2021年9月、株式会社オプティムとスキャン・エックス株式会社は、高精度3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」と、3次元点群データをクラウド上で処理・解析・共有することができる「スキャン・エックス」とのサービス連携を開始した。
その発表と合わせて、両社合同の特別WEBセミナーが2021年9月15日に開催された。本記事では、そのWEBセミナーの模様を紹介していく。
モデレーターはオプティム ゼネラルマネージャー坂田 泰章氏。そして、スキャン・エックス代表の宮谷 聡氏。それぞれの製品特徴や、連携により得られるメリットなどが紹介された。
2016年に国交省が旗振りのもと「i-Construction」が動きはじめ、2021年の現在に到るまでに、さまざまなICT機器や新技術を活用したソリューションがリリースされてきた。しかし小規模現場においては、ICTの導入はまだまだ普及していないと、坂田氏は危機感を込めて開口一番に語った。
「全体の土工事件数の10%にも満たない大規模現場がどれほど効率化されたとしても、大半を占める小規模現場においてICTの活用が進まなければ、全体の生産性はいつまで経っても向上しないでしょう。」(坂田氏)
「OPTiM Geo Scanは、そんな現場課題を起点に開発が始まったプロダクトです。九州エリアに本社を構える松尾建設様の全面協力のもと、およそ8ヶ月の時間を費やし、製品のコンセプトを考えていきました。オプティムの技術をどう活用するか?ではなく、どうすれば現場の課題を解決できるか?という視点に立ち、小規模現場にマッチするプロダクト像を探っていきました」。(坂田氏)
2021年5月のリリース以降、“地に足のついた測量革命”“使えるソリューション”“として、大きな注目を集めているが、その理由のひとつに、イニシャルコストが徹底的に抑えられて、しかも導入したその日から、誰でも簡単に測量ができる点にあるだろう。
「OPTiM Geo Scanを使用するために必要なデバイスは、iPhone (対応機種:iPhone 13 Pro/12 Pro / 13 Pro Max/12 Pro Max / iPad Pro)とGNSSレシーバーのみ。初期費用はおよそ20万円程度まで抑えられます。数百万を投じて測量機器を購入しなくても、手軽に3次元測量をはじめることができます。また測量前の事前作業や煩わしい設定も極限まで減らしているので、スピーディーに測量を開始できるのも特徴なんです。」(坂田氏)
レーザースキャナー、トータルステーションを使った測量には事前準備が必要なうえに座標値の記録や、パソコンを使った点群の解析作業など、さまざま付帯作業が発生するため、点群をモデル化するまでに、まる一日かかってしまうことも珍しくない。しかし、「OPTiM Geo Scan」を使えば、大幅な時間短縮が可能になる。
「一般的な3次元測量機器は、複雑な操作や専門的なスキルを要するものが多く、新たな機器を導入するたびに、技術習得のために多くの時間を割く必要があった。また、測量ができたとしても、3次元点群のモデル化には専用ソフトを使うため、別途トレーニングが必要です。しかし、今すぐにでも生産性を上げたいと考える中小事業者さんでは、業務の合間に研修やトレーニング時間を捻出すること自体が難しいでしょう。」(坂田氏)
スマートフォンやタブレットという誰でも馴染みがあるデバイスで操作できる「OPTiM Geo Scan」において、専門的な知識もスキルも必要ないという訳だ。坂田氏の解説が終わると、オプティムの八尋新平氏(ビジネス統括本部 Industrial DX事業部 デジタルコンストラクションユニット)と中継が繋がった。屋外にいる八尋氏の手にはiPhone12Pro とGNSSレシーバーが。「OPTiM Geo Scan」を使って、3次元測量の様子を実際にデモンストレーションしてくれた。
八尋氏は2021年度入社の新人社員だが、中継元の坂田氏のコメントに答えながら、軽快に3次元測量をこなしていたのが印象的だった。側から見るとスマホで動画を撮っているだけのように映る。しかし、一連の動作が終わると、八尋氏のiPhone画面には、高精細な3次元点群データが、確かに取得されていた。
「OPTiM Geo Scan」の操作方法については、測量素人であるデジコン編集部が実際に体験したレビュー記事があるので、こちらをぜひご覧いただきたい。
八尋氏との中継が終わると、スキャン・エックス代表の宮谷聡氏のパートに移行。今回の目玉である、「OPTiM Geo Scan」と「スキャン・エックス」連携の詳細が語られた。
「「OPTiM Geo Scan」と「スキャン・エックス」の連携により、測量から3次元データの作成・編集後の施主とのデータ共有まで、「OPTiM Geo Scan」のアカウントのみを利用するだけで手軽に操作が行えます。面倒なデータ移行はなく、従来の機材と比較し学習コストも少なく、誰でも簡単に測量から得たデータの距離や面積の計算、土量計測などの必要なデータを利用していただくことができます。」(宮谷氏)
ちなみに、気になる料金体系だが、2つのプランから選択できるという。
続けて宮谷氏は、「OPTiM Geo Scan-スキャン・エックス連携プレミアムプラン」と通常の「スキャン・エックス」をオプションで利用する場合の差異についても解説。
「「OPTiM Geo Scan-スキャン・エックス連携プレミアムプラン」では、同一IDで、3次元データの作成から、データ共有、編集が可能で、利便性が非常に高くなっています。さらに、3次元設計データのインポート機能や、設計データとの差分をヒートマップで表示できるなど、高度な出力が可能な機能を今後リリース予定です。」(宮谷氏)
ちなみに、「スキャン・エックス」について簡単に触れておくと、オンライン上で点群の処理・加工・解析ができるクラウドサービス。高度なクラス分類機能によってノイズ除去、地表面抽出を自動処理し、3D点群データを素早く解析できる。
等高線やTIN※を簡単に生成、メッシュ化、設計データと比較、結果の共有をオンラインで素早く実行可能なプラットフォーム。機械学習も活用したさまざまな手法により、これまで人手をかけていたタスクを自動化し、時間を節約、誰でも均一な結果を生み出せる。インターネットとブラウザだけで、複数現場のデータを複数ユーザーで同時に処理でき、作業時間の効率化も図れる。しかもNETIS登録のソリューションだ。
今回の特別WEBセミナーでは、質疑応答の時間が設けられた。Zoomのチャット上では、様々な質問が寄せられ、オプティム 坂田氏とスキャン・エックスの宮谷氏が回答。その中から一部を紹介する。
OPTiM Geo Scanはいま、この瞬間も、現場の声を反映したアップデートが重ねられている。現場課題の克服からスタートしたOPTiM Geo Scanは、これからも現場の声に耳を傾けることで、“地に足のついた測量革命プロダクト”として大きく成長していくことだろう。
「すべての建設現場で三次元データを活用することで、効率化する世界をつくっていきたい。そのためにも、今後ともみなさまから意見を頂戴し、一緒に製品づくりをしていきたい」という坂田氏の言葉で今回の特別WEBウェビナーは幕を閉じた。
その発表と合わせて、両社合同の特別WEBセミナーが2021年9月15日に開催された。本記事では、そのWEBセミナーの模様を紹介していく。
モデレーターはオプティム ゼネラルマネージャー坂田 泰章氏。そして、スキャン・エックス代表の宮谷 聡氏。それぞれの製品特徴や、連携により得られるメリットなどが紹介された。
「OPTiM Geo Scan」の製品特長を紹介
2016年に国交省が旗振りのもと「i-Construction」が動きはじめ、2021年の現在に到るまでに、さまざまなICT機器や新技術を活用したソリューションがリリースされてきた。しかし小規模現場においては、ICTの導入はまだまだ普及していないと、坂田氏は危機感を込めて開口一番に語った。
「全体の土工事件数の10%にも満たない大規模現場がどれほど効率化されたとしても、大半を占める小規模現場においてICTの活用が進まなければ、全体の生産性はいつまで経っても向上しないでしょう。」(坂田氏)
「OPTiM Geo Scanは、そんな現場課題を起点に開発が始まったプロダクトです。九州エリアに本社を構える松尾建設様の全面協力のもと、およそ8ヶ月の時間を費やし、製品のコンセプトを考えていきました。オプティムの技術をどう活用するか?ではなく、どうすれば現場の課題を解決できるか?という視点に立ち、小規模現場にマッチするプロダクト像を探っていきました」。(坂田氏)
2021年5月のリリース以降、“地に足のついた測量革命”“使えるソリューション”“として、大きな注目を集めているが、その理由のひとつに、イニシャルコストが徹底的に抑えられて、しかも導入したその日から、誰でも簡単に測量ができる点にあるだろう。
「OPTiM Geo Scanを使用するために必要なデバイスは、iPhone (対応機種:iPhone 13 Pro/12 Pro / 13 Pro Max/12 Pro Max / iPad Pro)とGNSSレシーバーのみ。初期費用はおよそ20万円程度まで抑えられます。数百万を投じて測量機器を購入しなくても、手軽に3次元測量をはじめることができます。また測量前の事前作業や煩わしい設定も極限まで減らしているので、スピーディーに測量を開始できるのも特徴なんです。」(坂田氏)
レーザースキャナー、トータルステーションを使った測量には事前準備が必要なうえに座標値の記録や、パソコンを使った点群の解析作業など、さまざま付帯作業が発生するため、点群をモデル化するまでに、まる一日かかってしまうことも珍しくない。しかし、「OPTiM Geo Scan」を使えば、大幅な時間短縮が可能になる。
「一般的な3次元測量機器は、複雑な操作や専門的なスキルを要するものが多く、新たな機器を導入するたびに、技術習得のために多くの時間を割く必要があった。また、測量ができたとしても、3次元点群のモデル化には専用ソフトを使うため、別途トレーニングが必要です。しかし、今すぐにでも生産性を上げたいと考える中小事業者さんでは、業務の合間に研修やトレーニング時間を捻出すること自体が難しいでしょう。」(坂田氏)
スマートフォンやタブレットという誰でも馴染みがあるデバイスで操作できる「OPTiM Geo Scan」において、専門的な知識もスキルも必要ないという訳だ。坂田氏の解説が終わると、オプティムの八尋新平氏(ビジネス統括本部 Industrial DX事業部 デジタルコンストラクションユニット)と中継が繋がった。屋外にいる八尋氏の手にはiPhone12Pro とGNSSレシーバーが。「OPTiM Geo Scan」を使って、3次元測量の様子を実際にデモンストレーションしてくれた。
八尋氏は2021年度入社の新人社員だが、中継元の坂田氏のコメントに答えながら、軽快に3次元測量をこなしていたのが印象的だった。側から見るとスマホで動画を撮っているだけのように映る。しかし、一連の動作が終わると、八尋氏のiPhone画面には、高精細な3次元点群データが、確かに取得されていた。
「OPTiM Geo Scan」の操作方法については、測量素人であるデジコン編集部が実際に体験したレビュー記事があるので、こちらをぜひご覧いただきたい。
スキャン・エックスとの連携により、点群解析&処理が、よりスピーディかつカンタンに実現
八尋氏との中継が終わると、スキャン・エックス代表の宮谷聡氏のパートに移行。今回の目玉である、「OPTiM Geo Scan」と「スキャン・エックス」連携の詳細が語られた。
「「OPTiM Geo Scan」と「スキャン・エックス」の連携により、測量から3次元データの作成・編集後の施主とのデータ共有まで、「OPTiM Geo Scan」のアカウントのみを利用するだけで手軽に操作が行えます。面倒なデータ移行はなく、従来の機材と比較し学習コストも少なく、誰でも簡単に測量から得たデータの距離や面積の計算、土量計測などの必要なデータを利用していただくことができます。」(宮谷氏)
ちなみに、気になる料金体系だが、2つのプランから選択できるという。
- 【スキャン・エックス オプション利用料】
40,909円/月(税抜) | 月額換算37,500円(税抜)450,000円/年(税抜)】 - 【OPTiM Geo Scan-スキャン・エックス連携プレミアムプラン】
150,109円/月(税抜)| 月額換算118,500円(税抜)1,422,000円/年(税抜)
続けて宮谷氏は、「OPTiM Geo Scan-スキャン・エックス連携プレミアムプラン」と通常の「スキャン・エックス」をオプションで利用する場合の差異についても解説。
「「OPTiM Geo Scan-スキャン・エックス連携プレミアムプラン」では、同一IDで、3次元データの作成から、データ共有、編集が可能で、利便性が非常に高くなっています。さらに、3次元設計データのインポート機能や、設計データとの差分をヒートマップで表示できるなど、高度な出力が可能な機能を今後リリース予定です。」(宮谷氏)
ちなみに、「スキャン・エックス」について簡単に触れておくと、オンライン上で点群の処理・加工・解析ができるクラウドサービス。高度なクラス分類機能によってノイズ除去、地表面抽出を自動処理し、3D点群データを素早く解析できる。
等高線やTIN※を簡単に生成、メッシュ化、設計データと比較、結果の共有をオンラインで素早く実行可能なプラットフォーム。機械学習も活用したさまざまな手法により、これまで人手をかけていたタスクを自動化し、時間を節約、誰でも均一な結果を生み出せる。インターネットとブラウザだけで、複数現場のデータを複数ユーザーで同時に処理でき、作業時間の効率化も図れる。しかもNETIS登録のソリューションだ。
「OPTiM Geo Scan」と「スキャン・エックス」連携への関心の高さが伺えた質疑応答タイム
今回の特別WEBセミナーでは、質疑応答の時間が設けられた。Zoomのチャット上では、様々な質問が寄せられ、オプティム 坂田氏とスキャン・エックスの宮谷氏が回答。その中から一部を紹介する。
Q. 一現場あたりの計測可能面積と、一度にスキャンできる点群はどのくらいか?
坂田:およそ10,000㎡の広範囲でも計測は可能です。点群は、ワンショット・ワンフレームで約2,000点生成されます。ただ、そもそもAppleが想定しているLiDERのターゲットが、ゲームや家具配置シミュレーター等を目的とするライトユーザーであるため、点群の容量が重くなりアプリがクラッシュすることを避けるため、iPhone側で自動的に点群を間引く処理がされます。間引かれた状態の点群数は、10cm×10cmに20点ほど。歩行速度を遅くすれば、50点、100点と増えていきますが、それでも適度な密度を確保して点群をとることができます。10,000㎡を100回繰り返し測量しても、問題はないでしょう。
Q. ひとつの現場を複数のiPhoneで分担して計測し、マージすることは可能か。
オプティム 坂田:技術的には可能です。しかし現在、OPTiM Geo Scanでは〈デバイス一台につき一つのライセンス〉というライセンス形式を採用しているため、別途対応が必要になります。
Q. 精度を確保できる照射角度の適用範囲について。
坂田: iPhone(iPad)を激しく揺らすなど、ジャイロセンサーと加速度センサーを動かすほど誤差が蓄積されていくため、安定した画角を維持することさえ意識すれば、角度についてそこまで神経質になる必要はありません。傾斜地でも約5m先まで飛ばせるので、歩行範囲内であれば、急斜面上でも工夫次第で測量は可能です。たとえば、法肩(のりかた)から見下ろすように点群をとり、法尻(のりじり)から見上げる形で撮るなどの方法です。
Q. GNSSレシーバーの底面はどのような形状になっているか。
坂田:底面にはネジ穴があり、三脚に固定することもできます。
Q. 測量時、iPhoneをジンバルに設置して、手ブレ対策をしたほうが精度は安定するか?
坂田:試験段階で試したが、そこまで劇的な改善はありませんでした。ただ、安定した歩行が難しい急斜面など、測量時の手ブレが想定される現場では、ジンバルは効果的かもしれません。
Q. 点群データをCADに変換することは可能ですか?
宮谷:スキャン・エックス上で、点群から3D TINデータを生成することが可能です。また、断面図の生成もでき、シェーブファイルやDXF等でエクスポートすることができます。
OPTiM Geo Scanはいま、この瞬間も、現場の声を反映したアップデートが重ねられている。現場課題の克服からスタートしたOPTiM Geo Scanは、これからも現場の声に耳を傾けることで、“地に足のついた測量革命プロダクト”として大きく成長していくことだろう。
「すべての建設現場で三次元データを活用することで、効率化する世界をつくっていきたい。そのためにも、今後ともみなさまから意見を頂戴し、一緒に製品づくりをしていきたい」という坂田氏の言葉で今回の特別WEBウェビナーは幕を閉じた。
WRITTEN by
高橋 奈那
神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。
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