行政・政策
平田 佳子 2021.11.15

2022年ドローン“レベル4”解禁へ。 航空法改正で建設業界への影響は?


有人エリアで目視外飛行可能な“レベル4”飛行が解禁


人が搭乗せずに空撮して測量や点検ができるなど、今や土木・建設業界に欠かせないドローン(無人航空機)。これまで人がしてきた作業をドローンが担うことで、建設現場の安全性向上や省人化、作業効率化に寄与してきた。

しかし、航空法で飛行範囲が定められており、現行では人の目が届かない範囲でドローンを飛ばせるのは「無人地帯」のみであるため、活用の拡大に限界も。ドローンの技術が進み、ニーズが高まる中、航空法の整備が求められていた。

shutterstockより

そんな中で、2021年6月に航空法の改正案が公布。2022年12月を目処に、有人エリアにおいて人の目の届かない範囲でドローンを飛ばせる“レベル4飛行”の実現をめざすという。

そもそもドローンの飛行レベルは、国の「空の産業革命に向けたロードマップ」などにおいて、
  • 【レベル1:目視内での操縦飛行】
  • 【レベル2:目視内での自動/自律飛行】
  • 【レベル3:無人地帯における目視外飛行】
  • 【レベル4:有人地帯における目視外飛行】

    の4段階が示されており、今回の改正で最終レベルに到達する形だ。


国土交通省の資料より

 

厳格に安全性を確保する新制度も

 
もちろん、人がいるエリアでの上空飛行になると、これまで以上に厳格な安全性の確保が不可欠だ。そこで、“飛行レベル4”を実現するための新しい仕組みや制度の整備も進められている。

具体的には、ドローンの墜落や事故、危険な飛行などに適切に対応できるように、2022年6月20日からはドローンの機体登録が義務化。重さ100グラム以上の機体を対象に、所有者は氏名や住所、機体情報を国に届け出て、機体に登録番号を表示することが必要になる。

また、「機体の安全性に関する認証制度(機体認証)」と、「操縦者の技能に関する証明制度(操縦ライセンス) 」を創設。機体認証を受けたドローンを、国の試験をクリアしたライセンス所有者が操縦し、国土交通大臣の許可・承認を受けることで、有人エリアでの目視外飛行が可能になる。 また、事故防止や状況把握のため、ドローンの飛行計画の通報や飛行日誌の記録、事故発生時の報告などを義務化し、運航管理のルール等を明確化していく。

機体認証における安全基準や、操縦ライセンス取得のための試験内容などについてはまだ決まっていないが、今後、官民協議会や関連するワーキンググループの場で関係者・有識者と意見交換しながら検討していくという。

※国土交通省の資料より


ドローン「レベル4」飛行が、土木・建設業界にもたらす影響は


こうした“レベル4飛行”の解禁は、ドローンによる都市部での荷物郵送や発災直後の救助など、さまざまな分野で期待されている。

建設業界においても、人が介在しない自律型ドローンが、無人エリアの広い敷地での土木工事だけでなく、人口が集中する都市部においてのビルや屋内の工事・点検などへも広がっていくだろう。また、SLAM(カメラやセンサで情報を収集して自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術)やAI技術の進化に伴い、ドローン技術も日進月歩で進化している。

例えば、今年、ゼネコンの株式会社フジタとスタートアップ企業の株式会社センシンロボティクスは、全自動で飛行・離着陸するドローンで建設現場の出来高測量と安全巡視を無人化するシステムを共同開発した。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000058.000028447.htmlより

自動でドローンが飛び、規定のルートで現場の上空を巡回して撮影したデータをクラウド上に送信し、出来高測量や安全巡視に活用する。フジタによれば、建設現場での目視外・補助者なし飛行は国内で初めてだそう。有人エリアで補助者なしの目視外飛行はまだ認められていないため、あらかじめドローンのルートを作業員に周知することで無人扱いにしたという。

“レベル4飛行”の解禁を追い風に、技術も活用範囲もますます可能性が広がるドローン。建設DX推進に大きく拍車がかかりそうだ。
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WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

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