを明らかにし、入社後にどのようなことがしたいか、どのようなことで会社に貢献できるかを伝える重要なもの。加えて、面接の際には必ずといっていいほど聞かれる質問でもある。
そこで、志望動機について記載すべきポイントも紹介しよう。
ポイント① :業界を志望する理由を書く
1つ目は、なぜ建設業界を志望するのかを明確に説明できるようにすること。様々な業界がある中で、どうして建設業界を選んだかは、面接でも聞かれる可能性が高い。あいまいな理由ではなく、自分自身の原体験をもとになるべく具体的に理由を書くと説得力が増すだろう。
ポイント② :その企業を志望した動機を書く
次に、数あるゼネコンや建設会社の中から、なぜその企業を志望したのかを明確にする必要がある。企業が志望動機を知りたい理由として、「志望度の高さ」を把握したいと考えているからだ。志望する企業がどのような事業を展開しているのか、また他社と比較した場合の強みは何かなどの企業研究をしっかりと行い、自分のエピソードも交えて書いていこう。
ポイント③ :入社後に成し遂げたいことを明らかに
最後のポイントは、入社後のビジョンを書く。これは、ポイント②にも通じることだが、入社後に成し遂げたいことを書くことで、志望度の高さをアピールすることにもつながる。企業としては、当然、将来活躍してくれる人物を採用したい。だからこそ、自分の能力をどんな場面でいかすことができるのか、どのような活躍ができるのかを、具体的にイメージして、アピールすることは重要だ。
最先端技術の導入、労働面、安全面の改善など、今、建設業界は、「働きたい業界」「働きやすい業界」へと変貌を遂げつつある。だからこそ、今後、注目される業界になるのは、間違いないだろう。
ただ、土木・建設業界と一口に言っても、その形態は様々。
ゼネコンや中小の建設会社をはじめ、土木の設計を担う「建設コンサルタント」企業や「測量」会社など多岐にわたる。
その中でもスーパーゼネコンと呼ばれる大手企業5社は、知名度の高さから就職を希望する大学生(就活生)も多い。
そこで、本記事では土木・建設業界を志望する方々のために、ゼネコンの基礎的な話から、仕事内容、業界の将来性などを解説。ぜひ、土木・建設の業界研究に役立ててほしい。
そもそも、ゼネコンって何?
「ゼネコン」という言葉はよく耳にすると思うが、その意味を解説できるだろうか?「ゼネコン」とは、general contructor(ゼネラル・コントラクター、総合建設業者)の略称で、「設計」「施工」「研究」を自社で行っており、その中でも売り上げが数千億円~数兆円規模の会社を「ゼネコン」と呼ぶとされている。加えて、「建設会社」と「ゼネコン」の違いとして、「建設会社」は「施工」「設計」を担うが、「研究」までは行っていないことが多い。
また、ダムや橋梁、道路などの社会構造物やビルやマンション、商業施設、テーマパーク、競技場などの大型建築物の建設を担っている企業というイメージを持たれている方も多いだろう。
「スーパーゼネコン」とは、どんなところ?ゼネコンとの違いは?
「ゼネコン」の中でも、「スーパーゼネコン」と呼ばれる企業がある。「スーパーゼネコン」とは、ゼネコンと呼ばれる企業群の中でも、売り上げが1兆円を超える企業のことをさす。日本では以下の5社のことを指すと、認識してもらえればよいだろう。
◎スーパーゼネコン5社
竹中工務店については、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、1兆円を割り込んでいるが、以前は売上が1兆円を超えており、スーパーゼネコンの一つとして数えられている。また、売上規模に準じてスーパーゼネコンの次は「準大手ゼネコン」、「中堅ゼネコン」に分類される。「準大手ゼネコン」と呼ばれる企業については、売上が3,000億円以上1兆円未満、「中堅ゼネコン」については、売上が1,500億円以上3,000億円未満と言われている。
土木・建設業界の将来性は?
建設業界は長らく大きな課題を抱えています。それが深刻な人手不足だ。特に若年層の人出が不足している現状があり、人手の確保が急務となっている。
一見すると業界の将来性は明るくないように見えるが、一概にそうとはいえない。現在、高度成長期に建設された交通網の老朽化問題が出ており、国もその対策に乗り出している。国土交通省が打ち出した、国土強靭化計画やインフラ長寿命化計画などが、その好例だ。老朽化する橋梁や道路などの改修・補修工事などの需要はこれから増えていくだろう。
加えて、東京オリンピック後に控える大型案件にも期待が寄せられている。その代表的なものが「大阪万博」と「リニア新幹線」だ。
2025年に開催される大阪万博は、東京オリンピックと同様に大阪を中心として建設需要を高めることが期待されている。また、2027年開通予定のリニア新幹線の建設工事については、開通にともなう都市再開発によって地方の建設需要を高める効果が期待されている。
また、課題である人手不足については、技術面においては、建設機械のICT化や現場へのICT機器の導入によって、活路を見出そうとしています。労働環境面においては、週休2日制の導入などの働き方改革を行うことで、従来のイメージを払拭して魅力的な職場を作り出す努力が進められている。
極端な話、大型の建設工事やインフラ整備などは人類が存続するかぎりあり続けるであろうし、ICT化や労働環境の改善に取組むことで、従来の激務というイメージからの脱却も図っている。土木・建設業界はこれから、ますます面白くなってくる業界の一つと言っても過言ではないだろう。
ゼネコンの仕事内容は?新卒社員の配属先などを解説
一口にゼネコンと言っても、その仕事内容は職種によって様々。そこで、ここでは職種別に仕事内容を紹介する。
◎ 顧客との強い信頼関係を築いていく「営業」
ゼネコンの営業はBtoBが基本。その取引先は、企業や官公庁、公共団体が主だ。なので、必然的に大型のプロジェクトを扱うことが多くなり、巨額な予算のプロジェクトを受注することにも。
◎ 必要資材の買い付けを担当する「調達」
土木・建設工事を行うには、資材が必須だ。資材の費用は、そのプロジェクトの予算を大きく左右することになる。また、どんなに安い資材であっても、その品質が悪ければ良い工事を行うことは不可能。資材調達の仕事は、原価を抑えつつ高品質な資材を調達する重要な仕事と言える。
◎ 発注者のイメージを現実のものに描き出す「設計」
発注者のイメージを具体的な形にして、利用しやすいように設計して図面や模型を作成するのが設計の仕事。自身が設計・デザインをしたものが実際に建物として作られるという醍醐味が設計の仕事にはある。
◎ 工事の円滑な進捗をマネジメントする「施工管理」
ゼネコンではプロジェクトを開始する場合、自社だけでなく建設事業者や土木事業者を雇い入れ、それら事業者を統括してプロジェクトを進めていく。その際に施工計画を立てて、それぞれの事業者が円滑に施工を行えているかをチェックするのが、施工管理の仕事になる。一番イメージしやすいのが「現場監督」と呼ばれる方々だろう。
◎ 建物が使いやすく作られているかを確認・管理する「設備」
建築物を建てるプロジェクトの場合、エレベーターや電気設備も必要となる。これらの設備が計画通り施工されているかをチェックし、実際に使用する場合に問題がないかどうかを管理するのが設備の仕事だ。
◎ 新しい技術や資材を生み出す「研究開発」
ゼネコンでは、建設の施工や設計だけではなく、新しい資材の開発や建築工法などの新技術を生み出していく使命がある。それらの仕事に携わっていくのが、研究開発の仕事だ。他社には無い独自の資材や技術を開発することで、他社と差別化を図ることができる。そのため、ゼネコンでは研究開発の部門に巨額の投資を行っている。
◎ ゼネコンの業務を裏で支える仕事「事務」
ゼネコンは大きく分けて「設計」「施工」「研究」を担っていると冒頭で解説したが、この業務だけで会社が回っている訳ではありません。ゼネコンも一般企業と同様に、総務や経理、人事などのバックオフィスの業務があることは、言うまでもないだろう。
新卒社員はどこに配属される?文系と理系で違ってくる?
就活を行っている学生の皆さんは、希望したとおりにゼネコンへの就職が決まったら、どの部門に配属されたいだろうか
多くの企業では、文系・理系を問わず、本人の配属希望先を考慮するとしている。だがやはり、文系と理系、どちらの出身であるかで配属が決まることは多いだろう。
というのも、理系の学生の場合、大学で学んできた専門分野によって配属先が決まることが多いからだ。建築を専門に学んできたのであれば、設計などの部署に配属される可能性が高くなる。また、企業によっては応募できる職種を、文系・理系で分けているところもある。
スーパーゼネコン5社を比較!それぞれの特徴を見てみよう
ここからはスーパーゼネコンと呼ばれる5社について解説していく。
● 清水建設株式会社
清水建設は1804年に創業した会社で、東京都中央区に本社を構えている。また、全国各地に拠点を構えるだけでなく、海外(アジア・アメリカ・ヨーロッパ地域)にも拠点を設けている。前身が「宮大工」ということもあり、建築分野に強い。
代表的な大型案件としては、
- 横浜マリンタワー
- 横浜スタジアム
- 長崎オランダ村ハウステンボス
- サンシャイン60
- 歌舞伎座タワー
- モード学園コクーンタワー
- 大阪国際空港ターミナルビル など
「子どもたちに誇れるしごとを。」を企業理念として、都市開発だけにとどまらず、未来に文化を残す仕事も担っている。
- 売上げ:1兆4,176億円(単体)
- 従業員数:9,669人(単体)
- 平均年収:1,006.7万円(単体)
- 特徴:スーパーゼネコンの中で最も売り上げが高い企業です。建築分野に強く、大小様々な建築物件を手掛けています。また、女性の起用や働き方改革などを意識しており、時代に沿った柔軟な対応をとっています。
- 求める人材:「ものづくり」をチームで成し遂げるものと捉え、その先にある達成感と感動を分かち合える人材を求めている。
● 株式会社大林組
大林組は、1892年に創業。東京都港区に本社を構えている。また、全国各地に支店を構えるだけでなく、海外にも展開しており、日本国内にとどまらずグローバルな事業展開をしている。2010年までは大阪に本社があったため、西日本での実績も多々。
代表的な大型案件には、
- 東京駅
- 大阪城
- 六本木ヒルズ
- 東京スカイツリー
など、時代を象徴するものを手掛けており、首都圏での都市開発にも強みを持つ。「地球に優しいリーディングカンパニー」を企業理念として、今後、再生可能エネルギー事業にも注力していくようだ。
- 売上:1兆4,164億円(単体)
- 従業員数:9,669人(単体)
- 平均年収:1,057.7万円(単体)
- 特徴:建築分野以外(ロボティクス・技術開発)の部門を設け、積極的に技術開発を行っています。また、国内のみならず海外でもPFI事業(公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法)を行っていて、国内ではトップシェアを占めています。
- 求める人材:多様化する社会の要請に応え、誠実な姿勢で質の高い建設やサービスを提供するために、リーダーシップ・協調性・チャレンジ精神を持ち、グローバルに活躍できる人材を求めている。
● 大成建設株式会社
大成建設は、1873年創業した企業で東京都新宿区に本社を構える。全国各地に支社を持つと同時に、アジアやアフリカなど海外に幅広いネットワークを有する企業。市街地再開発事業に強みを持っているのが特徴的で、この分野で約20%のシェアを占めている。
代表的な大型案件は、
- 東京都庁第一庁舎
- 中部国際空港
- 羽田空港国際線ターミナル
- 新江ノ島水族館
- 東京芸術劇場
- 新宿センタービル
近年では新国立競技場といった、国家的プロジェクトも担当。「人がいきいきとする環境を創造する」を企業理念とし、大規模な建築土木工事はもちろん、一般向け住宅の「パルコン」など、高機能性住宅も提供している。
- 売上:1兆4,095億円(単体)
- 従業員数:9,680人(単体)
- 平均年収:1,010万円(単体)
- 特徴:スーパーゼネコンのうちで唯一の非同族経営。そのため、風通しの良い会社であると言われている。
- 求める人材:異なる価値観の仲間を尊重し、コミュニケーションがとれること。自らどのように貢献できるかを主体的に考え、建設的な考えに基づいて行動できる。ものづくりへの純粋な思いを持ち、ゼネコンで、大成建設で働きたいという強い気持ちを持っている。この3つを持つ人物を求めている。
● 鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社は、1840年に創業した企業。東京都港区に本社を構える。全国各地に支社を置くだけでなく、アジア・オセアニア地域、北米地域、ヨーロッパ地域に現地法人を構えている。他のスーパーゼネコンと比べ、グループ会社の数が多く、その数は234社にのぼる。常に事業領域を拡大しているのが特徴。
代表的な大型案件としては、
- フジテレビ本社ビル(FCGビル)
- 東京ミッドタウン日比谷
- 東京駅丸の内駅舎(再建および復元) など
ダムや橋梁、トンネルなどの土木工事にも強い。
- 売上:1兆3,051億円(単体)
- 従業員数:9,682人(単体)
- 平均年収:1,134.1万円(単体)
- 特徴:現社長である押味氏が掲げている「現場第一主義」が社風や仕事に反映されている。利益管理を現場に任せるという、現場への権限移譲が特徴。
- 求める人材:異なる価値観の仲間と協力して一つのことを達成することができる。リーダーシップを発揮して仲間と目標を達成できる。新しい発想を提案し、周りと協力して実現できる。これらを有する人物を求めている。
● 株式会社竹中工務店
竹中工務店は、1610年創業の企業。大阪府大阪市に本社を構えている。全国に支店を持っている他、アジアやヨーロッパ、アメリカに海外事業所を設けている。
竹中工務店は職人気質が強いといわれ、特に設計部門は大手の設計事務所に肩を並べるほどの実力があると言われている。菊竹清訓や出江寛などの有名建築家は竹中工務店の出身。
代表的な大型案件には、
- 東京タワー
- 日本武道館
- 東京ミッドタウン
- あべのハルカス
- 沖縄コンベンションセンター など
独特の雰囲気を持った質の高い設計の建造物が多く、その地域を象徴するものになっている。「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という企業理念のもと、注目を集める個性的な設計とスーパーゼネコンとしての質の高い施工を提供し続けている。
- 売上:9,800億円(単体)
- 従業員数:8,157人(単体)
- 平均年収:1,042.5万円(単体)
- 特徴:スーパーゼネコンの中では唯一の非上場企業。土木関連は子会社が行い、竹中工務店は建設業に専念しているのが特徴。
- 求める人材:最良の作品を作るために必要な強い覚悟と粘り強さ。相手の意見を尊重しながらも、自分の意見が言える誠実な態度。先を見据えて主体的に行動する姿勢。ルールを守りながらも、その中で創意工夫すること。共に力を合わせて目標を成し遂げるチームワークと熱意。これら5つを持った人物を求めている。
新卒採用におけるゼネコンの選考プロセス
各スーパーゼネコンの選考プロセスに関しては、大きな違いはない。以下、選考プロセスを簡単に紹介する。
① エントリーシートの記入
学生時代に注力したエピソードや志望動機を記載。
② 筆記試験・Webテスト
SPI(webまたはテストセンター)、性格検査が課される。
③ 面接(数回実施される)
新卒採用におけるゼネコンのエントリーシートの書き方・ポイント
先述した通り、スーパーゼネコンの選考プロセスの最初に行われるのが、エントリーシート。他業界を含む多くの大手企業でもそうであるように、エントリーシートに記載された内容をもとに面接が行われるため、自己分析や企業研究などの準備を入念に行う必要がある。
特に「志望動機」は、数多くある企業の中から、なぜその企業を選んだのかを明らかにし、入社後にどのようなことがしたいか、どのようなことで会社に貢献できるかを伝える重要なもの。加えて、面接の際には必ずといっていいほど聞かれる質問でもある。
そこで、志望動機について記載すべきポイントも紹介しよう。
ポイント① :業界を志望する理由を書く
1つ目は、なぜ建設業界を志望するのかを明確に説明できるようにすること。様々な業界がある中で、どうして建設業界を選んだかは、面接でも聞かれる可能性が高い。あいまいな理由ではなく、自分自身の原体験をもとになるべく具体的に理由を書くと説得力が増すだろう。
ポイント② :その企業を志望した動機を書く
次に、数あるゼネコンや建設会社の中から、なぜその企業を志望したのかを明確にする必要がある。企業が志望動機を知りたい理由として、「志望度の高さ」を把握したいと考えているからだ。志望する企業がどのような事業を展開しているのか、また他社と比較した場合の強みは何かなどの企業研究をしっかりと行い、自分のエピソードも交えて書いていこう。
ポイント③ :入社後に成し遂げたいことを明らかに
最後のポイントは、入社後のビジョンを書く。これは、ポイント②にも通じることだが、入社後に成し遂げたいことを書くことで、志望度の高さをアピールすることにもつながる。企業としては、当然、将来活躍してくれる人物を採用したい。だからこそ、自分の能力をどんな場面でいかすことができるのか、どのような活躍ができるのかを、具体的にイメージして、アピールすることは重要だ。
最先端技術の導入、労働面、安全面の改善など、今、建設業界は、「働きたい業界」「働きやすい業界」へと変貌を遂げつつある。だからこそ、今後、注目される業界になるのは、間違いないだろう。
WRITTEN by
建設土木の未来を
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