2021年9月29日(水)〜10月1日(金)の3日間、「建設DX展 - 関西展 -」がインテックス大阪で初開催された。
ITベンチャーや建機メーカー、通信会社などが集まり、BIM/CIM、ロボティクス、AI、VR、工程管理システム、点群データなど、建設DXの最新技術を搭載した1,000を超える製品・サービスが出展。新型コロナ感染症対策が万全に行われる中、ゼネコン・サブコン・官公庁・自治体などの建設業界関係者が1万人以上訪れ、商談が交わされた。
この「建設DX展」では、出展企業である株式会社オプティム ゼネラルマネージャー坂田泰章氏による「技術・製品セミナー」も開催。2021年5月にリリースされたばかりの3次元測量プロダクト「OPTiM Geo Scan」の新たな機能が本展示会で初めて発表された。本記事では、そのセミナー(9月29日)の模様をお届けする。
セミナー会場に多くの人が集まる中、株式会社オプティムのゼネラルマネージャー 坂田泰章氏が登壇し、「OPTiM Geo Scan」の紹介がスタートした。
「OPTiM Geo Scan」は、LiDAR(光を用いたセンサー技術)を利用し、スマートフォンやタブレットを使いながら高精度な3次元測量ができるアプリケーションだ。未経験でも簡単に操作でき、サブスクリプション制で導入コストも抑えられるため、中小規模の施工現場でも活用しやすいのが特長。九州の大手ゼネコン・松尾建設とタッグを組み、約2年の開発期間を経て、2021年の5月にリリースされた。
坂田氏はプロジェクターに、iPhoneの画面内にある「OPTiM Geo Scan」のアプリ画面を投映し、リアルタイムに操作をしながら解説。
まずは「衛星測位モード」で、アプリの「測量開始」ボタンを押すとLiDARが起動し、iPhoneの画面越しに、測量対象物が青く塗られる。
その状態で測量したい範囲をカメラで映しながら歩き、GNSSレシーバーを置いて画面上をタップ。標定点をいくつか追加していく。
最後に、検証点をタップして定める。ものの数分で、3次元測量データをとることができた。OPTiM Geo Scanの具体的な使い方について、詳しくはデジコンの過去の記事をご覧いただきたい。
そして今回のセミナーでは、「OPTiM Geo Scan」が非GNSS環境下でも計測が可能になることが、初めて発表された。
OPTiM Geo Scanではこれまで、座標データの取得にGNSSレシーバーを使っており、屋内やトンネルの中などの衛星電波が入らない場所では、測量ができないという弱点があった。
しかし、株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン(以下、トプコン)のトータルステーション「杭ナビ」と連携することにより、非GNSS環境下でも計測が可能になるということだ。
杭ナビは、誰でも簡単に一人で素早く測量ができるレイアウトナビゲーターで、杭ナビを設置することで、衛星電波が入らない現場でも問題なくスムーズに測量できるという。
「非常に優れたユーザーインターフェース(UI)を持つトプコンさんの杭ナビと連携することで、クラウド上にアップした座標をOPTiM Geo Scanが読み込み、屋内でもどこでも3次元測量ができます」と、坂田氏は語る。
そして実機を使いながら、新機能(非GNSS環境下での計測対応)の使い方を具体的に解説。まずは、杭ナビで事前測量を行う。杭ナビはプリズムを置けば簡単に自動測量が可能だ。その上でiPhoneのアプリをタップすれば、座標がクラウド上にアップされる。
次にOPTiM Geo Scanアプリを起動。「測量開始」ボタンを押せば、測量が始まる。標定点とする場所をタップすると、事前に杭ナビで計測した値を選ぶことができる。そして衛星測位時と同じように、歩きながらタップして標定点を追加していき、最後に一点の検証点を定めれば3次元データが取得できる。
3次元測量がここまで簡単に行えるにも関わらず、コストはリーズナブル。年間プランでは月換算で81,000円(税抜)のランニングコストで使い放題。初期費用もiPhoneやGNSSレシーバーなどを含めて、20万円程度(※トータルステーション「杭ナビ」は含まない)だという。
「今までは機材の高額な費用や技術者不足などの課題があり、3次元測量の導入がなかなか進みませんでした。私たちとしては、コストや技術などの敷居を限りなく下げたうえで、さまざまな方の協力を得ながら、3次元測量や3次元データの活用をすべての現場に普及していきたい。日本全国どこの現場でも3次元データが活用されて生産性が上がる建設業界の未来を皆さんとつくりたいと思っています」と坂田氏は熱意を込めた。
新機能について一通り説明を終えた後は、参加者が自由に質問できる時間も設けられた。次々と質問が飛び交い、「OPTiM Geo Scan」の関心の高さを伺わせた。会場で寄せられた質問と回答を、いくつかピックアップしておこう。
ーー 雨天でも測量できますか?
坂田:どしゃぶりの雨の際はデータをとったときに雨粒がかかってノイズのようになるので、あまりおすすめしません。小雨ぐらいだったら、ちょっと風がふいていようが大丈夫です。
ーー 植生などがあった時でも、グラウンドデータはとれるのでしょうか。
坂田:今までのレーザー・ドローン測量では植生などがあった時にそこのグラウンドデータがとれているかわからないという課題があり、それを解決するために、今のユーザーインターフェイスをご用意しました。例えば植生があるときは、「メッシュモード」から「点群モード」に切り替え、じっくりスキャンしていくと、しっかりと3次元点群データをとれることが確認できます。
一方で、ソリッドな土工時の面などは「メッシュモード」でサッとスキャンする。サッとスキャンしたところは点群データの密度が薄く、一方で、じっくりスキャンしたところは点群データの密度が濃くなります。固定式のレーザー・ドローン測量は一定のスピードや定間隔でとるため、状況の変化に対応できないですが、移動式なら自分の主観で調整しながら測量できます。
ーー どのぐらいの距離や速度で、どう測量すれば、綺麗に点群データとれるかが知りたいです。対象物の距離やスキャンするスピードも点群の数に影響すると思うのですが。
坂田:点群の密度に関しては、普通に歩きながらスキャンすると10cm×10cm程の角に20点ぐらいの点群が入り、じっくりスキャンすると10cm×10cm程の角に50〜100点ぐらいの点群が入ります。国交省の要領には10cm×10cmに1点あればいいと記載があるので、精度に関しては、問題なくクリアしています。
移動式レーザー測量機では、自分の位置や角度を把握しながら三次元データをローカル座標形につくっていくので、動けば動くほどいろいろな方向にひずみが広がってしまいます。OPTiM Geo Scanでは歩いて約5m〜10mの間隔で標定点を置いて誤差を無くしていくことを繰り返すため、3次元データの精度が上がります。激しく動かさず、ゆっくりスキャンしていけば、難なく3次元データが綺麗にとれます。
ーー「GNSSレシーバー」と「杭ナビ」では測量精度は変わりますか?
坂田:OPTiM Geo Scanで使っているGNSSレシーバーはコストの割に精度が非常に高く、メーカー側も三脚に据えて使えば誤差1cm以内で測量できると言っています。でも、そんなガチガチな運用は現場に適さないため、簡単にポンと置いて使っています。そのため、2cmぐらいの誤差が出ます。一方で杭ナビは、直径200~300mほどの範囲内で誤差は1cm未満です。評定点をタップしていけば、杭ナビの方が精度が高い傾向にあります。
ーー技術がすばらしいことも、中小規模の現場に普及したいという気持ちも十分わかります。でも、この安い価格帯でオプティム の利益は出るのでしょうか?
坂田:ありがとうございます。世界的にも「定額で使い放題」というサブスクリプションのビジネスモデルがどんどん出てきています。こういったソフトウェアは多くの方に使っていただくことで、勝機は十分にあると考えています。
しかし、それ以上にパートナーである松尾建設の代表に最初に言われた「すべての現場に使えるようにしてください」という言葉が大きいですね。それを実現するために「OPTiM Geo Scan」を世の中にリリースしたら、多方面からたくさんの期待のお声をいただいている。皆さんのそんな熱量に触れ、やり続けたいという気持ちですね
【編集部 後記】
非GNSS環境下に対応したOPTiM Geo Scan。この驚きの新ニュースから始まり、活発な質疑応答で締め括られた本セミナー。今回の新機能搭載により「誰でも簡単に」測量ができるのはもちろん、さらに、「どこでも」測量ができるようにと進化した「OPTiM Geo Scan」。現在では、建設会社はもちろん、総合建設コンサルタントや測量会社、さらには、ハウスメーカーやインフラ事業者、そして官公庁の災害復旧部門など、多方面から引き合いがあり、ますます注目が集まっている。
ITベンチャーや建機メーカー、通信会社などが集まり、BIM/CIM、ロボティクス、AI、VR、工程管理システム、点群データなど、建設DXの最新技術を搭載した1,000を超える製品・サービスが出展。新型コロナ感染症対策が万全に行われる中、ゼネコン・サブコン・官公庁・自治体などの建設業界関係者が1万人以上訪れ、商談が交わされた。
この「建設DX展」では、出展企業である株式会社オプティム ゼネラルマネージャー坂田泰章氏による「技術・製品セミナー」も開催。2021年5月にリリースされたばかりの3次元測量プロダクト「OPTiM Geo Scan」の新たな機能が本展示会で初めて発表された。本記事では、そのセミナー(9月29日)の模様をお届けする。
実機を用いながら「OPTiM Geo Scan」をプレゼンテーション
セミナー会場に多くの人が集まる中、株式会社オプティムのゼネラルマネージャー 坂田泰章氏が登壇し、「OPTiM Geo Scan」の紹介がスタートした。
「OPTiM Geo Scan」は、LiDAR(光を用いたセンサー技術)を利用し、スマートフォンやタブレットを使いながら高精度な3次元測量ができるアプリケーションだ。未経験でも簡単に操作でき、サブスクリプション制で導入コストも抑えられるため、中小規模の施工現場でも活用しやすいのが特長。九州の大手ゼネコン・松尾建設とタッグを組み、約2年の開発期間を経て、2021年の5月にリリースされた。
坂田氏はプロジェクターに、iPhoneの画面内にある「OPTiM Geo Scan」のアプリ画面を投映し、リアルタイムに操作をしながら解説。
まずは「衛星測位モード」で、アプリの「測量開始」ボタンを押すとLiDARが起動し、iPhoneの画面越しに、測量対象物が青く塗られる。
その状態で測量したい範囲をカメラで映しながら歩き、GNSSレシーバーを置いて画面上をタップ。標定点をいくつか追加していく。
最後に、検証点をタップして定める。ものの数分で、3次元測量データをとることができた。OPTiM Geo Scanの具体的な使い方について、詳しくはデジコンの過去の記事をご覧いただきたい。
OPTiM Geo Scanに新機能が搭載!非GNSS環境下での計測が可能に
そして今回のセミナーでは、「OPTiM Geo Scan」が非GNSS環境下でも計測が可能になることが、初めて発表された。
OPTiM Geo Scanではこれまで、座標データの取得にGNSSレシーバーを使っており、屋内やトンネルの中などの衛星電波が入らない場所では、測量ができないという弱点があった。
しかし、株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン(以下、トプコン)のトータルステーション「杭ナビ」と連携することにより、非GNSS環境下でも計測が可能になるということだ。
杭ナビは、誰でも簡単に一人で素早く測量ができるレイアウトナビゲーターで、杭ナビを設置することで、衛星電波が入らない現場でも問題なくスムーズに測量できるという。
「非常に優れたユーザーインターフェース(UI)を持つトプコンさんの杭ナビと連携することで、クラウド上にアップした座標をOPTiM Geo Scanが読み込み、屋内でもどこでも3次元測量ができます」と、坂田氏は語る。
そして実機を使いながら、新機能(非GNSS環境下での計測対応)の使い方を具体的に解説。まずは、杭ナビで事前測量を行う。杭ナビはプリズムを置けば簡単に自動測量が可能だ。その上でiPhoneのアプリをタップすれば、座標がクラウド上にアップされる。
次にOPTiM Geo Scanアプリを起動。「測量開始」ボタンを押せば、測量が始まる。標定点とする場所をタップすると、事前に杭ナビで計測した値を選ぶことができる。そして衛星測位時と同じように、歩きながらタップして標定点を追加していき、最後に一点の検証点を定めれば3次元データが取得できる。
3次元測量がここまで簡単に行えるにも関わらず、コストはリーズナブル。年間プランでは月換算で81,000円(税抜)のランニングコストで使い放題。初期費用もiPhoneやGNSSレシーバーなどを含めて、20万円程度(※トータルステーション「杭ナビ」は含まない)だという。
「今までは機材の高額な費用や技術者不足などの課題があり、3次元測量の導入がなかなか進みませんでした。私たちとしては、コストや技術などの敷居を限りなく下げたうえで、さまざまな方の協力を得ながら、3次元測量や3次元データの活用をすべての現場に普及していきたい。日本全国どこの現場でも3次元データが活用されて生産性が上がる建設業界の未来を皆さんとつくりたいと思っています」と坂田氏は熱意を込めた。
使い方のコツや精度は?質疑応答も活発に
新機能について一通り説明を終えた後は、参加者が自由に質問できる時間も設けられた。次々と質問が飛び交い、「OPTiM Geo Scan」の関心の高さを伺わせた。会場で寄せられた質問と回答を、いくつかピックアップしておこう。
ーー 雨天でも測量できますか?
坂田:どしゃぶりの雨の際はデータをとったときに雨粒がかかってノイズのようになるので、あまりおすすめしません。小雨ぐらいだったら、ちょっと風がふいていようが大丈夫です。
ーー 植生などがあった時でも、グラウンドデータはとれるのでしょうか。
坂田:今までのレーザー・ドローン測量では植生などがあった時にそこのグラウンドデータがとれているかわからないという課題があり、それを解決するために、今のユーザーインターフェイスをご用意しました。例えば植生があるときは、「メッシュモード」から「点群モード」に切り替え、じっくりスキャンしていくと、しっかりと3次元点群データをとれることが確認できます。
一方で、ソリッドな土工時の面などは「メッシュモード」でサッとスキャンする。サッとスキャンしたところは点群データの密度が薄く、一方で、じっくりスキャンしたところは点群データの密度が濃くなります。固定式のレーザー・ドローン測量は一定のスピードや定間隔でとるため、状況の変化に対応できないですが、移動式なら自分の主観で調整しながら測量できます。
ーー どのぐらいの距離や速度で、どう測量すれば、綺麗に点群データとれるかが知りたいです。対象物の距離やスキャンするスピードも点群の数に影響すると思うのですが。
坂田:点群の密度に関しては、普通に歩きながらスキャンすると10cm×10cm程の角に20点ぐらいの点群が入り、じっくりスキャンすると10cm×10cm程の角に50〜100点ぐらいの点群が入ります。国交省の要領には10cm×10cmに1点あればいいと記載があるので、精度に関しては、問題なくクリアしています。
移動式レーザー測量機では、自分の位置や角度を把握しながら三次元データをローカル座標形につくっていくので、動けば動くほどいろいろな方向にひずみが広がってしまいます。OPTiM Geo Scanでは歩いて約5m〜10mの間隔で標定点を置いて誤差を無くしていくことを繰り返すため、3次元データの精度が上がります。激しく動かさず、ゆっくりスキャンしていけば、難なく3次元データが綺麗にとれます。
ーー「GNSSレシーバー」と「杭ナビ」では測量精度は変わりますか?
坂田:OPTiM Geo Scanで使っているGNSSレシーバーはコストの割に精度が非常に高く、メーカー側も三脚に据えて使えば誤差1cm以内で測量できると言っています。でも、そんなガチガチな運用は現場に適さないため、簡単にポンと置いて使っています。そのため、2cmぐらいの誤差が出ます。一方で杭ナビは、直径200~300mほどの範囲内で誤差は1cm未満です。評定点をタップしていけば、杭ナビの方が精度が高い傾向にあります。
ーー技術がすばらしいことも、中小規模の現場に普及したいという気持ちも十分わかります。でも、この安い価格帯でオプティム の利益は出るのでしょうか?
坂田:ありがとうございます。世界的にも「定額で使い放題」というサブスクリプションのビジネスモデルがどんどん出てきています。こういったソフトウェアは多くの方に使っていただくことで、勝機は十分にあると考えています。
しかし、それ以上にパートナーである松尾建設の代表に最初に言われた「すべての現場に使えるようにしてください」という言葉が大きいですね。それを実現するために「OPTiM Geo Scan」を世の中にリリースしたら、多方面からたくさんの期待のお声をいただいている。皆さんのそんな熱量に触れ、やり続けたいという気持ちですね
【編集部 後記】
非GNSS環境下に対応したOPTiM Geo Scan。この驚きの新ニュースから始まり、活発な質疑応答で締め括られた本セミナー。今回の新機能搭載により「誰でも簡単に」測量ができるのはもちろん、さらに、「どこでも」測量ができるようにと進化した「OPTiM Geo Scan」。現在では、建設会社はもちろん、総合建設コンサルタントや測量会社、さらには、ハウスメーカーやインフラ事業者、そして官公庁の災害復旧部門など、多方面から引き合いがあり、ますます注目が集まっている。
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