南北に奥羽山脈と北上高地を有する岩手県は、県土の約77%が森林地帯。北海道に次ぐ森林面積で、林業就業者数も全国3位と、森林が県を象徴する自然環境であり産業となっている。
そうした環境のもと開設された岩手県林業技術センターでは、若手の担い手を確保すべく、林業への就業希望者などを対象とした「いわて林業アカデミー」を開講しているほか、岩手県農林水産部では、県産木材を利用した住宅の建設を促進する事業者を「いわて森の棟梁」として登録する制度を設けるなど、活性化に力が注がれている。
関連する土木・建設業の状況はというと、令和3年度建設業構造実態調査によれば、社員の年齢構成は60〜65歳が最も多く、50歳以上の割合が54%。
約10年後には現在50歳代以上の社員が一斉に退職する時期を迎えるが、その人数をカバーできるだけの若手の採用は進んでいないのが実情だ。
担い手の確保・育成、ICTなどを活用した業務の効率化などが急がれている。
本記事では、豪雪地帯という特徴も持つ岩手県の総合土木・建設業界をリードする15社を紹介する。
各社の歴史、特徴的な技術、代表的なプロジェクト、そして最新の取り組みなどを詳しく見ていこう。
大正12年に設立された岩手建設工業は、100年にわたり公共事業を中心とした土木・建築事業を展開してきた。
「次世代育成支援行動計画」を策定しており、社員が家族とともに過ごす時間を多く持ちながら、働きやすい環境で能力を十分に発揮できるよう対策と取り組みを行っている。
主要な取引先としては、国土交通省東北地方整備局、農林水産省東北農政局、林野庁東北森林管理局、岩手県、北上市、日本郵政などがある。
集中豪雨等で被災した森林の再生などを行う治山工事、水源地域などにある国有林の森林整備や木材の搬出などに利用される道を整備する林道工事、盛土などで造られる人工斜面や自然斜面が崩れないよう落石防止・保護を行う法面工事など、森林の多い岩手県らしい土木工事も数多く行う。
そのほか、国道や県道といった道路工事、営農施設工事、造園・公園整備工事などを広く手がけている。
岩手県の地域を「スマートカントリー(かっこいい田舎)」とすることを目指す小田島組。
ITツールをフル活用した最先端の働き方を積極的に取り入れており、建築業の平均に比べ若者・女性のスタッフが多いのも特徴だ。
そうした姿勢や取り組みが評価され、2020年度GOOD DESIGN AWARDでは本社ビルの建築やブランディングなどで3部門を受賞している。
また、第33回日経ニューオフィス賞でも東北ニューオフィス賞を受賞。IT導入・推進、洗練された社屋やユニフォームなど、さまざまな面で話題を集めている企業だ。
特に注目したいのは、出来形規格値や実測データの整理、電子納品を行うオリジナルサービス「写真整理サービスカエレル」。
自社内で大幅な残業削減に成功したことから、同業者に提供すべく提供をスタート。工事写真にまつ関わる内業を遠隔代行してくれるもので、ミス写真、撮り忘れのチェックまでサポートしている。
また、建設技術の生産性を高めるためにICTを積極的に導入しているほか、建設機械の操作にはGPSを活用し、作業効率と精度のアップを図るといった取り組みももちろん実施している。
「社員の半分は10代、20代」。働く楽しさを “岩手県”から発信する「小田島組」の“人の可能性を見つけ、育てる” 組織づくりとは?
2本目:
なぜ「小田島組(岩手県)」には、若手社員が集まるのか!?その理由を、“新人社員”に本音で語ってもらいました!
水清建設は、ICTを「かっこいい建設業の実践」と捉え、測量、設計・施工計画、施工、検査の工程において3次元(3D)データを活用している。
自社で活用するだけでなく、発注者や建設業者、一般の方を対象にICT現場見学会を実施し、普及活動にも取り組む企業だ。
ICTによる「新3K=価値ある・甲斐ある・希望ある仕事」を掲げており、土木部に「ICT推進チーム」を設置したり、社内報として「ICT新聞」を発行するなど、会社を挙げてICT施工を進めている。
そうした取り組みから、令和2年にはみちのくi-Construction奨励賞、令和4年度インフラDX大賞優秀賞を受賞している。
土木工事においては、ゴミとして捨てられていた素材を再生し、法面緑化やスポーツターフの施工に活用するRC工法も取り入れ、自然環境に配慮した施工にも取り組んでいる。
1842年創業という長い歴史を持つ佐々木組は、1990年には資本金を1億円とするなど、着実に成長を続けながら岩手県の土木・建設現場を支えてきた。
一般土木から農業基盤整備、団地土地造成、市街地再開発、橋梁、トンネル、公園、上下水道、舗装など、高度な技術を必要とする大規模工事に対応している。
建築部門では、本社所在地でもある岩手県一関市の市役所本庁舎をはじめ、消防署庁舎、学校校舎、医療施設などの公共工事を幅広く手がけている。
土木・舗装部門では、太陽光発電所、トンネルなどのほか、東日本大震災の災害復旧事業も数多く担当してきた。
また、再生骨材プラントと再生アスファルト合材プラントのリサイクル施設を自社で建設しており、地域資源の再利用に日々取り組んでいる。
「その仕事は、岩手の風景になる」をコーポレートアイデンティティとする樋下建設は、1932年の創業から総合建設業としてさまざまな工事を進めてきた。
土木事業においては、歩道橋設置工事や釜石漁港海岸災害復旧工事など、建築事業では、バスセンター整備事業や若者単身用定住促進住宅建築工事など、毎年多数の現場で確かな実績を積み重ねている。
また、一級建築士とパートナーシップを結び、一般住宅事業「アスクハウジング」を展開するほか、土地・資産活用事業で岩手県内の土地の有効活用提案を進めており、土木・建築両事業のノウハウやつながりを活かし、岩手県内の地域社会貢献に取り組んでいる企業だ。
1962年設立の菱和建設は、公共事業を中心に、土木と建築工事を実施する企業だ。
教育文化施設、福祉施設などの整備を行うほか、土木の現場では、防災上の観点も重視しながら工事計画を作成し、環境負荷の少ない都市づくりを目指している。
2024年11月現在で着工中の工事としては、岩手県が発注した上鵜飼の沢上鵜飼地区砂防堰堤築造工事、建築分野では岩手県滝沢市が発注した滝沢市本庁舎1階トイレ・外壁等改修工事などがある。
オリジナルキャラクター「りょーわんくん」を作成したり、2022年の創立60周年には、建設会社で働く女性を主人公とした記念イメージビデオを公開するなど、地域の身近な企業として独自の広報活動にも力を注いでいる。
重機土木工事を中心に、道路・造成工事、河川・砂防・上下水道工事、災害復興工事などに取り組む岩手マイタックは、2003年に創業した比較的新しい企業だ。
規模は大きく、すでに220名を超える従業員を抱えており、1級土木施工管理技士19名をはじめ、1級建設機械施工管理技士、測量士などが在籍しているほか、10tダンプなどの重機も多数自社保有している。
人々の快適な暮らしを支える会社として創業したという理念に沿い、自然環境保持に最大限配慮したインフラ整備に加え、ソーラー事業、観光事業、教育訓練事業にも力を入れている。
工事にあたっては、専門スキルをもった技術者やICTの活用により、質とスピード、コストダウン、安全性を追求している。
また、国土交通省のストックヤード運営事業者として登録されており、循環型社会の実現と社会の持続的発展を念頭に置いた残土処理にあたっている。
土木・建設会社の事業として異色の観光農園事業は、過疎化や少子高齢化、一次産業の衰退、担い手不足といった地域の抱える課題に向き合い、地域活性化を図るために立ち上げられた事業だ。
盛岡市内に「まほら岩手事業所」を開設し、地域の農作物を使用した食事やお菓子の製造販売ほか、広大な土地を活かしたイベントを開催している。
1980年に創立された青紀土木は、大規模工事を中心に、リフォーム・や解体など一般家庭の工事にも応じている。
公共工事では、道路、公園、上下水道整備、河川護岸など、暮らしの基礎を形づくるインフラの整備を行っている。
鉄道土木工事を多く請け負っていることが特徴で、JR東日本の東北新幹線・在来線、三陸鉄道のリアス線の設備補修や災害時などの緊急対応を担っている。
また、2020年には、知的障害者が描いたアート作品を重機にラッピングする「ヘラルボニー×アオキドボク バックホウアートラッピングプロジェクト」を立ち上げている。
社長自らが他所での類似プロジェクトを目にし、共生社会実現に貢献できればと考えたことがきっかけで、地域に根付いた活動にも特色がある企業だ。
EC南部コーポレーションは、1962年に砂利採取業からスタートした企業。
現在では、土木部門、建築部門、住宅事業部門、不動産部門、運輸部門、解体・リサイクル部門と、幅広い事業領域に広がっている。
建築部門では、「正確第一主義」を掲げ、医療・福祉施設、商業施設、生産・物流施設などの施工を行っている。
土木部門では、道路、河川、橋、下水道、宅地造成、まちづくりと、地域開発すべてをフィールドとしており、中核を担う事業となっている。
発注官庁より優良工事として表彰された経験を多数持つ経験豊富な技術者たちが施工にあたっており、実績には、国道道路改良工事、一級河川改修工事などがある。
1949年の創業以来、岩手県内のインフラ整備を支えてきた朝田建設は、2018年時点で10億円の売上高を持つ県を代表する企業のひとつだ。
北上川沿いの築堤工事、橋梁工事、道路工事、下水道工事、農林水産省や都道府県の公共事業の一環として用排水路の整備などを行うほ場整備、道路・河川維持修繕を手がけている。
今年、2024年1月にはDX戦略に関するトップメッセージを発表し、デジタル技術やロボットの活用によって、生産性や付加価値の向上に取り組んでいくことを社内外に向けて発信した。
DX推進にともない、社内にDX推進委員会を設置しており、具体的な導入システムと数値目標などを設定している。
具体的には、2024年に入札情報などの仕事の可視化を行い、2027年までには現在外注しているICT施工を内製化、デジタル人材の育成を行っていくことを戦略として打ち立てている企業だ。
1946年に創業した平野組は、一関市を拠点とした総合建築業者だ。
施工事例として、災害公営住宅の新築工事、創業以来最大規模の物件として工業団地内の社員寮建設などを受注している。
土木事業においては、農道整備事業、中山間地域総合整備事業など、数多くのインフラ整備を行っている。
技術面では、乾式吹付工法、海泥緑化工法、赤外線外壁予備診断などを採用しているほか、風力・太陽光・水力発電にまつわる工事にも取り組んでいる。
「未来の子どもたちへ誇れる仕事」をモットーとする板谷建設は、1955年創業された企業だ。
土木の現場で実績を重ねており、2024年10月には、優秀な技術・技能を持つ建設技能者を表彰する「優秀施工者国土交通(建設)大臣顕彰者」(通称:建設マスター)の1人として従業員が表彰を受けたばかりだ。
社内にはDX推進室を設置しており、「若い世代への技術力継承・人間力・現場力を高める」「つかう人の気持ちによりそい”やさしい生活環境づくり"を目指す」「時流を捉えた価値観で、お客様と地域を支える」をDX方針としている。
具体的には、デジタル基盤の整備、BIM/CIMの導入による設計モデルの可視化、仮想空間を活用したシミュレーションなどに順次取り組んでいる。
2024年8月には、そうしたDX戦略によって経済産業省「DX認定企業者」に認定されている。
1934年創立の東野建設工業は、建築事業(設計・施工)、土木事業(設計・施工)、設計・監理事業、リフォーム事業、宅地開発・不動産売買事業を行っている。
土木事業においては、主な施工事例として、盛岡市の中央公園高架橋工事、大山(沢尻)海岸治山工事、薮川(北の沢)林道新設工事などがある。
2024年には創業90周年を迎え、毎年恒例となっている縁日イベント「東野感謝祭」で地域への思いを伝えるなど、地元とのつながりが強い企業だ。
「自然を思いやりながら、高い技術で立ち向かう」ことを信念に、各現場の工事に取り組み続けている。
遠野市を拠点とするテラは、岩手新興土建株式会社として1944年に創業した企業だ。
建設工事、インフラメンテナンス工事、産業廃棄物収集などの環境リサイクル事業を3本柱としている。
建設工事においては、i-Constructionのトップランナーを目指しており、UVAを用いた3次元測量から施工、納品までの全プロセスを自社で行い、i-Constructionに完全対応している。
衛星データなどから機械の位置情報を特定し、機械操作の補助や制御を行うICT建機も保有しており、土工ローラー、バックホウ、ブルドーザーなど約20台におよぶ。また、UVA機器としては、INSPIRE2、PHANTOM4proを保有している。
1950年に創業した工藤建設は、2015年にはニュージーランドに関連会社「Kudo Kensetsu Limited」を設立、2019年にはクドウホールディングスを設立するなど、成長を続けている企業だ。
治山工事、道路工事、下水道工事、河川・かんがい排水工事などの建設業、自然エネルギー活用事業を行っており、特に、公共土木工事においてICT施工に力を入れている。
2016年にICT専門部署を立ち上げ、現在では測量から施工、納品まで全ての施工プロセスで自社施工できる体制を整えた。
そうした取り組みが評価され、令和2年度「みちのくi-construction奨励賞(国土交通省 東北地方整備局)」を受賞、令和4年度には東北地方整備局から「ICTサポーター」の認定を受けている。
UAVやレーザースキャナを使用した3次元起工測量、ICT建機による施工などを積極的に採用することにより、工期短縮、人員削減、安全確保、週休2日の達成、そして若手人材の継続雇用を実現している。
そうした環境のもと開設された岩手県林業技術センターでは、若手の担い手を確保すべく、林業への就業希望者などを対象とした「いわて林業アカデミー」を開講しているほか、岩手県農林水産部では、県産木材を利用した住宅の建設を促進する事業者を「いわて森の棟梁」として登録する制度を設けるなど、活性化に力が注がれている。
関連する土木・建設業の状況はというと、令和3年度建設業構造実態調査によれば、社員の年齢構成は60〜65歳が最も多く、50歳以上の割合が54%。
約10年後には現在50歳代以上の社員が一斉に退職する時期を迎えるが、その人数をカバーできるだけの若手の採用は進んでいないのが実情だ。
担い手の確保・育成、ICTなどを活用した業務の効率化などが急がれている。
本記事では、豪雪地帯という特徴も持つ岩手県の総合土木・建設業界をリードする15社を紹介する。
各社の歴史、特徴的な技術、代表的なプロジェクト、そして最新の取り組みなどを詳しく見ていこう。
1. 岩手建設工業
大正12年に設立された岩手建設工業は、100年にわたり公共事業を中心とした土木・建築事業を展開してきた。
「次世代育成支援行動計画」を策定しており、社員が家族とともに過ごす時間を多く持ちながら、働きやすい環境で能力を十分に発揮できるよう対策と取り組みを行っている。
主要な取引先としては、国土交通省東北地方整備局、農林水産省東北農政局、林野庁東北森林管理局、岩手県、北上市、日本郵政などがある。
集中豪雨等で被災した森林の再生などを行う治山工事、水源地域などにある国有林の森林整備や木材の搬出などに利用される道を整備する林道工事、盛土などで造られる人工斜面や自然斜面が崩れないよう落石防止・保護を行う法面工事など、森林の多い岩手県らしい土木工事も数多く行う。
そのほか、国道や県道といった道路工事、営農施設工事、造園・公園整備工事などを広く手がけている。
2. 小田島組
岩手県の地域を「スマートカントリー(かっこいい田舎)」とすることを目指す小田島組。
ITツールをフル活用した最先端の働き方を積極的に取り入れており、建築業の平均に比べ若者・女性のスタッフが多いのも特徴だ。
そうした姿勢や取り組みが評価され、2020年度GOOD DESIGN AWARDでは本社ビルの建築やブランディングなどで3部門を受賞している。
また、第33回日経ニューオフィス賞でも東北ニューオフィス賞を受賞。IT導入・推進、洗練された社屋やユニフォームなど、さまざまな面で話題を集めている企業だ。
特に注目したいのは、出来形規格値や実測データの整理、電子納品を行うオリジナルサービス「写真整理サービスカエレル」。
自社内で大幅な残業削減に成功したことから、同業者に提供すべく提供をスタート。工事写真にまつ関わる内業を遠隔代行してくれるもので、ミス写真、撮り忘れのチェックまでサポートしている。
また、建設技術の生産性を高めるためにICTを積極的に導入しているほか、建設機械の操作にはGPSを活用し、作業効率と精度のアップを図るといった取り組みももちろん実施している。
小田島組のi-Constructionの取り組みについて
デジコン特別インタビュー記事はこちら!
1本目:デジコン特別インタビュー記事はこちら!
「社員の半分は10代、20代」。働く楽しさを “岩手県”から発信する「小田島組」の“人の可能性を見つけ、育てる” 組織づくりとは?
2本目:
なぜ「小田島組(岩手県)」には、若手社員が集まるのか!?その理由を、“新人社員”に本音で語ってもらいました!
3. 水清建設
水清建設は、ICTを「かっこいい建設業の実践」と捉え、測量、設計・施工計画、施工、検査の工程において3次元(3D)データを活用している。
自社で活用するだけでなく、発注者や建設業者、一般の方を対象にICT現場見学会を実施し、普及活動にも取り組む企業だ。
ICTによる「新3K=価値ある・甲斐ある・希望ある仕事」を掲げており、土木部に「ICT推進チーム」を設置したり、社内報として「ICT新聞」を発行するなど、会社を挙げてICT施工を進めている。
そうした取り組みから、令和2年にはみちのくi-Construction奨励賞、令和4年度インフラDX大賞優秀賞を受賞している。
土木工事においては、ゴミとして捨てられていた素材を再生し、法面緑化やスポーツターフの施工に活用するRC工法も取り入れ、自然環境に配慮した施工にも取り組んでいる。
4. 佐々木組
1842年創業という長い歴史を持つ佐々木組は、1990年には資本金を1億円とするなど、着実に成長を続けながら岩手県の土木・建設現場を支えてきた。
一般土木から農業基盤整備、団地土地造成、市街地再開発、橋梁、トンネル、公園、上下水道、舗装など、高度な技術を必要とする大規模工事に対応している。
建築部門では、本社所在地でもある岩手県一関市の市役所本庁舎をはじめ、消防署庁舎、学校校舎、医療施設などの公共工事を幅広く手がけている。
土木・舗装部門では、太陽光発電所、トンネルなどのほか、東日本大震災の災害復旧事業も数多く担当してきた。
また、再生骨材プラントと再生アスファルト合材プラントのリサイクル施設を自社で建設しており、地域資源の再利用に日々取り組んでいる。
5. 樋下建設
「その仕事は、岩手の風景になる」をコーポレートアイデンティティとする樋下建設は、1932年の創業から総合建設業としてさまざまな工事を進めてきた。
土木事業においては、歩道橋設置工事や釜石漁港海岸災害復旧工事など、建築事業では、バスセンター整備事業や若者単身用定住促進住宅建築工事など、毎年多数の現場で確かな実績を積み重ねている。
また、一級建築士とパートナーシップを結び、一般住宅事業「アスクハウジング」を展開するほか、土地・資産活用事業で岩手県内の土地の有効活用提案を進めており、土木・建築両事業のノウハウやつながりを活かし、岩手県内の地域社会貢献に取り組んでいる企業だ。
1962年設立の菱和建設は、公共事業を中心に、土木と建築工事を実施する企業だ。
教育文化施設、福祉施設などの整備を行うほか、土木の現場では、防災上の観点も重視しながら工事計画を作成し、環境負荷の少ない都市づくりを目指している。
2024年11月現在で着工中の工事としては、岩手県が発注した上鵜飼の沢上鵜飼地区砂防堰堤築造工事、建築分野では岩手県滝沢市が発注した滝沢市本庁舎1階トイレ・外壁等改修工事などがある。
オリジナルキャラクター「りょーわんくん」を作成したり、2022年の創立60周年には、建設会社で働く女性を主人公とした記念イメージビデオを公開するなど、地域の身近な企業として独自の広報活動にも力を注いでいる。
7. 岩手マイタック
重機土木工事を中心に、道路・造成工事、河川・砂防・上下水道工事、災害復興工事などに取り組む岩手マイタックは、2003年に創業した比較的新しい企業だ。
規模は大きく、すでに220名を超える従業員を抱えており、1級土木施工管理技士19名をはじめ、1級建設機械施工管理技士、測量士などが在籍しているほか、10tダンプなどの重機も多数自社保有している。
人々の快適な暮らしを支える会社として創業したという理念に沿い、自然環境保持に最大限配慮したインフラ整備に加え、ソーラー事業、観光事業、教育訓練事業にも力を入れている。
工事にあたっては、専門スキルをもった技術者やICTの活用により、質とスピード、コストダウン、安全性を追求している。
また、国土交通省のストックヤード運営事業者として登録されており、循環型社会の実現と社会の持続的発展を念頭に置いた残土処理にあたっている。
土木・建設会社の事業として異色の観光農園事業は、過疎化や少子高齢化、一次産業の衰退、担い手不足といった地域の抱える課題に向き合い、地域活性化を図るために立ち上げられた事業だ。
盛岡市内に「まほら岩手事業所」を開設し、地域の農作物を使用した食事やお菓子の製造販売ほか、広大な土地を活かしたイベントを開催している。
8. 青紀土木
1980年に創立された青紀土木は、大規模工事を中心に、リフォーム・や解体など一般家庭の工事にも応じている。
公共工事では、道路、公園、上下水道整備、河川護岸など、暮らしの基礎を形づくるインフラの整備を行っている。
鉄道土木工事を多く請け負っていることが特徴で、JR東日本の東北新幹線・在来線、三陸鉄道のリアス線の設備補修や災害時などの緊急対応を担っている。
また、2020年には、知的障害者が描いたアート作品を重機にラッピングする「ヘラルボニー×アオキドボク バックホウアートラッピングプロジェクト」を立ち上げている。
社長自らが他所での類似プロジェクトを目にし、共生社会実現に貢献できればと考えたことがきっかけで、地域に根付いた活動にも特色がある企業だ。
9. EC南部コーポレーション
EC南部コーポレーションは、1962年に砂利採取業からスタートした企業。
現在では、土木部門、建築部門、住宅事業部門、不動産部門、運輸部門、解体・リサイクル部門と、幅広い事業領域に広がっている。
建築部門では、「正確第一主義」を掲げ、医療・福祉施設、商業施設、生産・物流施設などの施工を行っている。
土木部門では、道路、河川、橋、下水道、宅地造成、まちづくりと、地域開発すべてをフィールドとしており、中核を担う事業となっている。
発注官庁より優良工事として表彰された経験を多数持つ経験豊富な技術者たちが施工にあたっており、実績には、国道道路改良工事、一級河川改修工事などがある。
10. 朝田建設
1949年の創業以来、岩手県内のインフラ整備を支えてきた朝田建設は、2018年時点で10億円の売上高を持つ県を代表する企業のひとつだ。
北上川沿いの築堤工事、橋梁工事、道路工事、下水道工事、農林水産省や都道府県の公共事業の一環として用排水路の整備などを行うほ場整備、道路・河川維持修繕を手がけている。
今年、2024年1月にはDX戦略に関するトップメッセージを発表し、デジタル技術やロボットの活用によって、生産性や付加価値の向上に取り組んでいくことを社内外に向けて発信した。
DX推進にともない、社内にDX推進委員会を設置しており、具体的な導入システムと数値目標などを設定している。
具体的には、2024年に入札情報などの仕事の可視化を行い、2027年までには現在外注しているICT施工を内製化、デジタル人材の育成を行っていくことを戦略として打ち立てている企業だ。
11. 平野組
1946年に創業した平野組は、一関市を拠点とした総合建築業者だ。
施工事例として、災害公営住宅の新築工事、創業以来最大規模の物件として工業団地内の社員寮建設などを受注している。
土木事業においては、農道整備事業、中山間地域総合整備事業など、数多くのインフラ整備を行っている。
技術面では、乾式吹付工法、海泥緑化工法、赤外線外壁予備診断などを採用しているほか、風力・太陽光・水力発電にまつわる工事にも取り組んでいる。
12. 板谷建設
「未来の子どもたちへ誇れる仕事」をモットーとする板谷建設は、1955年創業された企業だ。
土木の現場で実績を重ねており、2024年10月には、優秀な技術・技能を持つ建設技能者を表彰する「優秀施工者国土交通(建設)大臣顕彰者」(通称:建設マスター)の1人として従業員が表彰を受けたばかりだ。
社内にはDX推進室を設置しており、「若い世代への技術力継承・人間力・現場力を高める」「つかう人の気持ちによりそい”やさしい生活環境づくり"を目指す」「時流を捉えた価値観で、お客様と地域を支える」をDX方針としている。
具体的には、デジタル基盤の整備、BIM/CIMの導入による設計モデルの可視化、仮想空間を活用したシミュレーションなどに順次取り組んでいる。
2024年8月には、そうしたDX戦略によって経済産業省「DX認定企業者」に認定されている。
13. 東野建設工業
1934年創立の東野建設工業は、建築事業(設計・施工)、土木事業(設計・施工)、設計・監理事業、リフォーム事業、宅地開発・不動産売買事業を行っている。
土木事業においては、主な施工事例として、盛岡市の中央公園高架橋工事、大山(沢尻)海岸治山工事、薮川(北の沢)林道新設工事などがある。
2024年には創業90周年を迎え、毎年恒例となっている縁日イベント「東野感謝祭」で地域への思いを伝えるなど、地元とのつながりが強い企業だ。
「自然を思いやりながら、高い技術で立ち向かう」ことを信念に、各現場の工事に取り組み続けている。
14. テラ
遠野市を拠点とするテラは、岩手新興土建株式会社として1944年に創業した企業だ。
建設工事、インフラメンテナンス工事、産業廃棄物収集などの環境リサイクル事業を3本柱としている。
建設工事においては、i-Constructionのトップランナーを目指しており、UVAを用いた3次元測量から施工、納品までの全プロセスを自社で行い、i-Constructionに完全対応している。
衛星データなどから機械の位置情報を特定し、機械操作の補助や制御を行うICT建機も保有しており、土工ローラー、バックホウ、ブルドーザーなど約20台におよぶ。また、UVA機器としては、INSPIRE2、PHANTOM4proを保有している。
15. 工藤建設
1950年に創業した工藤建設は、2015年にはニュージーランドに関連会社「Kudo Kensetsu Limited」を設立、2019年にはクドウホールディングスを設立するなど、成長を続けている企業だ。
治山工事、道路工事、下水道工事、河川・かんがい排水工事などの建設業、自然エネルギー活用事業を行っており、特に、公共土木工事においてICT施工に力を入れている。
2016年にICT専門部署を立ち上げ、現在では測量から施工、納品まで全ての施工プロセスで自社施工できる体制を整えた。
そうした取り組みが評価され、令和2年度「みちのくi-construction奨励賞(国土交通省 東北地方整備局)」を受賞、令和4年度には東北地方整備局から「ICTサポーター」の認定を受けている。
UAVやレーザースキャナを使用した3次元起工測量、ICT建機による施工などを積極的に採用することにより、工期短縮、人員削減、安全確保、週休2日の達成、そして若手人材の継続雇用を実現している。
WRITTEN by
國廣 愛佳
創業支援や地域活性を行う都内のまちづくり会社に勤務後、2019年よりフリーランス。紙面やwebサイトの編集、インタビューやコピーライティングなどの執筆を中心に、ジャンルを問わず活動。四国にある築100年の実家をどう生かすかが長年の悩み。
建設土木の未来を
ICTで変えるメディア