人工知能と分業して業務の効率化を図る。あらゆる業界・業種においてAIの活用は、もはや特別なことではなくなりつつある。就労環境改善の一助として、一度はAIソリューションの導入を検討したことのある企業もあるのではないか。
本記事では、土木・建設業で活用されているAIソリューションの一部を紹介していく。
まずは、管理の効率化に役立つAIシステム。
現場作業では、人・建機が分業しながら作業を進める。これまで、すべての作業進捗をリアルタイムに把握することは難しかったが、動体認識AI解析サービスを使えば、現場の作業進捗や安全管理を、AIに任せることができる。
工事現場に設置したカメラが、作業に従事する人や重機の動きを捉え、AIが現場で行われている工事の種類を認識・判別していく。ディープラーニング機能が複数の作業内容を学習していくので、現場の進捗状態を自動で識別することも可能だ。
動画データと認識結果はリアルタイムでクラウド上にアップされるので、いまこの瞬間の進捗状況を、どこからでも確認できる。作業進捗と使用資材の残数を照会すれば、資材管理や追加発注も効率的に行えるため、材料ロスの防止にも役立つだろう。
あらゆる動作の中から人間の動作のみを抜き出し、危険地域への侵入履歴等を、場所や時間別に表示する機能と併用すれば、工程進捗、安全管理を一元管理することも可能になる。
維持管理のプロセスでも、AI技術の進歩はめざましい。
従来、トンネル点検は目視確認と打音検査という、主に二つの方法で行われてきた。異常箇所をマーキングし、手書きのスケッチで記録するという属人的な検査方法に対し、検査を要するトンネル数は年々増加。マンパワー依存による検査の質の低下が懸念されている。
トンネルAIシステムは、熟練検査員の目と耳の代わりに、画像認識・音声認識機能を活用したシステム。
まず、トンネル内を3Dレーザースキャナーで計測。当システムのAIが、収集された点群データとCADトレースデータを照合し、異常箇所を画像と展開図データを作成する。
医療用MRIにも使われている画像解析技術により、スキャナー画像の端部に発生する陰影を自動で補正し、鮮明な画像を書き出すことができる。
目視・打音検査など高いスキルが求められる業務も、経験の浅い作業員が少人数で行える上に、見落としがちな細かな欠損部まで取り逃しなく抽出されるため、検査の質も向上した。
打音検査では、コンクリートハンマーによる打音応答波形の違いをAIが学習し、健全度を自動判定する。判定結果は点検員のスマホにリアルタイム表示されるため、異常箇所の状態や場所を目視で確認しながら作業を進めることができる。
細かな音の違いも波形で表示されるため、経験の浅い検査員でも、問題なく作業に従事することができるようになったのだ。
最後に、作業員の安全確保に役立つAIシステムを紹介する。
施工現場は工事の進行状況次第で作業環境が変化する、特殊な現場だ。土砂の運搬や埋蔵物への注意から、高さのある構造物、クレーンによる吊り荷と、工事が進むにつれ、危険箇所や注意事項が変化する。当システムは、目視やカメラでの管理が難しい、複雑な現場の安全性を守ってくれる。
監視・制御・通知機能を搭載したセンサー装置と、パトランプやブザーなどの警報装置で構成されている。
センサー装置には、3D LiDAR(レーザー距離センサー)と4つのカメラ映像(イメージセンサー)をAIが解析するモーションマッピング技術が搭載されており、単純な映像記録では見落としがちな危険行動や、危険エリアへの立ち入りをリアルタイムで検知・識別することができる。
危険を検知したら、瞬時に接続された警報装置で危険を知らせる。
ネットワークや警報装置への接続は無線のみ。複雑な配線を必要としない独立型の装置なので、作業環境や危険箇所の変化に応じて、適宜設置場所を変えることができる。
粉塵や、気温・天候の影響を受ける屋外環境に対応した堅牢性も、現場にはありがたいものだろう。
工事現場にはあらゆる危険が潜んでいる。どんなに熟練の作業員であっても、100%の注意力を保ち続けるのは難しいだろう。しかし一瞬の見落としが、重大な事故につながりかねないのが、土木・建設業の抱える共通の課題。「AIの目」が現場にもたらす安心は、大きなものになるのではないだろうか。
業界の未来には、作業員が創ることに集中できる環境が必要になってくる。作業従事者の頼もしいアシスタント役になるであろうAI技術の発展に、今後も期待したい。
本記事では、土木・建設業で活用されているAIソリューションの一部を紹介していく。
進捗状況・安全性をリアルタイム管理 。sMedio社の「動体認識AI解析サービス」
まずは、管理の効率化に役立つAIシステム。
現場作業では、人・建機が分業しながら作業を進める。これまで、すべての作業進捗をリアルタイムに把握することは難しかったが、動体認識AI解析サービスを使えば、現場の作業進捗や安全管理を、AIに任せることができる。
工事現場に設置したカメラが、作業に従事する人や重機の動きを捉え、AIが現場で行われている工事の種類を認識・判別していく。ディープラーニング機能が複数の作業内容を学習していくので、現場の進捗状態を自動で識別することも可能だ。
動画データと認識結果はリアルタイムでクラウド上にアップされるので、いまこの瞬間の進捗状況を、どこからでも確認できる。作業進捗と使用資材の残数を照会すれば、資材管理や追加発注も効率的に行えるため、材料ロスの防止にも役立つだろう。
あらゆる動作の中から人間の動作のみを抜き出し、危険地域への侵入履歴等を、場所や時間別に表示する機能と併用すれば、工程進捗、安全管理を一元管理することも可能になる。
トンネルの点検業務を効率化。応用地質社の「トンネルAIシステム」
維持管理のプロセスでも、AI技術の進歩はめざましい。
従来、トンネル点検は目視確認と打音検査という、主に二つの方法で行われてきた。異常箇所をマーキングし、手書きのスケッチで記録するという属人的な検査方法に対し、検査を要するトンネル数は年々増加。マンパワー依存による検査の質の低下が懸念されている。
トンネルAIシステムは、熟練検査員の目と耳の代わりに、画像認識・音声認識機能を活用したシステム。
まず、トンネル内を3Dレーザースキャナーで計測。当システムのAIが、収集された点群データとCADトレースデータを照合し、異常箇所を画像と展開図データを作成する。
医療用MRIにも使われている画像解析技術により、スキャナー画像の端部に発生する陰影を自動で補正し、鮮明な画像を書き出すことができる。
目視・打音検査など高いスキルが求められる業務も、経験の浅い作業員が少人数で行える上に、見落としがちな細かな欠損部まで取り逃しなく抽出されるため、検査の質も向上した。
打音検査では、コンクリートハンマーによる打音応答波形の違いをAIが学習し、健全度を自動判定する。判定結果は点検員のスマホにリアルタイム表示されるため、異常箇所の状態や場所を目視で確認しながら作業を進めることができる。
細かな音の違いも波形で表示されるため、経験の浅い検査員でも、問題なく作業に従事することができるようになったのだ。
作業員の安全を守る。OKI社の侵入監視システム「Motion Alert」
最後に、作業員の安全確保に役立つAIシステムを紹介する。
施工現場は工事の進行状況次第で作業環境が変化する、特殊な現場だ。土砂の運搬や埋蔵物への注意から、高さのある構造物、クレーンによる吊り荷と、工事が進むにつれ、危険箇所や注意事項が変化する。当システムは、目視やカメラでの管理が難しい、複雑な現場の安全性を守ってくれる。
監視・制御・通知機能を搭載したセンサー装置と、パトランプやブザーなどの警報装置で構成されている。
センサー装置には、3D LiDAR(レーザー距離センサー)と4つのカメラ映像(イメージセンサー)をAIが解析するモーションマッピング技術が搭載されており、単純な映像記録では見落としがちな危険行動や、危険エリアへの立ち入りをリアルタイムで検知・識別することができる。
危険を検知したら、瞬時に接続された警報装置で危険を知らせる。
ネットワークや警報装置への接続は無線のみ。複雑な配線を必要としない独立型の装置なので、作業環境や危険箇所の変化に応じて、適宜設置場所を変えることができる。
粉塵や、気温・天候の影響を受ける屋外環境に対応した堅牢性も、現場にはありがたいものだろう。
人の目が届かなくても、AIなら取り逃しゼロ。
工事現場にはあらゆる危険が潜んでいる。どんなに熟練の作業員であっても、100%の注意力を保ち続けるのは難しいだろう。しかし一瞬の見落としが、重大な事故につながりかねないのが、土木・建設業の抱える共通の課題。「AIの目」が現場にもたらす安心は、大きなものになるのではないだろうか。
業界の未来には、作業員が創ることに集中できる環境が必要になってくる。作業従事者の頼もしいアシスタント役になるであろうAI技術の発展に、今後も期待したい。
WRITTEN by
高橋 奈那
神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。
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